整骨院に関する法規制等

第1 整骨院

□ 整骨院の法令上の名称は施術所です(柔道整復師法2条2項)。
□ 整骨院は,柔道整復師国家試験に合格し,厚生労働大臣の免許を受けた柔道整復師(柔道整復師法2条1項,3条参照)が経営しています。
   しかし,柔道整復師は医師ではありませんから,整形外科の医師と異なり,外科手術,レントゲン検査,薬品の投与等の医療行為を行うことはできません(柔道整復師法16条及び医師法17条参照)。
□ 柔道整復師は,骨折又は脱臼の患部については,①応急手当を行う場合,又は②医師の同意がある場合を除き,施術を行うことはできません(柔道整復師法17条)。
   なお,柔道整復師が,施術につき同意を求める医師は,必ずしも,整形外科,外科等を標榜する医師に限られません(「柔道整復師の施術について」(昭和31年7月11日医発第627号各都道府県知事あて厚生省医務・保険局長連名通知))。
□ 柔道整復師の「判断書」とは,柔道整復師が患者に危害を及ぼすおそれのない範囲で疾病又は負傷の状態を把握し自らが施術できる疾病又は負傷であるか否か等を判断した結果を記載する書面をいい,医師が患者を診察し疾病又は負傷の状態を診断した結果を記載する診断書とは異なります。
□ 柔道整復師の施術録は通常,5年間保存されます。

第2 整骨院の施術費は争われやすいこと

□ 整骨院の施術費は整形外科の治療費と比べて割高であることが普通です(1回当たり平均で6000円ぐらいかかります。)。
   また,マッサージ等により症状が楽になることもあって整形外科よりも通院頻度が多くなることが普通です。
   その結果,任意保険会社から整骨院の施術費と交通事故との因果関係を争われることが多いです。
   そのため,①病院が遠方にあるとか,②仕事をしていて病院の診療時間内に通院することができないとか,③病院の整形外科では鎮痛薬,湿布薬等の処方しかしてもらえないといった事情により,近所の整骨院に通院する場合,病院の整形外科医等に事前に相談した上で,少なくとも整骨院への通院の必要性がある旨を診療録に記載してもらうようにしてください。
□ 整形外科への通院回数と比べて整骨院への通院回数が極端に多い場合,任意保険会社において,整骨院への通院回数又は施術内容の水増しがあるのではないかといった疑念を抱いてくることがあります。
   実際,任意保険会社に通院回数又は施術内容の水増しがばれた結果,整骨院が施術費の返還を強いられたり,交通事故の被害者も通院回数又は施術内容の水増しを疑われたりすることがあります。
   そのため,整形外科への通院回数と比べて整骨院への通院回数が極端に多い場合,メモ書きで結構ですから,通院した日を記録しておいた方がいいです。
□ 整骨院は,整体院又はカイロプラクティックとは異なります。
   整体院又はカイロプラクティックの場合,施術者は国家資格を持っていませんし,公的医療保険を利用することもできませんから,整骨院への通院以上に治療の必要性及び相当性が争われます。
□ 外部HPの「鍼灸・マッサージ費用等医師治療費以外の治療費」には,「
民間療法である整体費用について損害と認められた判例は見つけることが出来ず、逆に理容師による整体術を受けたことが被害者側の損害拡大の過失と評価された例があり要注意です。」と書いてあります。

第3 整形外科への通院を優先すべきであること

□ 一般的に,外傷に起因する捻挫や挫傷等による症状は,追突や衝突等による衝撃で筋肉や靱帯等の軟部組織が損傷を受けた際に発症するものであることから,受傷直後が最も重篤であり,その後,時間の経過に伴い損傷を受けた部位の修復が得られることにより,症状は徐々に軽減をたどるとされています。
   その関係で,通院慰謝料を計算する場合,整骨院は整形外科と同様の取扱いを受けますものの,後遺障害が残ってしまった場合に後遺障害の有無を判断する場合,整骨院は医療機関ではありませんから,整形外科への通院歴が非常に重視されます。
   そのため,同じリハビリ治療を行うのであれば,整骨院ではなく,交通事故のリハビリ治療も行っている整形外科に通院することが非常に望ましいです。
□ 「交通事故」+「整形外科」+「リハビリ」+「(地名)」でネット検索をすれば,リハビリ治療をしている整形外科を探すことができます。
   例えば,「交通事故 整形外科 リハビリ 大阪市北区」という風に検索すればいいです。
□ 交通事故のリハビリ治療をしていない整形外科の場合,治療のために1週間に2回通院することが難しいものの,既に通院している整形外科から通院先を変更することは望ましくありません。
   そのため,代替手段として,1週間に1回は整形外科に通院し,整形外科医の指示に基づき,1週間に1回以上,整骨院でリハビリ治療を受ければいいです。

