労災保険

第0 目次

第1   総論
第2   交通事故が労働災害に該当する場合において,労災保険を利用するメリット等
第3   労災保険の利用と会社との関係
第4   労災保険の特別加入制度
第5   通勤災害
第6   労災保険に関する書類の開示請求方法
第7の1 労災医員
第7の2 労災協力医
第8   労災保険における後遺障害等級の認定

*0 以下のHPも参照してください。
① 労災保険の給付内容
② 第三者行為災害としての交通事故
③ 交通事故の示談をする場合の留意点
④ 厚生労働省の内部組織に関する訓令及び細則
*1 以下の文書を掲載しています。
① 労災保険給付事務取扱手引(平成25年10月改訂)1/42/43/4及び4/4
② 労災保険給付事務取扱手引(船員分)(平成22年1月)1/52/53/54/5及び5/5
③ 地方労災医員制度の運用細目について(昭和62年12月22日付の労働省労働基準局長の通達)
④ 地方労災医員制度の運用上の留意点について(昭和62年12月22日付の労働省労働基準局労災補償課長の事務連絡)
⑤ 労災認定における医師の作成する意見書,鑑定書等の早期収集のための医師会,労災病院等との連携について(労働省労働基準局長の通達)
⑥ 脳・心臓疾患の労災認定実務要領(平成15年3月)1/62/63/64/65/6及び6/6
⑦ 債権管理事務取扱手引(平成13年3月)1/72/73/74/75/76/7及び7/7
⑧ 徴収関係事務取扱手引Ⅱ(滞納処分)(平成28年4月一部改訂)1/72/73/74/75/76/77/7
⑨ 労働基準監督機関の監督指導等の権限の行使により把握した法令違反の事案の公表について(平成24年2月8日付の厚生労働省労働基準局長の書簡)
⑩ 監督活動の内容に関し公表を行うに当たって留意すべき事項について(平成24年2月8日付の厚生労働省労働基準局監督課長の書簡)
*2 都道府県労働局に関して以下の文書を掲載しています。
① 都道府県労働局各課室,労働基準監督署及び公共職業安定所における標準文書保存期間基準準則(平成29年度版)
② 都道府県労働局定員数(平成30年度)
*3 労災保険に関するパンフレットは,厚生労働省HPの「労災補償関係リーフレット等一覧」に掲載されています。
*4 労災保険給付関係請求書は,厚生労働省HPの「労災保険給付関係請求書等ダウンロード」に掲載されています。
*5 労災保険制度全般につき,国立国会図書館HPのレファレンス(2016年刊行分)No.790「労働者災害補償制度の現状と課題」が参考になります。
*6 平成29年7月11日,厚生労働省の組織再編により,医療技監,雇用環境・均等局,こども家庭局及び人材開発統括官が新設されました(厚生労働省HPの「厚生労働省の組織再編について(平成29年7月4日付)」)。
*7 厚生労働省HPの「社会保障全般分野のトピックス」に,毎年3月下旬及び9月下旬,「厚生労働省関係の主な制度変更」が掲載されています。
*8 国立国会図書館HPレファレンス平成28年11月号に「労働者災害補償制度の現状と課題」が載っています。
*9 吉崎麻美社労士事務所(神奈川・東京)HP「2017年健康保険から労災保険への切り替え方」に,平成29年2月に開始した新しい労災保険への切り替え方が書いてあります。
   要するに,労働者側からの申し出及び保険者(例えば,協会けんぽ)の同意があれば,健康保険から支出された7割分を労基署が直接,保険者に支払ってくれるというわけです。
*10 みんなのBCP HP「【最新版】業務災害・通勤災害の基準から手続き方法まで、わかりやすく解説します」が載っています。
*11 厚生労働省HPの「労働保険適用事業場検索」を使えば,労災保険及び雇用保険への加入状況を調査できます。
*12 NHKハートネット(福祉情報総合サイト)「【社会保障70年の歩み】第12回・労災保険「過労死もサリン事件も」」(平成27年7月28日付)が載っています。
*13 社会保険労務士本間事務所HP「TVドラマ「ダンダリン 労働基準監督官」への違和感」(平成25年12月23日付)が載っています。
*14 ろーきしょ!ブログに,労働基準監督官に関することがいろいろと書いてあります。
*15 資格の大原社労士ブログに「2019年度の労災保険・雇用保険・健康保険・厚生年金の保険料率」が載っています。
労災保険給付事務取扱手引
労災保険給付事務取扱手引の凡例

