監獄法改正の経緯,刑事施設及び留置施設

第0 目次

第1 監獄法改正の経緯
第2 刑事施設
第3 留置施設
第4 施設別収容定員・現員(刑事施設,少年院及び少年鑑別所)
第5 刑務所,少年刑務所及び拘置所の職員の配置定員
第6 保護観察所の職員の配置定員

* 法務省HPに「監獄法から刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律へ」が載っています。

第1 監獄法改正の経緯

1 監獄法改正の経緯は以下のとおりです。
(1) 明治41年10月1日,刑法(明治40年4月24日法律第45号)とともに施行された監獄法(明治41年3月28日法律第28号)は,被収容者に対する給養,衛生,医療といったその施設内生活に関する人道的取扱い,及び受刑者に対する教育的配慮もうかがわれ,当時としては,世界的にも極めて進歩的な法律でした。
   しかしながら,第二次大戦後,日本国憲法の制定を始めとして,我が国の法制度及び法思想の大きな変革が行われるとともに,行刑に関する理論と実践が著しく発展し,受刑者に対する矯正処遇による社会復帰の促進と被収容者の権利義務関係の明確化という現代行刑の理念にそぐわないものとなっていました。
   そのため,昭和57年から3回にわたって,監獄法を改正する刑事施設法案が国会に提出されたものの,代用監獄制度に対する意見の対立を背景として,成立するには至りませんでした。
(2) 平成14年から平成15年にかけて明らかになった名古屋刑務所における受刑者死傷事案を契機として,受刑者の処遇を中心とする行刑運営上の問題が顕わとなりました。
   法務省は,平成15年3月31日,広く行刑改革に関する検討を行うことを目的とする,民間有識者からなる行刑改革会議を立ち上げ,平成15年12月22日,「行刑改革会議提言~国民に理解され,支えられる刑務所へ~」が取りまとめられました。
   同提言においては,様々な改革のための提言がなされるとともに,行刑改革の実現に不可欠なものとして,監獄法を速やかに全面的に改正することが求められました。 
(3) 行刑改革会議提言を受けて,法務省において,監獄法の改正作業を進めることとなりました。
   しかし,代用監獄制度に対する意見対立があったことから,まずは,監獄法を受刑者の処遇について全面的に改める「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律」案が国会に提出されることとなりました。
   同法案は,平成17年5月18日,第162回国会において成立し,刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律(平成17年5月25日法律第50号)(=受刑者処遇法)は,平成18年5月24日に施行されました。
(4) この改正の結果,受刑者処遇法により規定されている受刑者の処遇と,刑事施設ニ於ケル刑事被告人ノ収容等ニ関スル法律(「監獄法」から名称変更された法律)の規定のままである未決拘禁者及び死刑確定者の処遇との間に不合理な法律的格差が生じることとなりました。
   そのため,法務省は,未決拘禁者等の処遇に関する法改正を関係機関と調整しながら進め,「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正する法律」案を国会に提出し,同法案は,平成18年6月2日,第164回国会において成立し,平成19年6月1日に施行されました。
   この改正の結果,受刑者処遇法の名称は「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」(=刑事収容施設法)に改められました。
(5) これらの改正の結果,約100年ぶりに監獄法の全面改正が実現しました。

