後遺障害としてのむち打ち,腰椎捻挫,神経麻痺等

第0 目次

第1の1 総論
第1の2 他覚的所見
第2   14級の認定基準等
第3   12級の認定基準等
第4の1 必要な神経学的検査
第4の2 徒手筋力検査の具体的方法
第5   神経麻痺の種類,及び電気生理学的検査
第6の1 頚椎疾患
第6の2 神経根症及び脊髄症の症状
第7   症状固定後も通院を続けた方がいい場合があること等
第8   神経症状で14級が認定される場合における,後遺障害等級認定票の文言

*1 以下のページも参照してください。
① 損害保険料率算出機構による後遺障害等級の認定
・ 14級を含む後遺障害等級の認定率は,約4.69%(平成26年度)→約4.67%(平成27年度)→約4.55%(平成28年度)という風に推移しています。
② 後遺障害としての関節の可動域制限
③ 自賠責保険の保険金及び後遺障害等級
④ 自賠責保険の被害者請求及び加害者請求
⑤ 交通事故の示談をする場合の留意点
⑥ 保険会社の説明義務
⑦ 任意保険の示談代行制度
⑧ XP,CT,MRI等
→ MRI画像の鑑定についても説明しています。
⑨ 症状固定と後遺障害診断書
⑩ 初診時の留意点,公的医療保険,診療録及びレセプト
⑪ むち打ちの治療等
⑫ 物損に関する示談及び少額訴訟
⑬ 休職期間中の社会保険料及び税金
*2 裁判基準で賠償を受ける場合,後遺障害14級の後遺障害慰謝料は110万円であり,後遺障害逸失利益は原則として事故前年の年収の9%から21%ぐらいです(14級の後遺障害は2年から5年で回復すると考えられています。)。
   そのため,例えば,事故前年の年収が300万円とした場合,後遺障害14級と非該当とでは,最終的な賠償額が137万円から173万円ぐらい異なることとなります。
*3 公務災害の場合,「障害等級の決定に係る証明資料について」(通知)(平成24年3月30日職補-116)(人事院事務総局職員福祉局補償課長発)が適用されます。
*5 むち打ち慰謝料相談.net「14級9号:脛骨高原骨折後神経症状(50代女性・栃木県)」には「弊事務所の経験上、14級9号の認定は頚部・腰部に甘く四肢等に厳しいと認識している。このため、四肢神経症状には万全の準備が必要となる。」と書いてあります。
*6 MSDマニュアルHP「脳,脊髄,末梢神経の病気の検査」の「筋電図検査と神経伝導検査」によれば,神経根症又は脊髄症によるしびれがある場合,筋電図検査が有効であり,末梢神経障害によるしびれがある場合,筋電図検査及び神経伝導速度検査が有効であると思われます。
   例えば,大阪急性期・総合医療センター神経内科において,筋電図及び末梢神経伝導検査をしています(大阪急性期・総合医療センターHP「神経内科」参照)。
*7 大雑把に言えば,神経根症の場合,片方の上肢に痛み・しびれが発生するのに対し,脊髄症の場合,両方の上肢にしびれが発生します。
*8 「自賠責保険後遺障害診断書」「神経学的所見の推移について」及び「頚椎捻挫・腰椎捻挫の症状の推移について」を掲載しています。
自賠責保険後遺障害診断書1/2
自賠責保険後遺障害診断書2/2
神経学的所見の推移について
頚椎捻挫・腰椎捻挫の症状の推移について

第1の1 総論

1 症状固定
(1) 症状固定とは,医学上一般に承認された治療方法をもってしても,その効果が期待し得ない状態で,かつ,残存する症状が自然的経過によって到達すると認められる最終の状態に達したときをいいます。
(2) 東京交通事故相談サポートHP「症状固定について」には,「むちうちの症状固定時期」として以下の記載があります。
   むちうちは見えにくい障害であり、客観的に証明することが困難な障害なので、後遺障害認定に際して、治療期間や通院日数も重視されます。そのため、後遺障害として認定されるケースは、6ヶ月以上の通院・治療期間を経て症状固定となる場合が一般的です(交通事故被害者を2度と泣かせないHP「症状固定に少なくとも6か月必要という言説があるけれど、どこまで正しいのか」参照)。
(3) 症状固定前のむち打ちについては,「むち打ちの治療等」を参照してください。

2 頚椎捻挫及び腰椎捻挫の後遺障害認定における判断要素等
(1) むち打ち(頚椎捻挫),腰椎捻挫等の後遺障害認定における共通の判断要素は以下のとおりと思われます。
① 事故状況,車両損傷状況
② 受傷態様,事故直後の傷害の程度
③ 初診時の診断及び検査内容
④ 治療経過
⑤ 症状固定時に残存する症状の内容
(2)ア 例えば,実況見分調書において,追突事故における被追突車両が前方に押し出されていない場合,前方に押し出された場合と比べて衝撃は小さいと判断されます。
イ 治療経過として最も大事なのは,整形外科に何回,通院したかです。
ウ 治療中に,①神経ブロック療法(神経や神経の周辺に局所麻酔薬を注射して痛みをなくす方法),又は②トリガーポイント注射(トリガーポイント(押すと痛いツボ)を見つけて,そこに麻酔薬を注射する方法)をしている場合,治療経過として痛みが酷かったと判断されます。
(3) 自賠責保険の場合,むち打ち,腰椎捻挫等は,①障害の存在が他覚的に証明できる場合,12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」と認定され,②障害の存在が医学的に説明できるに過ぎない場合,14級9号「局部に神経症状を残すもの」と認定され,③医学的に説明できない場合,非該当とされます。
   医学的に説明可能といえるためには,①症状が一貫していること,及び②将来においても回復困難と認められること(14級か非該当かのボーダーラインの場合,医師の所見が特に重要になります。)の2点が大事です。
(4) むち打ちの後遺障害については,交通事故後遺症認定HP「むちうちの後遺障害認定」が非常に参考になります。
(5) 弁護士による交通事故相談HP(ベリーベスト法律事務所)「交通事故で最も多い「むちうち」の症状と支払われる保険金について」が載っていて,交通事故弁護士ナビ「むちうちの後遺症(後遺障害)認定と慰謝料増額ガイド」が載っています。

3 頚部捻挫を原因として,脊柱の運動障害が認定されることはないこと
(1) 脊柱に運動障害を残すものとして後遺障害等級8級2号が認定されるためには,頚部に脊柱圧迫骨折又は脊椎完全脱臼があること又は脊椎固定術等が行われたことが条件です。 
  そのため,頚椎捻挫の痛みで首を回すことが難しくなったとしても,後遺障害認定において,脊柱に運動障害を残したなどと認定されることは絶対にありません。
(2) 「せき柱及びその他の体幹骨、上肢並びに下肢の障害に関する障害等級認定基準」には「エックス線写真等では、せき椎圧迫骨折等又はせき椎固定術が認められず、また、項背腰部軟部組織の器質的変化も認められず、単に、疼痛のために運動障害を残すものは、局部の神経症状として等級を認定すること。」と書いてあります。