第1 総論

1 業務中の事故(業務災害)又は通勤中の事故(通勤災害)である場合,労災保険を利用できる反面,公的医療保険を利用することはできません(協会けんぽ鹿児島支部HPの「仕事中や通勤途中にケガをしたとき」参照)(国民健康保険法56条1項,健康保険法55条1項)。
   そのため,労災保険を利用するか,又は加害者側の任意保険会社に治療費を立替払いしてもらうかのどちらかとなります。

2 交通事故の被害者に100%の過失がある場合であっても,重過失がない限り,労災保険を利用することができます労災保険法12条の2の2参照)。

3 労災保険の場合,慰謝料の支払がありません。
    そのため,入通院慰謝料及び後遺障害慰謝料については,加害者側の任意保険会社から支払ってもらう必要があります(「交通事故事件の慰謝料」参照)。

4(1)  労災保険法による障害補償一時金及び休業補償給付は,被災労働者の精神上の損害を填補するためのものではありませんから,慰謝料から控除されることはありません(最高裁昭和58年4月19日判決参照)。 
(2) 労災保険と損益相殺については,「損益相殺,相殺禁止及び素因減額」を参照して下さい。

5  労働者が,業務を一時中断して事業場外で行われた研修生の歓送迎会に途中から参加した後,当該業務を再開するため自動車を運転して事業場に戻る際に,研修生をその住居まで送る途上で発生した交通事故により死亡した場合,業務災害に当たることがあります(最高裁平成28年7月8日判決参照)。

6 3年に一回の見直しの結果,平成30年4月以降,労災保険料の全業種の平均料率は0.45%になります(厚生労働省HPの「労災保険料算出に用いる労災保険率の改定等を行います~改正省令を平成30年4月1日に施行予定~」参照)。

7 人身傷害補償保険の保険金は,保険約款上,同一の損害について労災保険給付が受けられる場合には,その給付される額(労働福祉事業の特別支給金を除く。)を差し引いて支払うものとされています。
   そのため,労災保険として損害の二重てん補を未然に防止し円滑な事務処理を行う目的から,人身傷害補償保険からも保険金を受けとることができる被災者等が労災保険給付の請求を行った場合には,人身傷害補償保険取扱保険会社に対して,労災保険給付の請求があった旨を通知する取り扱いを行っています(大分労働局HP「特に注意すべき事項について」参照)。

8 被害者が労災保険給付を受けてもなお塡補されない損害について直接請求権を行使する場合は,他方で労災保険法12条の4第1項により国に移転した直接請求権が行使され,被害者の直接請求権の額と国に移転した直接請求権の額の合計額が自賠責保険金額を超えるときであっても,被害者は,国に優先して自賠責保険の保険会社から自賠責保険金額の限度で自賠法16条1項に基づき損害賠償額の支払を受けることができます(最高裁平成30年9月27日判決)。

9 労災保険電算処理システムは,平成26年1月14日から全国に拡大してシステム運用を開始しました(厚労省HPの「労災レセプト電算処理システム」参照)。

第2 交通事故が労働災害に該当する場合において,労災保険を利用するメリット等

1 交通事故が労働災害に該当する場合において,労災保険を利用するメリットは以下のとおりです。
① 過失相殺後の賠償金を確保できること
   自由診療の場合,公的医療保険の2倍ぐらいの費用がかかることが多いのに対し,労災保険の場合,1点12円で計算しますから,公的医療保険の1.2倍の費用で済みます。
   そのため,被害者にも過失がある場合,治療費を安くすることで,過失相殺後の賠償金を確保できます。
② 休業特別支給金を別枠でもらえること
   休業損害の約20%に相当する休業特別支給金は,休業損害とは別枠で支給してもらえます。
③ 障害特別支給金及び障害特別年金又は障害特別一時金を別枠でもらえること
   (a)障害特別支給金(例えば,後遺障害等級8級の場合は65万円,後遺障害等級14級の場合は8万円),及び(b)障害特別年金(後遺障害等級7級以上の場合)又は障害特別一時金(後遺障害等級8級以下の場合)は,後遺障害逸失利益とは別枠で支給してもらえます。

