労災保険の給付内容

第0 目次

第1   総論
第2の1 療養(補償)給付
第2の2 療養(補償)給付の請求方法
第2の3 健康保険から労災保険への切替手続
第3の1 休業(補償)給付
第3の2 休業補償給付の支給額
第3の3 休業(補償)給付の請求方法
第3の4 傷病(補償)年金
第4の1 障害(補償)給付
第4の2 障害(補償)給付の支給額
第4の3 障害(補償)給付の請求方法
第5の1 遺族(補償)給付
第5の2 遺族(補償)年金等の支給額
第5の3 遺族(補償)年金等の請求方法
第5の4 遺族(補償)一時金
第5の5 遺族(補償)一時金の請求方法
第5の6 葬祭料(葬祭給付)
第6の1 労働基準監督署による,保険給付の実地調査
第6の2 労働基準監督署による,調査結果復命書の作成

*1 「労災保険」も参照して下さい。
*2 労災保険給付事務取扱手引(平成25年10月改訂)1/42/43/4及び4/4を掲載しています。
*3 介護(補償)給付については,「第4の1 障害(補償)給付」で言及しています。
*4 労働省労働基準局の以下の文書を掲載しています。
① 地方労災医員制度の運用細目について(昭和62年12月22日付の労働省労働基準局長の通達)
② 地方労災医員制度の運用上の留意点について(昭和62年12月22日付の労働省労働基準局労災補償課長の事務連絡)
③ 労災認定における医師の作成する意見書,鑑定書等の早期収集のための医師会,労災病院等との連携について(労働省労働基準局長の通達)
*5 厚生労働省HPの「労災保険事業月報及び主な用語の説明」に保険給付関係等の用語の説明が載っています。
*6 ①療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号),及び療養補償給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変更)届(様式第6号)(業務災害の書類),並びに②療養給付たる療養の給付請求書(様式第16号の3),及び療養給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変更)届(様式第16号の4)(通勤災害の書類)は病院や薬局に提出するのに対し,それ以外の書類は労働基準監督署に提出します(労政時報の人事ポータルJin-Jour HP「労災の発生に伴う手続き」参照)。

第1 総論

1 労災保険による補償は,保険給付と社会復帰促進事業に大別されます(安全衛生マネジメント協会HP「労災保険の基礎知識-具体的な補償内容」参照)ところ,保険給付としては,以下のものがあります。
① 療養(補償)給付
→ 業務災害の場合,療養補償給付となり,通勤災害の場合,療養給付となります。
② 休業(補償)給付
→ 業務災害の場合,休業補償給付となり,通勤災害の場合,休業給付となります。
③ 傷病(補償)給付
→ 業務災害の場合,傷病補償給付となり,通勤災害の場合,傷病給付となります。
④ 障害(補償)給付
→ 業務災害の場合,障害補償給付となり,通勤災害の場合,障害給付となります。
⑤ 介護(補償)給付
→ 業務災害の場合,介護補償給付となり,通勤災害の場合,介護給付となります。
⑥ 遺族(補償)給付
→ 業務災害の場合,遺族補償給付となり,通勤災害の場合,遺族給付となります。
⑦ 遺族(補償)一時金
→ 業務災害の場合,遺族補償一時金となり,通勤災害の場合,遺族一時金となります。
⑧ 葬祭料(葬祭給付)
→ 業務災害の場合,葬祭料となり,通勤災害の場合,葬祭給付となります。

2 平成29年5月10日付の行政文書不開示通知書によれば,弁護士が代理人として労災保険の障害補償給付支給申請をした場合,労基署は被災労働者本人に直接,連絡を取るように定めているマニュアルその他の文書は存在しません。
   しかし,私の経験では,私が代理人弁護士として障害補償給付支給申請書を労基署に送付した場合であっても,労基署はなぜか,被災労働者本人に直接,連絡してきます。

3(1) 最高裁平成30年9月27日判決の事案では,左肩腱板断裂に基づく左肩の可動域制限について後遺障害等級12級が認定されたと思われますところ,労災保険給付を受けてもなお填補されない交通事故に係る損害額は,傷害につき303万5476円,後遺障害につき290万円であり,合計593万5476円でした。
(2) 自賠責保険からの給付として,傷害につき120万円,後遺障害につき224万円を支給されますから,仮に加害者が任意保険に入っていた場合,被害者が,加害者に対し,労災保険及び任意保険とは別に請求できる金額は593万5476円-344万円=249万5476円であったと思われます。

第2の1 療養(補償)給付

1 業務災害の場合,療養補償給付となり,通勤災害の場合,療養給付となります。
   以下では,両者を含む用語として療養(補償)給付といいます。

2(1) 療養(補償)給付には,以下の二つがあります。
① 療養の給付
   労災病院や労災保険指定医療機関・薬局等(以下「労災保険指定医療機関等」といいます。)で,無料で治療や薬剤の支給等をしてもらう現物給付です。
② 療養の費用の支給 
   自宅の近くに労災保険指定医療機関等がない場合に,労災保険指定医療機関等以外の医療機関や薬局等で療養を受けた場合に,その療養にかかった費用を支給する現金給付です。
(2) どの医療機関が労災保険指定医療機関であるかについては,厚生労働省HPの「労災保険指定医療機関検索」で調べることができます。
(3) 療養の給付ではなく,療養の費用の支給を受けることができるのは,①療養の給付をすることが困難な場合,又は②療養の給付を受けないことについて労働者に相当の理由がある場合に限られます(労災保険法13条3項・労災保険法施行規則11条の2)。

3(1) 療養(補償)給付は症状固定となるまで行われます。
(2) 症状固定とは,①健康時の状態に完全に回復した状態だけをいうのではなく,②傷病の症状が安定し,医学上一般に認められた医療を行っても,その医療効果(=傷病の回復・改善)が期待できなくなった状態をいいます。
   そのため,傷病の症状が,投薬・理学療法等の治療により一時的な回復が見られるに過ぎない場合など症状が残存している場合であっても,医療効果が期待できないと判断される場合,症状固定と判断されることになります。
(3) 症状固定の詳細については,厚生労働省パンフレット「労災保険における傷病が「治ったとき」とは・・・」に書いてあります。
 