4 しびれ
(1)ア 日本神経学会HP「(症状編)しびれ」によれば,しびれの種類として以下のものがあります。
① 「触っても感覚がにぶい」,「冷たさや熱さがが感じにくい」,「痛みを感じにくい」などの感覚鈍麻 (感覚の低下)
② 「何もしなくてもジンジンする、ビリビリする」,「針でさされたような感じ」,「灼けつく様な感じ」などの異常感覚
③ 「手足に力が入りにくい」、「動きが悪い」などの運動麻痺 (脱力)
イ 同HPの「脳神経内科での診察と検査」によれば,しびれの原因として末梢神経の病気が疑われる場合,神経伝導検査や筋電図検査などを行い,末梢神経の機能を調べるとのことです。
   また,同HPに「しびれの原因となる主な病気」が載っています。
(2) 日本整形外科学会HP「整形外科/運動器 症状・病気をしらべる」に以下のページがあります。
① しびれ
→ (a)内科的原因のしびれ,(b)脊椎に関連するしびれ及び(c)末梢神経に関連するしびれに分かれるとのことです。
② 上肢のしびれ
→ しびれの部位による考え方等が載っています。
(3) 後遺障害の等級認定手続き 慈友行政書士事務所HP「局部に神経症状を残すもの第14級9号とは」には「シビレの症状については、電気生理学的検査(針筋電図・神経伝導検査)によって客観的に計ることができますので、シビレの症状がある場合には電気生理学的検査を受診してください。」と書いてあります。

5 頚椎椎間板ヘルニアの補足
   やまだカイロプラクティック鍼灸院HP「頚椎椎間板ヘルニアと頚椎症」には「椎間板ヘルニアの好発部位はC5-C6間、 次いでC6-C7間、C4-C5間、C3-C4間、C7-T1間の順に多いと言われていて、可動域の大きい中・下部頚椎に好発します(Cは頸椎、Tは胸椎を表します)。 」と書いてあります。

6 腰椎椎間板ヘルニア
(1) J-STAGE HPの「腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン改訂第2版」2頁によれば,腰椎椎間板ヘルニアの診断基準は以下のとおりです。
① 腰痛・下肢痛を有する(主に片側,ないしは片側優位)。
② 安静時にも症状を有する。
③ SLRテストは陽性(ただし,高齢者では絶対条件ではない。)。
④ MRIなど画像所見で椎間板の突出がみられ,脊柱管狭窄の所見と合併していない。
⑤ 症状と画像所見が一致する。
(2)ア 「腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン改訂第2版」3頁によれば,腰椎椎間板ヘルニアの形態的分類として,軽い方から順番に,膨隆型,突出型,脱出型及び遊離脱出型があります。
イ 膨隆型及び突出型の場合,髄核が繊維輪の中にあるものの,脱出型及び遊離脱出型の場合,髄核が繊維輪を飛び出しています。
(3) MindsガイドラインライブラリHP「腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン(改訂第2版)」及び「腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2011」が載っています。
(4) 交通事故に強い弁護士の相談サイト「むちうち」及び「ヘルニア」が載っています。

第1の2 他覚的所見

1 医学上の他覚的所見
(1)   他覚的所見とは,一般的には,診断医が客観的観察によって確認できる身体的異常をいい,理学的検査(視診,打診,聴診,触診),画像検査や神経学的検査によって確認される所見をいいます。
(2) 医師など観察者が明白に認識できた症状や異常な徴候をいい,自覚症状との関係は時にあいまいなこともあります。
(3) 他覚「的」所見と他覚所見は同じ意味です。

2 保険業界の他覚的所見
   「後遺障害の認定と異議申立て-むち打ち損傷事案-」(保険毎日新聞社)51頁及び52頁によれば,「医療審査「覚書」」(自動車保険ジャーナル)80頁に以下の記載があるみたいです。
   一般人に限らず保険業界でも、時には医師でさえ、『症状(自覚的訴え)』と『所見(徴候)」を混同している人を見受けます。英語では、symptom(症状)とsign(所見・徴候)といったようにしっかり区別されています。簡単にいうと、痛みやしびれ、だるさ、凝りなどは『(自覚)症状』であり、腫れや皮下出血、発赤、局所熱感(自分で感じるのではなく他人が触って感じる)、変形、筋萎縮、さらに広義には検査所見などが「(他覚)所見』ということになります。
   ところで、 『症状」と『所見』を「主観」と「客観」という概念に置き換えて、それぞれの関与の強さという観点から、明確には無理であるものの段階別に分けてみると次のようになるかと思います(教科書的事項でなく、私の臨床経験に基く個人的見解です)。
① 純粋な自覚症状
   痛み、 しびれ、凝り、倦怠感、脱力感、冷感じ、火照り…
②   主観を通した他覚所見(患者の自覚的訴え・申告に基づき客観的に把握されるもので、心因性要因もしくは意図的要因が容易に入る可能性がある)
   圧痛、疼痛性可動域制限、握力、スパーリングテストなどの神経根圧迫(刺激)徴候、ラゼーグ・SLRテストなどの神経根牽引(刺激)徴候
③   主観も入り得る他覚所見(知覚・運動・反射など総合的所見や、場合により各種画像検査、電気生理学的検査、専門的特殊検査などによる裏付けが必要になるもの)
   知覚鈍麻・脱失、筋力低下、手指巧綴運動障害、排尿障害、性機能障害、歩行障害・歩容異常…
④   客観的に証明される厳密な意味での他覚所見
   出血、皮下出血、腫張、浮腫、皮膚変色、皮膚搬痕、発汗異常、脱毛、筋硬結.過緊張、筋萎縮、反射異常、変形、血液検査所見、画像検査所見、電気生理学的検査所見(筋電図、神経伝導速度、各種誘発電位検査…)
   このうち、一般に、医師達はどこまでを他覚所見とするかというと、私の経験上、③、④さらには②までをいう場合が多いように感じます。
   ところが、保険業界、特に前述の如く、局部の神経症状の後遺障害の12級、14級、非該当の認定実態を見ていると、②は必ずしも他覚所見とは認められていないように感じます。すなわち、大雑把で乱暴ないい方ですが、保険業界における他覚所見とは③と④に限られるように思うのです。

