損害保険料率算出機構による後遺障害等級の認定

第0 目次

第1   損害保険料率算出機構
第2   後遺障害の等級認定の手続
第3   後遺障害の等級認定の基準
第4   併合,相当及び加重
第5   後遺障害等級別認定件数,及び後遺障害等級の認定率
第6   後遺障害等級3級以上の認定件数の推移
第7の1 後遺障害等級認定申請の所要時間
第7の2 後遺障害等級認定票の文言例
第7の3 後遺障害の等級認定に関する説明資料
第8   高次脳機能障害
第9  「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムの充実について」の記載内容
第10  神経系統の機能及び精神の障害に関する障害等級認定基準

*0 損害保険料率算出機構HP「当機構で行う損害調査」が載っています。
*1 以下のページも参照して下さい。
(交通事故)
① 症状固定及び後遺障害診断書
② XP,CT,MRI等
③ 自賠責保険の保険金及び後遺障害等級
④ 後遺障害としてのむち打ち,頸椎捻挫,神経麻痺等
⑤ 後遺障害としての関節の可動域制限
⑥ 交通事故の示談をする場合の留意点
⑦ 保険会社の説明義務
⑧ 任意保険の示談代行制度
(労災保険)

⑨ 労災保険
⑩ 労災保険の給付内容
⑪ 労災保険に関する不服申立方法
⑫ 第三者行為災害としての交通事故
*2 国土交通省HPに「損害保険料率算出機構の業務概要」が載っています。
*3 幻冬舎HP「後遺障害の審査を行う「損害保険料率算出機構」の問題点」,及び「損害保険料率算出機構の「損害調査部門」の内情」が載っています。
*4 部位別の後遺障害等級のレベルについては,以下のHPが分かりやすいです。
① 後遺障害等級認定NAVI(みお総合法律事務所)「部位別後遺障害と等級」
② 八文字社会保険労務士行政書士事務所HP「後遺障害の系列と序列(後遺障害等級表)」
*5 にわ法律事務所HP「平成29年半ばから、自賠責での後遺障害等級認定が厳しくなったようです」,及び「調査事務所取付回答書類が開示されるようになりました」が載っています。
*6 日本整形外科学会HP「整形外科/運動器 症状・病気をしらべる」が載っています。
*7 沖縄協同病院HP「頭部MRIの見方」では,T1,T2,DWI,FLAIR,SWI,MRA,BPASが要領よく説明されています。
*8 自動車総合安全情報HP自賠責保険ポータルサイト「支払までの流れと請求方法」が乗っています。
*9 看護ルーHP「関節可動域訓練」に,指,手首,肘,前腕,肩,つま先,アキレス腱,足,膝,股の関節可動域訓練(ROM訓練)を説明する動画が載っています。
*10 日弁連交通事故相談センターHPに「目に見えにくい後遺障害(高次脳機能障害,PTSD,RSD)」が載っています。
*11 「自賠責保険後遺障害診断書」「神経学的所見の推移について」及び「頚椎捻挫・腰椎捻挫の症状の推移について」を掲載しています。
自賠責保険後遺障害診断書1/2
自賠責保険後遺障害診断書2/2
神経学的所見の推移について
頚椎捻挫・腰椎捻挫の症状の推移について

第1 損害保険料率算出機構

1 損害保険料率算出機構
(1) 後遺障害の等級認定とは,後遺障害が1級から14級までのどの等級に当たるのかを認定することをいいますところ,自賠責保険では,後遺障害の等級認定は,損害保険料率算出機構(損保料率機構,GIROJ)が行っています。
   自賠責保険では本来,損害額を調査して保険金額を決定するのは自賠責保険会社でありますものの,損害額の認定が会社ごとに異なるようでは,被害者の公平な救済の要請に沿わない結果を招くおそれがあります。
   そこで,損害保険料率算出団体に関する法律(昭和23年7月29日法律第193号)に基づき設立された特殊法人である,損害保険料率算出機構自賠責損害調査センターの調査事務所が,後遺障害等級認定等の損害調査を取り扱っています。
(2) 損害保険料率算出機構は,平成14年7月1日,損害保険料率算定会及び自動車保険料率算定会(=自算会)が再統合して発足しました。
(3) 平成28年4月1日現在の職員数は2194人です。
(4) 損害保険料率算出機構のディスクロージャー資料が,同機構HP「刊行物」に掲載されています。
 
2 自賠責損害調査事務所
(1) 自賠責損害調査事務所では,被害者が提出した「自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書」(=自賠責保険後遺障害診断書)を元に,従前の治療経過について,診断書,診療報酬明細書を取りそろえ,場合によっては,患部のXP,MRI,CT等の検査結果を取り付けた上で,各調査事務所の顧問医の意見を参考にして,後遺障害等級認定の担当者が等級を決めます。
(2) 損保料率機構の地区本部・自賠責損害調査事務所の所在地及び電話番号は,同機構HPの「地区本部および自賠責損害調査事務所」に掲載されています。
   全国に7箇所の地区本部があり,54箇所の自賠責損害調査事務所があります。

3 大阪の自賠責損害調査事務所
(1)ア 大阪府には,①大阪第一自賠責損害調査事務所(傷害部分の担当)及び②大阪第二自賠責損害調査事務所(後遺障害部分の担当)があります。
   住所はいずれも「〒530-0001 大阪市北区梅田3-4-5 毎日インテシオ6階」であり,電話番号はいずれも「06-6455-0267」です。
イ 外貌醜状について後遺障害の等級申請をした場合,原則として毎日インテシオ6階の大阪第2自賠責損害調査事務所に行き,同事務所の調査員に外貌醜状の状況を確認してもらうこととなります。
(2) 毎日インテシオ7階には近畿本部があります。
(3) 毎日インテシオと地下で直結する梅田ターミナルには,JR大阪駅,JR北新地駅,阪急,阪神,地下鉄御堂筋線の各梅田駅,地下鉄谷町線の東梅田駅,地下鉄四つ橋線の西梅田駅があります(株式会社毎日ビルディング大阪本社HP「毎日インテシオのアクセス」参照)。