4(1) 交通事故により脊髄損傷等の後遺障害が残った場合,症状固定後においても後遺障害の症状が変化したり,後遺障害に付随する疾病が発症したりする可能性があるため,予防その他の保健上の措置として,診察,保健指導,保健のための薬剤の支給等を行うアフターケアが実施されています。
   アフターケアは,都道府県労働局長が交付する「健康管理手帳」を労災病院,医療リハビリテーションセンター,総合せき損センター,労災保険指定医療機関に提示することにより,無料で受けることができます。
(2) 日本脊髄障害医学会の1990年~1992年の調査によれば,脊髄損傷の受傷原因の43.7%が交通事故となっています(外部HPの「脊髄損傷とは」参照)。 

5 労災保険給付事務取扱手引(平成25年10月改訂)36頁及び37頁には,入院に関して以下の記載があります。
ア 入院の要件は、次のとおりとする。
① 傷病の状態が重篤で、常に医師の監視を要すると認められるもの。
② 入院しなければ、その傷病に必要な処置、手術等が実施できないと認められるもの。
③ 歩行不能又は著しく歩行困難であるもの。
④ 歩行はできるが、退院することにより傷病が悪化するおそれのあるもの。
イ 入院の期間は、療養上必要と認められる最小限度に止められるべきで、症状の程度はそれほどでなくショック状態を呈し又は全身状態が極度に悪化しているものを入院させたときは、その状態が快復したら通院に切り替えるべきである。また、治ゆの日まで入院するというようなものは一般に認めるべきではない。
ウ 入院の認められないものとしては、次のようなものが該当する。
① 患者の個人的な都合によるもの。例えば、患者が単身あるいは宿舎がないという理由によるもの。
② 地理的な事情によるもの。例えば、通院に長時間を要するあるいは交通に不便であるという理由によるもの。
③ 単なる手指等の負傷で、技術的に高度の治療を行う必要のないもの。
④ しばしば外泊するようなもの。
⑤ 患者の強要によるもの。
療養の給付の流れ
レセプト審査の流れ
療養の費用の流れ

第2の2 療養(補償)給付の請求方法

1 労災保険指定医療機関等で治療を受ける場合,病院や薬局に対し,「療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号)」(業務災害用)又は「療養給付たる療養の給付請求書(様式第16号の3)」(通勤災害用)を提出します。

2 労災保険指定医療機関等以外の医療機関で治療を受ける場合,所轄の労働基準監督署長に対し,「療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号)」(業務災害用)又は「療養給付たる療養の費用請求書(様式第16号の5)」(通勤災害用)を提出します。
   ただし,これらの請求書に関する文書料は労災保険から支給してもらえません。

3 療養の給付請求書記入例,療養の費用請求書記入例等が,厚生労働省パンフレット「労災保険 療養(補償)給付の請求手続」に載っています。

4(1) 療養(補償)給付を請求する場合,①負傷又は発病の年月日,並びに②災害の原因及び発生状況について事業主の証明を受ける必要があります(労災保険法施行規則12条1項3号及び4号・同条2項等)。
(2)   会社が事業主の証明をしてくれない場合であっても,労災保険を利用できることがあります(外部HPの「会社が「事業主証明」を拒否した場合の労災保険給付請求書の取扱い」参照)から,この場合,労基署に相談して下さい。

5(1) 療養(補償)給付たる療養の給付については,消滅時効の問題は生じません。
(2) 療養(補償)給付たる療養の費用は,療養の費用の支出が具体的に確定した日から2年で消滅時効が成立します(労災保険法42条)。

6 療養(補償)給付の支給内容を争いたい場合については,「労災保険に関する不服申立方法」を参照して下さい。
療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号)
療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号)
療養給付たる療養の給付請求書(様式第16号の3)
療養給付たる療養の費用請求書(様式第16号の5)

第2の3 健康保険から労災保険への切替手続

1 労働災害であるにもかかわらず,健康保険で治療を受けてしまった場合の手続については,厚生労働省HPの「お仕事でのケガ等には,労災保険!」が参考になります。

2 取扱いの根拠となっている通達は,以下のとおりです。
「健康保険の給付を受けていた労働者に係る労災保険給付の取扱について」(昭和29年8月23日付の労働省労働基準局労災補償課長の通知)
「労災認定された傷病等に対して労災保険以外から給付等を受けていた場合における保険者等との調整について」(平成29年2月1日付けの厚生労働省労働基準局補償課長の通知) 

3 ①の通知には以下の記載があります。
(1) 健康保険による給付されていたことが明らかである期間についての労災補償費については,所定の請求書の提出があっても,原則として健康保険により給付された額がその保険者に返還された後でなければ給付しないこと
(2) (1)に反し,業務上の災害として既に労災保険より給付していたものが,後日業務外の事故と判明した場合にあっては,支給額全額を直ちに返還させるとともに,当該保険者に対して連絡を行うこと。
(3) (1)及び(2)の取扱を行うため労働者に多大な経済的負担が生じ,実情に添わない場合には,当該保険者と連絡の上,(1)については健康保険の保険者に対する給付額返還が完了する前であっても納付し,(2)については,健康保険給付が行われるまで回収手続を見合わせること。

4 平成29年5月24日付の行政文書不開示決定通知書によれば,第三者行為災害に該当する交通事故において,加害者が被保険者となっている任意保険会社が治療費の支払を止めた後に被災労働者から労災保険への切り替え申請があった場合,任意保険会社が求償に応じる見込みがない限り,労災保険から療養補償給付及び休業補償給付は出すべきではないと指示した文書は存在しません。

第3の1 休業(補償)給付

1 業務災害の場合,休業補償給付となり,通勤災害の場合,休業給付となります。
   本ページでは,両者を含む用語として,「休業(補償)給付」という用語を使用しています。