2(1) 例えば,労災保険を利用した場合の治療費が120万円,通院慰謝料が100万円,過失割合が3割の場合,220万円の損害額のうち,相手方に対して請求できる損害額は154万円となりますところ,120万円は治療費に充当されますから,追加で請求できるのは34万円となります。
   これに対して,任意保険会社の一括払を利用し続けた場合,自由診療として1点20円で計算される結果,公的医療保険を利用した場合の治療費の2倍ぐらいとなることがあります(ただし,自賠責保険診療費算定基準が適用されている場合,1.44倍ぐらいです。)。
   そのため,例えば,治療費が公的医療保険を利用した場合の2倍である200万円(労災保険を利用した場合は120万円となります。),通院慰謝料が100万円,過失相殺が3割の場合,300万円の損害額のうち,相手方に対して請求出来る損害額は210万円となりますところ,200万円は治療費に充当されますから,追加で請求できるのは10万円だけとなります。
(2) 「交通事故の診療費算定基準」も参照して下さい。

第3 労災保険の利用と会社との関係

1(1) 労災保険を利用する場合,①負傷又は発病の年月日,②災害の原因及び発生状況等について事業主の証明を受ける必要があります(労災保険法施行規則12条1項3号及び4号・同条2項等)。
(2)   会社が事業主の証明をしてくれない場合であっても,労災保険を利用できることがあります(日本法令HP「会社が「事業主証明」を拒否した場合の労災保険給付請求書の取扱い」参照)から,この場合,労基署に相談して下さい。

2 事業主である会社は,被災労働者が労災保険を利用するのに助力する必要がある(労災保険法施行規則23条)反面,労基署長に対し,業務災害又は通勤災害に該当するかどうかについて意見を申し出ることができます(労災保険法施行規則23条の2)。

3 交通事故が業務災害に該当する場合,事業主は,所轄の労基署に対し,労災申請とは別に,労働者死傷病報告書(労働安全衛生規則97条)を提出する必要があります(外部HPの「労働者死傷病報告書」参照)。

4(1)   20人以上の事業所において,業務災害が全くない場合,労災保険料率が基準額から最大で40%割引となるのに対し,業務災害がたくさんある場合,労災保険料率が基準額から最大で40%割増となります(外部HPの「労災保険のメリット制に関する基礎知識」参照)。
   ただし,通勤災害の場合,事業主に責任がないことから,労災保険料率の割増にはつながりません。
(2) 本来は災害防止努力を促すためのメリット制については,労働災害が発生すると保険料負担が増えるという認識を事業主が持つこととなり,その結果,労働災害を隠すという行動につながっています。
   特に公共事業を受注する事業主について労働災害が発生した場合、国,都道府県,市町村などの発注者から指名停止処分を受けることがあるため,労災隠しをすることがあります。
   また,元請業者は下請業者や孫請業者の起こした災害も元請業者の災害となる(労働基準法87条参照)ことから,下請業者等に虚偽の報告を行わせたり,逆に下請業者が今後,元請業者からの仕事が来なくなることを恐れて労災事故を隠すことがあります。

5 「労災隠し」も参照して下さい。

第4 労災保険の特別加入制度

1(1) 労災保険は本来,労働者を保護するためのものです。
   しかし,労働者ではないものの,労働者に準じて保護するのが適当であると認められる一定の人は,労災保険に特別に任意加入できますところ,これを労災保険の特別加入制度といいます(労災保険法33条ないし37条)。
(2) 労災保険の特別加入であっても,特別支給金が存在します(労災保険サイト「特別加入制度」参照)。

2(1) 労災保険に特別加入できるのは以下の4種類の人です。
① 中小事業主(労災保険法33条1号・労災保険法施行規則46条の16)
② 一人親方(労災保険法33条3号・労災保険法施行規則46条の17)
③ 特定作業従事者(労災保険法33条5号・労災保険法施行規則46条の18)
④ 海外派遣者(労災保険法33条6号及び7号)
(2) 中小事業の事業主は第一種特別加入となり,一人親方及び特定作業従事者は第二種特別加入であり,海外派遣者は第三種特別加入となります(外部HPの「第1種・第2種特別加入の違いと定義」参照)。