第4 整骨院等における公的医療保険の取扱い

1 療養費制度
□ 公的医療保険(例えば,国民健康保険)の保険給付は,保険医療機関又は保険薬局において現物給付としての「療養の給付」を行うのが原則です(国民健康保険法54条等参照)。
   この場合,被保険者である患者は,保険医療機関又は保険薬局の窓口において,一部負担金を支払います(70歳未満の被保険者の場合,一部負担金は医療費の3割です。)。
□   現金給付としての療養費制度が適用されるのは以下のような場合です(協会けんぽHPの「療養費」参照)。
① 事業主が資格取得届の手続き中で被保険者証が未交付のため,保険診療が受けられなかったとき
② 感染症予防法により,隔離収容された場合で薬価を徴収されたとき
③ 療養のため,医師の指示により義手・義足・義眼・コルセットを装着したとき
④ 生血液の輸血を受けたとき
⑤ 柔道整復師等から施術を受けたとき
□ 生血(せいけつ)とは,病院内で採血したばかりの,処理をしていない血液をいいます。
□ 大阪市の取扱いにつき,大阪市HPの「療養費・移送費・海外療養費」を参照してください。 

 
2 療養費の償還払い及び受領委任制度
□ 療養費制度が適用される場合,原則として,かかった費用の全額を被保険者又は被扶養者がいったん自分で支払い,その後,自己負担額を除いた費用を保険者(例えば,協会けんぽ)に請求するという「償還払い」が原則です。

   しかし,柔道整復師の施術に係る療養費(=柔道整復施術療養費)の場合,被保険者又は被扶養者が自己負担額だけを柔道整復師に支払い,残りの費用は柔道整復師から保険者に請求してもらうという,療養費の受領委任制度を採用している整骨院が大多数です。
    そして,療養費の受領委任制度を採用している整骨院の場合,保険医療機関で治療を受ける場合と同じように,保険証を持参して受診できます。
□ 受領委任の正確な定義は,「保険者と柔道整復師により構成される団体又は柔道整復師との間で契約を締結するとともに,被保険者が療養費の受領を当該契約に係る柔道整復師に委任することにより,保険者が療養費を被保険者ではなく柔道整復師に支払うこと」となります(平成15年9月2日付の内閣答弁書)。

□   「柔道整復施術療養費支給申請書」(様式第5号)(山形県後期高齢者医療広域連合HPの「各種手続きの様式がほしいとき」に掲載されているもの)の「受取代理人の欄」に患者が自ら署名押印をする必要があります(療養費の受領を柔道整復師に委任する委任状の意味を有します。)。
□ 柔道整復施術療養費支給申請書については,療養費は一か月を単位として請求されるものであり,当月の最後の施術の際に患者が一か月分の施術内容を確認した上で署名を行い,これを作成することが原則です。
   しかし,整骨院への来所が患者により一方的に中止される場合があること等から,患者が来所した月の初めに署名を行い,当該申請書を作成する場合もあることは,厚生労働省としても承知しています(平成19年10月9日付の内閣答弁書の「十について」)。
□ 療養費の受領委任制度の具体的な手続は,公益社団法人日本柔道整復師会の会員であるかどうかによって異なりますものの,基本的には同じです。
□ 療養費の受領委任制度の詳細については,厚生労働省HPの「療養費の改定等について」に掲載されている「柔道整復師の施術に係る療養費について」(平成22年5月24日付の厚生労働省保険局長通知)等で定められています。
  
3 整骨院で公的医療保険を使える場合と使えない場合
   以下の記載は,全国健康保険協会あいち支部HPの「柔道整復師(整骨院・接骨院)のかかり方」からほぼ抜粋したものです。
(1) 整骨院で公的医療保険を使える場合
① 外傷性の捻挫、打撲、挫傷(肉離れ)
② 医師の同意がある場合の骨折・脱臼の施術
③ 応急処置で行う骨折・脱臼の施術
→ 応急処置後の施術には医師の同意が必要です。
(2) 整骨院で公的医療保険を使えない場合
① 肩こり、筋肉疲労(日常の疲労、肩こり、体調不良や筋肉疲労、筋肉痛など
② 慰安目的によるあんま(指圧及びマッサージを含む)代わりの利用
③ 外傷性でない疾患(神経痛、リウマチ、五十肩、ヘルニアなど)からくる痛みやコリ
④ 脳疾患後遺症などの慢性病
⑤ 仕事中や通勤途上におきた負傷
→ 業務災害又は通勤災害として労災保険の対象となります。
⑥ 症状の改善がみられない長期の施術  

  
4 はり・きゅうの施術の取扱い
□ はり・きゅうの施術を受けるときに公的医療保険を使えるのは,予め医師の発行した同意書又は診断書がある場合に限られます。
□ 整形外科等で保険医療機関で同じ負傷等の治療を受けている場合,はり・きゅうの施術を受けても公的医療保険を使えません。

第5 柔道整復師の人数及び整骨院の数の推移

1 厚生労働省HPにある「平成26年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」(平成27年7月16日付)にある「就業あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師及び施術所」によれば,以下のとおりです。
 