2(1) 業務災害又は通勤災害に該当する交通事故で怪我をした結果,労働することができないため,賃金を受けていない場合,その第4日目から,休業(補償)給付及び休業特別支給金が支給されます。
(2) 休業の初日から第3日目までは待機期間であり,業務災害に該当する場合,労働基準法76条1項に基づき,事業主から3日分の休業補償(1日につき平均賃金の60%)をしてもらえます。
   ただし,通勤災害の場合の待機期間について,事業主に対して3日分の休業補償を請求することはできません。

3 労働基準法12条の平均賃金は,直近3か月間の賃金総額を,直近3か月間の総日数で割ることによって計算します(労働法ナビHPの「「平均賃金」の計算の仕方と具体例」参照)。

4 平均賃金の計算が必要となるのは以下の場合です(神奈川労働局HPの「平均賃金はどうやって計算する?」参照)。
① 労働者を解雇する場合の予告に代わる解雇予告手当(労働基準法20条)を計算する場合
② 使用者の都合により労働者を休業させる場合に支払う休業手当(労働基準法26条)を計算する場合
③ 年次有給休暇を取得した日について支払う平均賃金(労働基準法39条7項)を計算する場合
④ 業務災害における休業補償給付又は通勤災害における休業給付を支給する際の基準となる給付基礎日額を計算する場合(労災保険法8条1項・労働基準法12条)
⑤ 減給制裁の制限額(労働基準法91条)を計算する場合
⑥ じん肺管理区分により地方労働局長が作業転換の勧奨又は指示を行う際の転換手当(じん肺法22条)を計算する場合

5 療養補償給付の支給対象となる通院期間のうち,軽作業が可能となった後の通院期間については,通院日に限り休業補償給付が支給されることがあります。
   例えば,労災保険審査官決定事案一覧(平成22年7月~9月)の「その他」の決定書例4には以下の記載があります。
(1) 治療の経過をみると、初診から平成○年7月12日まで保存的治療が行われていたものと認められる。また、主治医は、「他覚的所見は特にない、運転できないほどの状態ではないこと、事務仕事や軽作業を行うことは十分可能であること」と述べており、軽作業は可能な状態であった。
(2) 請求人は、「休業中、日常生活でできないことはなかった、事故後1か月半過ぎくらいから通院のため自家用車の運転をしていた」と述べている。
(3) したがって、軽作業は可能であるとの主治医の意見、請求人の申述を総合すると、請求人は少なくとも事故後2週間を経過した後において、「労働することができない」状態には該当しなかったものと認められ、治療を継続する必要性、つまり治ゆ(症状固定)の状態に該当するか否かを検討すべきものであり、請求人は、平成○年4月9日以降は、一般的な労働は可能な状態にあったものと認められる。
(4) しかしながら、請求人は保存的治療を続け、監督署長は、平成○年11 月10 日までの期間の療養補償給付を認めていることから、請求人が治療を受けるために通院した日の44 日分については、療養のために通院し、かつ、労働しておらず、賃金を受けていないという請求人の実態から、療養のため労働することができないために賃金を受けていない日として認めることが妥当である。
 したがって、監督署長が請求人に対して行った休業補償給付を支給しない旨の処分は妥当ではなく、取り消されるべきである。

休業(補償)給付の流れ

第3の2 休業補償給付の支給額

1(1) 休業(補償)給付の支給額は,給付基礎日額の60%×休業日数であり,休業特別支給金の支給額は,給付基礎日額の20%×休業日数です。 
(2) 給付基礎日額は,ボーナスを除く,直近3ヶ月間の1日当たりの賃金額です。

2(1) 障害厚生年金及び障害基礎年金を受給している人が休業(補償)給付も受給できる場合,前者について100%もらえるものの,後者については73%しかもらえません(労災保険法14条2項及び別表第一1号・労災保険法施行規則2条)。
(2)   障害厚生年金を受給している人が休業(補償)給付も受給できる場合,前者について100%もらえるものの,後者については88%しかもらえません(労災保険法14条2項及び別表第一2号・労災保険法施行規則4条)。
(3) 障害基礎年金を受給している人が休業(補償)給付も受給できる場合,前者について100%もらえるものの,後者については88%しかもらえません(労災保険法14条2項及び別表第一3号・労災保険法施行規則6条)。
休業補償給付支給請求書(様式第8号)1/4
休業補償給付支給請求書(様式第8号)2/4
休業補償給付支給請求書(様式第8号)3/4
休業補償給付支給請求書(様式第8号)4/4

第3の3 休業(補償)給付の請求方法

1 休業(補償)給付を請求する場合,所轄の労働基準監督署長に対し,「休業補償給付支給請求書(様式第8号)」(業務災害用)又は「休業給付支給請求書(様式第16号の6)」(通勤災害用)を提出します。

2 休業補償給付支給請求書,平均賃金算定内訳の記入例等が,厚生労働省パンフレット「休業(補償)給付 傷病(補償)給付の請求手続」に載っています。

3 休業(補償)給付は,療養のため労働することができないため賃金を受けない日から2年で消滅時効が成立します(労災保険法42条)。

4 休業(補償)給付の支給内容を争いたい場合については,「労災保険に関する不服申立方法」を参照して下さい。  
休業給付支給請求書(様式第16号の6)1/4
休業給付支給請求書(様式第16号の6)2/4
休業給付支給請求書(様式第16号の6)3/4
休業給付支給請求書(様式第16号の6)4/4

第3の4 傷病(補償)年金

1 業務災害の場合,傷病補償給付となり,通勤災害の場合,傷病給付となります。
   本ページでは,両者を含む用語として「傷病(補償)給付」という用語を使用しています。 

2(1) 傷病(補償)給付は,療養開始後1年6月を経過した時点で症状固定となっておらず,かつ,その障害の程度が傷病等級表1級ないし3級の傷病等級に該当する場合に支給されます。
(2) 傷病等級1級ないし3級は,後遺障害等級1級ないし3級とほぼ同じです。