第2 14級の認定基準等

1(1) 14級は以下のいずれかの場合に認定されます。
① 目立った他覚的所見は認められないものの,神経系統の障害が医学的に推定される場合
→ (a)少なくとも6ヶ月以上,なるべく1週間に2回以上(整骨院を併用している場合,少なくとも1週間に1回以上),整形外科に通院し,かつ,(b)初診時から症状固定までの間,自覚症状が連続していて一貫性が認められることが大切です。
② 外傷性の画像所見は認められないものの,自覚症状を説明する神経学的所見が認められる場合
(2) 神経学的所見がない場合であっても,MRI検査の所見があれば14級の認定を得られることがあるみたいです(行政書士事務所インシデントHP「交通事故による頚椎捻挫・腰椎捻挫で併合14級が認定されました。」参照)が,神経学的所見があるにこしたことはありません。

2 後遺障害等級を認定してもらいたい場合,主たる治療先として整形外科を選ぶ必要があります。
   整骨院の場合,通院慰謝料の計算では整形外科と同じ扱いを受けますものの,後遺障害等級の認定では整形外科と異なり治療実績として評価してもらうことができません。

3 リハビリ施設のない整形外科の場合,治療のために1週間に2回通院することが難しいため,1週間に1回は整形外科に通院し,整形外科医の指示に基づき,1週間に1回以上,整骨院でリハビリ治療を受ければいいです。

4 後遺障害の等級認定手続き 慈友行政書士事務所HP「局部に神経症状を残すもの第14級9号とは」によれば,実務上から14級認定の前提条件は以下の4つと書いてあります。
① 事故受傷より1週間以内に医療機関にて外傷性の傷病名が確認できること。
② 6ヶ月以上の医療機関への通院履歴が確認できること。
③ 通院期間中に4週間以上の中断が無いこと。
④ 半年間で40日以上の通院があること。

5 静岡の弁護士による交通事故被害相談サイト「むち打ち症被害者が留意しなければならないこと」には以下の記載があります。
   このMRI画像所見がなくては、今では第12級13号を獲得するのはほとんど無理です。
   MRI所見によって、ヘルニアがあるか否か、そのヘルニアがどの神経根や脊髄を圧迫しているかは容易にわかるのですが、まだ現段階では、静岡自賠責損害調査事務所はこの画像所見を無視しています。
   しかし、この画像所見があれば、経年性の変性所見だとはしますが第14級9号を認定することは多いのです。
   いずれにしても、MRIの所見がなければ、静岡自賠責損害調査事務所にも、裁判所にも適正な後遺障害を認定させることは不可能となっています。

6 大阪地裁の損害賠償の算定基準では,14級相当のむち打ち等の場合,労働能力喪失期間は2年から5年が目安とされています(「労働能力の喪失割合及び喪失期間」参照)。

第3 12級の認定基準等

1 総論
(1) 自賠責保険の場合,原則として,自覚症状に一致する外傷性の画像所見と神経学的所見の両方が認められた場合に12級に認定されます。
   ただし,被害者が高齢であるほど,頚部及び腰部に年齢相応の変性が加わっていることから,外傷性の画像所見が得られにくくなります。
(2) 自賠責保険の場合,画像所見により神経根の圧迫等を確認できる場合に限り12級が認定されるのに対し,労災保険の場合,そうでない場合を含めて12級が認定されることがあります。
   そのため,神経学的所見の程度によっては,自賠責保険では14級が認定されるのに対し,労災保険では12級が認定されることがあります。
(3) 神経系統の障害(例えば,神経麻痺)が電気生理学的検査(例えば,神経伝導速度検査及び筋電図検査)によって確認できた場合,12級が認定される可能性が高くなります。
(4) 大阪地裁の損害賠償の算定基準では,12級相当のむち打ち等の場合,労働能力喪失期間は5年から10年が目安とされています(「労働能力の喪失割合及び喪失期間」参照)。
 
2 12級認定のための画像所見 
(1)   画像所見の例としては,ストレートネック(生理的前湾消失),腰部又は頸部の脊柱管狭窄(せきちゅうかんきょうさく),腰部又は頸部の椎間板(ついかんばん)ヘルニアがあります。
   しかし,画像所見の原因の多くは交通事故によって突然発生するものではなく,日常の生活習慣(姿勢等),加齢によって発生する変性の域を出ないことが多いため,画像所見が出たとしても,外傷性の異常ではないと判断されることが多いです。
(2)ア 例えば,ストレートネックは,頸椎の生理的前湾角度が30度以下の首の状態をいいますところ,うつむき姿勢になることが多い現代人はストレートネックになりやすいです(あかつき療法院HP「うつむき姿勢になることが多い現代人はストレートネックになりやすい」参照)。
   脊柱管狭窄そのものは,加齢により脊柱管が細くなり,神経が圧迫されることにより症状が出現しますところ,脊柱管狭窄があるからといって必ずしも症状が出るわけではありません。実際,脊柱菅狭窄症は60歳以上の高齢者に多く見られます(ダスキンヘルスレントHP「腰部脊柱管狭窄症の症状・おすすめ福祉用具のご紹介」参照)。
   椎間板ヘルニアは,椎間板(骨と骨の間のクッションとなっているもの)がみずみずしさを失い,つぶれたような状態になり,後方に突出することにより,脊髄や神経根を圧迫することを原因に発症することがあります(椎間板の加齢による退行変性)。また,椎間板ヘルニアがあるからといって必ずしも症状が出るわけではありません。
イ   そのため,これらの症状に関する画像所見が出ただけで12級は認定されないのであって,神経学的所見によって補強される必要があります。
(3) 画像診断の世界は日進月歩みたいです(メディカルノートHP「発展著しい画像診断・治療-CTからMRI,核医学へ」参照)から,将来,取扱いが変わるかもしれません。

