症状固定及び後遺障害診断書

第0 目次

第1 総論
第2 症状固定の具体的時期
第3 後遺障害診断書作成時の一般的な注意点

*1 症状固定に関しては以下のHPも参照して下さい。
① 症状固定前の交通事故被害者の留意点
② 症状固定後の交通事故被害者の留意点
③ 症状固定後の医療費の助成制度
④ 症状固定後の社会保険及び失業保険
⑤ XP,CT,MRI等
*2 後遺障害に関しては以下の頁も参照して下さい。
① 損害保険料率算出機構による後遺障害等級の認定
・ 14級を含む後遺障害等級の認定率は,約4.69%(平成26年度)→約4.67%(平成27年度)→約4.55%(平成28年度)という風に推移しています。
② 後遺障害としての関節の可動域制限
③ 後遺障害としてのむち打ち,腰椎捻挫,神経麻痺等
④ 自賠責保険の保険金及び後遺障害等級
⑤ 自賠責保険の被害者請求及び加害者請求
*3 たちかわ共同法律事務所後遺症等級認定サポートHP「症状固定とは?」が載っています。
*4 東京交通事故相談サポートHP「症状固定について」が載っています。
*5 後遺障害の等級認定手続き 慈友行政書士事務所HP「治療診療経過における症状固定から後遺傷害の認定まで」が載っています。
*6 交通事故弁護士ナビHP「後遺障害診断書の書き方と等級獲得を容易にする8つの手順 」が載っています。
*7 にわ法律事務所HP「平成29年半ばから、自賠責での後遺障害等級認定が厳しくなったようです」,及び「調査事務所取付回答書類が開示されるようになりました」が載っています。
*8 「自賠責保険後遺障害診断書」「神経学的所見の推移について」及び「頚椎捻挫・腰椎捻挫の症状の推移について」を掲載しています。
自賠責保険後遺障害診断書1/2
自賠責保険後遺障害診断書2/2
神経学的所見の推移について
頚椎捻挫・腰椎捻挫の症状の推移について

第1 総論

1 症状固定とは,医学上一般に承認された治療方法をもってしても,その効果が期待し得ない状態で,かつ,残存する症状が自然的経過によって到達すると認められる最終の状態に達したときをいいます。

2 交通事故発生時から症状固定時までは,傷害部分の損害として,治療費,通院交通費,入通院慰謝料,休業損害等が発生し続けるのに対し,症状固定後は,後遺障害部分の損害として,後遺障害が残る場合に限り,後遺障害逸失利益及び後遺障害慰謝料が発生するだけです。

3(1) 原因療法は,疾病(しっぺい)の原因を取り除く治療法であるのに対し,対症療法(姑息的療法)は,疾病の原因ではなく,疾病の主要な症状を軽減するための治療を行うことで自然治癒能力を高め,治癒を促進する治療法です。
(2) 症状固定時までの治療には通常,対症療法も含まれます。

4 後遺障害診断書は,左側前半に氏名,受傷日時,症状固定日,入通院期間,既存障害,自覚症状等の記載欄があり,左側後半から右側にかけて,各部位の後遺障害の内容①から⑩までの記載欄,医師の署名欄等があります(日弁連交通事故相談センターHPの「後遺障害診断書についての留意点」参照)。

5 東京地裁平成24年3月16日判決(判例秘書に掲載)は以下の判示をしています(改行を追加しています。)。
 治療(特に手術)は,その性質上,身体への侵襲を伴うものであり,また,その効果の確実性を保障することができないものであるから,交通事故の被害者に対し,治療を受けることを強制することはできない。
 したがって,一般的に考えられ得る治療をすべて施しても症状の改善を望めない状態に至らなければ,症状固定とはいえないとすることは相当でなく,被害者がこれ以上の治療は受けないと判断した場合には,それを前提として症状固定をしたものと判断するほかなく,治療の内容及び身体への侵襲の程度,治療による症状改善の蓋然性の有無及び程度,被害者が上記判断をするに至った経緯や被害者の上記判断の合理性の有無等を,交通事故と相当因果関係のある損害の範囲を判断する際に斟酌するのが相当である。