3 傷病等級ごとの支給額は以下のとおりであり,給付基礎日額及び算定基礎日額の日数は,障害(補償)給付及び障害特別年金と同じです。
(1) 傷病等級1級
傷病(補償)年金:年金として給付基礎日額の313日分
傷病特別支給金:一時金として114万円
傷病特別年金:年金として算定基礎日額の313日分
(2) 傷病等級2級
傷病(補償)年金:年金として給付基礎日額の277日分
傷病特別支給金:一時金として107万円
傷病特別年金:年金として算定基礎日額の277日分
(3) 傷病等級3級
傷病(補償)年金:年金として給付基礎日額の245日分
傷病特別支給金:一時金として100万円
傷病特別年金:年金として算定基礎日額の245日分 

4(1) 給付基礎日額は,ボーナスを除く,直近3ヶ月間の1日当たりの賃金額です。
(2)ア    算定基礎日額は,直近1年間のボーナスを365で割った金額であり,給付基礎日額の20%が上限です。
イ アルバイトの場合,通常はボーナスがない結果,算定基礎日額は0円となります。

5(1) 傷病(補償)年金の支給・不支給の決定は,所轄の労働基準監督署長の職権によって行われますから,請求手続は不要です。
   ただし,療養開始後1年6ヶ月を経過しても傷病が治っていないときは,その後1ヶ月以内に「傷病の状態等に関する届」(様式第16号の2)を所轄の労働基準監督署長に提出する必要があります。
(2) 療養開始後1年6ヶ月を経過しても傷病(補償)年金の支給要件を満たしていない場合,毎年1月分の休業(補償)給付を請求する際,「傷病の状態等に関する報告書」(様式第16号の11)を併せて提出する必要があります。

6(1) 傷病補償年金が支給される場合,療養(補償)給付は引き続き支給されるものの,休業(補償)給付は支給されなくなります。 
(2) 傷病補償年金が支給されない場合,療養(補償)給付及び休業(補償)給付が引き続き支給されます。

7 傷病(補償)年金については,消滅時効の問題は生じません。

8(1) 傷病等級1級又は2級の場合において常時又は随時介護を要する場合,介護(補償)給付が併せて支給されることがあります(厚生労働省パンフレット「介護(補償)給付の請求手続」参照)。 
(2) 平成29年4月1日以降の支給額の上限は,常時介護を要する場合が1月10万5130円であり,随時介護を要する場合が1月5万2570円です。
(3) 介護(補償)給付は,支給事由が生じた月の翌月の初日から2年で消滅時効が成立します(労災保険法42条)。

9(1) 障害厚生年金及び障害基礎年金を受給している人が傷病(補償)給付も受給できる場合,前者について100%もらえるものの,後者については73%しかもらえません(労災保険法14条2項及び別表第一1号・労災保険法施行規則2条)。
(2)   障害厚生年金を受給している人が傷病(補償)給付も受給できる場合,前者について100%もらえるものの,後者については88%しかもらえません(労災保険法14条2項及び別表第一2号・労災保険法施行規則4条)。
(3) 障害基礎年金を受給している人が傷病(補償)給付も受給できる場合,前者について100%もらえるものの,後者については88%しかもらえません(労災保険法14条2項及び別表第一3号・労災保険法施行規則6条)。
傷病の状態等に関する届(様式第16号の2)1/2
傷病の状態等に関する届(様式第16号の2)2/2
傷病(補償)年金の流れ

第4の1 障害(補償)給付

1 業務災害の場合,障害補償給付となり,通勤災害の場合,障害給付となります。
   本ページでは,両者を含む用語として「障害(補償)給付」という用語を使用しています。 

2 業務災害又は通勤災害による怪我について症状固定となったとき,身体に一定の障害が残った場合,障害(補償)給付が支給されます。

3(1) 障害等級1級から7級までのいずれかに該当する場合,障害(補償)年金,障害特別支給金及び障害特別年金が支給されます。
   障害等級8級から14級までのいずれかに該当する場合,障害(補償)一時金,障害特別支給金及び障害特別一時金が支給されます。
(2) 障害等級7級の場合,年金給付となるのに対し,障害等級8級の場合,一時金給付となりますから,両者の給付の差は非常に大きいです。

4 障害等級ごとの後遺障害の内容については,「自賠責保険の保険金及び後遺障害等級」を参照して下さい。

5(1) 障害等級1級又は2級の場合において常時又は随時介護を要する場合,介護(補償)給付が併せて支給されることがあります(厚生労働省パンフレット「介護(補償)給付の請求手続」参照)。
(2) 平成29年4月1日以降の支給額の上限は,常時介護を要する場合が1月10万5130円であり,随時介護を要する場合が1月5万2570円です。
   平成29年3月31日までの支給額の上限は,常時介護を要する場合が1月10万4950円であり,随時介護を要する場合が1月5万2480円でした(厚生労働省HPの「介護(補償)給付の最高限度額及び最低限度額の改定について」参照)。
(3) 介護(補償)給付は,支給事由が生じた月の翌月の初日から2年で消滅時効が成立します(労災保険法42条)。 
障害(補償)給付の流れ

