車両保険等

第0 目次

第1 車両保険の概要
第2 車両保険が適用される場合
第3 車両保険が適用されない場合
第4 車両保険における全損及び分損
第5 盗難自動車と車両保険
第6 車両全損時諸費用特約等

第1 車両保険の概要

1 車両保険は,自分の車の修理代等を補償する保険です。
 
2 車両保険の保険金の上限は,保険に入っている自分の車の時価(=市場価格)となっていますから,対人賠償責任保険又は対物賠償責任保険のように何千万円ものお金が問題となることはありません。
   また,車両保険は保険金と比べて保険料が高額です。

3 車両保険には免責金額があり,免責金額までの損害については,保険金は支払われません。
   そのため,例えば,免責金額が5万円である場合,車の修理代に50万円かかったときに車両保険から支払われる保険金は45万円となります。

4 車両保険に加入している場合,以下の費用も支払われます。
① 修理費の一環として,事故により被保険自動車が自力で動けなくなった場合の,最寄りの修理工場等に運搬するために要したレッカー代等の費用
② 盗難にあった被保険自動車を引き取るために必要であった費用
 
5 物損事故における修理費用は示談成立後に支払われますところ,過失割合に争いがあるなどして示談交渉が進まない場合,車両の修理を先に進めてしまうことがあります。
   その際,加害者からの賠償に先行して,被害者自身が加入している車両保険を使用して修理費用を支払うことを,車両保険金先行払(=車両先行)といいます。
   この場合,被害者の保険会社は,先行払いした保険金の範囲で,加害者に対する損害賠償請求権を代位取得します(保険法25条)から,加害者からいくら回収できるかという点について,被害者は当事者ではなくなります。 

第2 車両保険が適用される場合

1(1)   一般型の車両保険は通常,以下の場合に適用されます。
① 車同士の衝突,二輪自動車・原動機付自転車との衝突,火災・爆発,いたずら・落書き・窓硝子破損,飛来中・落下中の他物との衝突,台風・竜巻・洪水・高潮
② 盗難
③ 電柱・ガードレールに衝突,当て逃げ,車庫入れに失敗,転覆・墜落
(2) エコノミー型の車両保険の場合,一般型の車両保険と比べて保険料が安くなる代わりに,③の場合に車両保険が適用されなくなります。
   そのため,他の自動車に衝突したものの,その運転者又は所有者が確認できない場合,当て逃げに該当するため,車両保険が適用されません。
(3) ソニー損保HPの「車両保険は必要なの?」によれば,平成25年3月末時点で,ソニー損保契約者のうち,車両保険の加入率は53.2%(うち,一般型が42.0%,エコノミー型が11.1%)となっています。
(4) 「衝突,接触…その他偶然な事故」を保険事故とする自家用自動車総合保険契約の約款に基づき,車両の水没が保険事故に該当するとして,車両保険金の支払を請求する者は,事故の発生が被保険者の意思に基づかないものであることについて主張,立証すべき責任を負いません(最高裁平成18年6月1日判決最高裁平成18年6月6日判決)。
 
2(1) 被保険自動車には通常,自動車の付属品として以下のものが含まれます。
   そのため,例えば,車上荒らしにあってカーナビだけが盗まれたような場合にも車両保険は適用されます。
① 自動車又は原動機付き自転車に定着又は装備されている物
→ 例えば,カーステレオ,装備されているスペアタイヤ,標準工具,チャイルドシート,フロアマット,定着又は装備されている消火器・座席ベルト
② カーナビゲーションシステム及びETC搭載器 
(2) 損害額が車両保険の自己負担額を下回る場合,車両保険からの支払はありません。
 
3 車がガードレールに衝突し,キャリアに固定していたスノーボードが壊れたとか,車が電信中に衝突し,トランク内のゴルフクラブが破損したといった場合,自動車の付属品以外のものが破損していますから,車両保険は適用されません。
   そのため,これらの破損について保険金を支払ってもらいたい場合,車両身の回り品補償に加入する必要があります(おとなの自動車保険HPの「車両身の回り品補償」参照)。

