交通事故事件の慰謝料

第0 目次

第1 入院慰謝料及び通院慰謝料
第2 入院慰謝料及び通院慰謝料の目安
第3 後遺障害慰謝料
第4の1 被害者本人の死亡慰謝料
第4の2 近親者固有の慰謝料

* 後遺障害逸失利益については,「労働能力の喪失割合及び喪失期間」を参照してください。

第1 入院慰謝料及び通院慰謝料

1 慰謝料とは,交通事故によって被った精神的な苦痛に対する賠償のことであり,入院慰謝料及び通院慰謝料のほか,症状固定となった時点で発生する後遺障害慰謝料があります。
   また,被害者が死亡した場合,被害者本人の死亡慰謝料及び近親者固有の慰謝料が発生します。

2 入院慰謝料及び通院慰謝料については,入院又は通院の頻度及び期間を基準として金額が定められます。

任意保険の場合,通院慰謝料を計算する場合の基準となる通院回数は1週間に2回ですから,1週間に2回以上のペースで整形外科又は整骨院に通院してください。

4 自賠責保険の場合,①治療期間(交通事故で怪我をした日から症状固定日まで)の全日数,又は②実際に通院をした日数の2倍のいずれか少ない方の日数に4200円をかけた金額が通院慰謝料となります(通常は②で計算します。)。
  例えば,4月10日に交通事故に遭い,同月27日までの間に5回,通院した場合,治療期間の全日数18日間よりも,実際に通院した日数の2倍である10日の方が小さいですから,自賠責保険からの通院慰謝料は4200円×5日×2=4万2000円となります。

5   自賠責保険に対して上限の通院慰謝料(1ヶ月30日の場合,12万6000円)を請求したい場合,例えば,週に1回,整形外科で鎮痛薬及び湿布薬を処方してもらう一方で,週に2日か3日,整骨院で患部に対する直接的な施術をしてもらうといった方法で,2日に1回以上のペースで整形外科又は整骨院に通院してください。

6 交通事故直後に救急搬送された病院が遠方にある等の事情により通院しにくい場合,紹介状(=診療情報提供書)を書いてもらい,任意保険会社の了解をもらった上で,通院しやすい病院に転院してください。

7 病院は,毎月末締めで診断書及び診療報酬明細書を作成し,これを加害者側の任意保険会社に送付することで治療費の立替払いを受けています。
  その関係で,任意保険会社としては,病院から被害者の医療情報を取得することとなりますから,被害者に対し,「個人情報の提供に関する同意書」の作成を依頼しています。

8 1ヶ月以上の通院期間の中断がある場合,病院から毎月送られてくる診断書及び診療報酬明細書をチェックしている任意保険会社から今後の通院の必要性を否定される可能性が高くなりますし,後遺障害の等級認定に大きな悪影響を与えます。
   そのため,痛み,しびれ等が少しでも続いている場合,絶対に通院を中断しないようにしてください。

9 交通事故から6ヶ月以上が経過した場合,任意保険会社が治療費の打ち切りを通告してくることが多くなります。
  この場合において未だに痛み等が継続しているなど治療の必要がある場合,任意保険会社に対し,主治医を通じて治療の必要性があることを連絡してもらうようにしてください。

10 入院慰謝料につき,仕事や家庭の都合等で本来より入院期間が短くなった場合には増額が考慮され,他方,入院の必要性に乏しいのに本人の希望によって入院していた場合には減額が考慮されます。
  なお,入院待機中の期間及びギブス固定中等による自宅安静期間は,入院期間と見ることがあります。

