交通事故事件の慰謝料

第0 目次

第1   総論
第2   望ましい通院頻度等
第3の1 入院慰謝料及び通院慰謝料の目安(裁判基準)
第3の2 入院慰謝料及び通院慰謝料(自賠責保険基準)
第4   後遺障害慰謝料(裁判基準及び自賠責保険基準)
第5の1 被害者本人の死亡慰謝料
第5の2 近親者固有の慰謝料

*0 大阪地裁で使用されている入通院慰謝料額表(通常の事故)を掲載しています。
*1 以下のHPも参照してください。
① 症状固定及び後遺障害診断書
② 労働能力の喪失割合及び喪失期間
③ 症状固定後の医療費の助成制度
④ 症状固定後の社会保険及び失業保険
⑤ XP,CT,MRI等
*2 大阪の弁護士による交通事故相談HP「交通事故の主な賠償項目(人身事故)」に,大阪地裁基準の入通院慰謝料の表が載っています。
*3 交通事故・損害賠償請求ネット相談室HP「傷害事故における入通院慰謝料の算定表(赤い本・弁護士基準)」が載っています。
*4 交通事故の弁護士カタログHP「交通事故の慰謝料|任意保険基準編~計算方法や表を特別にご紹介!」が載っています。
*5 東京交通事故相談サポートHP「症状固定について」が載っています。
*6 東京中央総合法律事務所HP「交通事故の通院交通費について」が載っています。
*7 誰でも分かる交通事故示談HP「妊娠中に事故にあってしまった…請求できる慰謝料と治療の注意点とは」が載っています。
*8 シニアガイドHPに以下の記事があります。
① 家族が入院する時に用意する物品リスト(平成30年5月17日付)
② 自分や家族が入院したら、すぐに「限度額適用認定証」を入手しよう(平成30年8月1日付)
③ 入院した病院から会社に連絡を取る手段は「スマホ」、使う場所は「談話室」」(平成30年12月18日付)
*9 タブレットをテザリングでWifi接続する場合に使用するモバイルWi-Fiについては,Wi-Fiレンタルどっとこむ等で1日単位でレンタルすることができます。
通院交通費明細書

第1 総論

1(1) 慰謝料とは,交通事故によって被った精神的な苦痛に対する賠償のことであり,入院慰謝料及び通院慰謝料のほか,症状固定となった時点で発生する後遺障害慰謝料があります。
(2)   被害者が死亡した場合,被害者本人の死亡慰謝料及び近親者固有の慰謝料が発生します。

2(1) 入院慰謝料及び通院慰謝料については,入院又は通院の頻度及び期間を基準として金額が定められます。
(2) 自賠責保険基準,任意保険基準,裁判基準の順に通院慰謝料の金額が上がります。
(3) 弁護士が訴訟提起前に示談を成立させる場合,任意保険基準と裁判基準の間の金額で示談を成立させるのが普通です。

3(1) 病院は,毎月末締めで診断書及び診療報酬明細書を作成し,これを加害者側の任意保険会社に送付することで治療費の立替払いを受けています。
  その関係で,任意保険会社としては,病院から被害者の医療情報を取得することとなりますから,被害者に対し,「個人情報の提供に関する同意書」の作成を依頼しています。
(2) 1ヶ月以上の通院期間の中断がある場合,病院から毎月送られてくる診断書及び診療報酬明細書をチェックしている任意保険会社から今後の通院の必要性を否定される可能性が高くなりますし,後遺障害の等級認定に大きな悪影響を与えます。
   そのため,痛み,しびれ等が少しでも続いている場合,絶対に通院を中断しないようにしてください。

4 交通事故から6ヶ月以上が経過した場合,任意保険会社が治療費の打ち切りを通告してくることが多くなります。
   この場合において未だに痛み等が継続しているなど治療の必要がある場合,任意保険会社に対し,主治医を通じて治療の必要性があることを連絡してもらうようにしてください。

5(1) 入院慰謝料につき,仕事や家庭の都合等で本来より入院期間が短くなった場合には増額が考慮され,他方,入院の必要性に乏しいのに本人の希望によって入院していた場合には減額が考慮されます。
(2)   入院待機中の期間及びギブス固定中等による自宅安静期間は,入院期間と見ることがあります。