4 損害保険料率算出機構の,法律に基づく業務範囲
   損害保険料率算出機構の業務範囲を定める損害保険料率算出団体に関する法律(昭和23年7月29日法律第193号)7条の2は,以下のとおりです。
第七条の二 料率団体は、次に掲げる業務の全部又は一部を行うものとする。
参考純率を算出し、会員の利用に供すること。
基準料率を算出し、会員の利用に供すること。
料率団体は、前項各号に掲げる業務のほか、次に掲げる業務の全部又は一部を行うことができる。
保険料率の算出に関し、情報の収集、調査及び研究を行い、その成果を会員に提供すること。
保険料率に関し、知識を普及し、並びに国民の関心及び理解を増進すること。
前項各号及び前二号に掲げる業務に付随する業務
前三号に掲げるもののほか、第一条の目的を達成するため必要な業務

第2 後遺障害の等級認定の手続

1 後遺障害等級の認定は以下の場合になされます。
① 被害者からの被害者請求がなされた場合(自賠法16条1項)
② 賠償義務者,つまり自賠責保険の被保険者からの加害者請求がなされた場合(自賠法15条)
③ 一括払の前提として自賠責保険会社から損害保険料率算出機構に対し,任意保険金の支払の前に後遺障害等級の有無・程度の認定を請求するという,いわゆる事前認定の請求がなされた場合

2 一括払事案の場合,被害者は任意保険会社の事前認定手続のために,後遺障害診断書等の書類を任意保険会社に提出することになります。
    この場合,損害保険料率算出機構の認定結果は直接被害者には通知されませんから,被害者は,任意保険会社から事前認定結果を伝えてもらう必要があります。

3 事前認定では,被害者の後遺障害等級の有無・程度だけでなく,以下の事項も確認しています。
① 自賠責保険契約が有効に存在しているかどうか。
② 任意保険会社の損害支払額が自賠責保険の支払対象となるかどうか。
③ 重過失減額があるかどうか。

4 被害者請求をしたときに送付される説明書面によれば,自賠責損害調査事務所による損害調査の流れは以下のとおりです。
① 請求者は、損害保険会社等、自賠責保険(共済)への請求書類を提出します。
② 損害保険会社等は、請求書類に不備がないか確認のうえ、自賠責損害調査事務所へ送付します。
③ 自賠責損害調査事務所では、請求書類に基づいて、事故発生状況、支払の的確性(自賠責保険(共済)の 対象となる事故かどうか、また、傷害と事故との因果関係など)および発生した損害の額などを公正かつ中立な立場で調査を行います。
   請求書類の内容だけでは事故に関する事実確認ができないものについては、
(a) 事故当事者に事故状況照会 
(b) 病院照会 
(c) 事故現場調査 
   など必要な調査を行います。
④ 自賠責損害調査事務所は、損害保険会社等に調査結果を報告します。
⑤ 損害保険会社等は、支払額を決定し、請求者に支払います。

5(1) 自賠責保険調査事務所による後遺障害等級認定は,書面中心主義であり,他覚所見至上主義です。
   つまり,自賠責保険後遺障害診断書等の書面に書いていない症状は審査の対象にしませんし,自覚症状は参考程度の扱いであって,他覚所見(例えば,画像所見,電気生理学的所見及び神経学的所見)が非常に重視されます。
(2) 自賠責の後遺障害申請で原則として面接を要する障害は以下のとおりです(交通事故被害者を2度泣かせないHP「後遺障害認定における面接を必要とするとき」参照)。
①眼瞼(がんけん)の欠損及び運動障害
②耳殻(じかく)の欠損障害
③鼻の欠損障害
④外貌(頭部・顔面・頚部)の醜状障害
⑤上・下肢の醜状障害
⑥露出面以外の醜状障害

第3 後遺障害の等級認定の基準

1 自賠責保険の場合,後遺障害等級の認定は原則として,労災保険における障害の等級認定の基準に準じて行うこととされています(「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」(平成13年金融庁・国土交通省告示第1号)「第3 後遺障害による損害」参照)。

2(1)    労災保険における障害の等級認定は,以下の基準に基づいてなされます。
① 一般の障害
・ 昭和50年9月30日付け基発第565号別冊「障害等級認定基準」(労働省労働基準局長通知)
   「基本通達」といわれるものです。
② 神経系統の機能又は精神の障害
・ 平成15年8月8日付け基発第0808002号別添「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準」(厚生労働省労働基準局長通知)
③ 関節の機能障害
・ 平成16年6月4日付け基発第0604003号別紙「せき柱及びその他の体幹骨,上肢並びに下肢の傷害に関する障害等級認定基準・別添関節の機能障害の評価方法及び関節可動域の測定要領」(厚生労働省労働基準局長通知)
④ 眼の障害
・ 平成16年6月4日付け基発第0604004号別紙「眼の障害に関する障害等級認定基準」(厚生労働省労働基準局長通知)
⑤ 胸腹部臓器の障害
・ 平成18年1月25日付け基発第0125002号別紙「胸腹部臓器の障害に関する障害等級認定基準」(厚生労働省労働基準局長通知)
・ 「胸腹部臓器の障害に関する障害等級認定基準」と題するパンフレットがあります。
⑥ 外貌醜状の障害
・ 平成23年2月1日付け基発第0201第2号別紙「外貌の醜状障害に関する障害等級認定基準」(厚生労働省労働基準局長通知)
・ 「顔などにやけどや傷跡が残った場合の障害等級の見直しについて」と題するパンフレットがあります。
(2) 平成16年6月4日付の③及び④の通達は,厚生労働省HPの「せき柱及びその他の体幹骨、上肢並びに下肢、眼の障害等級認定基準の一部改正について」に載っています。
(3) 労働省労働基準局の以下の文書を掲載しています。
① 地方労災医員制度の運用細目について(昭和62年12月22日付の労働省労働基準局長の通達)
② 地方労災医員制度の運用上の留意点について(昭和62年12月22日付の労働省労働基準局労災補償課長の事務連絡)
③ 労災認定における医師の作成する意見書,鑑定書等の早期収集のための医師会,労災病院等との連携について(労働省労働基準局長の通達)