2 刑事収容施設とは,刑事施設,留置施設及び海上保安留置施設をいいます(刑事収容施設法1条)。

第2 刑事施設

1 総論
(1) 刑事施設とは,刑務所,少年刑務所及び拘置所をいい(法務省設置法8条2項参照),かつては「行刑施設」といわれていました。
   このうち,①刑務所及び少年刑務所は,主として受刑者を収容し,処遇を行う施設であり,②拘置所は,主として刑事裁判が確定していない未決拘禁者を収容する施設です。
   我が国の刑事施設の数は,平成22年4月現在,刑務所62,少年刑務所7,拘置所8,刑務支所8,拘置支所103の合計188です。
   これらの刑事施設は,法務省が所管しており,内部部局である矯正局及び全国8か所に設置されている地方支分部局である矯正管区が指導監督に当たっています。
(2) 大阪府には以下の刑事施設があります。
① 大阪刑務所(〒590-0014 大阪府堺市堺区田出井町6-1)
→ 大正11年10月に大阪監獄から大阪刑務所に名称が変わりました。
   堺拘置支所及び岸和田拘置支所の他,平成19年4月以降,和歌山刑務所から移管された(a)丸の内拘置支所,(b)田辺拘置支所及び(c)新宮拘置支所を管轄しています。
② 大阪医療刑務所(〒590-004 大阪府堺市堺区田出井町8-80)
③ 大阪拘置所(〒534-8585 大阪府大阪市都島区友渕町1-2-5)
④ 堺拘置支所(〒590-0078 大阪府堺市堺区南瓦町2-60)
⑤ 岸和田拘置支所(〒596-0047 大阪府岸和田市上野町東24-1)
(3) 法務大臣は,刑事収容施設法の適正な施行を期するため,その職員のうちから監査官を指名し,各刑事施設について,毎年一回以上,これに実地監査を行わせなければなりません(刑事収容施設法5条)。
(4) 刑事施設には,刑事施設視察委員会を置かれており,同委員会は,その置かれた刑事施設を視察し,その運営に関し,刑事施設の長に対して意見を述べます(刑事収容施設法7条)。
   なお,刑事施設の長は,被収容者が刑事施設視察委員会に対して提出する書面を検査することはできません(刑事収容施設法9条4項)。
(5) 裁判官及び検察官は,刑事施設を巡視することができます(刑事収容施設法11条)。
(6) 刑事施設の長は,その刑事施設の参観を申し出る者がある場合において相当と認めるときは,これを許すことができます(刑事収容施設法12条)。
   詳細については,①刑事施設の参観に関する訓令(平成18年5月23日矯総訓第3256号法務大臣訓令)及び②刑事施設の参観に関する訓令の運用について(平成18年5月23日矯総訓第3257号矯正局長依命通達)で定められています。
(7)ア 「矯正施設」には,①刑事施設の他,②少年施設(=少年院と少年鑑別所)及び③婦人補導院が含まれます(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律26条,矯正医官修学資金貸与法1条,法務省組織令39条3号,予算決算及び会計令51条10号参照)。
イ 少年院は平成27年6月1日施行の少年院法(平成26年6月11日法律第58号)に基づいて設置され,少年鑑別所は平成27年6月1日施行の少年鑑別所法(平成26年6月11日法律第59号)に基づいて設置されています。
   なお,従前は,昭和24年1月1日施行の少年院法(昭和23年7月15日法律第169号)に基づいて設置されています。
(8) 法務省矯正局は,矯正施設の保安警備,分類保護,作業,教育,鑑別,医療,衛生など被収容者に対する処遇が適正に行われるように指導,監督するとともに,最近の矯正思潮に沿った新しい処遇方法について調査研究を行っています。
(9) 刑事施設で適用される主な訓令・通達は,法務省矯正局HP「刑事施設で適用される主な訓令・通達」に載っています。

2 矯正処遇等
(1) 総論
ア 受刑者には,矯正処遇として,刑務作業及び各種指導が行われます(刑事収容施設法84条1項)。
   そして,矯正処遇は,処遇要領(=矯正処遇の目標並びにその基本的な内容及び方法を受刑者ごとに定める矯正処遇の実施の要領)に基づいて行われます(刑事収容施設法84条2項)。
イ 受刑者には,矯正処遇を行うほか,刑執行開始時の指導及び釈放前指導が行われ(刑事収容施設法85条),これらをまとめて「矯正処遇等」といいます(刑事収容施設法86条)。
ウ 大阪刑務所では,常時収容定員(2,703人)を超える受刑者を収容していますところ,主たる収容対象者は,犯罪傾向の進んだB指標の成人男子受刑者と,日本人と異なる処遇を必要とする男子外国人受刑者です。
   また,大阪管内(滋賀県,京都府,大阪府,兵庫県,奈良県,和歌山県)の拘置所等で刑が確定した26歳未満の男子受刑者のうち,受刑歴のない執行刑期1年6月以上の受刑者及び生命犯など重大な犯罪を犯し,特に調査を必要とする受刑者を,いったん大阪刑務所の調査センターに収容しています。
   調査センターに収容された受刑者に対しては,おおむね55日間かけて科学的調査を実施した上で,当該受刑者の処遇方針・施設を決定し,処遇施設に移送しています。
エ 刑事収容施設法では,累進処遇制度が廃止され,新たに,①制限の緩和及び②優遇措置の制度が導入されました。
   ①制限の緩和とは,受刑者に自発性や自律性を身に付けさせるため,受刑者の資質や環境,所内での行状等を総合的に評価し,受刑者処遇の目的を達成する見込みが高まるにしたがって,施設内の規律や秩序を維持するための受刑者の生活や行動に対する制限を,少しずつ緩やかなものにするものです(刑事収容施設法88条参照)。
   ②優遇措置とは,まじめに受刑生活を送っている受刑者に良い待遇を与え,改善更生に向けた更なる努力を促すため,原則として6か月という比較的短期間の受刑態度を評価し,外部交通の回数を増加させたり,自弁で使用できる物品の範囲を広げたりするなどの措置を講じるものです(刑事収容施設法89条参照)。