第4の2 障害(補償)給付の支給額

1 障害等級ごとの支給額は以下のとおりです。
(1) 障害等級1級
障害(補償)給付:年金として給付基礎日額の313日分
障害特別支給金:一時金として342万円
障害特別年金:年金として算定基礎日額の313日分
(2) 障害等級2級
障害(補償)給付:年金として給付基礎日額の277日分
障害特別支給金:一時金として320万円
障害特別年金:年金として算定基礎日額の277日分
(3) 障害等級3級
障害(補償)給付:年金として給付基礎日額の245日分
障害特別支給金:一時金として300万円
障害特別年金:年金として算定基礎日額の245日分
(4) 障害等級4級
障害(補償)給付:年金として給付基礎日額の213日分
障害特別支給金:一時金として264万円
障害特別年金:年金として算定基礎日額の213日分
(5) 障害等級5級
障害(補償)給付:年金として給付基礎日額の184日分
障害特別支給金:一時金として225万円
障害特別年金:年金として算定基礎日額の184日分
(6) 障害等級6級
障害(補償)給付:年金として給付基礎日額の156日分
障害特別支給金:一時金として192万円
障害特別年金:年金として算定基礎日額の156日分
(7) 障害等級7級
障害(補償)給付:年金として給付基礎日額の131日分
障害特別支給金:一時金として159万円
障害特別年金:年金として算定基礎日額の131日分
(8) 障害等級8級
障害(補償)給付:一時金として給付基礎日額の503日分
障害特別支給金:一時金として65万円
障害特別一時金:一時金として算定基礎日額の503日分
(9) 障害等級9級
障害(補償)給付:一時金として給付基礎日額の391日分
障害特別支給金:一時金として50万円
障害特別一時金:一時金として算定基礎日額の391日分
(10) 障害等級10級
障害(補償)給付:一時金として給付基礎日額の302日分
障害特別支給金:一時金として39万円
障害特別一時金:一時金として算定基礎日額の302日分
(11) 障害等級11級
障害(補償)給付:一時金として給付基礎日額の223日分
障害特別支給金:一時金として29万円
障害特別一時金:一時金として算定基礎日額の223日分
(12) 障害等級12級
障害(補償)給付:一時金として給付基礎日額の156日分
障害特別支給金:一時金として20万円
障害特別一時金:一時金として算定基礎日額の156日分
(13) 障害等級13級
障害(補償)給付:一時金として給付基礎日額の101日分
障害特別支給金:一時金として14万円
障害特別一時金:一時金として算定基礎日額の101日分
(14) 障害等級14級
障害(補償)給付:一時金として給付基礎日額の56日分
障害特別支給金:一時金として8万円
障害特別一時金:一時金として算定基礎日額の56日分

2(1) 給付基礎日額は,ボーナスを除く,直近3ヶ月間の1日当たりの賃金額です。
(2)    算定基礎日額は,直近1年間のボーナスを365で割った金額です。

3(1) 障害厚生年金及び障害基礎年金を受給している人が障害(補償)給付も受給できる場合,前者について100%もらえるものの,後者については73%しかもらえません(労災保険法14条2項及び別表第一1号・労災保険法施行規則2条)。
(2)   障害厚生年金を受給している人が障害(補償)給付も受給できる場合,前者について100%もらえるものの,後者については83%しかもらえません(労災保険法14条2項及び別表第一2号・労災保険法施行規則4条)。
(3) 障害基礎年金を受給している人が障害(補償)給付も受給できる場合,前者について100%もらえるものの,後者については88%しかもらえません(労災保険法14条2項及び別表第一3号・労災保険法施行規則6条)。
(4) 厚生労働省HPの「障害(補償)年金や遺族(補償)年金などの労災保険と厚生年金の両方を受け取ることはできるのでしょうか。」が参考になります。

4   私の経験では,労災保険の障害補償給付支給決定があった時点で障害厚生年金2級以上の認定が見込まれる場合,労災保険は当初から73%しか支給してくれず,日本年金機構による障害厚生年金又は障害基礎年金の不支給決定があった時点で本来の金額との差額を支給してくれます。
障害補償給付支給請求書(様式第10号)1/2
障害補償給付支給請求書(様式第10号)2/2
労災保険診断書(労災保険における後遺障害診断書です。)

第4の3 障害(補償)給付の請求方法

1(1) 障害補償給付を請求する場合,所轄の労働基準監督署長に対し,「障害補償給付支給請求書(様式第10号)」(業務災害用)及び「労災保険診断書」を提出します。
(2) 予診表の添付を求められることがあります。

2(1) 障害給付を請求する場合,所轄の労働基準監督署長に対し,「障害給付支給請求書(様式第16号の7)」(通勤災害用)「労災保険診断書」及び「通勤災害に関する事項(様式第16号の7)」を提出します。
(2) 予診表の添付を求められることがあります。

3 障害補償給付支給請求書,通勤災害に関する事項の記入例等が,厚生労働省パンフレット「障害(補償)給付の請求手続」に載っています。

4 障害(補償)給付は,症状固定の日から5年で消滅時効が成立します(労災保険法42条)。

5 障害(補償)給付の支給内容を争いたい場合については,「労災保険に関する不服申立方法」を参照して下さい。 
障害給付請求書(様式第16号の7)1/2
障害給付請求書(様式第16号の7)2/2
労災保険診断書
通勤災害に関する事項(様式第16号の7)

第5の1 遺族(補償)給付

1 業務災害の場合,遺族補償給付となり,通勤災害の場合,遺族給付となります。
   本ページでは,両者を含むものとして,「遺族(補償)給付」という用語を使用しています。

2 遺族(補償)給付には,遺族(補償)年金及び遺族(補償)一時金の2種類があります。
   遺族(補償)一時金は,遺族(補償)年金を受ける遺族がいない場合等に支給されます。

3 遺族補償年金は,受給資格者(受給する資格を有する遺族)のうちの最先順位者(以下「受給権者」といいます。)に対して支給されます(労災保険法16条の2第3項参照)。

4(1) 遺族(補償)年金の受給資格者となるのは,被災労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた配偶者(内縁関係を含みます。)・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹であります(労災保険法16条の2第1項本文)ところ,妻以外の遺族に対しては,被災労働者の死亡当時,一定の高齢又は年少であるか,または一定の障害の状態にあることが必要です(労災保険法16条の2第1項ただし書各号)。
(2) 被災労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していたといえるためには,専ら又は主として被災労働者の収入によって生計を維持していた場合だけでなく,被災労働者の収入によって生計の一部を維持していた,いわゆる「共稼ぎ」の場合もこれに含まれます。
遺族(補償)給付の流れ