6 金員仮払いの仮処分を利用した場合を除き,任意保険会社が示談を成立させる前の時点で入院慰謝料及び通院慰謝料を支払ってくれることはありません。

7(1) 日常生活動作(ADL)とは,Activities of Daily Livingのことであり,ADLのAはアクティビティー(動作),DLはデイリーリビング(日常生活)のことです。
   日常生活動作は,日常生活を送るために最低限必要な日常的な動作で,「起居動作・移乗・移動・食事・更衣・排泄・入浴・整容」動作のことです。
(2) 日常生活動作には,基本的日常生活動作(basic ADL=BADL),及び手段的日常生活動作(instrumental ADL=IADL)とがあります。
   基本的日常生活動作(BADL)とは,一般的に日常生活動作(ADL)のことを指し,日常生活における基本的な「起居動作・移乗・移動・食事・更衣・排泄・入浴・整容」動作のことを指します。
   手段的日常生活動作(IADL)は,基本的日常生活動作(BADL)の次の段階を指し,「掃除・料理・選択・買い物などの家事や交通機関の利用、電話対応などのコミュニケーション、スケジュール調整、服薬管理、金銭管理、趣味」などの複雑な日常生活動作のことを指します。
(3) 健康長寿ネットHP「自立生活の指標:日常生活動作(ADL)とは」が参考になります。

8 症状固定後の通院については,「後遺障害としてのむち打ち,腰椎捻挫,神経麻痺等」を参照して下さい。 

9(1) 交通事故に関する赤い本講演録2013年・10頁には,症状固定に関する一般論として以下の記載があります。
   症状固定時期につき理由を付して検討しているものを取り上げ,その理由を整理してみました。一概には言えませんが,概ねの傾向としては,症状固定日に関する医師の判断を踏まえ,その合理性を,①傷害及び症状の内容(例えば,神経症状のみか),②症状の推移(例えば,治療による改善の有無,一進一退か),③治療・処置の内容(例えば,治療は相当なものか,対症療法的なものか,治療内容の変化),④治療経過(例えば,通院頻度の変化,治療中断の有無),⑤検査結果(例えば,他覚的所見の有無),⑥当該症状につき症状固定に要する通常の期間,⑦交通事故の状況(例えば,衝撃の程度)などの観点から判断し,不合理であれば別途適切な時期を症状固定日と判断している,といった説明が可能ではないかと思われます。
(2) 「交通事故に関する赤い本講演録等の分野別目次」も参照して下さい。

10 むち打ちで90日間,2日に1回のペースで通院した場合,裁判基準の通院慰謝料は48万円である(3.5日に1回のペースで通院した場合と同じです。)のに対し,自賠責保険基準の通院慰謝料は4200円×90日=37万8000円です。
   そのため,この場合,被害者の過失割合が25%とすれば,過失相殺後の裁判基準の通院慰謝料は48万円×0.75=36万円となりますから,自賠責保険基準の通院慰謝料の方が高いこととなります。

自賠責保険の診断書
自賠責保険診療報酬明細書(入院外)1/2
自賠責保険診療報酬明細書(入院外)2/2

第2 望ましい通院頻度等

1(1)   任意保険に対して裁判基準の通院慰謝料を請求する場合,通院慰謝料を計算する場合の基準となる通院回数は1週間に2回です。
   そのため,望ましい通院頻度としては,1週間に2回以上の頻度で整形外科又は整骨院に通院することとなります。
(2) 14級の後遺障害認定をしてもらうためにはできる限り整形外科に半年間,週2回のペースで通院することが望ましいです。
   その関係で,通院実日数は183日間×2/7=52日間は欲しいところです。
(3) 自賠責保険に対して上限の通院慰謝料を請求したい場合,2日に1回のペースで整形外科又は整骨院に通院する必要があります。
   このペースで通院した場合は通常,通院期間が3ヶ月を超えた時点で,自賠責保険の通院慰謝料が人身傷害補償保険の通院慰謝料を超えることとなります。

2 交通事故直後に救急搬送された病院が遠方にある等の事情により通院頻度を確保できない場合,紹介状(=診療情報提供書)を書いてもらい,任意保険会社の了解をもらった上で,通院しやすい病院に転院してください。

3(1) 交通事故に関する赤い本(平成29年版)176頁には,「通院が長期にわたる場合,症状,治療内容,通院頻度を踏まえ実通院日数の3.5倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることもある。」とか,「むち打ち症で他覚所見がない場合等は入通院期間を基礎として別表Ⅱ(178頁)を使用する。」と書いてあります。