(2) 刑務作業
ア ①懲役と禁錮・拘留とは,刑事施設における刑務作業に従事する義務の有無によって区別され,②懲役・禁錮と拘留とは,拘禁期間が一月以上かどうかによって区別されます。
イ 平成20年9月末現在で,刑務作業に就業している人員は約6万4千人です。
   刑務作業に従事する者としては,①刑法12条2項の「所定の作業」として就業している懲役受刑者(刑事収容施設法92条参照),及び②いわゆる換刑処分として就業する義務のある労役場留置者(刑事収容施設法288条参照)の他,③就業の義務はないが申出により就業することができる禁錮受刑者及び拘留受刑者(刑事収容施設法93条参照)があります。
受刑者等は,木工,印刷,洋裁,金属,革工等の業種から,各人の適性等に応じた職種が指定されて就業しています。
ウ 刑務作業の形態は,①生産作業,②職業訓練及び③自営作業の三つがあります。
① 生産作業
   (a)製作作業(生産に用いる原材料の全部又は一部が国の物品である作業),(b)事業部作業(生産に用いる原材料の全部又は一部が事業部物品である作業)及び(c)提供作業(生産に用いる原材料の全部が契約の相手方から提供された物品である作業又は国が被収容者の労務のみを提供して行う作業)の三つに区分されます。
② 職業訓練
   受刑者に免許若しくは資格を取得させ,又は,職業的知識及び技能を修得させるための訓練を行っています。
具体的内容は,被収容者の作業の安全及び衛生の確保に関する訓令(平成18年5月23日付の法務大臣訓令)で定められています。
③ 自営作業
   (a)経理作業(炊事,洗濯,清掃等の施設の自営に必要な作業),及び(b)営繕作業(施設の改修等,直営工事に必要な作業)に区分されます。

(3) 各種指導
ア 各種指導は,①改善指導及び②教科指導に分かれます。
イ 刑事施設の長は,受刑者に対し,犯罪の責任を自覚させ,健康な心身を培わせ,並びに社会生活に適応するのに必要な知識及び生活態度を習得させるため必要な指導を行うものとされており,これを「改善指導」といいます(刑事収容施設法103条)。
ウ 刑事施設の長は,社会生活の基礎となる学力を欠くことにより改善更生及び円滑な社会復帰に支障があると認められる受刑者に対しては,教科指導を行うものとされています(刑事収容施設法104条)。
   なお,教科指導とは,学校教育法による学校教育の内容に準ずる内容の指導をいいます。

3 被収容者による不服申立て
(1) 総論
ア 被収容者とは,刑事施設に収容されている者をいい(刑事収容施設法2条1号),①受刑者,②未決拘禁者及び③死刑確定者に分かれます。
イ 刑事施設の長は,被収容者が,審査の申請等をし,又は法務大臣若しくは監査官に対し苦情の申出をするに当たり,その内容を刑事施設の職員に秘密にすることができるように,必要な措置を講じる必要があります(刑事収容施設法169条1項)。
ウ 刑事施設の長は,審査の申請等又は苦情の申出の書面を検査してはなりません(刑事収容施設法169条2項)。
エ 刑事施設の職員は,被収容者が審査の申請等又は苦情の申出をしたことを理由として,その者に対し不利益な取扱いをしてはなりません(刑事収容施設法170条)。