3 外部HPの記載
(1)   後遺障害の等級認定手続き 慈友行政書士事務所HP「「局部に頑固な神経症状の残すもの」12級13号の認定要件」には以下の記載があります。
① 第12級の「局部にがん固な神経症状を残すもの」とは、労働には差し支えないが、医学的に証明できる神経症状をいい、知覚障害、局部のしびれ感、麻痺があるときに、それがレントゲン写真・CT写真・MRI写真・脳波検査・筋電図等の検査によって証明される場合とされ、また、「通常の労務に服することはでき、職種制限も認められないが、時には労務に支障が生じる場合があるもの」が該当すると記載され、疼痛等感覚障害では、「通常の労務に服することはできるが、時には強度の疼痛のため、ある程度差し支えがあるもの」が第12級とされています。 
   その上で、初診時に骨傷(骨折・脱臼が画像にて確認できる)が認められていることが前提条件になります。
② 捻挫後の症状で、頑固な神経症状として12級が認定されるのはごく稀です。残存している症状が医学的に「証明」できるものである必要があります。
(2)ア   にわ法律事務所HP「むち打ち 後遺障害 12級認定を受けた実際のMRI画像」では,①頚椎の変性や他の椎間板に比して、該当部位に明らかなヘルニアが認められること,②対応する神経学的異常所見が得られること,③水分含有量などから新鮮なヘルニア(外傷性)と判断されること,④筋電図検査で異常を確認できること,⑤「神経学的所見の推移について」及び「頚椎捻挫・腰椎捻挫の症状の推移について」が丁寧に作成されていること等が12級認定のポイントになったみたいです。
イ 水分含有量などから新鮮なヘルニアと判断してもらうためには,交通事故後,できる限り早くMRI撮影をする必要があります。
(3) にわ法律事務所HP「末梢神経障害の後遺障害等級認定のポイント」には以下の記載があります。
   脊髄から延びる神経根から神経が引き抜かれた場合、脊髄造影やMRI画像等で捉えることは可能ですが、末梢神経の損傷自体をレントゲン・MRIなどの画像で視覚的に捉えることは不可能です。
   そのため、末梢神経損傷は、徒手筋力テスト(MMT)、感覚(触覚・痛覚・温度覚・振動覚)検査、Tinel(ティネル)徴候などのほか、筋電図検査・神経伝導速度検査などの電気生理学的検査により、「他覚的に証明」することになります。

第4の1 必要な神経学的検査

1   総論
(1)   痛みやしびれといった神経症状に基づき後遺障害の等級認定申請を予定している場合,以下の神経学的検査をしてもらって下さい。
① 共通の検査
   
深部腱反射テスト徒手筋力テスト(MMT)及び筋萎縮検査
② 頸部に関する検査
   ジャクソンテスト
スパーリングテストといった神経根症状誘発テスト
③ 腰部に関する検査
   SLRテストFNSテストといった神経根症状誘発テスト
(2) 画像所見が他覚的所見に該当することに争いはないのに対し,各種神経学的所見の評価は慎重になされます。
   一般に,患者の意思と無関係に結果を得られる検査方法の方が,患者の応答や協力が不可欠な検査方法よりも客観性が高く,診断価値が高いとされています。
   そのため,自賠責保険の後遺障害等級認定においては,患者の意思と無関係に結果を得られる深部腱反射テスト及び筋萎縮検査の検査結果が重視されます。
(3) 最初の後遺障害申請により14級を認定してもらえた方が,異議申立てにより14級を認定してもらえた場合よりも最終的な損害賠償額が高くなるのが普通です。
   そのため,最初の後遺障害申請において「神経学的所見の推移について」及び「頚椎捻挫・腰椎捻挫の症状の推移について」の作成を通じて一通りの神経学的検査を実施してもらう方がいいです。
(4) にわ法律事務所HPの「神経学的異常所見とは」が参考になります。 

2 共通の検査
(1) 深部腱反射テスト
ア 腱反射は,急な外力によって筋が損傷するのを防ぐための生理的な防御反応であり,深部腱反射テストは,ゴムハンマーなどの打腱器で腱を打って刺激を与え,筋肉が収縮する反応を見る検査です。
   正常な場合は「+」とだけ記載されますものの,神経根又は末梢神経に異常がある場合,反射が「低下」(±)又は「消失」(-)と記載され,脊髄に異常がある場合,反射が「著名な亢進」(こうしん)(+++)又は「亢進」(++)と記載されます。
イ   深部腱反射を観察しやすい場所は以下のとおりです。
(上肢)
① 上腕二頭筋(じょうわんにとうきん)(通称は「力こぶ」です。)の遠位腱(肘の内側)
→ 筋皮神経(きんぴしんけい)及びC5(第五頸髄)が関係しています。
② 腕撓骨筋(わんとうこつきん)(肘関節の屈曲等を行う筋肉です。)の遠位腱(肘頭より近位)
→ 橈骨神経(とうこつしんけい)及びC6(第六頸髄)が関係しています。
③ 上腕三頭筋(じょうわんさんとうきん)(力こぶの反対側の筋肉です。)の遠位腱(上腕後面)
→ 橈骨神経(とうこつしんけい)及びC7(第七頸髄)が関係しています。
(下肢)
④ 大腿四頭筋(だいたいよんとうきん)の膝蓋腱(膝蓋骨と脛骨の間)
→ 大腿神経及びL4(第四腰髄)が関係しています。
⑤ 下腿三頭筋(かたいさんとうきん)のアキレス腱(かかとより近位)
→ 脛骨神経及びS1(第一仙髄)が関係しています。
ウ 労災保険・障害年金メディカル社労士HP「頸椎椎間板ヘルニア」では,深部腱反射及び表在反射のテスト方法が図を使って解説されています。
エ J-STAGE HPに「深部腱反射検査における検査のポイント」が載っています。
(2) 徒手筋力テスト
ア 徒手筋力テストは,医師が手で抵抗を加えて患者の筋力の強さを計る検査であり,6段階で評価します。
イ 具体的なレベルは以下のとおりです(看護ルーHP「徒手筋力テスト(Manual Muscle Test;MMT)|知っておきたい臨床で使う指標(6)」参照)。
・   強い抵抗を加えても運動域全体にわたって動かせる状態が5です。
・   抵抗を加えても運動域全体にわたって動かせる状態が4です。
・   抵抗を加えなければ重力に抗して運動域全体にわたって動かせる状態が3です。
・ 重力を除去すれば運動域全体にわたって動かせる状態が2です。
   例えば,肘関節を座位で屈曲させることはできないが,上肢をテーブルの上に置いた状態では運動域全体にわたって動かすことができる状態です。
・ 筋の収縮がわずかに確認されるだけで,関節運動は起こらない状態が1です。
・ 筋の収縮が全く見られない状態が0です。
ウ リハビリ(理学療法・作業療法)の素材集HP「徒手筋力テスト(MTT)のやり方を網羅!(上肢・下肢・体幹の評価方法)」が載っています。
(3) 筋萎縮検査
ア 筋萎縮検査は,筋肉がやせているかどうかを見える検査です。

イ   頸部に関する筋萎縮検査では,腕の肘関節の上下(上腕及び前腕)の周径をそれぞれ測定し,腰部に関する筋萎縮検査では,脚の膝関節の上下(大腿及び下腿)の周径をそれぞれ測定します。