   そして,福岡交通事故被害者相談HP「傷害慰謝料の「長期」とは?」によれば,「長期」とは1年以上と解すべきという趣旨の記載があります。
(2) 軽い打撲・軽い挫創(傷)は,むち打ち症で他覚所見がない場合と同じ扱いです。

4(1) 大阪地裁の場合,むち打ち症で他覚所見がない場合についても,実通院日数の3.5倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安となるのであって,赤い本の基準と異なり,3倍ではないです(「大阪地裁における交通損害賠償の算定基準(第3版)」9頁参照)。

(2)   私の経験では,治療期間が3か月以内の場合であっても,任意保険会社は当然のように3.5倍ルールを主張してきますから,週に2回は通院してもらう方がいいです。

5 健康保険等の場合,①打撲・捻挫の施術が3ヶ月を超えて継続するときは,長期施術継続理由書の上欄部分に,3月を超えて施術が必要となる理由等(「長期施術継続理由等」といいます。)を記載し,②打撲・捻挫の施術が3ヶ月を超えて継続し,かつ,1月間の施術回数の頻度が高いとき(1月当たり10~15回以上)は,長期施術継続理由書の下欄部分に,3月を超えて頻度の高い施術を行う理由等(「長期頻回施術理由等」といいます。)を,整骨院において記載する必要があります「柔道整復施術療養費に係る疑義解釈資料の送付について(平成25年4月24日付の厚生労働省保険局医療課の事務連絡)」参照)。

第3の1 入院慰謝料及び通院慰謝料の目安(裁判基準)

1 通常の事故の場合
(1) 大阪地裁で使用されている入通院慰謝料額表(通常の事故)によれば,通院だけの場合,1月当たりの通院慰謝料(週2回以上,通院した場合)は,27万円(1月目)→約23万円(2月目~)→18万円(4月目)→12万円(6月目~)→8万円(7月目~)→6万円(12月目~)→約5万円(13月目~)→約4万円(16月目~)→約3万円(19月目~)と推移します。
   また,入院だけの場合,1月当たりの入院慰謝料は,53万円(1月目)→48万円(2月目)→45万円(3月目)→40万円(4月目)→34万円(5月目)→30万円(6月目)→16万円(7月目)→11万円(8月目)→9万円(9月目~)→8万円(11月目)→5万円(12月目)→約4万円(13月目~)→約3万円(15月目~)と推移します。
(2)   軽度の神経症状(むち打ち症で他覚所見のない場合等)の入通院慰謝料は,以上の入通院慰謝料の3分の2程度となります。
  例えば,骨折等がレントゲンで確認できる場合,他覚所見に該当することに争いはないものの,椎間板ヘルニアがMRIで確認できるに過ぎない場合,加齢性の変性によることが多いため,それだけでは他覚所見とはいえません。
(3)ア 他覚所見の「ない」むち打ち症で通院した場合の慰謝料は,1ヶ月間で18万円,2ヶ月間で32万円,3ヶ月間で48万円,4ヶ月間で60万円,5ヶ月間で71万円,6ヶ月間で80万円です。
イ 交通事故弁護士ナビHPの「任意保険基準とは|慰謝料を請求する際の3つの基準」によれば,1ヶ月間で8.4万円,2ヶ月間で16.8万円,3ヶ月間で25.2万円,4ヶ月間で31.9万円,5ヶ月間で37.9万円,6ヶ月間で42.8万円となるみたいです(リンク先の「入通院慰謝料の表」の金額に2/3をかけています。)。
(4)ア 他覚所見の「ある」むち打ち症で通院した場合の慰謝料は,1ヶ月間で27万円,2ヶ月間で49万円,3ヶ月間で72万円,4ヶ月間で90万円,5ヶ月間で108万円,6ヶ月間で120万円です。
イ 交通事故弁護士ナビHPの「任意保険基準とは|慰謝料を請求する際の3つの基準」によれば,1ヶ月間で12.6万円,2ヶ月間で25.2万円,3ヶ月間で37.8万円,4ヶ月間で47.8万円,5ヶ月間で56.8万円,6ヶ月間で64.2万円となるみたいです(リンク先の「入通院慰謝料の表」の金額です。)。
(5) 通常の事故につき,交通事故に関する赤い本に基づく通院慰謝料の金額よりも少し高い目です。
 