(2) 審査の申請及び再審査の申請
ア 被収容者は,以下に掲げる刑事施設の長の措置に不服がある場合,書面で,当該刑事施設の所在地を管轄する矯正管区の長に対し,措置の告知があった日の翌日から起算して30日以内に,審査の申請をすることができます(刑事収容施設法157条及び158条)。
① 自弁の物品の使用又は摂取を許さない処分
② 領置されている現金の使用又は保管私物若しくは領置されている金品の交付を許さない処分
③ 指名医による診療を受けることを許さない処分又は指名医による診療の中止
④ 宗教上の行為の禁止又は制限
⑤ 書籍等の閲覧の禁止又は制限
⑥ 自弁の書籍等の翻訳に必要な費用を負担させる処分
⑦ 他の被収容者からの隔離
⑧ 刑務作業に対する,作業報奨金の支給に関する処分
⑨ 刑務作業において負傷し,又は疾病にかかった場合の,障害手当金の支給に関する処分
⑩ 刑務作業において負傷し,又は疾病にかかった場合の,特別手当金の支給に関する処分
⑪ 信書の発受又は文書図画の交付の禁止,差止め又は制限
⑫ 発受禁止信書等の引渡しをしない処分
⑬ 外国語による面会等の内容を確認するための費用を負担させる処分
⑭ 遵守事項等を遵守しなかったことに対する懲罰
⑮ 反則行為に係る物を国庫に帰属させる処分 
⑯ 反則行為をした疑いがある被収容者について,他の被収容者からの隔離
イ 矯正管区の長による,審査の申請に対する裁決に不服がある場合,法務大臣に対し,審査の申請についての裁決の告知があった日の翌日から起算して30日以内に,再審査の申請をすることができます(刑事収容施設法162条)。

(3) 事実の申告
ア 被収容者は,自己に対する刑事施設の職員による行為であって,以下に掲げるものがあったときは、書面で,当該刑事施設の所在地を管轄する矯正管区の長に対し,その申告に係る事実があった日の翌日から起算して30日以内に,その事実を申告することができます(刑事収容施設法163条)。
① 身体に対する違法な有形力の行使
② 違法又は不当な捕縄、手錠又は拘束衣の使用
③ 違法又は不当な保護室への収容
イ 事実の申告が適法であるときは,矯正管区の長は,その申告に係る事実の有無について確認し,その結果をその申告をした者に通知します(刑事収容施設法164条1項)。
ウ 被収容者は,矯正管区の長からの通知を受けた場合において,その内容に不服があるときは,書面で,法務大臣に対し,通知を受けた日の翌日から起算して30日以内に,事実を申告することができます(刑事収容施設法165条)。

(4) 苦情の申出
ア 被収容者は,自己に対する刑事施設の長の措置その他自己が受けた処遇について,書面で,法務大臣に対し,苦情の申出をすることができ(刑事収容施設法166条1項),法務大臣は,苦情の申出を受けたときは,これを誠実に処理し,処理の結果を苦情の申出をした者に通知しなければなりません(刑事収容施設法166条3項)。
イ(ア) 被収容者は,自己に対する刑事施設の長の措置その他自己が受けた処遇について,口頭又は書面で,実地監査を行う監査官に対し,苦情の申出をすることができ(刑事収容施設法167条1項),監査官は,苦情の申出を受けたときは,これを誠実に処理し,処理の結果を苦情の申出をした者に通知しなければなりません(刑事収容施設法167条4項・166条3項)。
(イ)   監査官は,口頭による苦情の申出を受けるに当たっては,刑事施設の職員を立ち会わせてはなりません(刑事収容施設法167条3項)。
ウ 被収容者は,自己に対する刑事施設の長の措置その他自己が受けた処遇について,口頭又は書面で,刑事施設の長に対し,苦情の申出をすることができ(刑事収容施設法168条1項),刑事施設の長は,苦情の申出を受けたときは,刑事施設の職員に内容を聴取させた上で(刑事収容施設法168条3項),これを誠実に処理し,処理の結果を苦情の申出をした者に通知しなければなりません(刑事収容施設法168条4項・166条3項)。