3 その余の詳細は「労災保険の特別加入制度」を参照して下さい

第5 通勤災害

1(1) 通勤災害とは,労働者が通勤により被った負傷,疾病,障害又は死亡をいいます(労災保険法7条1項2号参照)。
   そのため,例えば,労働者が通勤途中に交通事故にあった場合,通勤災害に該当することとなります。
(2) 通勤災害といえるためには,通勤と傷病等との間に相当因果関係のあること,つまり,通勤に通常伴う危険が具体化したものと経験則上認められなければならず,これは業務災害の場合の業務起因性に相当するものです。

2(1)  「通勤」とは,就業に関し,次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい,業務の性質を有するものを除くものとされています(労災保険法7条2項)。
① 住居と就業の場所との間の往復
② 就業の場所から他の就業の場所への移動
③ 住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動
(2)ア   移動の経路を逸脱し,又は移動を中断した場合には,逸脱又は中断の間及びその後の移動は「通勤」とはなりません(労災保険法7条3項本文)。
   ただし,以下のような日常生活上必要な行為等による逸脱又は中断の場合,合理的な通勤経路に復帰後の移動の間の事故による負傷等は例外的に通勤災害となります(労災保険法7条3項ただし書・労災保険法施行規則8条各号)。
① 日用品の購入その他これに準ずる行為(1号)
② 職業訓練、学校教育法第一条 に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であつて職業能力の開発向上に資するものを受ける行為(2号)
③ 選挙権の行使その他これに準ずる行為(3号)
④ 病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為(4号)
⑤ 要介護状態にある配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹並びに配偶者の父母の介護(継続的に又は反復して行われるものに限る。) (5号)
イ 平成29年1月1日,労災保険法施行規則8条5号の範囲が拡大しました(厚生労働省HPの「平成29年1月1日~労災保険の通勤災害保護制度が変わりました」参照)。

3 昭和48年12月1日創設の通勤災害保護制度の変遷については,厚生労働省HPの「家族の介護等を行う労働者に係る通勤災害保護制度について(参考資料)」4頁ないし6頁が詳しいです。 

第6 労災保険に関する書類の開示請求方法

1 保有個人情報開示請求の必要書類及び宛先
(1) 保有個人情報開示請求書の書式は,神奈川労働局HPの「保有個人情報開示請求制度」に掲載されています。
(2)ア 労災保険に関する書類について保有個人情報開示請求をしたい場合,1件につき300円の収入印紙を貼付した保有個人情報開示請求書のほか,①本人確認書類(例えば,運転免許証,健康保険被保険者証)のコピー及び②住民票(マイナンバー(個人番号)の記載がないもの)を,都道府県労働局総務部総務課に郵送すればいいです。
イ 労働基準監督署及び公共職業安定所(ハローワーク)が保管している文書についても,保有個人情報開示請求の郵送先は都道府県労働局となります。
ウ 開示請求書の宛先自体は,「○○労働局長」となります。
   例えば,大阪労働局総務部総務課情報公開・個人情報窓口に開示請求書を郵送する場合の宛先は,「大阪労働局長」となります。
(3)ア 全国の都道府県労働局の住所については,厚生労働省HPの「都道府県労働局(労働基準監督署,公共職業安定所一覧)」に掲載されています。
イ   大阪労働局の住所等は以下のとおりです(大阪労働局HPの「情報公開・個人情報保護窓口」参照)。
【大阪労働局情報公開・個人情報保護窓口】
 〒540-8527
大阪市中央区大手前4-1-67 大阪合同庁舎第2号館 8F
大阪労働局総務部総務課
TEL : 06-6949-6482
(受付時間)
 月~金曜日  8時30分~17時15分

2 代理人弁護士による開示請求
(1) 保有個人情報開示請求については,任意代理人による請求が認められていません。
(2)   私の経験では,保有個人情報開示請求書の末尾欄外に「* 大阪弁護士会所属の弁護士山中理司(電話:06-6364-8525)が代筆しました。」と記載しておけば,労働局からの問い合わせの電話は,請求者本人ではなく,代理人弁護士にしてもらうことができます。

3 その余の詳細は「労災保険に関する書類の開示請求方法」を参照して下さい。

第7の1 労災医員

1(1) 休業補償給付について労災保険に関する書類の開示請求をした場合,症状固定の時期に関する地方労災医員又は労災協力委の意見書が開示されます。
   また,障害補償給付について労災保険に関する書類の開示請求をした場合,後遺障害への該当性に関する地方労災医員又は労災協力委の意見書が開示されます。
(2) 地方労災医員は「局医」ともいいます。