2   重傷の事故の場合
(1) 大阪地裁で使用されている入通院慰謝料額表(重傷の事故)によれば,通院だけの場合,1月当たりの通院慰謝料(週2回以上,通院した場合)は,34万円(1月目)→約28万円(2月目~)→約23万円(4月目~)→15万円(5月目)→10万円(6月目~)→8万円(12月目)→約5万円(13月目~)→約4万円(19月目~)→3万円(24月目~)と推移します。
   また,入院だけの場合,1月当たりの入院慰謝料は,64万円(1月目)→57万円(2月目)→54万円(3月目)→48万円(4月目)→41万円(5月目)→36万円(6月目)→19万円(7月目)→13万円(8月目)→11万円(9月目)→11万円(10月目)→10万円(11月目)→6万円(12月目)→約5万円(13月目~)→約3万円(19月目~)と推移します。
(2)   重傷の事故とは,重度の意識障害が相当期間継続した場合,骨折又は臓器損傷の程度が重大であるか多発した場合等,社会通念上,負傷の程度が著しい場合をいいます。
   なお,上記の重傷に至らない程度の傷害についても,傷害の部位・程度によっては,通常基準額を増額することがあります。
(3) 重傷の事故につき,交通事故に関する赤い本に基づく場合,通常の事故の通院慰謝料から20%~30%程度増額します。
自賠責保険診療報酬明細書(入院)1/2
自賠責保険診療報酬明細書(入院)2/2

第3の2 入院慰謝料及び通院慰謝料(自賠責保険基準)

1(1) 自賠責保険基準の場合,入院慰謝料及び通院慰謝料は,①治療期間(交通事故で怪我をした日から症状固定日まで)の全日数,又は②(入院日数+実際に通院をした日数の2倍の合計額)のいずれか少ない方の日数に4200円をかけた金額となります。
   2日に1回以下のペースで通院していた場合,通院日数×8400円が自賠責保険基準での通院慰謝料となります。
(2)   具体例
ア 4月10日に交通事故に遭い,同月27日までの間に5回,通院した場合
   この場合,治療期間の全日数18日間よりも,実際に通院した日数の2倍である10日の方が小さいですから,自賠責保険からの通院慰謝料は,4200円×5日×2=4万2000円となります。
イ   4月10日に交通事故に遭い,事故日から4月23日までの間,入院し,4月24日から6月30日までの間に40回,通院した場合
   この場合,入院日数14日+実際に通院をした日数40日の2倍=94日よりも,治療期間の全日数82日間の方が小さいですから,自賠責保険からの入通院慰謝料は,4200円×82日間=34万4400円となります。

2   自賠責保険に対して上限の通院慰謝料(1ヶ月30日の場合,12万6000円)を請求したい場合,例えば,週に1回,整形外科で鎮痛薬及び湿布薬を処方してもらう一方で,週に2日か3日,整骨院で患部に対する直接的な施術をしてもらうといった方法で,2日に1回以上のペースで整形外科又は整骨院に通院してください。

第4 後遺障害慰謝料

1 介護を要する後遺障害の場合,裁判基準に基づく後遺障害慰謝料の額は以下のとおりです(括弧内は自賠責基準に基づく後遺障害慰謝料の額です。)。
① 1級の場合:2800万円(1600万円)
② 2級の場合:2400万円(1163万円)

2 介護を要しない後遺障害の場合,裁判基準に基づく後遺障害慰謝料の額は以下のとおりです(括弧内は自賠責基準に基づく後遺障害慰謝料の額です。)。
① 1級の場合:2800万円(1100万円)
② 2級の場合:2400万円( 958万円)
③ 3級の場合:2000万円( 829万円)
④ 4級の場合:1700万円( 712万円)
⑤ 5級の場合:1440万円( 599万円)
⑥ 6級の場合:1220万円( 498万円)
⑦ 7級の場合:1030万円( 409万円)
⑧ 8級の場合: 830万円( 324万円)
⑨ 9級の場合: 670万円( 245万円)
⑩ 10級の場合:530万円( 187万円)
⑪ 11級の場合:400万円( 135万円)
⑫ 12級の場合:280万円(  93万円)
⑬ 13級の場合:180万円(  57万円)
⑭ 14級の場合:110万円(  32万円)

3 死亡慰謝料については近親者分も含めて基準となる慰謝料額が定められていますところ,後遺障害慰謝料についても原則的には同様です。
    ただし,重度後遺障害事案については,近親者が現実に被害者の介護をしなければならないことにかんがみ,近親者につき別途慰謝料が認められることがあります。