3 損害保険料率算出機構による後遺障害の等級認定は,基本通達及び認定基準に準じて行われていますから,基本通達等に基づけばこういう判断ができるという議論の仕方をしない限り,自賠責保険の手続において被害者側の主張が認められることはなかなかありません。
    ただし,裁判所における損害の算定方法自体は,基本通達等の考え方に拘束されるわけではありません。

第4 併合,相当及び加重

1 併合
(1) 後遺症につき,5級以上のものが複数あれば一番重い等級を3等級繰り上げ,8級以上のものが複数あれば一番重い等級を2等級繰り上げ,13級以上のものが複数あれば一番重い等級を1等級繰り上げられることとなり,繰り上げられた等級を併合等級といいます。
    ただし,14級の後遺障害がいくらあっても,一番重い等級が繰り上げられることはありません。
(2) 併合の扱いを受けるのは,あくまでも障害の系列が異なる場合に限られるのであって,同じ系列の障害は上位等級の内容が下位等級の内容を含んでいると考えられますから,併合の扱いは受けません。
 
2 相当
(1) 自賠法施行令別表第1の備考,及び別表第2の備考6には,「各等級の後遺障害に該当しない後遺障害であって,各等級の後遺障害に相当する者は,当該等級の後遺障害とする。」と規定されていますから,どの系列にも属さない障害であっても等級認定される場合があり,「相当等級」といいます。
(2) 自賠責保険において認められる相当等級の例は以下のとおりです。
① 嗅覚喪失又は味覚脱失(12級相当)
② 嗅覚減退(14級相当)
③ 外傷性散瞳(11級,12級又は14級相当)
④ 脊柱に中程度の変形を残すもの(8級相当)
 
3 加重
   既に身体障害のあった者がさらに同一部位について障害の程度を加重したときは,加重後の等級に応ずる保険金額から既にあった障害の等級に応ずる保険金額を控除した金額が保険金額となります。

第5 後遺障害等級別認定件数,及び後遺障害等級の認定率

1 後遺障害等級別認定件数
(1) 平成26年度
   損害保険料率算出機構HPの「自動車保険の概況」に掲載されている,平成27年度「自動車保険の概況」の末尾38頁によれば,平成26年度の後遺障害等級別認定件数の実績は以下のとおりであり,合計6万2350件です。
・ 別表第一(介護を要する後遺障害)
1級:881人(1.41%)
2級:460人(0.74%)
・ 別表第二(その他の後遺障害) 
1級:35件(0.06%)
2級:93件(0.15%)
3級:314件(0.50%)
4級:199件(0.32%)
5級:423件(0.68%)
6級:538件(0.86%)
7級:1013件(1.63%)
8級:1941件(3.12%)
9級:2160件(3.47%)
10級:2076件(3.33%)
11級:4348件(6.98%)
12級:1万665件(17.12%)
13級:520件(0.83%)
14級:3万6639件(58.81%)
(2) 平成27年度
   損害保険料率算出機構HPの「自動車保険の概況」に掲載されている,平成28年度「自動車保険の概況」の末尾38頁によれば,平成26年度の後遺障害等級別認定件数の実績は以下のとおりであり,合計6万2009件です。
・ 別表第一(介護を要する後遺障害)
1級:874件(1.41%)
2級:462件(0.75%)
・ 別表第二(その他の後遺障害)
1級:36件(0.06%)
2級:108件(0.17%)
3級:316件(0.51%)
4級:180件(0.29%)
5級:405件(0.65%)
6級:528件(0.85%)
7級:1008件(1.63%)
8級:1984件(3.20%)
9級:2200件(3.55%)
10級:2020件(3.26%)
11級:4369件(7.05%)
12級:1万592件(17.08%)
13級:592件(0.95%)
14級:3万6335件(58.6%)
(3) 平成28年度
   損害保険料率算出機構HPの「自動車保険の概況」に掲載されている,平成29年度「自動車保険の概況」の末尾37頁によれば,平成28年度の後遺障害等級別認定件数の実績は以下のとおりであり,合計5万9642件です。
・ 別表第一(介護を要する後遺障害)
1級:848件(1.42%)
2級:420件(0.70%)
・ 別表第二(その他の後遺障害)
1級:40件(0.07%)
2級:127件(0.21%)
3級:251件(0.42%)
4級:172件(0.29%)
5級:395件(0.66%)
6級:550件(0.92%)
7級:970件(1.63%)
8級:1951件(3.27%)
9級:2168件(3.64%)
10級:1892件(3.17%)
11級:4408件(7.39%)
12級:1万271件(17.22%)
13級:546件(0.92%)
14級:3万4633件(58.07%)

2 後遺障害等級の認定率
(1) 平成26年度
   損害保険料率算出機構の平成27年度「自動車保険の概況」の末尾36頁によれば,平成26年度に自賠責損害調査事務所で受け付けた自賠責保険の請求事案の件数は132万6871件です。
   そのため,自賠責保険の請求と後遺障害等級認定との間に期間のずれを無視して計算した場合,後遺障害等級が認定されるのは6万2350件/132万6871件=約4.69%となり,13級以上の後遺障害等級が認定されるのは2万5711件/132万6871件=約1.94%となります。
(2) 平成27年度
   損害保険料率算出機構の平成28年度「自動車保険の概況」の末尾36頁によれば,平成27年度に自賠責損害調査事務所で受け付けた自賠責保険の請求事案の件数は132万8116件です。
   そのため,自賠責保険の請求と後遺障害等級認定との間に期間のずれを無視して計算した場合,後遺障害等級が認定されるのは6万2009件/132万8116件=約4.67%となり,13級以上の後遺障害等級が認定されるのは2万5674件/132万8116件=約1.93%となります。  
(3) 平成28年度
   損害保険料率算出機構の平成29年度「自動車保険の概況」の末尾35頁によれば,平成28年度に自賠責損害調査事務所で受け付けた自賠責保険の請求事案の件数は131万1869件です。
   そのため,自賠責保険の請求と後遺障害等級認定との間に期間のずれを無視して計算した場合,後遺障害等級が認定されるのは5万9642件/131万1869件=約4.55%となり,13級以上の後遺障害等級が認定されるのは2万5009件/131万1869件=約1.91%となります。