3 頸部及び腰部の検査
(1) 総論
   頚部又は腰部の検査が実施された場合,後遺障害診断書において,痛みやしびれ等の訴えがある場合は陽性ということで「+」と記載され,痛みやしびれ等の訴えがない場合は陰性ということで「-」と記載されます。
(2) 頚部の検査
   ジャクソンテストは,頚部を後屈し,頭頂部に下方圧迫を加えることにより,患側上肢に放散痛(広く外側に広がるような痛みのことです。)が発生するかどうかを確認します。
   スパーリングテストは,頚部を後屈し,患側に側屈させ,頭頂部に下方圧迫を加えることにより,患側上肢に放散痛が発生するかどうかを確認します。
(3) 腰部の検査
ア   SLRテスト(下肢伸展挙上テスト)は,医師が患者を仰向けに寝かせて,膝関節を伸展した状態のまま患側下肢を挙上させることにより,下肢後面に疼痛が発生するかどうかを確認します。
   SLRテストで疼痛が誘発された場合,椎間板ヘルニアによるL5又はS1の神経根障害が発生している可能性があります。
イ FNSテスト(大腿神経伸展テスト)は,医師が
患者を俯せ(うつぶせ)に寝かせて,膝関節を深屈曲させることにより,大腿前面から膝前面にかけて疼痛が発生するかどうかを確認します。
   FNSテストで疼痛が誘発された場合,椎間板ヘルニア又は脊柱菅狭窄症によるL2ないしL4の神経根障害が発生している可能性があります。

第4の2 徒手筋力検査の具体的方法

日本神経学会HP「神経学的検査チャート作成の手引き」「神経学的検査チャート」が掲載されています。)によれば,以下のとおりです。

g)筋力
   徒手筋力検査は重力の負荷がかかる肢位で、他動的な関節可動域の最終点で最大の力を出してもらい、これに対して検者が抵抗して評価する。抵抗はゆっくり徐々に増すように加える。筋力は次の6段階で評価する。
6段階評価の基準
5:強い抵抗に抗して全関節可動域の運動が可能。
4:弱い抵抗に抗して全関節可動域の運動が可能。
3:重力に抗して全関節可動域の運動が可能。
2:重力を取り除けば全関節可動域の運動が可能。
1:筋の収縮はふれるが関節の運動はみられない。
0:筋の収縮もふれない。

1)頸部屈曲(前屈)
   頸部を前屈してもらい、患者の前額を背側に押して、抵抗する筋力を判定する。

2)頸部伸展(後屈)
   頸部を後屈してもらい、患者の後頭部を前方に押して、抵抗する筋力を判定する。

3)三角筋
   両上肢を90゜まで側方挙上してもらい、肘関節のやや近位部を両手で上から押して筋力を判定する。必ず両側を検査する。

4)上腕二頭筋
   一側の肘関節を屈曲してもらい、患者の肩口を左手で押さえ、右手で前腕の遠位端を握り、肘関節を伸展して抵抗する筋力を判定する。必ず両側を検査する。

5)上腕三頭筋
   一側の肘関節を伸展してもらい、患者の肘関節のやや近位部前面を左手で押さえ、右手で前腕遠位端を持ち、肘関節を屈曲して抵抗する筋力を判定する。必ず両側を検査する。

6)手関節の背屈(手根伸筋群)
   手指を握り手関節を背屈してもらい、左手で患者の前腕を手関節の近くで握り、右手の掌側を患者の手背にあてがい、手関節を掌屈して抵抗する筋力を判定する。必ず両側を検査する。

7)手関節の掌屈(手根屈筋群)
   手指を握り手関節を掌屈してもらい、左手で患者の前腕を手関節の近くで握り、右手掌を患者の手掌にあてがい、手関節を背屈して抵抗する筋力を判定する。必ず両側を検査する。

8)母指対立筋
   母指と小指を対立してもらい、患者の母指と小指の基部に母指をあてて開き、抵抗する筋力を判定する。必ず両側を検査する。

9)腸腰筋
   大腿部が腹部につくような方向に股関節を屈曲してもらい(膝は曲げたまま)、大腿前面に手をあて、股関節を伸展させようとする時の抵抗筋力を判定する。必ず両側を検査する。

10)大腿四頭筋
   膝関節をピーンと伸ばしてもらい、大腿部を左手で下から支え、右手で足関節の近位部を上から握り、膝関節を屈曲させようとする時の抵抗筋力を判定する。必ず両側を検査する。

11)大腿屈筋群
   膝関節を最大屈曲してもらい、患者の下腿遠位部を右手で握って下肢を伸展するように引っ張り、抵抗する筋力を判定する。必ず両側を検査する。

12)前脛骨筋
   足関節を背屈してもらい、患者の足背に手をあてがい、足関節を底屈し抵抗する筋力を判定する(両側同時でもよい)。

13)下腿三頭筋(腓腹筋)
   足関節を底屈してもらい、患者の足底に手をあてがい、足関節を背屈し抵抗する筋力を判定する。必ず両側を検査する。
   立位で行う場合は、片足立ちになって踵を最大に浮かせる運動を繰り返してもらい、踵が十分に上がっていることを確認して筋力を判定する。必ず両側を検査する。

14)上肢バレー徴候(Mingazziniの上肢挙上試験)
   両手を前に伸ばして手掌を上に向けて指をつけてもらい、閉眼を指示して、上肢の降下、前腕回内、肘関節屈曲の有無を観察する。上肢が回内し、下がる場合を陽性とする。tPAの治療判定時には手掌を下に向けた位置で行われる。

15)下肢バレー徴候
   腹臥位で両膝関節を90度屈曲してもらい、そのまま両足が接しないように膝を曲げた状態を維持してもらう。下腿が下降した場合を陽性とする。本検査は腹臥位にすることがむずかしい場合もあり、必須ではない。