第2 症状固定の具体的時期

1(1) 交通事故に関する赤い本講演録2013年・10頁には,症状固定に関する一般論として以下の記載があります。
   症状固定時期につき理由を付して検討しているものを取り上げ,その理由を整理してみました。一概には言えませんが,概ねの傾向としては,症状固定日に関する医師の判断を踏まえ,その合理性を,①傷害及び症状の内容(例えば,神経症状のみか),②症状の推移(例えば,治療による改善の有無,一進一退か),③治療・処置の内容(例えば,治療は相当なものか,対症療法的なものか,治療内容の変化),④治療経過(例えば,通院頻度の変化,治療中断の有無),⑤検査結果(例えば,他覚的所見の有無),⑥当該症状につき症状固定に要する通常の気管,⑦交通事故の状況(例えば,衝撃の程度),などの観点から判断し,不合理であれば別途適切な時期を症状固定日と判断している,といった説明が可能ではないかと思われます。
(2) 「交通事故に関する赤い本講演録等の分野別目次」も参照して下さい。

2 東京交通事故相談サポートHP「症状固定について」には,「骨折の症状固定時期」として以下の記載があります。
   骨折の場合、変形障害、短縮障害などは、通常、骨癒合したとき(骨折が修復したとき)であり、症状固定まで6ヶ月もかからないことがあります。
   ギブスなどの外固定で治療する「保存療法」ではなく、骨折部位を手術して、骨癒合後に抜釘(プレートやスクリューの除去)をする場合には、症状固定まで長期間を要することがあります。
   骨癒合後に関節可動域制限の障害が生じる場合は、リハビリ期間が必要となることから、症状固定までの期間が長くなります。また、骨癒合後に痛みなどの神経症状が残る場合には、回復が見込まれる時期が過ぎる頃を症状固定日とします。

交通事故に関する赤い本講演録2018年・45頁ないし72頁に「肩関節~腱板断裂を中心に~」が載っていますところ,70頁に「症状固定の時期ですが,肩関節の場合には受傷から半年で可動域の評価をするには短過ぎます。1年~1年半, 2年くらいかけて肩関節の可動域制限が改善するのが通常なので,可動域を測る場合には注意が必要です。」と書いてあります。

第3 後遺障害診断書作成時の一般的な注意点

1(1) 主治医に後遺障害診断書を作成してもらう場合,「自覚症状」欄の記載漏れがないよう,自覚症状(日常生活又は職場で感じる支障を含む。)をすべて記載したメモ書きを持参するようにしてください。
   その際,頸部痛,腰部痛,左上肢しびれというふうに,症状のある部位+痛み・しびれという形式で書いておいた方がいいです。
  ただし,「首を動かしたときに痛くなる。」といった動作による痛みを記載したり,「寒い日に痛くなる。」といった天候の変化による痛みを記載したりした場合,安静時等には痛みが出ていない点で症状が恒常的ではないと判断されますから,後遺障害診断書の自覚症状においてこれらの記載はなるべくしない方がいいです。
(2) 痛みが出るタイミングに着目した分類としては,夜間痛,安静時痛,運動時痛及び荷重時痛となります(外部ブログの「大腿骨頸部・転子部骨折術後の理学療法|術式の特徴や評価項目・治療について」参照)。

2(1) 主治医に後遺障害診断書を作成してもらう場合においてMRIを撮影してもらっていない場合,必ずMRIを撮影してもらうようにしてください。
   その際,できれば3テスラのMRI撮影をしてもらうようにしてください。
(2) 「MRI 3テスラ 大阪」で検索すれば,3テスラのMRI撮影をしてくれる医療機関を検索できます。
   大阪市内では,例えば,上本町画像診断クリニック(診療科目が放射線科だけであることにつき「当院のご案内」参照)が,MRI撮影をする部位等を記載した主治医の紹介状(同クリニックHPの「検査予約票」のこと。)に基づき,完全予約制で3テスラのMRI撮影を行っています(同クリニックHPの「検査をご希望の方」参照)。
   ただし,脳のMRI撮影は,脳ドックという形式(全額自己負担の自費診療です。)により,主治医の紹介状なしでも受け付けています(同クリニックHPの「脳ドック(3.0テスラMRI)」参照)。
(3) 交通事故被害者を2度泣かせないHP「後遺障害認定上必要な画像検査と,CTなどの検査被爆」には,「CT検査にはメリットがなく、デメリットしかない。そのように書いたからといって、CT検査を全面的に否定しているわけでない。役立つ場合もある。が、後遺障害認定上は百害あって一利なしと考えた方がいいだろう。CTではなく、MRIをやってもらうべきである。」と書いてあります。