第6 後遺障害等級3級以上の認定件数の推移

○毎年1月開催の金融庁自賠責保険審議会の資料となっている毎年度の料率検証結果の「(参考)重度後遺障害の支払件数の推移」(平成21年1月以降の分)によれば,以下のとおりです(例えば,平成30年1月の資料では平成28年までの分が載っています。)。
 
1 介護を要する後遺障害等級(自賠法施行令別表第一)
(1) 後遺障害等級1級
平成14年:24件,平成15年:399件,平成16年:782件
平成17年:917件,平成18年:968件,平成19年:1018件
平成20年:1036件,平成21年:1019件,平成22年:903件
平成23年:894件,平成24年:834件,平成25年:820件
平成26年:881件,平成27年:874件,平成28年:848件
 
(2) 後遺障害等級2級
平成14年:2件,平成15年:124件,平成16年:301件
平成17年:376件,平成18年:444件,平成19年:472件
平成20年:516件,平成21年:506件,平成22年:546件
平成23年:495件,平成24年:436件,平成25年:431件
平成26年:460件,平成27年:462件,平成28年:420件
  
2  介護を要しない後遺障害等級(自賠法施行令別表第二)
(1) 後遺障害等級1級
平成10年:1350件,平成11年:1371件,平成12年:1405件
平成13年:1458件,平成14年:1484件,平成15年:986件
平成16年:493件,平成17年:284件,平成18年:193件
平成19年:101件,平成20年:78件,平成21年:72件
平成22年:66件,平成23年:46件,平成24年:42件
平成25年:41件,平成26年:35件,平成27年:36件
平成28年:40件
   
(2) 後遺障害等級2級
平成10年:384件,平成11年:400件,平成12年:346件
平成13年:410件,平成14年:541件,平成15年:402件
平成16年:240件,平成17年:165件,平成18年:162件
平成19年:148件,平成20年:127件,平成21年:145件
平成22年:141件,平成23年:133件,平成24年:119件
平成25年:111件,平成26年: 93件,平成27年:108件
平成28年:127件
   
(3) 後遺障害等級3級
平成10年:316件,平成11年:281件,平成12年:305件
平成13年:366件,平成14年:489件,平成15年:377件
平成16年:355件,平成17年:377件,平成18年:353件
平成19年:385件,平成20年:415件,平成21年:407件
平成22年:371件,平成23年:364件,平成24年:345件
平成25年:318件,平成26年:314件,平成27年:316件
平成28年:251件

3 合計
平成10年:2050件,平成11年:2052件,平成12年:2056件
平成13年:2234件,平成14年:2540件,平成15年:2288件
平成16年:2171件,平成17年:2119件,平成18年:2120件
平成19年:2124件,平成20年:2172件,平成21年:2149件
平成22年:2027件,平成23年:1932件,平成24年:1776件
平成25年:1721件,平成26年:1783件,平成27年:1796件
平成28年:1686件

第7の1 後遺障害等級認定申請の所要時間

1    自賠責保険会社に被害者請求の書類を提出してから損害保険料率算出機構に送付されるまでに大体,2週間ぐらいかかります。
  また,後遺障害の等級認定申請の書類が損害保険料率算出機構に送付されてから,後遺障害の審査結果が出るまでに通常,1ヶ月ぐらいかかります。
   そのため,被害者請求の書類を提出してから後遺障害の審査結果が出るまでに通常,1ヶ月半ぐらいかかります。

2(1)   過失割合が7割以上となる可能性がある場合,詳細な事故状況を記載した書面の提出が求められるため,1ヶ月以上,余分に時間がかかることが多いです。
(2) 損害保険料率算出機構HP「事故状況等についてのご照会」には,「このお問い合わせは、事故発生状況の確認を行うことを目的に、事故の当事者の方々にお送りしています。これは、事故の状況等によっては、自賠責保険のお支払いの対象とならない場合や、お支払いできる額が変わってくる場合があるためです。」と書いてあります。

3 損害保険料率算出機構が作成している「平成28年度自動車保険の概況」損害保険料率算出機構HP「刊行物」に載っています。
)によれば,自賠責損害調査事務所における損害調査所要日数は以下のとおりです。
① 死亡事案の場合
30日以内が79.8%,31日~60日が10.5%,61日~90日が3.6%,90日超が6.2%
② 後遺障害事案の場合
30日以内が81.9%,31日~60日が10.5%,61日~90日が4.4%,90日超が3.7%
③ 傷害事案の場合 
30日以内が98.7%,31日~60日が0.9%,61日~90日が0.3%,90日超が0.2% 

第7の2 後遺障害等級認定票の文言例

○可動域制限で後遺障害併合9級が認定される場合における,後遺障害等級認定票の文言は,以下のような感じです。

1.左大腿骨骨幹部骨折に伴う左股関節の機能障害については,後遺障害診断書上,主要運動である外転・内転の可動域が健側(右股関節)の可動域角度の1/2以下に制限されていることから,「1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの」として別表第二第10級11合に該当するものと判断します。

2.左大腿骨骨幹部骨折および左脛骨近位部骨折に伴う左膝関節の機能障害については,後遺障害診断書上,その可動域が健側(右膝関節)の可動域角度の3/4以下に制限されていることから,「1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」として別表第二第12級7号に該当するものと判断します。

3.左足関節の機能障害については,後遺障害診断書上,その可動域が健側(右足関節)の可動域角度の3/4以下に制限されていないことから,認定基準上,自賠責保険における後遺障害には該当しないものと判断します。

   前記1.および2.の障害は,同一系列の障害であるため,別表第二備考6により,併合の方法を用いて別表第二第9級相当と判断します。

○下肢の短縮障害で後遺障害13級が認定される場合における,後遺障害等級認定票の文言は,以下のような感じです。

   左下肢の短縮障害については,提出の画像上,左大腿骨骨幹部骨折が認められ,これにより左下肢は健側(右下肢)と比較して,1センチメートル以上の短縮が生じたものと捉えられることから,「1下肢を1センチメートル以上短縮したもの」として別表第二第13級8号に該当するものと判断します。