(1) 柔道整復師の人数
平成16年:3万5077人
平成18年:3万8693人
平成20年:4万3946人
平成22年:5万428人
平成24年:5万8573人
平成26年:6万3873人
(2) 柔道整復の施術所(=整骨院)の数
平成16年:2万7771件
平成18年:3万787件
平成20年:3万4839件
平成22年:3万7997件
平成24年:4万2431件
平成26年:4万5572件
  
2 衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況は2年に1回,実施される調査です。

第6 柔道整復師が急増するようになったこと

1 福岡地裁平成10年8月27日判決の裁判要旨
   厚生大臣が,柔道整復師養成施設指定申請に対し,柔道整復師の従事者数は相当増加している状況にあり,養成力の増加を伴う施設を新たに設置する必要性が見いだし難いこと等を理由としてした,同指定を行わない旨の処分につき,当該申請は所定の指定基準を満たしているところ,柔道整復師法の制定経緯,柔道整復師とその免許等において類似するあん摩マツサージ指圧師,はり師,きゆう師等に関する法律19条1項があん摩マッサージ指圧師等の養成施設の認定,承認をしないことができる例外を設けているのに対し,柔道整復師法にはこのような規定がないことからすると,申請について所定の指定基準が満たされている以上,処分庁において裁量の余地はなく,厚生大臣は前記申請に対し指定を行わなければならなかったものであり,また,仮に,裁量の余地があるとしても,前記処分の理由では,厚生大臣の裁量権の行使には逸脱があったというべきであるから,前記処分は違法である。
 
2 柔道整復師の急増状況
(1) 平成10年当時,柔道整復師養成施設は14校しかありませんでしたが,福岡地裁平成10年8月27日判決に基づき,厚生省が,柔道整復師学校養成施設指定規則さえ満たせば柔道整復師養成施設の設置を認めるようになりました。
   その結果,平成25年4月現在で柔道整復師養成施設が107校となり,柔道整復師国家試験の合格者も第10回試験(平成14年)までは1000人前後であったのに対し,第11回試験(平成15年)以降急増し,第16回試験(平成20年)以降,5000人前後が合格するようになりました(外部HPの「柔道整復師専門学校の規制緩和について確認する」参照)。
(2) 最近の柔道整復師国家試験の合格者数等は以下のとおりです。
① 第22回試験(平成26年3月27日合格発表)
   受験者数が7102人,合格者数が5349人,合格率は75.3%
② 第23回試験(平成27年3月27日合格発表)
   受験者数が6858人,合格者数が4503人,合格率は65.7%
③ 第24回試験(平成28年3月28日合格発表)
   受験者数が7122人,合格者数が4583人,合格率は64.3%
(3) 柔道整復師国家試験等の最新の合格発表データは,厚生労働省HPの国家試験合格発表に掲載されています。

第7 整骨院の広告は大幅に制限されていること

1  整骨院は,以下の事項についてしか広告を出すことができません。
(1) 柔道整復師法24条1項1号ないし3号に基づく事項
① 柔道整復師である旨並びにその氏名及び住所
② 施術所の名称,電話番号及び所在の場所を表示する事項
③ 施術日又は施術時間
(2) 柔道整復師法24条1項4号に基づき厚生労働大臣が指定する事項
① ほねつぎ又は接骨
② 医療保険療養費支給申請ができる旨(脱臼又は骨折の患部の施術に係る申請については医師の同意が必要な旨を明示する場合に限る。)
③ 予約に基づく施術の実施
④ 休日又は夜間における施術の実施
⑤ 出張による施術の実施
⑥ 駐車設備に関する事項
 
2 柔道整復師の技能,施術方法又は経歴に関する事項を広告に記載することはできません(柔道整復師法24条2項)。

第8 柔道整復師が放射線を人体に照射することを業とした場合の罪責

□ 昭和26年8月10日施行の診療放射線技師法24条,31条1号は,それぞれ医師法17条,31条1項1号の特別規定として,医師,歯科医師,診療放射線技師及び診療エックス線技師(診療放射線技師法附則5条4項参照)以外の者に対し,放射線を人体に照射することを業とすることを禁止し,これに違反した者を処罰する規定であり,憲法22条1項及び憲法25条には違反しません(最高裁昭和58年7月14日判決参照)。
    そのため,柔道整復師が放射線を人体に照射することを業とした場合,診療放射線技師法24条に違反し,31条1号の罪が成立するにとどまり,医師法17条に違反した者を処罰する同法31条1項1号の罪は成立しません(最高裁平成3年2月15日決定)。
1 相談予約の電話番号は06-6364-8525であり,交通事故及び債務整理の初回の面談相談は無料であり,相続情報公開請求等の面談相談は30分3000円(税込み)です。
   交通事故及び債務整理については,無料の電話相談もやっています。
  
2 執務時間は原則として平日の午前10時から午後7時30分までですが,事前のご予約があれば,午後8時30分まで夜間相談可能です。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)の略歴取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ等はこちらであり,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図はこちらです。