3 その他
    拘置所長が,死刑確定者から再審請求の弁護人宛ての信書の発信を申請されたのに対し,刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律139条2項の規定により発信を許すことができないものとして当該信書を返戻した行為は,便箋7枚から成る当該信書の1枚目に支援者ら4名の氏名,住所等が記載され,2枚目以降に専ら当該支援者らに対する連絡事項等が支援者らごとに便箋を分けて記載されていたものであり,当該死刑確定者がその全部を当該弁護人宛ての信書として発信しようとしたことに拘置所の規律及び秩序の維持の観点から問題があったことなど判示の事情の下においては,国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえません(最高裁平成28年4月12日判決)。 

第3 留置施設

1 総論
(1) 都道府県警察に設置される留置施設(刑事収容施設法14条1項)の典型例は,警察署内の留置場です。
(2) 留置施設に係る留置業務を管理する者(=留置業務管理者)は通常,警察署長です(刑事収容施設法16条1項)。
(3) 警察本部長は,都道府県公安委員会の定めるところにより,刑事収容施設法の適正な施行を期するため,その職員のうちから監査官を指名し,各留置施設について,毎年一回以上,これに実地監査を行わせなければなりません(刑事収容施設法18条)。
(4) 警察庁長官は,国家公安委員会の定めるところにより,被留置者の処遇の斉一を図り,刑事収容施設法の適正な施行を期するため,その指名する職員に留置施設を巡察させるものとされています(刑事収容施設法19条)。
(5) 警察本部に,留置施設視察委員会が置かれており,同委員会は,その置かれた警察本部に係る都道府県警察の管轄区域内にある留置施設を視察し,その運営に関し,留置業務管理者に対して意見を述べるものとされています(刑事収容施設法20条)。
   なお,留置業務管理者は,被留置者が留置施設視察委員会に対して提出する書面を検査することはできません(刑事収容施設法22条4項)。

2 代用刑事施設
(1) 被疑者及び被告人の勾留場所は本来,刑事施設で行われることになっています(刑訴法207条1項本文・64条1項参照)。
   しかし,刑事施設の収容能力に限界があることから,被疑者及び第1回公判期日前の被告人の勾留場所は通常,警察署内の留置場となっており(刑事収容施設法14条2項2号,15条1項参照),これを「代用刑事施設」といいます(かつては「代用監獄」といわれていました。)。
(2) 留置施設に係る留置業務に従事する警察官(=留置担当官)は,その留置施設に留置されている被留置者に係る犯罪の捜査に従事してはなりません(刑事収容施設法16条3項)。