○神経症状で後遺障害14級が認定される場合における,後遺障害等級認定票の文言は,以下のような感じです。

1.頚椎捻挫後の○○,○○の症状については,提出の頚部画像上,本件事故による骨折等の明らかな外傷性変化は認め難く,その他診断書等からも,症状の裏付けとなる客観的な医学的所見には乏しいことから,他覚的に神経系統の障害が証明されるものとは捉えられません。
   しかしながら,治療状況,症状推移なども勘案すれば,将来においても回復が困難と見込まれる障害と捉えられることから,「局部に神経症状を残すもの」として別表第二第14級9号に該当するものと判断します。

2.腰椎捻挫後の○○,○○の症状については,提出の頚部画像上,本件事故による骨折等の明らかな外傷性変化は認め難く,その他診断書等からも,症状の裏付けとなる客観的な医学的所見には乏しいことから,他覚的に神経系統の障害が証明されるものとは捉えられません。
   しかしながら,治療状況,症状推移なども勘案すれば,将来においても回復が困難と見込まれる障害と捉えられることから,「局部に神経症状を残すもの」として別表第二第14級9号に該当するものと判断します。

   前記1.および2.の障害を併合した結果,別表第二併合第14級と判断します。

○神経症状が後遺障害14級が該当しないと判断された場合における,後遺障害等級認定票の文言は,以下のような感じです。

   頚椎捻挫,頚部挫傷等の頚部から右上肢の知覚障害と疼痛(痺れるような痛み),重いものが持てない等の症状については,提出の頚部画像上,本件事故による骨折や脱臼等の明らかな外傷性の異常所見は認められず,後遺障害診断書上,有意な神経学的異常所見は認められないことから,他覚的に神経系統の障害が証明されたものとは捉えられないことに加え,その他治療状況や症状経過等を勘案すれば,将来においても回復が困難と見込まれる障害とは捉えられないことから,自賠責保険における後遺障害には該当しないものと判断します。

第7の3 後遺障害の等級認定に関する説明資料

1 後遺障害の等級認定結果が出た場合,①後遺障害等級の有無,②認定された後遺障害の等級及び③認定理由が,後遺障害等級認定票という書面により開示されます。

2 自賠責保険会社に対して書面で請求すれば,以下の書類を送ってくれます(自動車損害賠償保障法16条の5・支払適正化措置省令7条参照)。
① 後遺障害事案整理票 
→ (a)初診時の傷病名,(b)初期の症状及び態様,(c)治療経過,(d)傷病名,(e)既存障害,(f)自覚症状,(g)他覚的所見・検査結果等が記載されている書類です。
   後遺障害診断書を提出した事案であれば,後遺障害に該当しない場合であっても作成されています。
② 損害の細目及びその積算根拠を記載した書面
→ 治療費,通院費,文書料,休業損害,慰謝料という損害項目ごとの支払金額及びその内容等が記載されています書類です。
   自賠責保険からの支払額が,自賠責保険の限度額(例えば,傷害部分は120万円)に満たない場合に取り寄せる実益があります。

第8 高次脳機能障害

1 総論
(1) 損害保険料率算出機構は,「高次脳機能障害に該当する可能性がある事案」について,受傷後の詳細な意識障害の推移,高次脳機能障害の内容・程度の照会,被害者側への日常生活状況の確認などの詳細な情報を得た上で,専門医を中心とする自賠責保険(共済)審査会高次脳機能障害専門部会が後遺障害等級を認定する仕組みを構築しており,これを「高次脳機能障害認定システム」といいます(損害保険料率算出機構HPの「脳外傷による高次脳機能障害の後遺障害認定」参照)。
(2) 損害保険料率算出機構作成の「脳外傷による高次脳機能障害の後遺障害認定について」には,「脳外傷による高次脳機能障害は,自動車事故などで脳が損傷され,一定期間以上,意識が障害された場合に発生し,CT・MRIなどの画像診断で脳損傷が認められることが特徴です。」などと書いてあります。
(3)ア 脳に器質的損傷がある高次脳機能障害の場合,「脳損傷又はせき髄損傷による障害の状態に関する意見書」(様式1)を医師に作成してもらい,「日常生活状況報告表」(様式2)を家族又はこれに代わる介護者が作成する必要があります。
イ 脳に器質的損傷があるとは,脳の損傷が原因であることについてMRI,CT等の画像所見がある場合をいい,①局所的に損傷を受ける場合(局所性脳損傷)(例えば,脳挫傷及び頭蓋内血腫)及び②全般的に損傷を受ける場合(びまん性脳損傷)があります。
(4) びまん性軸索損傷(DAI)は,びまん性脳損傷のひとつで(脳震盪もびまん性脳損傷のひとつとされています),脳に広範な剪断力が加わることによって,軸索(指令を出すための長く伸びた繊維)に断裂が生じることをいいます(八文字社会保険労務士行政書士事務所HP「びまん性軸索損傷の基礎知識」参照)。 

2 高次脳機能障害において各能力評価を行う際の要点
① 意思疎通能力(記銘・記憶力、認知力、言語力等)
   職場において他人とのコミュニケーションを適切に行えるかどうか等について判定して下さい。主に記銘・記憶力、認知力又は言語力の側面から判断を行います。
② 問題解決能力(理解力、判断力等)
   作業課題に対する指示や要求水準を正確に理解し適切な判断を行い、円滑に業務が遂行できるどうかについて判定して下さい。主に理解力、判断力又は集中力(注意の選択等)について判断を行います。
③ 作業負荷に対する持続力・持久力
   一般的な就労時間に対処できるだけの能力が備わっているかどうかについて判定して下さい。精神面における意欲、気分又は注意の集中の持続力・持久力について判断して下さい。その際、意欲又は気分の低下等による疲労感や倦怠感を含めて判断して下さい。
④ 社会行動能力(協調性等)
   職場において他人と円滑な共同作業、社会的行動ができるかどうか等について判定して下さい。主に協調性の有無や不適切な行動(突然大した理由もないのに怒る等の感情や欲求のコントロールの低下による場違いな行動等)の頻度について判断して下さい。