16)Mingazzini徴候
   仰臥位で股関節を90度くらい屈曲してもらい、下腿をベッドと水平になる状態で維持してもらう。下腿が下降した場合を陽性とする。

17)握力
   握力計を渡し、握る部位を指示して、原則として立位で片手を強く握ってもらう。必ず両側を検査して、その測定値を記載する。

第5 神経麻痺の種類,及び電気生理学的検査

1 神経麻痺の種類
(1) 総論
ア   交通事故で生じる神経麻痺のうち,上肢に発生するものとしては,①腕神経叢(わんしんけいそう)損傷,②橈骨(とうこつ)神経麻痺,③尺骨(しゃっこつ)神経麻痺,④正中(せいちゅう)神経麻痺があります。
   下肢に発生するものとしては,⑤腓骨(ひこつ)神経麻痺があります。
イ 神経根引き抜き損傷は,腕神経叢損傷(わんしんけいそうそんしょう)のうち,神経移植術等による損傷部の再建が不可能な症例です。
   ただし,日本救急医学会HP「引き抜き損傷」には,「従来,回復不能な損傷とされていたが,最近では一部の機能回復をめざし神経移行術が施行されることもある。」と書いてあります。
ウ 日本整形外科学会HPの「腕神経叢損傷」「撓骨神経麻痺」「尺骨神経麻痺」「正中神経麻痺」「手根管症候群」「腓骨神経麻痺」を参照しています。
(2) 腕神経叢損傷
ア 腕神経叢は,首の部分の脊髄から出てくる第5頚神経(C5)から第8頚神経(C8)と第1胸神経(Th1)から伸びる神経群であり,鎖骨と第1肋骨の間を通り, 腋窩(えきか。脇の下)に向かって分布しています。
   それぞれ枝分かれしながら,腋窩(えきか)神経,筋皮神経,正中神経,橈骨神経及び尺骨神経という5本の上肢の神経となります。 
イ オートバイの転倒事故やスキーなど高速滑走のスポーツでの転倒で肩と側頭部で着地した際,又は機械に腕を巻き込まれて腕が引き抜かれるような外力が働いた場合,腕神経叢が引き伸ばされて損傷します。
ウ 腕神経叢損傷は,損傷高位と範囲により,上位型,下位型及び全型に分けられます。
   一般成人の腕神経叢損傷では,全型が多く,ついで上位型,下位型は少ないです。
エ 上位型の腕神経叢損傷がある場合,肩の挙上,肘の屈曲が不可能となり,肩の回旋,前腕の回外力が低下します。上腕近位外側と前腕外側に感覚障害があります。
   下位型の腕神経叢損傷がある場合,前腕にある手首・手指の屈筋や手の中の筋(骨間筋、小指球筋)の麻痺により、手指の運動が障害されます。前腕や手の尺側に感覚障害があります。
全型の腕神経叢損傷がある場合,肩から手まで上肢全体の運動と感覚が障害されます。神経根の引き抜き損傷があると,ホルネル徴候(眼瞼下垂(がんけんかすい),眼裂(がんれつ)狭小,瞳孔(どうこう)縮小)が見られます。
オ 様々な脊髄神経の神経線維が網目状に入り組んだ部分を神経叢と呼びます(MSDマニュアル「神経叢疾患」参照)。
(3) 橈骨神経麻痺
ア 橈骨神経は,上腕骨の後ろを走行して,前腕の外側を通って手に向かう神経です。
イ 橈骨神経麻痺の場合,手の甲がしびれるとか,親指と人差し指でうまく握れないとか,手首に力が入らず,手が垂れ下がるといった症状が現れます。
(4) 尺骨神経麻痺
ア 尺骨神経は,上腕,肘の内側を通って,前腕部から手先まで走行している神経です。
イ 尺骨神経麻痺の場合,薬指と小指のしびれがひどいとか,まっすぐ伸ばすことができないといった症状が現れます。
ウ Wikipediaの「頚椎症」には,「尺骨神経障害では感覚障害が手首より遠位部第4指の尺側と第5指の掌側と背側が障害される。C8~T1根症では手首より前腕に感覚障害が広がっている。 」と書いてあります。
(5) 正中神経麻痺
ア 正中神経は,手にとって最も重要な神経で,正中神経の傷害は,鋭敏な感覚と巧緻性を要求される手にとって致命的なダメージになります。
イ 肘より上の外傷で正中神経が損傷を受けた場合,親指等の感覚障害,手首の屈曲,手指の屈曲等の能力が障害されます。
   前腕から手首までの外傷で正中神経が損傷を受けた場合,親指の感覚障害等が発生します。
ウ 正中神経が手首(手関節)にある手根管(しゅこんかん)というトンネル内で圧迫された場合,手根管症候群として,親指,人差し指及び中指のしびれ,痛みが発生します。
エ Wikipediaの「頚椎症」には,「正中神経障害では感覚障害は手首より遠位部の掌側に限局し、第4指は橈側半分が障害される。C6~C7根症では手首より前腕の方に感覚障害の分布が広がっており手背部も障害される。」と書いてあります。
(6) 腓骨神経麻痺
ア 腓骨神経は,坐骨(ざこつ)神経から分かれて,膝関節の裏側から膝外側を下降して足指まで走行する神経です。
イ 腓骨神経麻痺の場合,足首と足指を垂れ下がって歩行が難しくなるとか,すねの外側から足の甲がしびれるといった症状が現れます。
 
2 電気生理学的検査
(1) 総論
ア 電気生理学的検査としては,筋電図(きんでんず)検査及び神経伝導速度検査があります。
   MSDマニュアルHP「脳,脊髄,末梢神経の病気の検査」の「筋電図検査と神経伝導検査」によれば,神経根症又は脊髄症によるしびれがある場合,筋電図検査が有効であり,末梢神経障害によるしびれがある場合,筋電図検査及び神経伝導速度検査が有効であると思われます。
イ 電気生理学的検査は,整形外科ではなく神経内科で実施される検査ですから,整形外科医に診療情報提供書(=紹介状)を書いてもらう必要があります。
ウ 神経麻痺が電気生理学的検査により認められた場合,12級以上の後遺障害等級の認定につながります。
   そのため,薬指と小指のしびれがひどいとか,手が垂れ下がるとか,足首と足指が垂れ下がるといった症状がある場合,電気生理学的検査で確認できる神経麻痺が原因である可能性がありますから,12級以上の認定を狙う場合,電気生理学的検査を受けて下さい。
 
(2) 筋電図検査(EMG)
ア 筋電図検査とは,被検査者の筋肉に針を刺して,筋肉の興奮時の電気活動を観測する検査をいいます。
イ 筋電図検査により,筋力低下の原因が神経にある(神経麻痺につながります。)のか,筋炎や筋ジストロフィーなどの筋肉そのものにあるのかが分かります(CMT友の会HP「神経伝導検査」参照)。
ウ 筋電図検査で得られる記録を筋電図と呼びます。
   脊髄神経根,末梢神経,筋肉又は神経筋接合部の異常によって筋力低下が起こっている場合,筋電図に異常がみられます。
   体のどこにどのような問題があるかに応じて,症状,診察結果,筋電図検査の結果にそれぞれ異なるパターンの異常が現れます。
   検査技師が日常的に行えるCT検査や脳波検査と異なり,筋電図検査では,専門知識をもつ神経科医が適切な神経と筋肉を選択して,得られた結果を解釈する必要があります(MSDマニュアルHP「脳,脊髄,末梢神経の病気の検査」の「筋電図検査と神経伝導検査」参照)。
エ 筋電図検査は,針を筋肉に刺す検査ですから,痛みを伴います。
 