11 金員仮払いの仮処分を利用した場合を除き,任意保険会社が示談を成立させる前の時点で入院慰謝料及び通院慰謝料を支払ってくれることはありません。

12 症状固定後の通院については,「後遺障害としてのむち打ち,腰椎捻挫,神経麻痺等」を参照して下さい。 

自賠責保険の診断書
自賠責保険診療報酬明細書(入院外)1/2
自賠責保険診療報酬明細書(入院外)2/2

第2 入院慰謝料及び通院慰謝料の目安

1 通常の事故の場合
(1) 大阪地裁で使用されている入通院慰謝料額表(通常の事故)によれば,通院だけの場合,1月当たりの通院慰謝料(週2回以上の通院した場合)は,27万円(1月目)→約23万円(2月目~)→18万円(4月目)→12万円(6月目~)→8万円(7月目~)→6万円(12月目~)→約5万円(13月目~)→約4万円(16月目~)→約3万円(19月目~)と推移します。
   また,入院だけの場合,1月当たりの入院慰謝料は,53万円(1月目)→48万円(2月目)→45万円(3月目)→40万円(4月目)→34万円(5月目)→30万円(6月目)→16万円(7月目)→11万円(8月目)→9万円(9月目~)→8万円(11月目)→5万円(12月目)→約4万円(13月目~)→約3万円(15月目~)と推移します。
(2)   軽度の神経症状(むち打ち症で他覚所見のない場合等)の入通院慰謝料は,以上の入通院慰謝料の3分の2程度となります。
  例えば,骨折等がレントゲンで確認できる場合,他覚所見に該当することに争いはないものの,椎間板ヘルニアがMRIで確認できるに過ぎない場合,加齢性の変性によることが多いため,それだけでは他覚所見とはいえません。
(3) 例えば,他覚所見のないむち打ち症で6ヶ月間通院した場合の慰謝料は80万円であり,他覚所見のあるむち打ち症で6ヶ月間通院した場合の慰謝料は120万円です。
 
2   重傷の事故の場合
(1) 大阪地裁で使用されている入通院慰謝料額表(重傷の事故)によれば,通院だけの場合,1月当たりの通院慰謝料(週2回以上の通院した場合)は,34万円(1月目)→約28万円(2月目~)→約23万円(4月目~)→15万円(5月目)→10万円(6月目~)→8万円(12月目)→約5万円(13月目~)→約4万円(19月目~)→3万円(24月目~)と推移します。
   また,入院だけの場合,1月当たりの入院慰謝料は,64万円(1月目)→57万円(2月目)→54万円(3月目)→48万円(4月目)→41万円(5月目)→36万円(6月目)→19万円(7月目)→13万円(8月目)→11万円(9月目)→11万円(10月目)→10万円(11月目)→6万円(12月目)→約5万円(13月目~)→約3万円(19月目~)と推移します。
(2)   重傷の事故とは,重度の意識障害が相当期間継続した場合,骨折又は臓器損傷の程度が重大であるか多発した場合等,社会通念上,負傷の程度が著しい場合をいいます。
 
  なお,上記の重傷に至らない程度の傷害についても,傷害の部位・程度によっては,通常基準額を増額することがあります。

第3 後遺障害慰謝料

1 介護を要する後遺障害の場合,裁判基準に基づく後遺障害慰謝料の額は以下のとおりです(括弧内は自賠責基準に基づく後遺障害慰謝料の額です。)。
① 1級の場合:2800万円(1600万円)
② 2級の場合:2400万円(1163万円)

2 介護を要しない後遺障害の場合,裁判基準に基づく後遺障害慰謝料の額は以下のとおりです(括弧内は自賠責基準に基づく後遺障害慰謝料の額です。)。
① 1級の場合:2800万円(1100万円)
② 2級の場合:2400万円(958万円)
③ 3級の場合:2000万円(829万円)
④ 4級の場合:1700万円(712万円)
⑤ 5級の場合:1440万円(599万円)
⑥ 6級の場合:1220万円(498万円)
⑦ 7級の場合:1030万円(409万円)
⑧ 8級の場合:830万円(324万円)
⑨ 9級の場合:670万円(245万円)
⑩ 10級の場合:530万円(187万円)
⑪ 11級の場合:400万円(135万円)
⑫ 12級の場合:280万円(93万円)
⑬ 13級の場合:180万円(57万円)
⑭ 14級の場合:110万円(32万円)

