犯罪被害者等の権利利益の尊重に関する最高検察庁部長通達

第0 犯罪被害者等の権利利益の尊重に関する最高検察庁部長通達

1   本ページの第1以下の記載は,「「犯罪被害者等の権利利益の尊重について(依命通達)」の発出について」(平成26年10月21日付の最高検察庁総務部長及び公判部長の通達) を丸写ししたものです。
  ただし,第3の見出し部分は太字にした上で,スペースを入れています。

2 文中の「本依命通達」は,「犯罪被害者等の権利利益の尊重について」(平成26年10月21日付の最高検察庁次長検事通達)のことです。

第1 本依命通達発出までの経緯

   平成17年4月に施行された犯罪被害者等基本法は,「すべて犯罪被害者等は、 個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する。」 等の基本理念を明示した上で,これらの基本理念にのっとり,犯罪被害者等のための施策を総合的に策定し,及び実施することを国の責務と定めた。そして,同法に基づき,同年12月,犯罪被害者等のための政府全体としての基本的な計画である犯罪被害者等基本計画(以下「第1次基本計画」という。)が策定された。 同計画では,5 つの重点課題の一つとして「刑事手続への関与拡充への取組」が掲げられ,「刑事司法は,社会の秩序の維持を図るという目的に加え,それが『事件の当事者』である生身の犯罪被害者等の権利利益の回復に重要な意義を有することも認識された上で,その手続が進められるべきである。」として,「『事件の当事者』である犯罪被害者等が,刑事に関する手続きや少年保護事件に関する手続きに適切に関与できるよう,その機会を拡充する取組を行わなければならない。」と指摘された。これを受けて,平成19年に「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律」(平成19年法律第95号。以下「平成19年改正法」という。)が成立し,被害者参加制度を始めとする犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための種々の制度が創設されたが,同法の審議に際し,衆議院及び参議院の各法務委員会において,「刑事裁判の手続においては,被害者参加人となった者に限らず,犯罪被害者等と検察官との意思疎通が十分図られるよう努めること」を趣旨とする附帯決議がなされた。このような動きを踏まえ,最高検察庁としても,これまで各種通達等を発出し,犯罪被害者等への対応に遺漏なきを期してきたところである。
   このように,犯罪被害者等施策は,第1次基本計画の推進により大きく進展したものの,犯罪被害者等の抱える問題が全て解決されたわけではなく,犯罪被害者団体等からは,その後も,犯罪被害者等が関係する様々な問題について,改善を求める要望が寄せられている。そこで,政府全体として,更なる取組の強化を図っていく必要があることから,第1次基本計画の終了を受け,平成23年3月,第2次犯罪被害者等基本計画(以下「第2次基本計画」という。)が策定され,第1次基本計画と同様の重点課題が掲げられた。一方,同年9月,最高検察庁において,検察官が職務を遂行する際に指針とすべき基本的な心構えを示した「検察の理念」が策定され,その中に「犯罪被害者等の声に耳を傾け,その正当な権利利益を尊重する。」との一項が設けられた。
   このような経緯の中,法務省において,「平成19年改正法の見直しの要否について検討を行うに当たって幅広く関係者の意見を聴取するため,平成25年1月から平成26年7月にかけて,12回にわたり,被害者関係団体,刑事法研究者, 日本弁護士連合会,裁判所,検察庁,法務省の各関係者等が出席する意見交換会を開催した。同意見交換会では,これまでの検察官の犯罪被害者等に対する対応についておおむね好意的な評価を得られたものの,一部に検察官の対応に問題があった事例の指摘があったほか,被害者参加制度の適正かつ円滑な運用のためには,被害者参加人と検察官との間の密接なコミュニケーションがまずもって重要であるとの意見や,前記基本理念の一つとして揚げられている「被害者への途切れのない支援」の実現のためには,検察と関係機関等との連携が重要であるとの意見などが示された。