(3) 神経伝導速度検査
ア 神経伝導速度検査とは,末梢神経の病気が疑われる患者を対象に実施されるものであり,同一神経の2点に電気刺激を与え,その反応電位の波形の時間差を測定する検査をいい,運動神経を評価するものと,感覚神経を評価するものとがあります。
イ 腕について行う場合,正中神経又は尺骨神経においてそれぞれ運動神経繊維及び間隔神経線維を調べ,足について行う場合,脛骨(けいこつ)神経で運動神経繊維を,腓腹(ひふく)神経で感覚神経線維を,腓骨(ひこつ)神経で運動神経繊維及び感覚神経線維を調べます(CMT友の会HP「神経伝導検査」参照)。
   それぞれの神経線維に沿って2箇所以上で電気の刺激をして,画面上で波形(活動電位)が現れるのを確認し,その間隔での時差から,伝わる速度(伝導速度)を調べます。
ウ 脳,脊髄,脊髄神経根又は筋肉だけに異常がある場合,神経伝導速度検査では正常な結果が出ますMSDマニュアルHP「脳,脊髄,末梢神経の病気の検査」の「筋電図検査と神経伝導検査」参照)。
エ にいがたB級情報ファイルHP「神経伝導速度検査」の末尾によれば,正常値の下限は,上肢が秒速50m,下肢が秒速40mみたいです。

第6の1 頚椎疾患

1 発生する症状
(1)   以下の症状を引き起こす頚椎疾患としては,頚椎症,頚椎椎間板ヘルニア及び頚椎後縦靭帯骨化症があります(札幌南整形外科病院HP「頚椎疾患」参照)。
① 神経根症
   主に「片方の」首~肩・腕・手にかけて生じる,痛み(放散痛)・しびれや,力が入りにくい(筋力低下)といった症状
② 脊髄症
   「両方の」手足がしびれたり,手指の細かい動きが緩慢となることでボタンかけや箸の使いづらさ,書字の障害(巧緻運動障害)が見られる症状
③ 局所症状
   首や肩甲骨付近の痛みや肩こりなどの症状があり,首を動かすと痛みが増したり,首の動きに制限が見られたりする症状
(2) 大雑把に言えば,神経根症の場合,片方の上肢に痛み・しびれが発生するのに対し,脊髄症の場合,両方の上肢にしびれが発生します。

2 発症原因ごとの分類
(1) 頚椎症が原因となる場合
ア   加齢等により椎間板が変形し,頚椎に骨の出っ張り〈骨棘(こっきょく)〉が発生することがありますところ,これが神経の出口である椎間孔部で神経根に触れた場合に神経根症が発生し,脊髄の通り道である脊柱管での狭窄が発生した場合に脊髄症が発生します。
イ 日本整形外科学会HPに「頚椎症性神経根症」(頚椎横断図があります。)及び「頚椎症性脊髄症」(頚椎側面図があります。)が載っています。
(2) 頚椎椎間板ヘルニアが原因となる場合
ア   加齢等により椎間板に亀裂が生じ,椎間板の中にある髄核(ずいかく)というゲル状の組織が線維輪の外に飛び出すことでヘルニアが発生することがありますところ,これが,神経の出口である椎間孔部で神経根に触れた場合に神経根症が発生し,脊髄の通り道である脊柱管での狭窄が発生した場合に脊髄症が発生します。
イ 日本整形外科学会HPに「頚椎椎間板ヘルニア」「胸椎椎間板ヘルニア」及び「腰椎椎間板ヘルニア」が載っています。
ウ 腰痛の専門医による安心アドバイスHP「椎間板ヘルニア」が載っています。
(3) 頚椎後縦靭帯骨化症が原因となる場合
   加齢等により頚椎の椎体の後ろ側で脊髄の「前に」接している後縦靭帯が厚く骨化することがありますところ,これが神経の出口である椎間孔部で神経根に触れた場合に神経根症が発生し,脊髄の通り道である脊柱管での狭窄が発生した場合に脊髄症が発生します。

3 頚部脊柱管狭窄症との関係
(1)   頚部脊柱管狭窄症は,脊柱管が狭く,脊髄が圧迫することによって発症する病気でありますところ,その原因に着目して,頚椎椎間板ヘルニア,頚椎後縦靭帯骨化症又は頚椎黄色靭帯骨化症といわれることもあります(岩井整形外科内科病院HP「頚椎ヘルニア,頚部脊柱管狭窄症」参照)。
(2) 頚椎椎間板ヘルニアを原因とする頚部脊柱管狭窄症の場合,交通事故による外傷によって発症することがあります。

4 神経根
○日弁連交通事故相談センターHPの「神経根症」に,神経根に関して以下の記載があります。
   中枢神経である脊髄の腹側・背側から左右1対ずつ根糸と呼ばれる脊髄神経繊維の束が出て、それぞれ前根・後根をなしています。前根と後根は分節ごとに合流し、椎間孔を通って脊柱の外に出て31対の脊髄神経(第1~8頚神経・第1~12胸神経・第1~5腰神経・第1~5仙骨神経・尾骨神経)になります。この脊髄神経の根本の部分、脊髄から椎間孔までのびている部分が神経根です。脊髄損傷が中枢神経の損傷であるのに対し、神経根症は末梢神経の損傷です。

