保険会社の説明義務

第0 目次

第1 自賠責保険会社の説明義務
第2 任意保険会社の説明義務
第3 任意保険会社に対する同意書
第4 国土交通大臣に対する申出制度

* 「任意保険の示談代行制度」「交通事故の示談をする場合の留意点」「後遺障害の等級認定結果に不服がない場合の手続」及び「保険会社の説明義務」も参照して下さい。

第1 自賠責保険会社の説明義務

1 支払適正化措置省令に基づく説明義務
   平成13年6月29日法律第83号(平成14年4月1日施行)による改正後の自賠法16条の4に基づき,自賠責保険会社には説明義務が課せられています。
   そして,自賠責保険会社の説明義務の詳細は,支払適正化措置省令において,以下のとおり定められています。
 
① 保険金等の請求があったときの説明(自賠法16条の4第1項,支払適正化措置省令2条)
ア 支払基準の概要
イ 保険金等の支払の手続の概要
ウ 指定紛争処理機関の概要
→ 一般財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構のことです。
② 保険金等の支払を行ったときの説明(自賠法16条の4第2項,支払適正化措置省令3条)
ア 支払った保険金等の金額
イ 後遺障害の該当する等級
ウ 当該後遺障害等級に該当すると判断した理由
エ 事故の年月日
オ 保険金等の支払いにおいて損害額から減額を行った場合にあっては,減額の割合及び当該減額を行うことと判断した理由
③ 保険金等の支払を拒絶したときの説明(自賠法16条の4第3項,支払適正化措置省令4条)
ア 事故の状況の概要
イ 被保険者に損害賠償の責任がないと判断した場合にあっては,当該判断をした理由
ウ 事故により損害が発生していないと判断した場合にあっては,当該判断をした理由
エ 保険契約者又は被保険者が悪意であったことを理由に保険会社が損害のてん補の責を免れると判断した場合(自賠法14条参照)にあっては,当該判断をした理由
④ 被保険者又は被害者から,②又は③の説明に対する詳細説明の要求が書面でなされたときの説明(自賠法16条の5第1項,支払適正化措置省令7条)
ア 事故の状況の詳細
イ 事故により支出を要した費用,事故により失われた利益,慰謝料その他の損害の細目及び当該細目ごとの積算の詳細
ウ 後遺障害に該当する場合にあっては,当該後遺障害等級に該当すると判断した理由の詳細
エ 保険金等の支払いにおいて損害額から減額を行った場合にあっては、減額の割合の判断をした理由の詳細
オ 被保険者に損害賠償の責任がないと判断した場合にあっては,当該判断をした理由の詳細
カ 事故により損害が発生していないと判断した場合にあっては,当該判断をした理由の詳細
キ 保険契約者又は被保険者が悪意であったことを理由に保険会社が損害のてん補の責を免れると判断した場合(自賠法14条参照)にあっては,当該判断をした理由の詳細
 
2 実施細目に基づく説明義務
   自賠法16条の5第1項に基づく説明は,説明を求められた日から起算して30日以内にする必要があります(自賠法16条の5第3項)ところ,「自動車損害賠償保障法及び関係政省令の改正等に伴う事務の実施細目について」(平成14年3月11日付の国土交通省自動車交通局補償課長通知)(以下「実施細目」といいます。)に基づき,以下の説明がなされます。
    なお,実施細目につき直接のリンクを張ることはできませんが,国土交通省HPの告示・通達データベースサービスに掲載されています。
 
(i) 損害の細目及びその積算根拠については、詳細を記載した書面を交付すること。この場合、法第一五条の規定に基づく被保険者(被共済者)からの請求又は法第一六条の規定に基づく被害者からの請求が競合している事案については、それぞれの請求者に支払われた額の詳細について記載する必要はなく、説明を求めた者に支払われたものについてその詳細を記載することとし、他の者に支払われたものについては、その額のみを記載すること。ただし、自賠責保険(共済)支払限度額を超える事案については、当該限度額を超えている旨の記載をもって足りることとする。
(ii) 後遺障害等級の判断理由の詳細については、「後遺障害等級認定票」、「後遺障害事案整理票」、「面接調査票」等を交付すること。
(iii) 減額を行った場合の減額割合の判断理由の詳細及び損害賠償責任が発生していないと判断した場合の判断理由の詳細については、「事故発生状況図」、減額適用上の過失割合、減額理由等を説明した書面を交付すること。
(iv) 事故により損害が発生していないと判断した場合の判断理由の詳細については、「因果関係事案整理票」等を交付すること。
(v) 保険会社等がてん補の責を免れる場合の判断理由の詳細については、事案に応じて具体的に説明した書面を交付すること。
   なお、(i)から(v)に掲げる書面を既に交付している場合は、その旨を説明することとする。