第3 車両保険が適用されない場合

1 車両保険が適用されない場合の例としては,以下のものがあります。
① 保険契約者,所有権留保付売買の買主等の故意又は重大な過失によって発生した損害
② 戦争,外国の武力行使等又は暴動
③ 地震若しくは噴火又はこれらによる津波
→ 東日本大震災による津波については,車両保険は適用されませんでした。
④ 原発事故
→ 福島第一原発事故については,車両保険は適用されませんでした。
⑤ 詐欺又は横領
→ 車をだまし取られた場合,車両保険は使えません。
⑥ 競技又は曲技
→ 競技の例としては,ロードレース(山岳ラリー,タイムラリー)及びサーキットレースがあります。
   曲技の例としては,サーカス,スタントカーがあります。
⑦ 無免許運転,免許停止中の運転,免許外運転
⑧ 酒酔い運転,酒気帯び運転
⑨ 偶然の外来の事故に由来しない故障損害
 
2 地震若しくは噴火又はこれらによる津波については,特約が付いている場合,車両保険が適用されます。
   特約の例としては,一時金として50万円が支払われる損保ジャパン日本興亜の「地震・噴火・津波車両全損時一時金特約」があります。

第4 車両保険における全損及び分損

1 全損及び分損の意義
(1) 車両保険における全損は以下の場合です。
① 物理的全損
   被保険自動車を物理的に修理できない場合をいいます。
② 経済的全損
   被保険自動車の修理費が協定保険価額を超える場合をいいます。
③ 盗難
   被保険自動車が盗難されて発見されなかった場合をいいます。 
(2) 車両保険における分損とは,被保険自動車の修理費が協定保険価額を超えない場合をいいます。
 
2 協定保険価額
(1)ア 協定保険価額とは,契約締結時における被保険自動車と同一の用途車種,車名,型式,仕様,初度登録年月等で,損耗度が同一の自動車の市場販売価格相当額を参考に,車両保険加入時に決定する,全損時の支払上限額のことです。
   また,自動車の市場販売価格相当額は,原則としてオートガイド社が毎月発行している「オートガイド自動車価格月報」(通称はレッドブック)を参考に決定していることが多いです。
イ   任意保険の契約期間中,協定保険価額は下がらないのに対し,車の時価は日々下がりますから,協定保険価額は保険契約者にとっては有利な価額となります。
   ただし,任意保険の契約を更新する際,協定保険価額は下がることとなります。
(2) 新車の場合,設定できる協定保険価額の範囲は狭いのに対し,中古車の場合,設定できる協定保険価額の範囲は広くなります。
(3) 車両保険には通常,車両価額協定保険特約が自動的にセットされていますから,協定保険価額が車両保険の保険金額となります。

3 全損時の車両保険の保険金
(1) 全損の場合,協定保険価額と修理代のどちらか低い方が車両保険の保険金として支払われるのであって,免責金額が差し引かれることはありません。
(2)   追突事故のように相手方に100%の過失がある場合であっても,相手方の任意保険会社は車両の時価額しか提示してきません。
   そのため,この場合,協定保険価額と時価額との差額について車両保険からの支払を受けることができます。
 
4 分損時の車両保険の保険金
(1)   分損の場合,修理代から免責金額を差し引いた金額が車両保険の保険金として支払われます。
(2) 物損事故について自分にも過失がある場合,過失割合部分について車両保険を使用できますものの,車両保険を使用した場合,ノンフリート等級が3等級下がって翌年度からの任意保険の保険料が上がります。
   また,保険会社によっては,次に車両保険を使うときの免責金額が上がることがあります(例えば,損保ジャパン日本興亜の「車両保険とは」参照)。
   そのため,車両保険の保険金(=修理代から免責金額を差し引いた金額)と,車両保険の保険料の値上がり分を比較して,車両保険を使うかどうかを判断すべきこととなります。
(3) 車両保険を使った方がいいかどうかにつき,外部HPの「3等級ダウン事故~こんな場合,保険を使った方が良い?~」 が参考になります。
   ただし,車対車の事故の場合,相手の車に対する賠償について対物賠償責任保険を使うのであれば,それだけでノンフリート等級が3等級下がるわけですから,次に事故を起こした際の自己負担額が上がる場合であっても,自分の車について車両保険を使った方がいいです。
(4) 以前は,車両保険を使っても保険期間中の1回目の保険事故に限り次年度の等級を下げないという等級プロテクト特約が存在しましたが,平成24年10月の自動車保険改定により廃止しされました。
   等級が下がらずに車両保険を利用できる関係で,保険会社の想定以上に車両保険が利用された結果,保険会社にとって儲からない特約だったことが原因であるといわれています。
 