第5の2 遺族(補償)年金等の支給額

1 遺族(補償)給付の支給額は以下のとおりです。
(1) 遺族が1人の場合
遺族(補償)年金として給付基礎日額の153日分
→ その遺族が55歳以上の妻又は一定の障害状態にある妻である場合,給付基礎日額の175日分
遺族特別支給金(一時金)として300万円
遺族特別年金として算定基礎日額の153日分
→ その遺族が55歳以上の妻又は一定の障害状態にある妻である場合,算定基礎日額の175日分
(2) 遺族が2人の場合
遺族(補償)年金として給付基礎日額の201日分
遺族特別支給金(一時金)として300万円
遺族特別年金として算定基礎日額の201日分
(3) 遺族が3人の場合
遺族(補償)年金として給付基礎日額の223日分
遺族特別支給金(一時金)として300万円
遺族特別年金として算定基礎日額の223日分
(4) 遺族が4人の場合 
遺族(補償)年金として給付基礎日額の245日分
遺族特別支給金(一時金)として300万円
遺族特別年金として算定基礎日額の245日分

2 遺族数とは,受給権者及び受給権者と生計を同じくしている受給資格者の数をいいます。

3(1) 給付基礎日額は,ボーナスを除く,直近3ヶ月間の1日当たりの賃金額です。
(2)    算定基礎日額は,直近1年間のボーナスを365で割った金額です。

4(1) 遺族厚生年金及び遺族基礎年金を受給している人が遺族(補償)給付も受給できる場合,前者について100%もらえるものの,後者については80%しかもらえません(労災保険法14条2項及び別表第一1号・労災保険法施行規則2条)。
(2)   遺族厚生年金を受給している人が遺族(補償)給付も受給できる場合,前者について100%もらえるものの,後者については84%しかもらえません(労災保険法14条2項及び別表第一2号・労災保険法施行規則4条)。
(3) 遺族基礎年金を受給している人が遺族(補償)給付も受給できる場合,前者について100%もらえるものの,後者については88%しかもらえません(労災保険法14条2項及び別表第一3号・労災保険法施行規則6条)。
(4) 厚生労働省HPの「障害(補償)年金や遺族(補償)年金などの労災保険と厚生年金の両方を受け取ることはできるのでしょうか。」が参考になります。

第5の3 遺族(補償)年金等の請求方法

1 遺族補償年金を請求する場合,所轄の労働基準監督署長に対し,「遺族補償年金支給支給請求書(様式第12号)」(業務災害用)を提出します。

2 遺族年金を請求する場合,所轄の労働基準監督署長に対し,「遺族年金支給請求書(様式第16号の8)」(通勤災害用)及び「通勤災害に関する事項(様式第16号の8)(別紙)」を提出します。

3 遺族補償年金支給請求書の記入例等が,厚生労働省パンフレット「障害(補償)給付 葬祭料(葬祭給付)の請求手続」に載っています。

4 遺族(補償)給付は,労働者の死亡した日から5年で消滅時効が成立します(労災保険法42条)。

5 遺族(補償)年金等の支給内容を争いたい場合については,「労災保険に関する不服申立方法」を参照して下さい。  
遺族補償年金支給請求書(様式第12号)
遺族年金支給請求書(様式第16号の8)
通勤災害に関する事項(様式第16号の8)

第5の4 遺族(補償)一時金

1 業務災害の場合,遺族補償一時金となり,通勤災害の場合,遺族一時金となります。
   本ページでは,両者を含むものとして,「遺族(補償)一時金」という用語を使用しています。

2 遺族(補償)一時金は以下のいずれかの場合に支給されます。

① 被災労働者の死亡当時,遺族(補償)年金を受ける遺族がいない場合
② 遺族(補償)年金の受給権者が最後順位者まですべて失権したとき,受給権者であった遺族の全員に対して支払われた年金の額及び遺族(補償)年金前払一時金の額の合計額が,給付基礎日額の1000日分に満たない場合

3 遺族(補償)一時金の受給資格者は①ないし④にあげる遺族であり,そのうち,最先順位者が受給権者となります。
① 配偶者
② 労働者の死亡当時,その収入によって生計を維持していた子・父母・孫・祖父母
③ その他の子・父母・孫・祖父母
④ 兄弟姉妹

4 被災労働者の死亡当時,遺族(補償)年金を受ける遺族がいない場合,遺族(補償)一時金として給付基礎日額の1000日分が支給され,遺族特別支給金として300万円が支給され,遺族特別一時金として算定基礎日額の1000日分が支給されます。

5(1) 給付基礎日額は,ボーナスを除く,直近3ヶ月間の1日当たりの賃金額です。
(2)ア    算定基礎日額は,直近1年間のボーナスを365で割った金額であり,給付基礎日額の20%が上限です。
イ アルバイトの場合,通常はボーナスがない結果,算定基礎日額は0円となります。

第5の5 遺族(補償)一時金の請求方法

1 遺族補償一時金を請求する場合,所轄の労働基準監督署長に対し,「遺族補償一時金支給請求書(様式第15号)」(業務災害用)を提出します。

2 遺族一時金を請求する場合,所轄の労働基準監督署長に対し,「遺族一時金支給請求書(様式第16号の9)」(通勤災害用)及び「通勤災害に関する事項(様式第16号の9)(別紙)」を提出します。

3 遺族補償一時金支給請求書の記入例等が,厚生労働省パンフレット「障害(補償)給付 葬祭料(葬祭給付)の請求手続」に載っています。

4 遺族(補償)一時金の支給内容を争いたい場合については,「労災保険に関する不服申立方法」を参照して下さい。 
遺族補償一時金支給請求書(様式第15号)
遺族一時金支給請求書(様式第16号の9)
通勤災害に関する事項(様式第16号の9)

第5の6 葬祭料(葬祭給付)

1 業務災害の場合,葬祭料となり,通勤災害の場合,葬祭給付となります。

2 葬祭料(葬祭給付)の額は,31万5000円に給付基礎日額の30日分を加えた額です。
   この額が給付基礎日額の60日分に満たない場合,給付基礎日額の60日分が支給額となります。