3 死亡慰謝料については近親者分も含めて基準となる慰謝料額が定められていますところ,後遺障害慰謝料についても原則的には同様です。
    ただし,重度後遺障害事案については,近親者が現実に被害者の介護をしなければならないことにかんがみ,近親者につき別途慰謝料が認められることがあります。

第4の1 被害者本人の死亡慰謝料

1 平成14年1月1日以降に発生した交通事故については,一家の支柱が死亡した場合の死亡慰謝料は2800万円が基準となり,その他の者が死亡した場合の死亡慰謝料は2000万円から2500万円が基準となります。
    なお,死亡慰謝料の基準額は,本人分及び近親者分を含んだものです。

2 以下のような事情があった場合,慰謝料が増額されることがあります。
① 加害者に飲酒運転,無免許運転,著しい速度違反,殊更な信号無視,ひき逃げ等が認められる場合
② 被害者の被扶養者が多数の場合
③ 損害額の算定が不可能又は困難な損害の発生が認められた場合

3 相続人が被害者と疎遠であった場合,慰謝料が減額されることがあります。

4 ある者が他人の故意・過失によって財産以外の損害を被った場合には,その者は,財産上の損害を被った場合と同様,損害の発生と同時にその賠償を請求する権利,つまり,慰謝料請求権を取得し,その者が死亡したときは,当該慰謝料請求権は当然に相続の対象になり,その者に相続人が存在するかどうかは直接には関係がありません(最高裁昭和58年4月15日判決)。
    なお,最高裁大法廷昭和42年11月1日判決(大審院昭和2年5月30日判決等を変更し,慰謝料請求権の一身専属性を否定するに至りました。),最高裁昭和44年10月31日最高裁昭和45年4月21日判決等は,慰謝料請求権を放棄,免除するといった特別の事情がある場合は別であるとしていましたものの,最高裁昭和58年4月15日判決は,そのような特別の事情には言及しなくなりました。

5 慰謝料額は,裁判所において諸般の事情を考慮して量定すれば足りるのであって,その量定の根拠を逐一説示しなければならないものではありません(最高裁昭和38年4月30日判決)し,原則として,事実審裁判所の自由裁量に属するところとされています(最高裁昭和44年10月31日判決)。

6 飲酒運転,無免許運転,著しい速度違反といった加害者の悪性が強い場合に慰謝料の増額を考慮するのは,それにより被害者又は遺族が受けた精神的苦痛は大きなものがあると考えられるからです。
    ただし,懲罰的損害賠償が認められることによるわけではありません(最高裁平成9年7月11日判決参照)。

第4の2 近親者固有の慰謝料

1 近親者固有の慰謝料は,近親者自身が被った精神的苦痛についてのものですから,被害者の有する慰謝料請求権とは別の訴訟物です。
    しかし,①被害者の慰謝料請求権の斟酌事由としては,近親者が受けた精神的苦痛も考慮されているのであり,被害者の慰謝料請求権と近親者固有の慰謝料請求権は重なり合うものがあること,②近親者の多くは,死亡した被害者の慰謝料請求権を相続しており,固有の慰謝料請求権を行使したかどうかによって慰謝料額に差が生じるのは余り相当ではないことなどから,死亡慰謝料は本人分及び近親者分を含んだものとして基準額が定められています。

2 民法711条所定の者(=被害者の父母,配偶者及び子)以外のものであっても,被害者との間に同条所定の者と実質的に同視しうべき身分関係が存し,被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者は,同条の類推適用により,加害者に対し直接に固有の慰謝料を請求できます(最高裁昭和49年12月17日判決参照)。
1 相談予約の電話番号は06-6364-8525であり,交通事故及び債務整理の初回の面談相談は無料であり,相続情報公開請求等の面談相談は30分3000円(税込み)です。
   交通事故及び債務整理については,無料の電話相談もやっています。
  
2 執務時間は原則として平日の午前10時から午後7時30分までですが,事前のご予約があれば,午後8時30分まで夜間相談可能です。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)については,略歴及び取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図を参照してください。