5 車両新価保険特約(新車特約)
(1) 新車特約とは,購入した新車が購入後一定の期間内に一定以上の損害を受けた場合に,新たに代わりの自動車(新車)を購入するための費用を支払ってくれる特約をいいます。 
(2) 新車特約をセットするためには,自動車の初度登録から37ヶ月以内に保険期間の末日があることといった条件が付いていることがあります。
   また,盗難による全損の場合,新車特約は適用されないことがあります。

6 車両保険を使用してもノンフリート等級が下がらない場合
   相手方自動車の追突,センターラインオーバー,赤信号無視又は駐停車中の契約自動車への衝突・接触による事故において,契約自動車の運転者及び所有者に過失がなかったと保険会社が判断したような場合,車両保険を使ってもノンフリート等級が下がりませんから,自分の保険会社に問い合わせてください(例えば,損保ジャパン日本興亜の「車両保険とは」の「無過失車対車事故の特則」参照)。

第5 盗難自動車と車両保険

1 車両保険では,盗難に遭った場合には車両保険金が支払われます。
    この場合,盗難に遭った自動車の所有権は保険会社に移転しますものの,保険金の支払を受けてから60日以内に被保険自動車が発見された場合,保険金を返して発見された自動車の返還を求めることもできます。
 
2 ①詐欺又は横領により生じた損害,及び②詐欺又は横領にあった後,被保険自動車の占有を回復するまでの間に被保険自動車に発生した破損等の損害は免責となり,保険金は支払われません。
    これらの損害の発生原因には被保険者の意思が介在する点で盗難と異なり,これを担保するためには新たな危険(信用リスク)の測定も必要となり,保険料率にも影響するために免責とされていますから,詐欺又は横領を行った者が誰であるか,又は誰に対して行われたのかを問いません。
    そのため,保険金を請求するに当たり,損害発生原因をこれらと区別するために,盗難による損害が発生した旨を証明する必要があります。
 
3 一般に盗難とは,占有者の意に反する第三者による財物の占有の移転をいいますところ,車両保険の場合,被保険自動車の盗難という保険事故が保険契約者又は被保険者の意思に基づいて発生したことは,保険者が免責事由として主張,立証すべき事項です。
   そのため,被保険自動車の盗難という保険事故が発生したとして車両保険金の支払を請求する者は,被保険自動車の持ち去りが被保険者の意思に基づかないものであることを主張、立証すべき責任を負うものではありません。
   しかし,上記主張立証責任の分配によっても,上記保険金請求者は,「被保険者以外の者が被保険者の占有に係る被保険自動車をその所在場所から持ち去ったこと」という盗難の外形的な事実を主張、立証する責任を免れるものではありません。

   そして,その外形的な事実は,「被保険者の占有に係る被保険自動車が保険金請求者の主張する所在場所に置かれていたこと」及び「被保険者以外の者がその場所から被保険自動車を持ち去ったこと」という事実から構成されるとされています最高裁平成19年4月23日判決参照)。
 
4 外部HPの「自動車盗難の現状」によれば,自動車盗難の認知件数(車両本体の盗難であり,部品盗及び車上ねらいは除く。)は以下のとおり推移しています。
平成15年:6万4223件,平成16年:5万8737件
平成17年:4万6728件,平成18年:3万6058件
平成19年:3万1790件,平成20年:2万7668件
平成21年:2万5960件,平成22年:2万3970件
平成23年:2万5238件,平成24年:2万1319件
平成25年:2万1529件,平成26年:1万6104件
平成27年:1万3821件 

第6 車両全損時諸費用特約等

1 車両全損時諸費用特約
   車両保険に自動セットされていることがある車両全損時諸費用特約に加入している場合,車両保険の保険金額の10%(上限20万円)が支払われます。
   そのため,それによって,廃車時にかかる費用及び新車購入時にかかる費用をある程度まかなうことができます。
 
2 廃車時の費用等
  「廃車時の費用等及び自動車リサイクル」を参照して下さい。
1 相談予約の電話番号は06-6364-8525であり,交通事故及び債務整理の初回の面談相談は無料であり,相続情報公開請求等の面談相談は30分3000円(税込み)です。
   交通事故及び債務整理については,無料の電話相談もやっています。
  
2 執務時間は原則として平日の午前10時から午後7時30分までですが,事前のご予約があれば,午後8時30分まで夜間相談可能です。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)については,略歴及び取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図を参照してください。