3(1) 業務災害の場合,所轄の労働基準監督署長に対し,「葬祭料請求書」(様式第16号)を提出することで請求します。
(2) 通勤災害の場合,所轄の労働基準監督署長に対し,「葬祭給付請求書」(様式第16号の10)及び「通勤災害に関する事項」(様式第16号の10(別紙))を提出することで請求します。 

4 葬祭料は,被災労働者の死亡日の翌日から2年で消滅時効が成立します(労災保険法42条)。

5 葬祭料請求書の記入例等が,厚生労働省パンフレット「障害(補償)給付 葬祭料(葬祭給付)の請求手続」に載っています。

葬祭料請求書(様式第16号)
葬祭給付請求書(様式第16号の10)
通勤災害に関する事項(様式第16号の10別紙)
葬祭料(葬祭給付)の流れ

第6の1 労働基準監督署による,保険給付の実地調査

労災保険給付事務取扱手引1/3・15頁及び16頁には,「1 保険給付の実地調査」として以下の記載があります。

   請求書の審査において疑義が生じた場合は、実際に事業場、診療機関等に出張して、災害発生状況、原因等の調査や関係帳簿書類等の検査、関係者からの聴取等の実地調査を行うこと。
   なお、実地調査の要領は、各保険給付によって異なるが、調査の対象及び要点を的確に把握し、時機を失することのないよう注意すること。
(1)共通的調査
   各保険給付の実地調査は、次のとおり実施すること。
ア 災害発生の有無
   既往の傷病に関し、架空の災害によって生じたものとして労災請求がなされることがあるので、災害発生の有無について、現認者からの聴取、災害発生現場の調査、主治医等への照会、消防官署に対する救急出動の有無及び内容の照会等により調査すること。
イ 負傷又は傷病の羅患の有無
   負傷又は傷病の羅患の有無について、現認者からの聴取、主治医等への照会、消防官署に対する救急出動の有無及び内容の照会等により調査すること。
ウ 業務遂行性等の有無
   災害発生日時を確認するとともに、出勤簿、タイムカード、賃金台帳等を検査し、業務災害の場合は災害が勤務外の日時に生じたものでないか、通勤災害の場合は通勤以外の日時や逸脱・中断後に生じたものでないか等について調査すること。
エ 業務起因性等の有無
   災害発生の原因が、事業主又は労働者の故意によるものでないか、労働者の私的な行為によるものでないか、請求人と共謀した第三者の行為によるものでないか等について、災害発生現場の調査、現認者からの聴取等により調査すること。
   なお、調査に当たっては、被災労働者について調査することはもちろんのこと、必要に応じて事業主、同僚労働者等について調査すること。
オ 療養又は休業の必要性
   療養又は休業の必要性の有無について、主治医への照会、関係者からの聴取等により調査すること。
   また、長期療養者のうち、症状が軽快していると思われる者については、特に療養の必要性のみならず、休業の必要性について調査すること。
   なお、休業中であるはずの被災労働者の就労等について情報があった場合には、就労の有無を事業主等に確認すること。
カ 給付基礎日額
   賃金額、賃金締切日、雇入年月日、常用・日雇の別について、賃金台帳、労働者名簿、 出勤簿、タイムカード、関係者からの聴取等により確認すること。
   また、臨時に支払われた賃金、又は3か月を超える期間ごとに支払われた賃金等算定の基礎に算入すべきでないものを算入していないかについても、賃金台帳、就業規則、 関係者からの聴取等により確認すること。
   なお、賃金額が本人の年齢、経験等から判断して高すぎると思われるものについては賃金額に誤りがないか確認すること。
キ その他
   労働者性、適用関係等について、第1に記載した事項に留意し、請求人、事業主、同僚労働者からの聴取、賃金台帳、出勤簿等の検査等により調査すること。
   また、第1の1の③のとおり、事業主又は医師等の証明がない場合については、事業主からの聴取、主治医への照会等により事業主、医師等が所要の証明を行わない事情等を明らかにするとともに、事業主、医師等の証明を要する事項について調査すること。
(2)実地調査復命書
ア 実地調査復命書の作成
   各保険給付の請求について実地調査を行ったときは、実地調査後遅滞なく調査事項について実地調査復命書を作成すること。
   関係者の出頭を求め、関係帳簿等について調査した場合においても実地調査に準ずるものとして実地調査復命書を作成すること。
   なお、実地調査復命書は、各局において定めた適宜の様式とするが、復命書には調査に際して収集した資料等を添付すること。収集した資料は、いつ、誰から入手したものであるかを明らかにしておくこと。
イ 実地調査復命書の編綴
   実地調査復命書は、年度ごとに一連番号を付し、番号順に編綴すること。また、当該復命書綴には索引をつけること。
   年金関係、介護(補償)給付に係る実地調査復命書は、個人別年金ファイルに編綴すること。 
各種保険給付に係る実地調査の流れ1/2
各種保険給付に係る実地調査の流れ2/2

