尋問調書

第0 目次

第1 尋問調書
第2 録音反訳方式
第3 尋問調書の作成手続の骨子,及び録音テープの位置付け
第4 尋問調書の謄写手続
第5 民事事件記録一般の閲覧・謄写手続
第6 地方裁判所において尋問調書の作成が省略される場合
第7 簡易裁判所においては尋問調書の作成が原則として省略されること
第8 録音反訳方式と速記に関する国会答弁

*1 以下の記事も参照してください。
① 陳述書
② 証人尋問及び当事者尋問
③ 刑事裁判の証人尋問
④ 録音反訳方式に関する最高裁判所作成の文書
*2 東京地方裁判所民事部プラクティス委員会作成の書式集を掲載しています。
*3 法と経済ジャーナルHPの「インターネットで訴訟記録を閲覧できる米国に見るサービスの進歩」によれば,アメリカの場合,PACERというサイトを利用すれば,インターネット上で訴訟記録を閲覧できるみたいです。
証人等目録
尋問調書の表紙

第1 尋問調書

1 尋問調書とは,口頭弁論期日に証人尋問又は当事者尋問が実施された場合において,当事者又は証人の陳述等を裁判所書記官が記載した調書をいいます(民事訴訟規則67条1項3号参照)。

2(1) 尋問調書は通常,問答体によって記載される逐語調書です。
   この場合,尋問事項の冒頭に「原告代理人」,「被告代理人」,「裁判官」というように誰の尋問部分であるかが分かるように記載されます。
(2)   尋問調書には通常,質問ごとに項番号が付されます。
(3) 尋問調書の表題は,証人尋問の場合は証人調書であり,当事者尋問の場合は本人調書です。
(4) 尋問調書は,民事訴訟規則68条2項に基づく陳述記載書面とは異なります。

3(1) 裁判所書記官は,弁論の要領を記載した口頭弁論調書を作成します(民事訴訟法160条1項,民事訴訟規則67条1項)ところ,その様式及び記載方法については民事調書通達で定められています。
(2) 証拠関係については,「証拠関係別紙のとおり」と記載し,第4号書式(証人等目録)を作成するほか,証人尋問又は当事者尋問については,民事調書通達の第5号様式(証人等調書)を利用して,その内容を記載しています。

第2 録音反訳方式

1 録音反訳方式とは,録音テープ等の反訳を裁判所職員以外の者に委託して逐語調書を作成する方式をいいます(録音反訳方式に関する事務の運用について(平成10年3月20日付の最高裁判所総務局長通達)参照)。

2(1) 逐語調書の作成方法としては,速記録を引用する方法及び録音反訳方式を利用する方法の2種類があります。
(2) 最高裁判所が平成10年4月以降,速記官の新規養成を停止した(「平成9年2月26日付の最高裁判所裁判官会議議事録」参照)関係で,速記録を作成できる速記官の人数は年々,減少しています。
 そのため,逐語調書は通常,録音反訳方式を利用して作成されています。

3(1) 録音反訳方式による逐語調書の法的根拠は,民事訴訟規則76条後段です。
(2) 民事訴訟規則76条(口頭弁論における陳述の録音)は以下のとおりです。
   裁判所は、必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、録音装置を使用して口頭弁論における陳述の全部又は一部を録取させることができる。この場合において、裁判所が相当と認めるときは、録音テープを反訳した調書を作成しなければならない。

4 その余の詳細は,「録音反訳方式による逐語調書」を参照してください。

第3 尋問調書の作成手続の骨子,及び録音テープの位置付け

1 尋問調書の作成手続の骨子
(1) 担当書記官は,2台の録音機で尋問期日を録音しながらメモを取っていますし,尋問の場で示された書証等についてもメモを取っています。
   そして,尋問終了後,速やかに録音テープ及び当該メモを民事訟廷庶務係に送った上で,同係から録音反訳業者に録音反訳が依頼されています。
   録音反訳業者からは大体,2週間弱程度で録音反訳データが返ってきます。
   その後,担当書記官がチェックを行った上,担当裁判官の認め印をもらって尋問調書を完成させています。
(2) 尋問の実施日から尋問調書が完成するまでの期間は通常,4週間ぐらいです。