第2 任意保険会社の説明義務

   実施細目に基づき,一括払事案の場合,任意保険会社は自賠責保険会社と連携して同様の説明を行う必要があります。
   また,被害者と初期に接触した時点で以下の事項を記載した書面を交付する必要があります。
① 一括払制度の概要
② 被害者は自賠責保険(共済)に直接請求できること
③ 一括払額は自賠責保険(共済)支払限度額内では自賠責保険(共済)の支払基準による積算額を下回らないこと
④ 自賠責保険(共済)支払基準の概要
⑤ 指定紛争処理機関等紛争処理の仕組みの概要
⑥ 自賠責保険(共済)の請求から支払までの手続の概要等

第3 任意保険会社に対する同意書

1 任意保険会社は,一括払いを行う手続上,被害者に対し,一括払に関する説明書と一緒に「個人情報の提供に関する同意書」(以下「同意書」といいます。)を送付し,署名・捺印して返送するように求めてきます。
   同意書の提出は義務ではないものの,任意保険会社が治療費を支払うために医療機関から診断書,診療報酬明細書等を取得したり,治療状況や症状固定の時期等について主治医に医療照会を行ったりするためには必要不可欠な書面となります。
   そのため,被害者が同意書を返送しない場合,任意保険会社において一括払手続をとれませんから,同意書は速やかに返送した方がいいです。

2 一般社団法人日本損害保険協会の「損害保険の保険金支払に関するガイドライン」(平成24年4月作成)5頁には,「センシティブ情報(保健医療等)の取得・利用・第三者提供は、他の個人情報以上に慎重な取扱いが求められるため、本人の同意に基づき、真に業務上必要な範囲に限り取り扱うこととする。」と書いてあります。

3 任意保険会社は,一般的な治療期間が終了すると思われるタイミングで,被害者の症状,治療経過等を確認するため,被害者に対し,医療調査に関する同意書を送付し,署名・捺印して返送するように求めてきます。
   被害者が同意書を返送した場合,任意保険会社において医療調査を行い,主治医の回答等を元にして症状固定と判断した場合,治療費の立替払を終了しますものの,未だ症状固定に至っていないと判断した場合,治療費の立替払を継続してくれます。
   仮に被害者が同意書を返送しなかった場合,任意保険会社としては医療調査ができないという理由で治療費の立替払を終了してきますから,同意書は返送せざるを得ませんが,任意保険会社に対し,主治医を通じて治療の必要性があることを連絡してもらうようにしてください。

第4 国土交通大臣に対する申出制度

1 自賠責保険会社について以下の事由がある場合,被保険者又は被害者は,国土交通大臣に対し,その事実を申し出ることができます(自賠法16条の7)。
  この場合の申し出の宛先は,「〒100-8918 東京都千代田区霞が関2丁目1番3号 国土交通省自動車局保障制度参事官室」となります。
① 保険金等の支払が支払基準に従っていないとき(1号)
② 書面の交付を行っていないとき(2号)
③ 書面による説明を求めたにもかかわらず,書面による説明を行わないとき(3号)

2 国土交通大臣は,自賠法16条の7に基づく申し出があった場合において,自賠法16条の7各号の事由があると認めるときは,自賠責保険会社に対し,必要な指示を行い(自賠法16条の8第1項),その旨を内閣総理大臣に通知します(自賠法16条の8第2項)。
  そして,国土交通大臣は,自賠責保険会社が正当な理由がなくてその指示に従わなかったときは,内閣総理大臣の同意を得た上で(自賠法16条の8第5項),その旨を公表したり,指示に係る措置をとるべきことを命じたりします(自賠法16条の8第3項及び第4項)。

3 詳細については,国土交通省の自賠責保険ポータルサイトの「支払に疑問,不服がある場合には」を参照してください。

1(1) 交通事故(検察審査会を含む。)及び債務整理の初回の面談相談は無料であり,相続情報公開請求等の面談相談は30分3000円(税込み)です。
   交通事故及び債務整理については,無料の電話相談もやっています。
(2) 相談予約の電話番号は「お問い合わせ」に載せています。
  
2 執務時間は原則として平日の午前10時から午後7時30分までですが,事前のご予約があれば,午後8時30分まで夜間相談可能です。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)については,略歴及び取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図を参照してください。