3 ヘルニア等の画像所見が明らかな年齢変性による場合であっても,後遺障害診断書に記載しておいてもらった方がいいです。

4 後遺障害診断書右下の「障害内容の増悪・緩解の見通しなどについて記入してください」欄には,できる限り,「将来においても回復困難と認められる。」という趣旨の記載をしてもらってください。

5(1)ア   後遺障害診断書の作成料は5400円又は1万800円であることが多く,作成期間は1週間から2週間ぐらいです。
  後遺障害等級が認定された場合に後遺障害診断書の作成料を任意保険会社に請求できるのは当然ですが,そうでない場合であっても,任意保険会社に請求できることがあります。
イ 後遺障害の慰謝料HP「後遺障害診断書の作成費用・診断書料は?」によれば,後遺障害診断書の作成費用は平均で約6000円とのことです。
(2) 頚椎捻挫又は腰椎捻挫で後遺障害診断書を作成する場合,「神経学的所見の推移について」及び「頚椎捻挫・腰椎捻挫の症状の推移について」も作成してもらう方がいいです。

6(1) 後遺障害部分だけではなく,傷害部分についても,自賠責保険に対する被害者請求をする場合,公的医療保険で通院した期間に関して,自賠責保険指定書式の診断書を作成してもらって下さい。
  この場合,公的医療保険で通院した期間の全部をまとめて1通の診断書を作成してもらうということで大丈夫です。
(2) 通院先の医療機関独自の書式で結構ですから,診療報酬明細書も作成してもらって下さい。ただし,日々の領収書と一緒に渡される医療費明細書で足ります。

7(1) 弁護士法人サリュの交通事故相談HPにおける「後遺障害の診断書について」には,「後遺障害診断書を作成してもらうためのポイント」として以下の記載があります。

1. 必要な検査は、全て受けましょう。
2. 可動域(関節が動く範囲)は正確に測ってもらいましょう。
3. 空欄がないように書いてもらいましょう。空欄の部分は正常だと判断されてしまいます。
4. 他覚所見、自覚症状ともに、詳しく書いてもらいましょう。
5. 症状がある部位を具体的に示してもらいましょう。
6. 画像所見がある場合は画像の種類と撮影日を記載してもらい、
    症状を正確に詳細に記載してもらいましょう。
7. 事故で負ったケガと、残っている症状との関係を、具体的に書いてもらう。
8. 画像所見と、残っている症状の関係を、具体的に書いてもらいましょう。
(2) 他覚所見は,自賠責保険後遺障害診断書の「1.他覚症状及び検査結果 精神・神経の障害」欄に書いてもらいます。

8 交通事故オンラインHP(伊佐行政書士事務所)「後遺障害診断書の書き方」に,後遺障害診断書の「傷病名」欄,「自覚症状」欄,「他覚症状及び検査結果」欄,「障害内容の憎悪・寛解の見通し」欄,及び「その他の項目」欄の記入例が載っています。
1(1) 被害者側の交通事故(検察審査会を含む。)の初回の面談相談は無料であり,債務整理,相続,情報公開請求その他の面談相談は30分3000円(税込み)ですし,交通事故については,無料の電話相談もやっています(事件受任の可能性があるものに限ります。)
(2) 相談予約の電話番号は「お問い合わせ」に載せています。

2 予約がある場合の相談時間は平日の午後2時から午後8時までですが,事務局の残業にならないようにするために問い合わせの電話は午後7時30分までにしてほしいですし,私が自分で電話に出るのは午後6時頃までです。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)については,略歴及び取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図を参照してください。