損害保険料率算出機構による後遺障害等級の認定

第0 目次

第1   損害保険料率算出機構
第2   後遺障害の等級認定の手続
第3の1 後遺障害の等級認定の基準
第3の2 関節の可動域制限が後遺障害となる場合の取扱い
第4   併合,相当及び加重
第5   後遺障害等級別認定件数
第6   後遺障害等級3級以上の認定件数の推移
第7   後遺障害等級認定申請の所要時間
第8   損害保険料率算出機構は,弁護士会照会に対し過去の自賠責保険の支給状況等を回答する場合があること

*1 「後遺障害としてのむち打ち,頸椎捻挫,神経麻痺等」も参照してください。
*2 後遺障害等級の具体的内容については,「自賠責保険の保険金及び後遺障害等級」を参照してください。

第1 損害保険料率算出機構

1 損害保険料率算出機構
(1) 後遺障害の等級認定とは,後遺障害が1級から14級までのどの等級に当たるのかを認定することをいいますところ,自賠責保険では,後遺障害の等級認定は,損害保険料率算出機構(損保料率機構,GIROJ)が行っています。
   自賠責保険では本来,損害額を調査して保険金額を決定するのは自賠責保険会社でありますものの,損害額の認定が会社ごとに異なるようでは,被害者の公平な救済の要請に沿わない結果を招くおそれがあります。
   そこで,損害保険料率算出団体に関する法律(昭和23年7月29日法律第193号)に基づき設立された特殊法人である,損害保険料率算出機構自賠責損害調査センターの調査事務所が,後遺障害等級認定等の損害調査を取り扱っています。
(2) 損害保険料率算出機構は,平成14年7月1日,損害保険料率算定会及び自動車保険料率算定会(=自算会)が再統合して発足しました。
(3) 平成28年4月1日現在の職員数は2194人です。
(4) 損害保険料率算出機構のディスクロージャー資料が,同機構HPの「ディスクロージャー資料一覧」に掲載されています。
 
2 自賠責損害調査事務所
(1) 自賠責損害調査事務所では,被害者が提出した「自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書」(=自賠責保険後遺障害診断書)を元に,従前の治療経過について,診断書,診療報酬明細書を取りそろえ,場合によっては,患部のXP,MRI,CT等の検査結果を取り付けた上で,各調査事務所の顧問医の意見を参考にして,後遺障害等級認定の担当者が等級を決めます。
(2) 損保料率機構の地区本部・自賠責損害調査事務所の所在地及び電話番号は,同機構HPの「地区本部・自賠責損害調査事務所」に掲載されています。
(3) 大阪府には,①大阪第一自賠責損害調査事務所(傷害部分の担当)及び②大阪第二自賠責損害調査事務所(後遺障害部分の担当)があり,住所はいずれも「〒530-0001 大阪市北区梅田3-4-5 毎日インテシオ6階」であり,電話番号はいずれも「06-6455-0267」です。

第2 後遺障害の等級認定の手続

1 後遺障害等級の認定は以下の場合になされます。
① 被害者からの被害者請求がなされた場合(自賠法16条1項)
② 賠償義務者,つまり自賠責保険の被保険者からの加害者請求がなされた場合(自賠法15条)
③ 一括払の前提として自賠責保険会社から損害保険料率算出機構に対し,任意保険金の支払の前に後遺障害等級の有無・程度の認定を請求するという,いわゆる事前認定の請求がなされた場合

2 一括払事案の場合,被害者は任意保険会社の事前認定手続のために,後遺障害診断書等の書類を任意保険会社に提出することになります。
    この場合,損害保険料率算出機構の認定結果は直接被害者には通知されませんから,被害者は,任意保険会社から事前認定結果を伝えてもらう必要があります。

3 事前認定では,被害者の後遺障害等級の有無・程度だけでなく,以下の事項も確認しています。
① 自賠責保険契約が有効に存在しているかどうか。
② 任意保険会社の損害支払額が自賠責保険の支払対象となるかどうか。
③ 重過失減額があるかどうか。

4 詳細については, 損害保険料率算出機構自賠責損害調査センターのパンフレットである「自賠責保険(共済)損害調査のしくみ」を参照してください。

5 後遺障害の等級認定結果に対して不服がある場合の手続については,「後遺障害の等級認定に対する不服申立て方法」を参照して下さい。 

自賠責保険後遺障害診断書1/2
自賠責保険後遺障害診断書2/2

第3の1 後遺障害の等級認定の基準

1 自賠責保険の場合,後遺障害等級の認定は原則として,労災保険における障害の等級認定の基準に準じて行うこととされています(自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」(平成13年金融庁・国土交通省告示第1号)「第3 後遺障害による損害」参照)。