2 全国労働安全衛生センター(略称は「JOSHRC」)HPに,平成17年4月時点の,全国の地方労災医員名簿が掲載されています。
   これによれば,大阪労働局の地方労災医員は25人であり,内訳は脳神経外科が2人,外科が2人,神経精神科が2人,整形外科が10人,内科が4人,労働衛生が1人,精神医学が4人となっています。

3 都道府県労働局長が委嘱する地方労災医員等について定める労災医員規程(平成13年1月6日厚生労働省付の訓令)は以下のとおりです。
 
(設置)
第一条 労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)の規定による保険給付及び労働福祉事業並びに労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)の規定による災害補償に係る事務のうち医学に関する専門的知識を要するものの適正かつ迅速な処理に資するため、厚生労働省労働基準局に中央労災医員を、都道府県労働局に地方労災医員を置く。
(委嘱)
第二条 中央労災医員及び地方労災医員(以下「労災医員」という。)は、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病等に係る診断、治療等に関し学識経験を有する医師のうちから、中央労災医員にあっては厚生労働大臣が、地方労災医員にあっては都道府県労働局長がそれぞれ委嘱する。
(職務)
第三条 労災医員は、労働者災害補償保険法の規定による保険給付及び労働福祉事業並びに労働基準法の規定による災害補償に係る事務のうち医学に関する専門的知識を要するものについて、文章又は口頭で意見を述べる。
2 地方労災医員は、前項の事務のうち高度の医学に関する専門的知識を要する労働者の業務上の疾病の認定等に関する事務について意見を述べる場合には、必要に応じ、あらかじめ他の地方労災医員と協議しなければならない。
3 中央労災医員は、第一項の指示の事務を行うほか、医学に関する専門的知識を有するものに関し、厚生労働省労働基準局長の指示を受けて関係職員の研修及び地方労災医員との連絡等を行う。
4 地方労災医員は、都道府県労働局長又は労働基準監督署長の指示を受けて労働者災害補償保険法第四十八条の規定により同法の適用を受ける事業の行われる場所に臨検し、関係者に対し質問し、若しくは帳簿書類を検査し、又は同法第四十九条の規定により物件を検査することができる。
(任期等)
第四条 労災医員の任期は、二年とする。
2 労災医員は、非常勤とする。
(秘密を守る義務)
第五条 労災医員及び労災医員であった者は、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)の定めるところにより、その職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。
(その他の事項)
第六条 この規程に定めるもののほか、中央労災医員に関し必要な事項は厚生労働省労働基準局長が、地方労災医員に関し必要な事項は、厚生労働省大臣官房地方課長及び厚生労働省労働基準局長が定める。

第7の2 労災協力医

1 労災協力医とは,「労災認定における医師の作成する意見書、鑑定書等の早期収集のための医師会、労災病院等との連携について」(平成8年3月29日付の労働省労働基準局長通達)に基づき都道府県労働局長が地方労災医員以外の医師の中から委嘱した医師のことです。
   事案によっては,地方労災医員の中に,当該事案に係る診療科目を専門とする医師がいない場合があること等から,労働基準監督署長は,労災協力医に対し,労災保険給付等に必要な医学的事項についての意見等を依頼することがあります(「平成27年6月30日付の,衆議院議員高橋千鶴子君提出労災補償行政に係る労災認定に関する質問に対する答弁書」参照)。

2 地方労災委員名簿及び労災協力医名簿は,情報公開請求による開示の対象ではありません(平成26年5月29日付の大阪労働局の「大阪労働局労働基準部労災補償課における地方労災医員等の住所の漏えいについて」参照)。