第2 本依命通達の趣旨等

   刑事司法は,公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ,事案の真相を明らかにし,刑罰法令を適正かつ迅速に適用実現することを目的とするものであるが,公益の代表者として,適切に事件を処理し,公判を遂行する責務を負う検察官にあっては,第1次基本計画において言及された「刑事司法は,社会の秩序の維持を図るという目的に加え,それが『事件の当事者』 である生身の犯罪被害者等の権利利益の回復に重要な意義を有することも認識された上で, その手続が進められるべきである。」との指摘を真摯に受け止める必要がある。したがって,検察官は,犯罪被害者等基本法に掲げられた基本理念を十分理解した上で,捜査・公判の遂行過程において,犯罪被害者等に適切に対応し,法と証拠に照らして相当と認められる範囲で犯罪被害者等の要望にも十分配慮した事件処理や公判活動を行う必要がある。
  そこで,前記意見交換会等で示された指摘や意見を謙虚に受け止め,「検察の理念」に示された犯罪被害者等に関する基本姿勢を真摯に実践すべく,被害者参加制度の趣旨の再認識を図るとともに,被害者参加制度の対象事件であるか否かを問わず,広く犯罪被害者等が適切かつ効果的に刑事手続等に関与することができるようにするため,犯罪被害者等に対してなお一層の配慮がなされるよう,従前発出された犯罪被害者等に対する対応に関する次長検事依命通達の内容を整理し, その対応の在り方について,網羅的·包括的に示すこととしたものである。

第3 本依命通達の各項の趣旨・内容等

1 本依命通達1は,捜査段階における被害者等(刑事訴訟法第290条の2第1 項に規定する被害者等をいう。以下同じ。)とのコミュニケーションの在り方について指示するものである。
   検察官は,捜査等の過程において,事案の真相解明のため,被害者等から十分に事情を聴取する必要があるところ,人の生命·身体に関わる犯罪の被害者等を始めとして,犯罪により精神的被害を受ける被害者等は多く,このような被害者等が捜査等の過程で配慮を欠けた対応をされることによって,いわゆる二次的被害を受けることがあることは周知の事実である。検察官においては,被害者等から事情を聴取するに当たり,このことをよく 理解した上で,被害者等の受けた被害の内容を的確に把握し,その心情等に十分配意した対応をとる必要がある。その上で,被害者等の意見等を適切に把握して刑事裁判に適正に反映させることが, 被害者等の正当な権利利益の尊重につながることを自覚し,被害者等との間のコミュニケーションをより一層充実させ,その声に真摯に耳を傾ける必要がある。
  また,検察官は,被害者等から捜査全般に関して様々な要望を受けることがあり,これに適切に対応する必要があるが,特に,起訴·不起訴,公判請求·略式請求,訴因及び罰条の構成といった事件処理に関する要望については,より一層の配慮が必要であり,公益の代表者として真摯に対応することが求められる。具体的には,法と証拠に照らして相当と認められる範囲で,被害者等の要望にも十分に配慮した事件の適正な処理に努めるとともに,被害者等に対し,必要かつ適切な範囲で事件処理に関する説明を尽くすことが必要である。
  特に,法と証拠に基づいて十分に検討した結果,被害者等の要望に沿う事件処理を行うことができない場合には,事案の内容,将来の捜査·公判に支障を及ぼすおそれや関係者の名誉·プライバシーを害するおそれの有無·程度等を考慮しつつ,必要に応じ,適切な時期を捉えて,捜査処理の内容及び理由について丁寧に説明し,被害者等の理解を得る努力が必要である。もっとも,不起訴処分について,被害者等に誠意をもって不起訴理由を説明しても被害者等の納得が得られないときは,検察審査会への申立制度を説明して,今後の対応を被害者等に委ねるのが相当である。
 