2    労災保険における障害の等級認定は,以下の基準に基づいてなされます。
① 一般の障害
→ 昭和50年9月30日付け基発第565号別冊「障害等級認定基準」(労働省労働基準局長通知)
   「基本通達」といわれるものです。
② 神経系統の機能又は精神の障害
→ 平成15年8月8日付け基発第0808002号別添「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準」(厚生労働省労働基準局長通知)
③ 関節の機能障害
→ 平成16年6月4日付け基発第0604003号別紙「せき柱及びその他の体幹骨,上肢並びに下肢の傷害に関する障害等級認定基準・別添関節の機能書害の評価方法及び関節可動域の測定要領」(厚生労働省労働基準局長通知)
④ 眼の障害
→ 平成16年6月4日付け基発第0604004号別紙「眼の障害に関する障害等級認定基準」(厚生労働省労働基準局長通知)
⑤ 胸腹部臓器の障害
→ 平成18年1月25日付け基発第0125002号別紙「胸腹部臓器の障害に関する障害等級認定基準」(厚生労働省労働基準局長通知)

3 損害保険料率算出機構による後遺障害の等級認定は,基本通達及び認定基準に基づいて行われていますから,基本通達等に基づけばこういう判断ができるという議論の仕方をしない限り,自賠責保険の手続において被害者側の主張が認められることはありません。
    ただし,裁判所における損害の算定方法自体は,基本通達等の考え方に拘束されるわけではありません。

第3の2 関節の可動域制限が後遺障害となる場合の取扱い

1 総論
□ 骨折等による関節の可動域制限について後遺障害が残っている場合,健側(けんそく)(麻痺や障害等がない部位側のことです。)と比べて患側(かんそく)(麻痺や障害等がある部位側のことです。)についてどれぐらい関節を曲げることができるかによって,後遺障害等級が形式的に決まります。
□ 健側の可動域が大きければ大きいほど,健側に比べた患側の可動域が3/4以下であったり,1/2以下であったりしやすくなります。
   そのため,関節の可動域制限について後遺障害診断書を作成してもらう場合,健側がよりよく曲がるよう,事前のストレッチ運動を心がけて下さい。
□ 関節の可動域制限の後遺障害等級については,外部HPの「上肢機能障害」及び「下肢機能障害」が参考になります。
   また,関節の可動域に関する説明については,外部HPの「上肢・手指の関節機能障害(肩・ひじ・手首・手指の可動域制限など)」及び「下肢・足指の関節機能障害(股関節・ひざ・足首・足指の可動域制限など)」が,模式図が使用されていて非常に分かりやすいです。
□ 関節がどれぐらい曲がらなければ,どれぐらいの後遺障害等級になるのかを事前に認識した上で,関節の可動域を測定してもらって下さい(具体的基準は外部HPの「関節の可動域と測定方法?」に書いてあります。)。
□ 例えば,膝を曲げてしゃがむことができなくなった場合,曲げにくくなった膝の可動域が100度以下になっています(外部HPの「ひざはどんな働きをしているの?」参照)から,ケガをしていない膝の可動域が正常値である135度であるのであれば,後遺障害等級12級が認定されることとなります。

2 痛みを無理に我慢して関節を曲げる必要はないこと
□ 基準に照らしてわずかでも多い目に関節が曲がった場合,後遺障害等級が下がりますし,12級の基準より少しでも余分に曲がった場合,後遺障害等級は非該当となりますから,医師が無理に関節を曲げようとした場合,これ以上関節が曲がらないとすぐに伝えてください。
□ せき柱及びその他の体幹骨、上肢並びに下肢の障害に関する障害等級認定基準について(平成16年6月4日付け基発第0604003号)別添「関節の機能障害の評価方法及び関節可動域の測定要領」には,以下の記載があります(厚生労働省HPの「せき柱及びその他の体幹骨、上肢並びに下肢、眼の障害等級認定基準の一部改正について」参照)。
   関節可動域の測定値については、日本整形外科学会及び日本リハビリテーション医学会により決定された「関節可動域表示ならびに測定法」に従い、原則として、他動運動による測定値によることとするが、他動運動による測定値を採用することが適切でないものについては、自動運動による測定値を参考として、障害の認定を行う必要がある。 他動運動による測定値を採用することが適切でないものとは、例えば、末梢神経損傷を原因として関節を可動させる筋が弛緩性の麻痺となり、他動では関節が可動するが、自動では可動できない場合、関節を可動させるとがまんできない程度の痛みが生じるために自動では可動できないと医学的に判断される場合等をいう。