第5の1 被害者本人の死亡慰謝料

1(1) 平成14年1月1日以降に発生した交通事故については,一家の支柱が死亡した場合の死亡慰謝料は2800万円が基準となり,その他の者が死亡した場合の死亡慰謝料は2000万円から2500万円が基準となります。
(2)   死亡慰謝料の基準額は,本人分及び近親者分を含んだものです。

2 以下のような事情があった場合,慰謝料が増額されることがあります。
① 加害者に飲酒運転,無免許運転,著しい速度違反,殊更な信号無視,ひき逃げ等が認められる場合
② 被害者の被扶養者が多数の場合
③ 損害額の算定が不可能又は困難な損害の発生が認められた場合

3 相続人が被害者と疎遠であった場合,慰謝料が減額されることがあります。

4(1) 不法行為にもとづく慰藉料の請求権は、被害者本人が慰藉料を請求する旨の意思表示をしなくても、当然に発生し、これを放棄し、免除する等の特別の事情のないかぎり、その被害者の相続人においてこれを相続することができます(最高裁昭和44年10月31日及び最高裁昭和45年4月21日判決。なお,先例として,最高裁大法廷昭和42年11月1日判決)。
(2) 最高裁大法廷昭和42年11月1日判決は,大審院昭和2年5月30日判決等を変更し,慰謝料請求権の一身専属性を否定するに至りました。

5(1) 慰謝料額は,裁判所において諸般の事情を考慮して量定すれば足りるのであって,その量定の根拠を逐一説示しなければならないものではありません(最高裁昭和38年4月30日判決)し,原則として,事実審裁判所の自由裁量に属するところとされています(最高裁昭和44年10月31日判決)。
(2) 原審が認定した慰謝料の額が低きに失し,著しく不相当なものである場合,経験則違反の違法があることとなります(最高裁平成6年2月22日判決)。

6 飲酒運転,無免許運転,著しい速度違反といった加害者の悪性が強い場合に慰謝料の増額を考慮するのは,それにより被害者又は遺族が受けた精神的苦痛は大きなものがあると考えられるからです。
    ただし,懲罰的損害賠償が認められることによるわけではありません(最高裁平成9年7月11日判決参照)。

7 交通事故に関する赤い本講演録2014年・51頁には以下の記載があります。
   赤い本では,平成14年以降,「一家の支柱2800万円,母親・配偶者2400万円,その他2000万円から2200万円」とされています。専ら事実認定の問題でありますが,近時,東京地裁民事27部で,高齢者であるという理由だけで,2000万円を下回る慰謝料額を認定した判決例は見受けられないようです。

第5の2 近親者固有の慰謝料

1 近親者固有の慰謝料は,近親者自身が被った精神的苦痛についてのものですから,被害者の有する慰謝料請求権とは別の訴訟物です。
    しかし,①被害者の慰謝料請求権の斟酌事由としては,近親者が受けた精神的苦痛も考慮されているのであり,被害者の慰謝料請求権と近親者固有の慰謝料請求権は重なり合うものがあること,②近親者の多くは,死亡した被害者の慰謝料請求権を相続しており,固有の慰謝料請求権を行使したかどうかによって慰謝料額に差が生じるのは余り相当ではないことなどから,死亡慰謝料は本人分及び近親者分を含んだものとして基準額が定められています。

2 民法711条所定の者(=被害者の父母,配偶者及び子)以外のものであっても,被害者との間に同条所定の者と実質的に同視しうべき身分関係が存し,被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者は,同条の類推適用により,加害者に対し直接に固有の慰謝料を請求できます(最高裁昭和49年12月17日判決参照)。

3 医療過誤訴訟に関する裁判例ではありますが,広島高裁令和3年2月24日判決は,死亡した本人の慰謝料は認定せず,遺族固有の慰謝料だけで合計2400万円を認めています(リンク先のPDF54頁及び55頁)。
1(1) 被害者側の交通事故(検察審査会を含む。)の初回の面談相談は無料であり,債務整理,相続,情報公開請求その他の面談相談は30分3000円(税込み)ですし,交通事故については,無料の電話相談もやっています(事件受任の可能性があるものに限ります。)
(2) 相談予約の電話番号は「お問い合わせ」に載せています。

2 予約がある場合の相談時間は平日の午後2時から午後8時までですが,事務局の残業にならないようにするために問い合わせの電話は午後7時30分までにしてほしいですし,私が自分で電話に出るのは午後6時頃までです。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)については,略歴及び取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図を参照してください。