2 録音テープの位置付け
(1) 民事訴訟規則76条後段に基づき録音反訳方式を利用する場合の録音テープ等は事件記録ではありません。
(2) 民事訴訟規則68条1項に基づく録音テープ等は調書の記載に代わるものですから,事件記録の一部です。
(3) 民事訴訟規則170条2項に基づく録音テープ等は当事者の裁判上の利用に供するためのにすぎませんから,事件記録ではありません。
録音反訳方式に関する事務の運用について1/2
録音反訳方式に関する事務の運用について2/2

第4 尋問調書の謄写手続

1 尋問調書を謄写する場合,閲覧・謄写申請書を謄写業者に提出します。

2(1) 大阪地裁の場合,具体的な窓口は以下のとおりです(一般財団法人司法協会HPの「記録謄写(複写)」のほか,全国弁護士協同組合HPにある,大阪弁護士協同組合の「当組合おすすめお役立ち情報」参照)。
① 本庁本館及び第2別館(主として,大阪地裁民事部及び刑事部,並びに大阪高裁刑事部)に入居している民事部・刑事部の事件記録の場合
   「本館」1階に入居している司法協会大阪出張所(電話:06-6363-1290)
② 本庁の第1別館(主として,大阪高裁民事部及び大阪簡裁)に入居している民事部・刑事部の事件記録の場合
   「第1別館10階」に入居している司法協会大阪出張所(電話:06-6363-1290)
③ 大阪地裁第14民事部(大阪地裁執行センター)の事件記録の場合
   〒532-8503
   大阪市淀川区三国本町1-13-27
   大阪地方裁判所執行部庁舎3階
   司法協会新大阪出張所(電話:06-6350-6987)  
④ 大阪家裁の事件記録の場合
   〒540-0008
   大阪市中央区大手前4-1-13
   大阪家裁庁舎3階
   司法協会大阪出張所家裁分室(電話:06-6944-7571)
⑤ 大阪地家裁堺支部の事件記録の場合
   〒590-8511
   大阪府堺市堺区南瓦町2番28号
   大阪地家裁堺支部庁舎6階
   司法協会堺出張所(電話:072-227-4781)
⑥ 大阪地家裁岸和田支部の事件記録の場合
   〒596-0042
   大阪府岸和田市加守町4-27-2
   大阪地家裁岸和田支部庁舎1階
   司法協会岸和田出張所(電話:072-441-4374)
(2)ア 大阪地裁で郵送により事件記録の謄写申請をする場合,堺支部及び岸和田支部も含めて,閲覧謄写票「だけ」を司法協会の出張所に郵送すればいいです。
   後日,謄写した記録と一緒に請求書及び郵便局の振込用紙が司法協会の出張所から郵送されてきますから,郵便局の振込用紙を使って,複写料金(1枚40円)及び送料を支払えばいいです。
イ 独立簡易裁判所(地家裁支部に併設されている簡易裁判所ではなく,単独で設置されている簡易裁判所)の場合,司法協会の職員が常駐しているわけではないため,週に1回とか,月に1回といったペースで,裁判所を訪問するにすぎません.
   そのため,独立簡易裁判所で事件記録の謄写申請をする場合,非常に時間がかかることがありますところ,1枚150円の収入印紙を支払ってもいいのであれば,裁判所書記官に対し,事件記録の謄本交付申請(民事訴訟費用等に関する法律別表第二・2項)をした方がいいです。

3 その余の詳細は「民事事件記録一般の閲覧・謄写手続」を参照してください。
民事事件記録等閲覧・謄写票
民事事件記録等閲覧・謄写票(切取線の上に原符があります。)

第5 民事事件記録一般の閲覧・謄写手続

1 民事事件の場合,訴訟記録の「閲覧」自体は誰でもできます(民事訴訟法91条1項のほか,外部HPの「訴訟の記録も,誰でも閲覧できます」参照)ものの,訴訟記録の謄写については,当事者及び利害関係を疎明した第三者しかできません(民事訴訟法91条3項)。