第8 労災保険における後遺障害等級の認定

労災保険給付事務取扱手引(平成25年10月改訂)41頁の「4 障害等級の認定」には以下の記載があります。

(1) 認定時において特に留意すべき事項
ア 災害の原因、障害の状態等を踏まえ、災害発生状況、既存障害の有無、その他必要な事項について被災労働者本人や事業主等から聴取すること。
イ 診断書は障害等級認定基準に定める検査及び判断に基づき記載されている必要があること。
ウ 神経症状に関する障害については、他覚的所見の有無を砿認する必要があること。
エ 診断書等に基づき、障害を漏れなく把握すること。
   特に機能障害の原因が明確でない場合や精神・神経の障害の場合等については、診断書にすぺての障害の状魍が記載されていない場合もあり、診断書の記載が十分でないと判断されるものについては被災労働者の主訴についても聴取する必要があること。
オ 複数の障害が認められる場合は、準用・併合の取扱いを検討すること。
力 既存障害がある場合は、加重の取扱いを検討すること。
   なお、障害を残した同一部位の既存障害の有無が不明な場合には、事業場で保管されている健康診断結果等も確認すること。

(2) 認定の方法
   障害等級の認定に当たっては、診断書、地方労災医員等の専門医の意見書に基づき、別に定められた「障害等級認定基準」 (昭和50.9.30基発第565号、昭和56.1.31基発第51号(神経系統の機能又は精神、胸腹部臓器)、昭和61.3.26基発第167号(聴覚)坪成3.12.25基発第720号(聴覚)、平成12.3.14基発第128号(視野、嗅覚、味覚、関節可動域の測定要領)、平成13.3.29基発第195号(眼)、平成15.8.8基発第0808”2号(神経系統の機能又は精神)、平成16.6.4基発第0604002号(せき柱及びその他の体幹骨、上肢、下肢、眼、平成18.1.25基発第0125002号(胸腹部臓器)、平成23.2.1基発0201第2号(外ぼうの醜状))により障害等級を決定すること。
ア 器質的障害又は機能障害のうち、障害の程度が明らかなものについては、請求書に添付された診断書、X線写真等の資料に基づき、本人の障害の状態を確認の上、原則として専門医の意見書等を求めることなく障害等級を決定する。
   なお、次の①~③のすべての項目に該当する障害(補脚給付謂求書については、原則として実地調査を要しないものとする。
① 障害が器質的なものに限られ、障害の程度が明らかな事案
② 既存障害のないことが明らかな事案
③ 障害の程度が障害(補償)一時金に該当する事案
イ 複雑な機能障害あるいは神経障害等高度な医学的判断を要するものについては、原則として地方労災医員等の専門医の意見書等を求めて障害等級を決定する。
   また、障害等級の決定は、署長が行うものであるが、その決定には医学的根拠が必要であり、地方労災医員等の専門医の意見等が根拠となるものであることに留意すること。
   なお、専門医等に診断又は判断を依頼する場合には、障害等級認定についての基本的な考え方等を説明すること。
   この場合の事務処理は、次によること(昭和33.7.12基発454号)。
① 署長が専門医等に意見書の提出を依頼する場合には、「専門医等に対する意見書依頼台帳」に記載して事務処理の適正を期すこと。
② 担当者は、「意見書の提出依頼について」(176頁参照)により起案して決裁を受け、「意見書の提出について」 (177頁参照)を添付して依頼すること。 「依頼事項」は具体的に記載すること。
③ 労働者に専門医等の診断を受けさせる場合には、予め専門医等に連絡して受診の日時を決定し、その旨を労働者に通知しておくこと。この場合、様式7の「判断」の文字は抹消すること。また、労働者に診断を受けさせることなく意見書の提出を依頼する場合には、 「診断」の文字を抹消すること。
   なお、現に労災保険によって療養を継続している者の療養継続の要否、入院療養の要否、治ゆ等を判断するために専門医に意見書の提出を求める場合に用いる様式等については、第1の7を参照すること。

(3) 障害罷定鯛査復命書の作成
   障害等級の認定に当たっては、 「障害認定調査復命書」を作成し、障害(補償)給付支給請求書に添付し、決裁を受けること(Ⅳの第2の2の(7)参照)。
1(1) 被害者側の交通事故(検察審査会を含む。)の初回の面談相談は無料であり,債務整理,相続,情報公開請求その他の面談相談は30分3000円(税込み)ですし,交通事故については,無料の電話相談もやっています(事件受任の可能性があるものに限ります。)
(2) 相談予約の電話番号は「お問い合わせ」に載せています。

2 予約がある場合の相談時間は平日の午後2時から午後8時までですが,事務局の残業にならないようにするために問い合わせの電話は午後7時30分までにしてほしいですし,私が自分で電話に出るのは午後6時頃までです。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)については,略歴及び取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図を参照してください。