3 被留置者による不服申立て
(1) 総論
ア 被留置者とは,留置施設に収容されている者をいい(刑事収容施設法2条2号),典型例は未決拘禁者です。
イ 留置業務管理者は,被留置者が,審査の申請等をし,又は警察本部長若しくは監査官に対し苦情の申出をするに当たり,その内容を留置業務に従事する職員に秘密にすることができるように,必要な措置を講じる必要があります(刑事収容施設法236条1項)。
ウ 留置業務管理者は,審査の申請等又は苦情の申出の書面を検査してはなりません(刑事収容施設法236条2項)。
エ 留置業務に従事する職員は,被留置者が審査の申請等又は苦情の申出をしたことを理由として,その者に対し不利益な取扱いをしてはなりません(刑事収容施設法237条)。
(2) 審査の申請及び再審査の申請
ア 被留置者は,以下に掲げる留置業務管理者の措置に不服がある場合,書面で,警察本部長に対し,措置の告知があった日の翌日から起算して30日以内に,審査の申請をすることができます(刑事収容施設法229条)。
① 自弁の物品の使用又は摂取を許さない処分
② 反則行為に係る物を都道府県に帰属させる処分
③ 領置されている現金の使用又は保管私物若しくは領置されている金品の交付を許さない処分
④ 指名医による診療を受けることを許さない処分又は指名医による診療の中止 
⑤ 宗教上の行為の禁止又は制限
⑥ 書籍等の閲覧の禁止又は制限
⑦ 自弁の書籍等の翻訳に必要な費用を負担させる処分
⑧ 信書の発受又は文書図画の交付の禁止,差止め又は制限
⑨ 発受禁止信書等の引渡しをしない処分
⑩ 外国語による面会等の内容を確認するための費用を負担させる処分
イ 警察本部長による,審査の申請に対する裁決に不服がある場合,公安委員会に対し,審査の申請についての裁決の告知があった日の翌日から起算して30日以内に,再審査の申請をすることができます(刑事収容施設法230条)。
(3) 事実の申告
ア 被留置者は,自己に対する留置業務に従事する職員による行為であって,以下に掲げるものがあったときは、書面で,警察本部長に対し,その申告に係る事実があった日の翌日から起算して30日以内に,その事実を申告することができます(刑事収容施設法231条)。
① 身体に対する違法な有形力の行使
② 違法又は不当な捕縄,手錠,拘束衣又は防声具の使用
③ 違法又は不当な保護室への収容
イ 事実の申告が適法であるときは,警察本部長は,その申告に係る事実の有無について確認し,その結果をその申告をした者に通知します(刑事収容施設法231条3項・164条1項)。
ウ 被留置者は,警察本部長からの通知を受けた場合において,その内容に不服があるときは,書面で,公安委員会に対し,通知を受けた日の翌日から起算して30日以内に,事実を申告することができます(刑事収容施設法232条)。
(4) 苦情の申出
ア 被留置者は,自己に対する留置業務管理者の措置その他自己が受けた処遇について,書面で,警察本部長に対し,苦情の申出をすることができ(刑事収容施設法233条1項),警察本部長は,苦情の申出を受けたときは,これを誠実に処理し,処理の結果を苦情の申出をした者に通知しなければなりません(刑事収容施設法233条2項・166条3項)。
イ 被留置者は,自己に対する留置業務管理者の措置その他自己が受けた処遇について,口頭又は書面で,実地監査を行う監査官に対し,苦情の申出をすることができ(刑事収容施設法234条1項),監査官は,苦情の申出を受けたときは,これを誠実に処理し,処理の結果を苦情の申出をした者に通知しなければなりません(刑事収容施設法234条2項・166条3項)。
   なお,監査官は,口頭による苦情の申出を受けるに当たっては,留置業務に従事する職員を立ち会わせてはなりません(刑事収容施設法234条2項・167条3項)。
ウ 被留置者は,自己に対する留置業務管理者の措置その他自己が受けた処遇について,口頭又は書面で,留置業務管理者に対し,苦情の申出をすることができ(刑事収容施設法235条1項),留置業務管理者は,苦情の申出を受けたときは,留置業務に従事する職員に内容を聴取させた上で(刑事収容施設法235条2項・168条3項),これを誠実に処理し,処理の結果を苦情の申出をした者に通知しなければなりません(刑事収容施設法235条2項・166条3項)。

第4 施設別収容定員・現員(刑事施設,少年院及び少年鑑別所)

「法務省の定員に関する訓令及び通達」に移転させました。

第5 刑務所,少年刑務所及び拘置所の職員の配置定員

「法務省の定員に関する訓令及び通達」に移転させました。

第6 保護観察所の職員の配置定員

「法務省の定員に関する訓令及び通達」に移転させました。
1(1) 被害者側の交通事故(検察審査会を含む。)の初回の面談相談は無料であり,債務整理,相続,情報公開請求その他の面談相談は30分3000円(税込み)ですし,交通事故については,無料の電話相談もやっています(事件受任の可能性があるものに限ります。)
(2) 相談予約の電話番号は「お問い合わせ」に載せています。

2 予約がある場合の相談時間は平日の午後2時から午後8時までですが,事務局の残業にならないようにするために問い合わせの電話は午後7時30分までにしてほしいですし,私が自分で電話に出るのは午後6時頃までです。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)については,略歴及び取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図を参照してください。