2 利害関係のない第三者が民事事件の訴訟記録を閲覧した際にメモを取ることができるかどうかについては,各地の裁判所によって取扱いに違いがあるみたいです(外部HPの「訴訟記録閲覧時のメモ取り行為と,裁判の公開原則,レペタ裁判の関係」参照)。

3 アメリカの連邦裁判所の場合,PACERというインターネット上のサービスを利用すれば,裁判手続に関する資料(ただし,個人情報として保護の必要があるもの等は除く。)を閲覧したり,ダウンロードしたりできるみたいです(法と経済ジャーナルHPの「インターネットで訴訟記録を閲覧できる米国に見るサービスの進歩」参照)。

4 その余の詳細は「民事事件記録一般の閲覧・謄写手続」を参照してください。

第6 地方裁判所において尋問調書の作成が省略される場合

1 訴訟が裁判によらないで完結した場合の取扱い
(1)   訴訟が裁判によらないで完結した場合,裁判長の許可に基づき,尋問調書の作成が省略されます(民事訴訟規則67条2項本文)。
   例えば,当事者尋問をした直後の和解期日で訴訟上の和解が成立した場合,尋問調書の作成は省略されることが多いです。
(2) 当事者が訴訟の完結を知った日から1週間以内に尋問調書を作成すべき旨の申出をした場合,尋問調書が作成されます(民事訴訟規則67条2項ただし書)。

2 録音テープ等による調書代用,及び陳述記載書面

(1)   裁判長の許可に基づき,録音テープ等による調書代用(民事訴訟規則68条1項)があった場合,録音テープ等が尋問調書の代用となりますから,尋問調書は作成されません。
(2)ア   訴訟が完結するまでに当事者の申出があった場合等には,陳述記載書面が作成されます(民事訴訟規則68条2項)。
   この場合,①事件番号,②証人等を取り調べた期日,③証人等の氏名及び④規則68条2項に基づく書面である旨が記載されます。
イ 陳述記載書面の作成者につき,条文上明確は規定はありませんが,通常は,証人等の尋問に立ち会った書記官が作成することになりますし,立ち会った書記官が転勤等の事情により異動した場合,書面作成時における当該事件の担当書記官が作成することになります。
ウ 新民事訴訟法における書記官事務の研究(1)225頁が参考になります。
(3) 民事訴訟規則76条(口頭弁論における陳述の録音)は,調書の記載の正確性を確保するための補助手段として,録音という方法を利用できることを明らかにしたものです。
   これに対して民事訴訟規則68条は,口頭弁論における陳述それ自体の記録化の方法として録音が可能であることを前提として,その結果としての録音テープを訴訟記録として活用することを認めているものです。
   そのため,両者の想定する利用方法は異なります(条解民事訴訟規則167頁及び168頁参照)。

3 その余の詳細は「地方裁判所において尋問調書の作成が省略される場合」を参照してください。

第7 簡易裁判所においては尋問調書の作成が原則として省略されること

1 尋問調書の作成が省略されていること
(1)ア 簡易裁判所における尋問は通常,証人等の陳述の記載,つまり,尋問調書の作成が省略され(民事訴訟規則170条1項参照),当事者の裁判上の利用に供するため,録音テープ等で記録されるだけです(民事訴訟規則170条2項前段)。
   つまり,簡易裁判所における尋問の内容は紙ベースでは裁判所に残りません。
イ この場合,第4号書式(証人等目録)の「調書の作成に関する許可等」欄では,「調書省略」にレ点が付きます。
(2) 地方裁判所における尋問を実施した後に訴訟上の和解が成立した場合,民事訴訟規則67条2項本文に基づき,尋問調書の作成が省略されることが多いですものの,民事訴訟規則170条1項とは別の話です。
(3) 簡易裁判所の民事訴訟事件は通常,1,2回の期日にわたる証拠調べによって, 口頭弁論が終結される簡易なものが多く,その判決に対する控訴率も低いことから,証人等の陳述や検証の結果を調書に記載する必要性は地方裁判所におけるそれと比べると低いものと考えられます。
   また,録音テープに証人等の陳述を記録していた場合,旧民事訴訟法358条ノ2第1項(調書ハ当事者ニ異議アル場合ヲ除クノ外裁判官ノ許可アルトキハ之ニ記載スヘキ事項ヲ省略スルコトヲ得)に基づき証人等の陳述の調書への記載の省略について当事者から異議が出されることもありませんでした。
   そのため,平成10年1月1日施行の民事訴訟規則170条では,簡易裁判所の民事訴訟事件では,尋問調書の作成を省略できることとなりました(条解民事訴訟規則357頁参照)。
 