3 画像所見陰性と外傷性脳損傷(TBI)
(1) 平成25年6月18日付け基労補発0618第1号の「考察」には以下の記載があります。
   画像所見陰性のTBI症例で、昏睡を認めなかった症例は半数を超え、昏睡が有ったと明確にされた症例は1割に満たなかったので、画像陰性例では受傷時の意識障害の程度としては軽度の症例が多いと指摘できる。また、不明・記載なしが多いことから、画像所見陰性となるような軽症例においては受傷時の意識障害の有無を明確にすることには困難があり、取り扱いに課題が残る。
   画像所見陰性の43例の中から、MTBIと推定されるか、その可能性のある症例がおよそ1/3あった。受傷から高次脳機能障害診断のために実施した画像診断までの期間が3年未満であった症例に限定すると、画像陰性例の6割に達した。これは支援拠点機関を相談に訪れた事例総数の0.5%であり、すなわち相談者が200名訪れると1名はそのような症例の可能性があるとういことになる。このような頻度でMTBIを考慮する症例が実際に経験されると言える。また相談に訪れた時点での調査では昏睡も意識障害も確認できなかった症例が少数あり、このような症例でも結果のように高次脳機能障害を残す可能性があるので慎重な対応が望まれる。
   福祉領域の機関・施設からこれ以上の急性期の診療データを得ることには困難があり、MTBIにどのくらいの頻度で高次脳機能障害を発症し得るかという疑問等を含めて脳神経外科領域での研究成果を待つ必要がある。
(2) 文中の「画像所見陰性の43例」というのは,画像所見は陰性であったが症状は高次脳機能障害診断基準(厚生労働省・国立障害者リハビリテーションセンター)に合致すると診断された54例のうち,主治医の診断等により確認できた外傷性脳損傷(TBI)を原因疾患とする43例のことです。
   この43例につき,平成25年6月18日付け基労補発0618第1号の「結果」の「2.画像陰性例の分析」では,「受傷時に昏睡を認めた症例が3例(7.0%)、認めなかった症例が25例(58.1%)、不明・記載なしが15例(34.9%)であった。受傷時の意識障害については、認めた症例が23例(53.5%)、認めなかった症例が4例(9.3%)、不明・記載なしが16例(37.2%)であった。」と書いてあります。

4 高次脳機能障害と認知症の違い
   秋田県高次脳機能障害相談・支援センターHP「高次脳機能障害Q&A」には,以下の記載があります。
医学的な意味で「高次脳機能障害」という言葉が使われる場合は、認知機能障害全般を示すため認知症も含まれることが多いです。「血管性認知症により高次脳機能障害がみられる」などと使われます。
一方、行政的に用いられる「高次脳機能障害」の定義では、進行性の病気は除外されているため認知症は含まれません。
一般に、高次脳機能障害は進行せず程度によっては回復する場合もありますが、認知症は徐々に進行していくと考えて良いと思います。

5 高次脳機能障害,身体性機能障害及び非器質性精神障害で使用する意見書の様式
   「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準について」(平成15年8月8日基発第0808002号)の「2  的確な認定基準の運用の前提となる症状把握  」に以下の記載があります。
(1)  主治医等に対する意見書の様式
主治医等に対して意見等を照会する場合の様式を様式1~3のとおり定めたこと。 
(2)  高次脳機能障害
労働者災害補償保険法施行規則(以下「施行規則」という。)第14条の2に基づく障害補償給付請求書(様式第10号)又は施行規則第18条の8に基づく障害給付請求書(様式第16号の7)裏面の診断書の傷病名の欄等に頭部外傷又は脳血管疾患等による高次脳機能障害が想定される障害が記載されている場合については、主治医に対して様式1により、家族(あるいは家族に代わる介護者)に対して様式2により障害の状態についての意見を求めること。
また、様式1の裏面に記載されている「高次脳機能障害整理表」は4能力の喪失の程度別に後遺障害の例を示したものであり、主治医が4能力の障害に関する意見を記載するに当たって活用するものであること。
なお、高次脳機能障害の状態について家族(あるいは家族に代わる介護者)と主治医の意見が著しく異なる場合には、再度必要な調査を行うこと。 
(3)  身体性機能障害
様式第10号又は様式第16号の7裏面の診断書の傷病名の欄に脳損傷又はせき髄損傷が想定される傷病名が記載されているものについては、主治医に対して様式1により障害の状態についての意見を求めること。
また、麻痺の範囲と程度は、身体的所見及びMRI、CT等により裏付けられることが必要であるから、主治医の意見書に記載されている麻痺の性状及び関節可動域の制限等の結果と麻痺の範囲と程度との間に整合性があるか否か確認し、必要に応じて調査を行った上で、障害等級を認定すること。
たとえば、麻痺の性状の欄に弛緩性、関節可動域の制限の欄には麻痺している部位のいずれの関節も自動運動によっては全可動域にわたって可動させることができると記載されているにもかかわらず、麻痺が高度であると記載されている場合には、主治医に再度意見を求める等の調査が必要であること。 
(4)  非器質性精神障害
主治医に対して様式3により障害の状態の詳細についての意見を求めること。 

6 その他
(1) にわ法律事務所HP「高次脳機能障害等級認定基準」では,自賠責書式の診断書「神経系統の障害に関する医学的所見」の記載から,自賠責の何級に該当するかを簡単に判断する基準が書いてあります。
   労災書式「脳損傷又はせき髄損傷による障害の状態に関する意見書」を併せて記載するみたいです。
(2) 東京交通事故相談サポート「自賠責保険における高次脳機能障害の認定要件」及び「交通事故による高次脳機能障害の立証方法」が載っています。
(3) J-STAGE HP「高次脳機能障害を引き起こす外傷性脳損傷の画像評価-特にびまん性脳損傷慢性期の画像について-」が載っています。
(4)ア 非器質性精神障害に関しては,弁護士によるマンガ交通事故相談HP「1 精神の疾患(精神障害)を理由とする後遺障害等級認定について」が参考になります。
イ 「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」(平成29年12月1日改正)49頁には,「神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として、認定の対象とならない。ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取り扱う。」と書いてあります。
(5) 鶴巻温泉病院HP「高次脳機能障害とリハビリテーション」が載っています。
(6) 赤い本講演録編2012年67頁以下に「外傷による脳損傷の基礎知識」が載っています。
脳損傷又はせき髄損傷による障害の状態に関する意見書(様式1)1/2
脳損傷又はせき髄損傷による障害の状態に関する意見書(様式1)2/2
日常生活状況報告表(様式2)1/2
日常生活状況報告表(様式2)2/2