第6の2 神経根症及び脊髄症の症状

1 神経根症で出てくる症状
(1) 初発症状
ア 神経根痛は,運動繊維の前根と,感覚繊維の後根のいずれか,又は両者の刺激によって発生します。
イ 初発症状としては頚部又は肩甲骨周囲部の疼痛が多く,神経根のレベルにより痛みの場所は異なり,C5神経根障害及びC6神経根障害では肩甲上部及び上腕外側の事が多く,C7では肩甲間部・肩甲骨部及び上肢後ろ側が,C8では肩甲間部・肩甲骨部及び上肢内側が多いです。
ウ 頸髄は頚椎の後ろ側にあり,上から順番に8個ありますところ,C5は第五頸髄,C6は第六頸髄,C7は第七頸髄,C8は第八頸髄です。
(2) 感覚障害
ア 神経根痛に引き続き,自発的なしびれがどちらかの上肢に見られることが多いです。
イ 自覚的なしびれは必ずしも神経支配領域に一致しないことがあります。
ウ 他覚的な感覚障害は,個人差があるものの,おおむね,C6神経根障害では親指,C7神経根障害では中指,C8神経根障害では小指に存在することが多いです。
   他覚的な感覚障害(他覚的な知覚異常)とは,外界から与えられた感覚刺激に対して,本来伝えられるべきはずの感覚量と内容とは異なった感覚を生じる場合を言います。
   例えば,皮膚に筆で触刺激を与えた場合,感覚を鈍く感じたり(感覚鈍麻),強く感じたり(感覚過敏),温かく感じたりします(異常感覚・錯感覚)。
(3) 運動障害
ア 前根障害による支配筋の運動障害が発生することがありますところ,前根障害で起こる筋萎縮は必ず限局性です。
   なお,筋萎縮には,筋肉自体の病気による場合(筋原性筋萎縮)と、筋肉に運動の指令を直接伝えている運動神経の障害による場合(神経原性筋萎縮)があります(日本神経学会HP「筋肉のやせ」参照)。
イ C5神経根障害の場合,三角筋(力こぶの上にある筋肉です。)及び上腕二頭筋(通称は「力こぶ」です。)の筋力低下が発生することがあります。
ウ   C6神経根障害の場合,上腕二頭筋及び腕撓骨筋(わんとうこつきん)の筋力低下が発生することがあります。
エ C7神経根障害の場合,上腕三頭筋(上腕二頭筋の反対側の筋肉です。)の筋力低下が発生することがあります。
オ(ア) C8神経根障害の場合,①短母指伸筋(たんぼししんきん),②母指内転筋(ぼしないてんきん),③小指外転筋(しょうしがいてんきん),④総指伸筋(そうししんきん),⑤第一背側骨間筋(だいいちはいそくこっかんきん)の筋力低下が発生することがあります。
   ①及び②は親指の筋肉であり,③は小指の筋肉であり,④は手関節の背屈等を行う筋肉であり,⑤は親指と人差指の間の筋肉です。
(イ) 小手筋(手内筋)は,手首より遠位にその起始(きし。体の中心に近いこと)と終止を持つ筋肉の総称です。
   小手筋の萎縮や筋力低下を観察するのに臨床でよく用いられる筋は,小指外転筋及び第一背側骨間筋のほか,短母指外転筋(たんぼしがいてんきん)です(J-STAGE HP「脊髄・脊椎疾患における手の症候学:筋萎縮性側索硬化症におけるSplit Hand」参照)。
(4) 腱反射
ア 障害部位に対応する腱反射は低下又は消失し,その他の部位に対応する腱反射は正常です。
イ C5神経根障害又はC6神経根障害の場合,上腕二頭筋腱反射が低下又は消失します。
ウ C7神経根障害の場合,上腕三頭筋腱反射が低下又は消失します。
エ C8神経根障害の場合,左右を比較して手指屈筋反射の低下を見られることがあります。

2 脊髄症で出てくる症状
(1) 初発症状
ア   脊髄症は,神経根痛を伴わず,上肢のしびれで発症することが多いです。
イ ときにはしびれがなく,筋力低下・筋萎縮が徐々に進行する場合があります。
(2) 感覚障害
ア 神経根症の場合,単一の神経根を障害することが多いのに対し,脊髄症の場合,上肢感覚障害の範囲がより広範な傾向があります。
イ 単一椎間を障害した脊髄症の場合でも,C3/4椎間ではC5髄節のみでなく上肢全体,C4/5椎間ではC6髄節だけでなく手全体に,C5/6椎間ではC7髄節だけでなく親指を除く4本の指に感覚障害認めることが多いです。
(3) 運動障害
ア 脊髄の髄節障害により上肢の髄節性の筋力低下,筋萎縮を呈します。
イ 脊髄症における筋萎縮は,神経根症で見られるような限局性の場合と,多椎間の障害により上肢の比較的広範囲に見られる場合とがあります。
(4) 腱反射
   脊髄症では障害髄節レベルの腱反射は低下し,障害レベルよりも下の腱反射は亢進(こうしん)するのが原則です。

3 参照HP
   特に記載がない限り,「頚椎症の診療」を参照しています。

第7 症状固定後も通院を続けた方がいい場合があること等

1 通院期間が半年だけである場合,整形外科への通院頻度等によっては非該当となることがあります。
   ただし,最初の申請で非該当であった場合において,症状固定後もリハビリ目的等で月に1,2回以上,整形外科に通院していた場合,異議申立てにより14級を認定してもらえる可能性が出てきます。
   そのため,14級の認定があるまでの間,国民健康保険等を使って,月に1,2回以上,整形外科に通院しておく方がいいです。

2 裁判基準で賠償を受ける場合,後遺障害14級の後遺障害慰謝料は110万円であり,後遺障害逸失利益は原則として事故前年の年収の9%から21%ぐらいです(14級の後遺障害は2年から5年で回復すると考えられています。)。

   そのため,例えば,事故前年の年収が300万円とした場合,後遺障害14級と非該当とでは,最終的な賠償額が137万円から173万円ぐらい異なることとなります。

3 異議申立てによって初めて後遺障害14級の認定を受けた場合,後遺障害慰謝料は110万円より少なくなりますし,後遺障害逸失利益も少なくなります(2年ぐらいで回復すると認定されることが多いです。)。

   そのため,最初の後遺障害申請において充実した後遺障害診断書を主治医に作成してもらうことが望ましいです。


第8 神経症状で14級が認定される場合における,後遺障害等級認定票の文言

○神経症状で14級が認定される場合における,後遺障害等級認定票の文言は,以下のような感じです。

1.頚椎捻挫後の○○,○○の症状については,提出の頚部画像上,本件事故による骨折等の明らかな外傷性変化は認め難く,その他診断書等からも,症状の裏付けとなる客観的な医学的所見には乏しいことから,他覚的に神経系統の障害が証明されるものとは捉えられません。
   しかしながら,治療状況,症状推移なども勘案すれば,将来においても回復が困難と見込まれる障害と捉えられることから,「局部に神経症状を残すもの」として別表第二第14級9号に該当するものと判断します。

2.腰椎捻挫後の○○,○○の症状については,提出の頚部画像上,本件事故による骨折等の明らかな外傷性変化は認め難く,その他診断書等からも,症状の裏付けとなる客観的な医学的所見には乏しいことから,他覚的に神経系統の障害が証明されるものとは捉えられません。
   しかしながら,治療状況,症状推移なども勘案すれば,将来においても回復が困難と見込まれる障害と捉えられることから,「局部に神経症状を残すもの」として別表第二第14級9号に該当するものと判断します。

   前記1.および2.の障害を併合した結果,別表第二併合第14級と判断します。
1(1) 交通事故(検察審査会を含む。)及び債務整理の初回の面談相談は無料であり,相続情報公開請求等の面談相談は30分3000円(税込み)です。
   交通事故及び債務整理については,無料の電話相談もやっています。
(2) 相談予約の電話番号は「お問い合わせ」に載せています。
  
2 執務時間は原則として平日の午前10時から午後7時30分までですが,事前のご予約があれば,午後8時30分まで夜間相談可能です。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)については,略歴及び取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図を参照してください。