2 録音テープの取扱い及び反訳
(1) 録音テープの取扱い
ア 民事訴訟規則170条2項前段に基づき簡易裁判所における尋問を記録した録音テープ等は訴訟記録ではありません(東京高裁平成24年7月25日判決)。
 そのため,控訴審である地方裁判所は録音テープ等を聴取する必要がありませんし,そもそも録音テープ等は控訴審である地方裁判所に送付しません。
   その結果,簡易裁判所における尋問内容を控訴審の証拠としたい場合,録音テープ等の複製(民事訴訟規則170条2項後段)をした上で,その反訳文を控訴審に提出する必要があります。
イ 録音テープ等又はその反訳文を控訴審に提出しない場合,簡易裁判所における尋問の内容は一切,控訴審の証拠にはならないこととなります。
(2) 録音テープの反訳
ア 簡易裁判所の録音テープ等について司法協会に録音反訳(テープ起こし)を依頼した場合,60分当たり1万6800円(1分当たり280円)が必要となります。
   また,納期の目安として,90分の録音データの場合,中9日で,Eメールで納品されるとのことです(司法協会HPの「録音反訳(テープ起こし)」参照)。
イ オプションとしての認証正本については,録音反訳文の証拠方法を原本とするために1部を作成してもらえばいいと思います。

3 その余の詳細は「簡易裁判所においては尋問調書の作成が原則として省略されること」を参照してください。
録音テープ等に関する整理票(事務連絡様式別紙第1)(簡易裁判所の担当書記官が作成する書面です。)
録音テープ等の複製の申出書(事務連絡様式別紙第2)(簡易裁判所に保管されている録音テープの複製をするときに提出する書面です。)

第8 録音反訳方式と速記に関する国会答弁

40期の中村慎最高裁判所総務局長は,平成28年3月16日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています(ナンバリングを追加しました。)。
①   委員が要約調書と速記調書というものの比較をされました。要約調書というのは書記官が概要を書く調書でございますので、それと比較いたしますと、速記調書の方が、まさに逐語的にとっているのでそういう感想が出たんだと思います。
   逐語調書という中におきましては、録音反訳方式と速記の調書、両方がございます。一般的に、裁判利用者の要望については真摯に耳を傾ける必要があると考えております。
   ただ、録音反訳方式でありましても、反訳業者が提出した反訳書を裁判所書記官が確認して、必要に応じて校正を行った上で書記官の調書として完成させておりまして、正確性を欠くということはございません。また、反訳書をつくる期間につきましても、最短の場合では音声データを業者が受領したときから四十八時間で完成させるというような迅速性についても、十分な手当てをしているところでございます。
② このように、録音反訳方式と速記とについては、いずれも逐語録需要に対応するものであるところ、この両者について、どちらがすぐれているということはないというふうに考えておりまして、利用者からの要望のみによって速記録を作成するということにはならないというふうに考えております
1(1) 被害者側の交通事故(検察審査会を含む。)の初回の面談相談は無料であり,債務整理,相続,情報公開請求その他の面談相談は30分3000円(税込み)ですし,交通事故については,無料の電話相談もやっています(事件受任の可能性があるものに限ります。)
(2) 相談予約の電話番号は「お問い合わせ」に載せています。

2 予約がある場合の相談時間は平日の午後2時から午後8時までですが,事務局の残業にならないようにするために問い合わせの電話は午後7時30分までにしてほしいですし,私が自分で電話に出るのは午後6時頃までです。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)については,略歴及び取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図を参照してください。