第9 「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムの充実について」の記載内容

○自賠責保険における高次脳機能障害認定システム検討委員会が作成した,「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムの充実について」(平成30年5月31日付)には以下の記載があります。

1 1頁の記載
   労災保険では、mild traumatic brain injury(以下「MTBI」という。)について、MTBI(軽度外傷性脳損傷)に該当する受傷時に意識障害が軽度であるものにあっても、高次脳機能障害を残す可能性について考慮する必要性がある」、「画像所見が認められない場合であっても障害等級第14級を超える障害が残る可能性が示されたことを踏まえ、MRI、CT等の画像所見が認められない高次脳機能障害を含む障害(補償)給付請求事案については、本省で個別に判断することとする」旨の厚生労働省通達(平成25年6月18日付け基労補発0618第1号)が発出されている。
   これを受け、自賠責保険においても、2013(平成25)年7月1日および2016(平成28)年6月8日に国土交通省から高次脳機能障害への適切な対応に係る通達文書が発出されており、それに沿って適切な対応を図ってきたところである。
2 11頁及び12頁の記載(文中の「T2*」は,「ティー・ツー・スター」と読みます。)
(1)   脳の器質的損傷を裏付ける画像検査
   脳の器質的損傷の判断に当たっては、CT、MRIが有用な検査資料であるという従前の考え方に変更はない。
   CTは、頭部外傷時、脳の器質的損傷の有無を診断するうえで、第一に選択すべきものとされている。その理由として、急性期の初期診療では、意識障害を呈し、体内に金属があるかどうかが不明な場合があり、MRI検査を第一に選択することはできないことなどがある。CTは、MRIよりは空間分解能は劣るが、撮像時間が短く、頭蓋内病変の有無をおおまかに検知できるので、まずCT検査が選択される。
   しかし、微細な脳損傷を検出するには、CTでは不十分である。CTにおいて画像所見が得られない患者で、頭蓋内病変が疑われる場合は、外傷後早期にMRI(T2強調画像、T2*、DWI、FLAIRなど)を撮影することが望まれる。これは、早期に撮影されれば脳挫傷が明らかになる場合でも、時期が経過すると、脳の器質的損傷所見が消失する例があるからである。
   特に、T2*は、時間が経過した場合でも、びまん性軸索損傷による小出血部に沈着したヘモジデリンを捉えて診断につながる場合がある。さらに、SWIは、T2*よりも鋭敏に微細な出血痕等を描出することができる撮像方法として期待されており、今後は、急性期からの経時的な画像撮影が望まれる。
   また、外傷から3〜4週間以上が経過すると、重症例では、脳萎縮が明らかになることがある。脳実質に損傷が確認できなくても、脳萎縮の所見は、高次脳機能障害の存在を裏付けるものといえる。
   一方、DTI、fMRI、MRスペクトロスコピー、SPECT、PET等に関する研究は、現在なお進行中であり、健常者との比較研究や脳器質性病変との関連、画像処理方法等も研究段階にある。 したがって、現在、これらの検査のみで、脳の器質的損傷の有無、認知・行動面の症状と脳の器質的損傷の因果関係あるいは障害程度を確定的に示すことはできない。しかし、当初のCT、MRIにおいて脳損傷が明らかであったものの、時間経過とともに損傷所見が消失した場合など脳外傷による障害の残存に疑義が生じる場合には、前記のようなCT、MRI以外の検査において整合性のある一貫した所見が窺えるものについては、補助的な検査所見として参考になる場合がある。
   なお、脳外傷を示す画像所見に現れた異常の程度と認知・行動障害の程度については必ずしも相関しないことに留意する必要がある。
(2) 画像所見の評価
   画像所見の評価に当たっては、頭蓋内病変や脳挫傷の有無を確認するだけでなく、外傷直後より経時的に脳萎縮や脳室拡大等を含めた画像上の異常所見の有無を把握していくことが重要である。
   この点、局在性脳損傷(脳挫傷、頭蓋内血腫等)と異なり、びまん性軸索損傷を含むびまん性脳損傷の場合は、外傷直後のCTではくも膜下出血や脳室内出血等が明らかでなく正常にみえることもある。その一方で、MRIで脳内(皮質下白質、脳梁、基底核部、脳幹など)に点状出血等の所見がみられることが多い。このような場合、一般的に、外傷数日後には、しばしば硬膜下腔ないしくも膜下腔に脳脊髄液貯留を生じ、その後、脳室拡大や脳溝拡大などの脳萎縮が目立ち、およそ3か月程度で外傷後脳室拡大等が固定するものと考えられる。
   なお、局在性脳損傷(脳挫傷、頭蓋内血腫等)が画像で目立つ場合であっても、前記と同様、脳室拡大、脳萎縮の有無や程度を経時的に把握していくことが重要である。