第4 併合,相当及び加重

1 併合
(1) 後遺症につき,5級以上のものが複数あれば一番重い等級を3等級繰り上げ,8級以上のものが複数あれば一番重い等級を2等級繰り上げ,13級以上のものが複数あれば一番重い等級を1等級繰り上げられることとなり,繰り上げられた等級を併合等級といいます。
    ただし,14級の後遺障害がいくらあっても,一番重い等級が繰り上げられることはありません。
(2) 併合の扱いを受けるのは,あくまでも障害の系列が異なる場合に限られるのであって,同じ系列の障害は上位等級の内容が下位等級の内容を含んでいると考えられますから,併合の扱いは受けません。
 
2 相当
(1) 自賠法施行令別表第1の備考,及び別表第2の備考6には,「各等級の後遺障害に該当しない後遺障害であって,各等級の後遺障害に相当する者は,当該等級の後遺障害とする。」と規定されていますから,どの系列にも属さない障害であっても等級認定される場合があり,「相当等級」といいます。
(2) 自賠責保険において認められる相当等級の例は以下のとおりです。
① 嗅覚喪失又は味覚脱失(12級相当)
② 嗅覚減退(14級相当)
③ 外傷性散瞳(11級,12級又は14級相当)
④ 脊柱に中程度の変形を残すもの(8級相当)
 
3 加重
   既に身体障害のあった者がさらに同一部位について障害の程度を加重したときは,加重後の等級に応ずる保険金額から既にあった障害の等級に応ずる保険金額を控除した金額が保険金額となります。

第5 後遺障害等級別認定件数

1 損害保険料率算出機構のディスクロージャー資料一覧に掲載されている,平成27年度「自動車保険の概況」の末尾38頁によれば,平成26年度の後遺障害等級別認定件数の実績は以下のとおりであり,合計6万2350件です。
(1) 別表第一(介護を要する後遺障害)
1級:881人(1.41%)
2級:460人(0.74%)
(2) 別表第二(その他の後遺障害) 
1級:35件(0.06%)
2級:93件(0.15%)
3級:314件(0.50%)
4級:199件(0.32%)
5級:423件(0.68%)
6級:538件(0.86%)
7級:1013件(1.63%)
8級:1941件(3.12%)
9級:2160件(3.47%)
10級:2076件(3.33%)
11級:4348件(6.98%)
12級:1万665件(17.12%)
13級:520件(0.83%)
14級:3万6639件(58.81%)

2 損害保険料率算出機構の平成27年度「自動車保険の概況」の末尾37頁によれば,平成26年度に自賠責損害調査事務所で受け付けた自賠責保険の請求事案の件数は132万6871件です。
   そのため,自賠責保険の請求と後遺障害等級認定との間に期間のずれを無視して計算した場合,後遺障害等級が認定されるのは6万2350件/132万6871件=約4.69%となり,13級以上の後遺障害等級が認定されるのは2万5711件/132万6871件=約1.94%となります。

第6 後遺障害等級3級以上の認定件数の推移

毎年1月開催の金融庁自賠責保険審議会の資料となっている毎年度の料率検証結果の「(参考)重度後遺障害の支払件数の推移」(平成21年1月以降の分)によれば,以下のとおりです。
 
1 介護を要する後遺障害等級(自賠法施行令別表第一)
(1) 後遺障害等級1級
平成14年:24件,平成15年:399件,平成16年:782件
平成17年:917件,平成18年:968件,平成19年:1018件
平成20年:1036件,平成21年:1019件,平成22年:903件
平成23年:894件,平成24年:834件,平成25年:820件
平成26年:881件,平成27年:874件
 
(2) 後遺障害等級2級
平成14年:2件,平成15年:124件,平成16年:301件
平成17年:376件,平成18年:444件,平成19年:472件
平成20年:516件,平成21年:506件,平成22年:546件
平成23年:495件,平成24年:436件,平成25年:431件
平成26年:460件,平成27年:462件
  
2  介護を要しない後遺障害等級(自賠法施行令別表第二)
(1) 後遺障害等級1級
平成10年:1350件,平成11年:1371件,平成12年:1405件
平成13年:1458件,平成14年:1484件,平成15年:986件
平成16年:493件,平成17年:284件,平成18年:193件
平成19年:101件,平成20年:78件,平成21年:72件
平成22年:66件,平成23年:46件,平成24年:42件
平成25年:41件,平成26年:35件,平成27年:36件
   