第6の2 労働基準監督署による,調査結果復命書の作成

労災保険給付事務取扱手引1/3・16頁ないし18頁には,「2 調査結果復命書の適正な作成」として以下の記載があります。

(1) 調査結果復命書
   調査結果復命書(以下「復命書」という。)は、保険給付の支給決定等の事務に当たり、 調査官が①請求書の記載内容についての確認調査、②関係事業場、医療機関等に対する実地調査、③請求人、事業主、同僚労働者、現認者等からの聴取調査、④主治医、地方労災医員等に対する意見照会等の調査を行った場合、並びに調査の最終段階において、調査結果を取りまとめ、署長に報告するための文書である。
   調査の最終段階においてその結果をとりまとめる復命書については、(2)ないし(7)に示すところにより適正に作成すること。
(2) 復命書作成の基本的な考え方
   署長が的確な保険給付の決定等を行うためには、その決定等の基礎となる復命書に、必要な情報を理由と根拠を示して記載する必要がある。
   保険給付に関する決定は行政処分であり、法令・通達等に定められた要件を満たした場合に、法令に定められた効果が生じるという関係にあるから、定められた要件を満たしているかどうかについて、要件ごとに、理由と根拠を明示しつつ、調査結果を明らかにする必要がある。
   このため、復命書には次の事項を明記すること。
① 調査すべき要件の概要
② 各要件に係る調査結果
③ ②の結果に基づく結論(処理方針)等
(3)調査すべき要件の概要
   結論を出すために必要な調査に係る各要件の概要を記載すること。
   認定基準が定められている傷病であれば、当該認定基準の概要を示し、どのような調査結果になった場合に、支給決定等を行うのかを明示すること。
   なお、請求人が保険給付の要否等の判断について、認定基準に定められていない事項を考慮すべきであると主張している場合には、その主張の概要を記載すること。
 (4)各要件に係る調査結果
   各要件に係る調査結果を明示すること。
   その際、まず、結論である要件の充足の有無の判断を先に書き、次にその根拠となる事実認定を根拠ととともに記載すること。
   また、以下に留意して記載すること。
ア 要件の充足の有無の判断
   全体としての結論のみを記載するのではなく、要件ごとに調査結果に基づいて、当該要件を充足しているか否かの判断を記載すること。
   なお、請求人が、認定基準に定められていない事項を保険給付の要否等の判断において考慮すべきであると主張している場合には、当該事項についても、その該当の有無や、 当該事項を考慮することの適否を記載すること。
イ 事実認定と根拠
   (6)に留意して事実認定とその根拠を記載すること。
(5)結論としての処理方針案
   法令・通達に定める支給要件ごとの充足の有無の判断をもとに、結論として支給決定するのか、不支給決定するのか等の処理方針案を記載すること。
(6) 復命書作成に当たっての留意事項
ア 合理的な事実認定
   事実認定は、できる限り客観的な資料を収集した上で、始業前の準備作業や休憩時間における労働の実態等、供述によらなければ確定しがたいものがあることに留意し、関係者の供述や同業他社の実態等を踏まえて、合理的な事実認定を行い、その結果を記載すること。
イ 関係者の供述の取扱い
   関係者の供述は、支給要件等の充足等の有無を判断する上で必要なものについて、簡潔にその要点を摘示すること。関係者の供述が異なっており、一方の供述を採用する場合には、必ず当該供述を採用する理由を記載すること。
   また、聴取書の内容と調査結果復命書の内容が整合性を有しているか必ず確認し、整合性に欠ける場合には、追加の聴取等必要な調査を行うこと。
ウ 医証の取扱い
   医証については、その要点を正確に引用するとともに、業務上外の判断等について複数の医証の見解が異なっており、一方の医証を採用する場合には、必ず当該医証を採用する根拠を明らかにすること。
   なお、医証に用いられている専門用語は、医師に確認すること等により、その意味を明らかにしておき、署長等の決裁権者が正しく理解できるようにしておくこと。
エ 通達等に基準が示されていない場合や、通達等に定める基準により判断しがたい場合には、事前に本省(補償課)に相談するとともに、判断及びその根拠を特に明らかにしておくこと。
   認定基準を満たすものは、業務上の傷病と推定されるが、認定基準を満たさないものは、当該推定はできないことから、通達に明示されていない取扱いを行う場合、例えば、 通達に示す有害業務従事期間を満たしていないが、ばく露の程度等から業務上と判断されるような事案については、事前に本省(補償課)に相談するとともに、復命書の取りまとめに当たって、実際の従事期間、ばく露の程度を定量的・具体的に記載した上で、 専門医の医証を踏まえ、業務上と判断することが妥当であること及びその理由を詳細に記載すること。
   また、認定基準を満たすものは業務上の傷病と推定されるが、請求人の症状は私病たる類似疾病に由来しているとして業務外とするときには、当該推定を覆すに足る事実を、 専門医の医証のポイントとともに、詳細に記載すること。
(7) 障害(補償)給付に係る調査結果復命書
   (1)から(6)のほか、障害(補償)給付に係る調査結果復命書の作成に当たって、特に留
意すべき事項は次のとおりである。
ア 残存する単一障害の部位・系列
   労災則第14条第3項に定める併合等を行う関係上、単一障害の把握漏れは、基本的に障害等級認定の誤りをもたらすこととなる。したがって、調査結果復命書には、残った単―障害とその系列を漏れなく記載すること。
   あわせて、決裁権者が調査結果復命書に漏れなく単一障害が記載されているか確認することができるよう、障害(補償)給付請求書裏面の診断書の写しを調査結果復命書に添付すること。 
イ 単一障害の障害等級とその根拠
   単―障害の障害等級については、単に等級を記載するのではなく、なぜ当該等級と認定したのか、その根拠を記載すること。
   この場合、単に「関節の機能に障害を残すもの」に当たるからと記載するにとどまらず、その評価が妥当か検証できる情報を記載すること。
   例えば、主要運動及び参考運動に係る関節可動域の測定結果、当該測定の自動・他動の別、可動域制限の原因、測定者(主治医、地方労災医員、職員等)等を記載すること。
ウ 障害等級決定の過程
   身体障害が2以上ある場合には、単に結論として準用第〇級、併合第〇級と記載するのではなく、どのようにして障害等級を決定したのか、その過程を明記すること。
   なお、序列の考慮は、障害等級表で定められた等級との比較で行うものであり、障害等級認定基準で定める準用等級と比較するものではないこと。  
各種保険給付に係る実地調査結果復命書の流れ
1(1) 被害者側の交通事故(検察審査会を含む。)の初回の面談相談は無料であり,債務整理,相続,情報公開請求その他の面談相談は30分3000円(税込み)ですし,交通事故については,無料の電話相談もやっています(事件受任の可能性があるものに限ります。)
(2) 相談予約の電話番号は「お問い合わせ」に載せています。

2 予約がある場合の相談時間は平日の午後2時から午後8時までですが,事務局の残業にならないようにするために問い合わせの電話は午後7時30分までにしてほしいですし,私が自分で電話に出るのは午後6時頃までです。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)については,略歴及び取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図を参照してください。