3 15頁及び16頁の記載(原文の下線部分は赤字表記としました。)
【高次脳機能障害審査の対象とする事案】
(注)以下の要件は自賠責保険における高次脳機能障害の判定基準ではなく、あくまでも高次
脳機能障害の残存の有無を審査する必要がある事案を選別するための基準である。
A.後遺障害診断書において、高次脳機能障害を示唆する症状の残存が認められる場合(高次脳機能障害や脳の器質的損傷の診断名またはMTBIや軽度外傷性脳損傷の診断名が記載されている等)
   全件高次脳機能障害に関する調査を実施の上で、自賠責保険(共済)審査会において審査を行う。
B.後遺障害診断書において、高次脳機能障害を示唆する症状の残存が認められない場合
(高次脳機能障害や脳の器質的損傷の診断名またはMTBIや軽度外傷性脳損傷の診断名が記載されていない等)
   以下の①~⑤の条件のいずれかに該当する事案(上記A.に該当する事案は除く)は、高次脳機能障害(または脳の器質的損傷)の診断が行われていないとしても、見落とされている可能性が高いため、慎重に調査を行う。
   具体的には、原則として被害者本人および家族に対して、脳外傷による高次脳機能障害の症状が残存しているか否かの確認を行い、その結果、高次脳機能障害を示唆する症状の残存が認められる場合には、高次脳機能障害に関する調査を実施の上で、自賠責保険(共済)審査会において審査を行う。
① 初診時に頭部外傷の診断があり、経過の診断書において、高次脳機能障害、脳挫傷(後遺症)、びまん性軸索損傷、びまん性脳損傷、MTBI、軽度外傷性脳損傷等の診断がなされている症例
② 初診時に頭部外傷の診断があり、経過の診断書において、認知・行動・情緒障害を示唆する具体的な症状、あるいは失調性歩行、痙性片麻痺など高次脳機能障害に伴いやす
い神経系統の障害が認められる症例
(注)具体的症状として、以下のようなものが挙げられる。
   知能低下、思考・判断能力低下、記憶障害、記銘障害、見当識障害、注意力低下、発動性低下、抑制低下、自発性低下、気力低下、衝動性、易怒性、自己中心性
③   経過の診断書において、初診時の頭部画像所見として頭蓋内病変が記述されている症例
④   初診時に頭部外傷の診断があり、初診病院の経過の診断書において、当初の意識障害(半昏睡~昏睡で開眼・応答しない状態:JCSが3~2桁、GCSが12点以下)が少なくとも6時間以上、もしくは、健忘あるいは軽度意識障害(JCSが1桁、GCSが13~14点)が少なくとも1週間以上続いていることが確認できる症例
⑤ その他、脳外傷による高次脳機能障害が疑われる症例

3 19頁の記載
(3)   医師への啓発
   脳外傷による高次脳機能障害は、社会的な認知が広まりつつあるが、依然「見過ごされやすい」障害である。仮に診療医がこれを見落とした場合は、医証を中心に検討を行う現行の保険実務では、被害者救済に一定の限界があるといわざるを得ない。
   このような場合も含めて、診療医が高次脳機能障害の診断と評価を適切に行うことが、被害者救済を充実させることにつながる。
   とりわけ、画像所見が明らかではない事案における高次脳機能障害を的確に認定していくためには、医師が初診時およびそれ以降の患者の状態を正確に記録することが極めて重要であり、診療医に診療録の記載の充実を求める必要がある。
   そのため、後遺障害診断書を記載する現場の診療医に向けた啓発活動を継続(意識障害・症状経過等に関する必須情報の記載を含む。)することが必要である。
   この目的で、医療機関向けの解説書等の整備を図るとともに、各種学会・講習会等の場で高次脳機能障害を含む後遺障害等級認定に関する情報提供を行うなど、広く啓発活動を行っていくことが望まれる。   

第10 神経系統の機能及び精神の障害に関する障害等級認定基準

「神経系統の機能及び精神の障害に関する障害等級認定基準について」と題する厚生労働省のパンフレットには以下の後遺障害に関する説明が載っています。
1 脳外傷等の後遺障害
(1) 高次脳機能障害及び身体機能性障害があります。
(2) 高次脳機能障害の場合,「意思疎通能力」,「問題解決能力」,「作業負荷に対する持続力・持久力」及び「社会行動能力」の4つの能力について,7段階についての判断結果を踏まえて障害等級(3級,5級,7級,9級,12級又は14級)が認定されます。
(3) 身体性機能障害の場合,麻痺の範囲(四肢麻痺,片麻痺又は単麻痺)及びその程度(高度,中等度又は軽度)についての判定結果を踏まえて障害等級(1級,2級,3級,5級,7級,9級又は12級)が認定されます。

2 非器質性精神障害
(1) うつ病やPTSD(外傷後ストレス障害)等,非器質性の精神障害については十分な治療の結果,完治には至らないものの,日常生活動作ができるようになり,症状がかなり軽快している場合には治癒の状態にあるものとして障害等級が認定されます。
(2) ① 「抑うつ状態」,「不安の状態」,「意欲低下の状態」,「慢性化した幻覚・妄想性の状態」,「記憶又は知的能力の障害」,「その他の障害(衝動性の障害,不定愁訴など)」といった「精神症状」が残った場合には,
② 「身辺日常生活」,「仕事・生活に積極性・関心をもつこと」,「通勤・勤務時間の遵守」,「普通に作業を持続すること」,「他人との意思疎通」,「対人関係・協調性」,「身辺の安全保持,危機の回避」,「困難・失敗への対応」といった「能力に関する判断項目」について,
③ 「できない」,「しばしば助言・援助が必要」,「時に助言・援助が必要」,「適切又は概ねできる」の4段階についての判定結果を踏まえて障害等級(9級,12級又は14級)が認定されます。

3 脊髄損傷の後遺障害
・ 麻痺の範囲(四肢麻痺,片麻痺又は単麻痺)及びその程度(高度,中等度又は軽度)についての判定結果を踏まえて障害等級(1級,2級,3級,5級,7級,9級又は12級)が認定されます。

4 外傷性てんかん
・ 発作の型により区分した上で発作回数によって障害等級(5級,7級,9級又は12級)が認定されます。

5 反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)
・ 関節拘縮,骨の萎縮,皮膚の変化(皮膚温の変化,皮膚の萎縮)の三つの症状が明らかに認められる場合,障害等級(7級,9級又は12級)が認定されます。
・ RSDは,カウザルギーに類似した外傷後に生じる強度の疼痛です。カウザルギーと異なり,例えば尺骨神経等の主要な末梢神経の損傷がなくても,微細な末梢神経の損傷が生じたことにより,外傷部位にカウザルギーと同様の疼痛が起こることがあるとされています。
非器質性精神障害の後遺障害の状態に関する意見書(様式3)1/2
非器質性精神障害の後遺障害の状態に関する意見書(様式3)2/2
1(1) 交通事故(検察審査会を含む。)及び債務整理の初回の面談相談は無料であり,相続情報公開請求等の面談相談は30分3000円(税込み)です。
   交通事故及び債務整理については,無料の電話相談もやっています。
(2) 相談予約の電話番号は「お問い合わせ」に載せています。
  
2 執務時間は原則として平日の午前10時から午後7時30分までですが,事前のご予約があれば,午後8時30分まで夜間相談可能です。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)については,略歴及び取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図を参照してください。