(2) 後遺障害等級2級
平成10年:384件,平成11年:400件,平成12年:346件
平成13年:410件,平成14年:541件,平成15年:402件
平成16年:240件,平成17年:165件,平成18年:162件
平成19年:148件,平成20年:127件,平成21年:145件
平成22年:141件,平成23年:133件,平成24年:119件
平成25年:111件,平成26年:93件,平成27年:108件
   
(3) 後遺障害等級3級
平成10年:316件,平成11年:281件,平成12年:305件
平成13年:366件,平成14年:489件,平成15年:377件
平成16年:355件,平成17年:377件,平成18年:353件
平成19年:385件,平成20年:415件,平成21年:407件
平成22年:371件,平成23年:364件,平成24年:345件
平成25年:318件,平成26年:314件,平成27年:316件

3 合計
平成10年:2050件,平成11年:2052件,平成12年:2056件
平成13年:2234件,平成14年:2540件,平成15年:2288件
平成16年:2171件,平成17年:2119件,平成18年:2120件
平成19年:2124件,平成20年:2172件,平成21年:2149件
平成22年:2027件,平成23年:1932件,平成24年:1776件
平成25年:1721件,平成26年:1783件,平成27年:1796件

第7 後遺障害等級認定申請の所要時間

1    自賠責保険会社に被害者請求の書類を提出してから損害保険料率算出機構に送付されるまでに大体,2週間ぐらいかかります。
  また,後遺障害の等級認定申請の書類が損害保険料率算出機構に送付されてから,後遺障害の審査結果が出るまでに通常,1ヶ月ぐらいかかります。
   そのため,被害者請求の書類を提出してから後遺障害の審査結果が出るまでに通常,1ヶ月半ぐらいかかります。

2  過失割合が7割以上となる可能性がある場合,詳細な事故状況を記載した書面の提出が求められるため,1ヶ月以上,余分に時間がかかることが多いです。


3 損害保険料率算出機構が作成している「平成28年度自動車保険の概況」(損害保険料率算出機構HPの
「ディスクロージャー資料」の一つです。)によれば,自賠責損害調査事務所における損害調査所要日数は以下のとおりです。
① 死亡事案の場合
30日以内が79.8%,31日~60日が10.5%,61日~90日が3.6%,90日超が6.2%
② 後遺障害事案の場合
30日以内が81.9%,31日~60日が10.5%,61日~90日が4.4%,90日超が3.7%
③ 傷害事案の場合 
30日以内が98.7%,31日~60日が0.9%,61日~90日が0.3%,90日超が0.2% 

第8 損害保険料率算出機構は,弁護士会照会に対し過去の自賠責保険の支給状況等を回答する場合があること

1(1) 私の経験では,損害保険料率算出機構は,弁護士会照会(日弁連HPの「弁護士会照会制度」参照)に対し,自賠責保険を請求した被害者に対する事後の通知すら行うことなく,過去5年分の自賠責保険の支給状況等を回答することがあります。
   そのため,加害者側の弁護士が弁護士会照会を利用して損害保険料率算出機構に対して問い合わせをすれば,過去5年分の交通事故に関する情報が判明することがあります。
(2) 弁護士会照会の宛先は以下のとおりです(損害保険料率算出機構HPの「組織概要」参照)。
〒163-1029
東京都新宿区西新宿新宿パークタワー28C棟
損害保険料率算出機構 自賠責損害調査センター損害調査部

2(1) 損害保険料率算出機構では,保険会社又は共済からの依頼に基づいて自賠責保険の損害調査を行っており,調査が終了した後は調査結果と共に請求書類一式を保険会社又は共済に返却していますから,請求書類自体は保存していません。
   そのため,損害保険料率算出機構は,弁護士会照会に対し,オンライン端末で検索可能な電磁的記録に基づき,以下の事項を回答してくるにとどまります。
① 交通事故の発生日
② 傷害による損害として認定計上された金額
③ 後遺障害についての請求の有無
④ 後遺障害等級認定票
⑤ 後遺障害事案整理票
→ 自賠責保険会社の名称が書いてあります。
(2) 後遺障害事案整理票については,「保険会社の説明義務」を参照してください。

3 外部ブログの「【役立つ!】保険金取得歴の調査」によれば,裁判所の調査嘱託を利用する必要があるみたいですが,弁護士会照会でも損害保険料率算出機構からの回答を得られることがあります。
1 相談予約の電話番号は06-6364-8525であり,交通事故及び債務整理の初回の面談相談は無料であり,相続情報公開請求等の面談相談は30分3000円(税込み)です。
   交通事故及び債務整理については,無料の電話相談もやっています。
  
2 執務時間は原則として平日の午前10時から午後7時30分までですが,事前のご予約があれば,午後8時30分まで夜間相談可能です。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)については,略歴及び取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図を参照してください。