後遺障害としての関節の可動域制限

第0 目次

第1 関節の可動域制限の後遺障害等級
第2 関節の可動域制限を後遺障害として認定してもらうための条件

第3 後遺障害診断で関節の可動域を測定してもらうときの留意点
第4 場合によっては,半年が経過した時点で症状固定とすべきであること

「後遺障害としてのむち打ち,腰椎捻挫,神経麻痺等」も参照して下さい。

第1 関節の可動域制限の後遺障害等級

1(1) 関節の可動域制限は,いずれかの関節が曲がりにくくなることです。
   そして,その後遺障害等級については,健側(けんそく)(麻痺や障害等がない部位側のことです。)と比べて患側(かんそく)(麻痺や障害等がある部位側のことです。)についてどれぐらい関節を曲げることができるかによって形式的に決まります。
(2)
   上肢の3大関節としては,肩関節,肘関節及び手関節があり,下肢の3大関節としては,股関節,膝関節及び脚関節がありますところ,1関節の可動域制限につき,8級,10級及び12級の3段階となります。

2(1) 関節の可動域制限(機能障害)に関する具体的基準は交通事故110番HPの「関節の可動域と測定方法」が非常に分かりやすいです。
(2)  関節の可動域に関する説明については,外部HPの
「上肢・手指の関節機能障害(肩・ひじ・手首・手指の可動域制限など)」及び「下肢・足指の関節機能障害(股関節・ひざ・足首・足指の可動域制限など)」が,模式図が使用されていて非常に分かりやすいです。

3(1) 可動域制限は,自動値(被害者が自発的に曲げた角度)ではなく,他動値(医師が手を添えて曲げた角度)で決まります。
(2) 他動値は,医師が手を添えて被害者の関節を曲げるわけですから,自動値よりも数値が大きくなります。
(3)   後遺障害の基準値は5度以下の端数切り上げの数字が採用されていますし,後遺障害診断書における計測値は5度以下の端数切り上げの数字で記録されます。


4(1)ア 例えば,膝を曲げてしゃがむことができなくなった場合,曲げにくくなった膝の可動域が100度以下になっています(外部HPの「ひざはどんな働きをしているの?」参照)。
   この場合において,ケガをした膝の可動域が100度以下であると計測され,ケガをしていない膝の可動域が正常値である130度であるのであれば,130度×3/4=97.5度(5度以下の端数切り上げにより基準値は100度)以下となりますから,後遺障害等級12級が認定されることとなります。
イ   関節の可動域の計測値は5度未満の端数を切り上げて記録されます。
   そのため,ケガをした膝の可動域が100度余りである場合,端数切り上げにより可動域が105度と記録される結果,後遺障害等級12級に該当しないこととなります。
(2) 歩行に支障を来すぐらい膝を曲げることができなくなった場合,曲げにくくなった膝の可動域が60度以下になっています(外部HPの「ひざはどんな働きをしているの?」参照)
   この場合において,ケガをした膝の可動域が65度以下であると計測され,ケガをしていない膝の可動域が正常値である130度であるのであれば,130度×1/2=65度以下となりますから,後遺障害等級10級が認定されることとなります。

第2 関節の可動域制限を後遺障害として認定してもらうための条件

1 関節の可動域制限(機能障害)を後遺障害として認定されるためには,可動域制限の存在だけでなく,以下の条件も満たす必要があります。
(1) 交通事故時において,①関節及びその付近の骨折・脱臼,②靱帯・腱等の軟部組織の損傷又は③神経の損傷が発生したこと
(2) 症状固定時において,①関節部分の骨折後の癒合不良又は変形癒合,②関節の強直,③靱帯・腱等の軟部組織の変性による関節拘縮,④神経麻痺といった,関節の可動域制限の原因を医学的に確認できること

2(1) 脱臼(だっきゅう)とは,関節を構成している相互の骨と骨の間にずれが発生することをいいます。
(2) 腱(けん)とは,筋肉と骨とを結びつけている繊維性の丈夫な組織をいいます。
(3)   靱帯(じんたい)損傷とは,関節を安定した状態に保つ働きをしている靱帯が断裂していることをいいます。
(4)   癒合(ゆごう)とは,離れた皮膚・筋肉等が付着することをいいます。
(5)   強直(きょうちょく)とは,関節等の動きがこわばることをいい,拘縮(こうしゅく)がさらに進行した状態をいいます(外部HPの「拘縮と強直の違い分かりますか?」参照)。

第3 後遺障害診断で関節の可動域を測定してもらうときの留意点

1(1) 基準に照らしてわずかでも多い目に関節が曲がった場合,後遺障害等級が下がりますし,12級の基準より少しでも余分に曲がった場合,後遺障害等級は非該当となります。
   そのため,医師が無理に関節を曲げようとした場合,これ以上関節が曲がらないとすぐに伝えてください。
(2) せき柱及びその他の体幹骨、上肢並びに下肢の障害に関する障害等級認定基準について(平成16年6月4日付け基発第0604003号)別添「関節の機能障害の評価方法及び関節可動域の測定要領」には,以下の記載があります(厚生労働省HPの「せき柱及びその他の体幹骨、上肢並びに下肢、眼の障害等級認定基準の一部改正について」参照)。
   関節可動域の測定値については、日本整形外科学会及び日本リハビリテーション医学会により決定された「関節可動域表示ならびに測定法」に従い、原則として、他動運動による測定値によることとするが、他動運動による測定値を採用することが適切でないものについては、自動運動による測定値を参考として、障害の認定を行う必要がある。 他動運動による測定値を採用することが適切でないものとは、例えば、末梢神経損傷を原因として関節を可動させる筋が弛緩性の麻痺となり、他動では関節が可動するが、自動では可動できない場合、関節を可動させるとがまんできない程度の痛みが生じるために自動では可動できないと医学的に判断される場合等をいう。

2  健側の可動域が大きければ大きいほど,健側に比べた患側の可動域が3/4以下であったり,1/2以下であったりしやすくなります。
   そのため,関節の可動域制限について後遺障害診断書を作成してもらう場合,健側がよりよく曲がるよう,事前のストレッチ運動を心がけて下さい。

3   関節がどれぐらい曲がらなければ,どれぐらいの後遺障害等級になるのかを事前に認識した上で,関節の可動域を測定してもらって下さい

第4 場合によっては,半年が経過した時点で症状固定とすべきであること

1 骨折等による関節の可動域制限に基づいて後遺障害の等級認定申請をする場合,長期間のリハビリ治療により可動域が改善する結果,認定される後遺障害等級が低くなることがあります。
   そのため,関節の可動域制限が後遺障害等級認定の限界ラインにある場合,交通事故から6ヶ月が経過した時点で早い目に症状固定の診断をもらった方がいいです。

2   
裁判基準で賠償を受ける場合,後遺障害12級の後遺障害慰謝料は280万円です。
   また,後遺障害12級の労働能力喪失率は14%ですから,事故前の年収が300万円であり,症状固定時の年齢が30歳である場合,後遺障害逸失利益は300万円×0.14×16.7112(30歳の就労可能年数37年に対応するライプニッツ係数)=702万円です。
   そのため,後遺障害12級と非該当とでは,損害賠償額が982万円も変わることとなりますところ,リハビリ治療を続けたために関節が4分の3以上曲がるようになった場合,非該当になる結果,982万円も損をする可能性があります。

3 骨折等の他覚所見がある交通事故において通院だけの場合,1月当たりの通院慰謝料(週2回以上,通院した場合)は,27万円(1月目)→約23万円(2月目~)→18万円(4月目)→12万円(6月目~)→8万円(7月目~)→6万円(12月目~)→約5万円(13月目~)→約4万円(16月目~)→約3万円(19月目~)と推移します(
「交通事故事件の慰謝料」参照)。
1 相談予約の電話番号は06-6364-8525であり,交通事故及び債務整理の初回の面談相談は無料であり,相続情報公開請求等の面談相談は30分3000円(税込み)です。
   交通事故及び債務整理については,無料の電話相談もやっています。
  
2 執務時間は原則として平日の午前10時から午後7時30分までですが,事前のご予約があれば,午後8時30分まで夜間相談可能です。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)については,略歴及び取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図を参照してください。