2 本依命通達2は,被害者等のための制度等に関する情報提供等について指示するものである。
(1)   現在,被害者等の権利利益を保護するための制度が少なからず整備され,また,それ以外にも,検察庁において,被害者等の保護·支援のための様々な取組が行われているところ,本依命通達2の(1)前段は,被害者等がこれらの制度や取組を有効に利用できるよう,被害者等に対し,必要に応じ,その情報を適宜の時期に提供することを求めるものである。また,同様の取組は,他の関係機関や民間の団体等においても行われていることに鑑み,本依命通達2の(1) 後段は,被害者等が置かれている状況等によっては,これら関係機関等に関する情報を提供するほか,その保護·支援に適した関係機関等に被害者等を紹介するなど関係機関等と連携して適切に対応することを求めるものである。
ア   本依命通達2の(1)前段にいう「その権利利益の保護のための制度」とは,公開の法廷における被害者特定事項の秘匿制度(刑事訴訟法第290条の 2),被害者等の意見陳述制度(同法第292条の2),優先的に裁判を傍聴できる制度(犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続きに付随する措置に関する法律(以下「付随措置法」という。)第2条),公判記録の閲覧及び謄写の制度(同法第3条),刑事和解制度(同法第19条~第22 条),損害賠償命令制度(同法第23条~第40条)など刑事手続上の制度を,「検察庁における被害者等の保護と支援のための運用上の取組」とは, 被害者支援員による相談·支援,被害者ホットラインによる相談や事件の問い合わせへの対応,被害者等通知制度などをいう。
  情報提供の時期については,本依命通達は「適宜の時期」としており,事件の内容,処理方針の決定時期,被害者等のニーズ,必要とされる制度·取組の内容等をも踏まえて個別に判断されることとなるが,被害者等の利益を第一に考慮し,当該制度ないしは取組が必要とされる時期以前のできるだけ早い段階で情報提供を行うことが適切である。
  情報提供に当たっては,被害者等がこれらの制度等を十分に利用できるよう,分かりやすく説明することが肝心であり,説明に際して,各庁に備え付けられた「犯罪被害者の方々へ(被害者保護と支援のための制度について)」 と題する冊子を活用するなどの工夫が求められる。
イ   本依命通達2の(1)後段は,犯罪被害者等基本法第3条に基本理念として掲げられた「被害者等の事情に応じた施策」及び「被害者等への途切れのない支援」並びに第7条に掲げられた「関係機関等における連携協力」といった各要請を踏まえ,被害者等が置かれている状況その他の事情によっては,各庁において把握している関係機関等による取組についての情報提供を行うほか,被害者等の意向を踏まえつつ,その保護·支援に適した関係機関等に直接被害者等を紹介するなどして,当該関係機関等と連携して,事案に応じた適切な対応に努めることを求めるものである。このような対応を円滑に行うに当たっては,各庁において,日頃から,関係機関等が実施している被害者支援の内容等を把握するとともに,関係機関等との協力関係の充実強化に努めることが重要である。
(2)   本依命通達2の(2)は,被害者参加制度が被害者等の権利利益の保護のためにとりわけ重要な制度であることに鑑み,同制度の対象となる事件を公判請求する場合において,被害者等が同制度を利用するかどうかを適切に判断することができるようにするため,同制度に関する情報提供について特段の配慮を求めるものである。
  「[被害者参加制度]に関連する制度」とは,被害者等が被害者参加の申出をするか否かを判断するために重要と思われる被害者参加制度に関連する制度をいい,具体的には,被害者参加旅費等の支給制度(付随措置法第5条~第10条), 国選の被害者参加弁護士の選定制度(付随措置法第11条~第18条)などがこれに当たる。
  これについても,情報提供の時期は「適宜の時期」とされているところ,事件が被害者参加制度の対象事件に当たるか否かは公訴事実の内容により定まることから,起訴後できるだけ早い時期に被害者等の参加の意向を確認しつつ,情報提供を行うべきこととなろう。もっとも,事件の内容やその処理の見通しいかんによっては,起訴前の捜査段階で被害者等が参考人聴取等で来庁した際などに情報提供を行うことも可能と思われる。
 
3 本依命通達3及び4は,公判における主張·立証に関わる事項についての被害者等とのコミュニケーションの在り方について指示するものである。
(1) 本依命通達3の(1)は,被害者等に対し,その要望に応じて,公判における検察官の主張·立証の内容等を説明することを求めるものである。
   被害者等が, 自己を被害者等とする事件の真相を知りたいと思うのは当然のことであり,刑事司法が「事件の当事者」である生身の被害者等の権利利益の回復に重要な意義を有するものである以上,真相解明の途上である捜査段階においては十分な説明は困難であっても,事件を公判請求した場合には,当該事件の被害者等の要望に応じて,事件の内容,捜査·公判に支障を及ぼすおそれや関係者の名誉·プライバシーを害するおそれの有無·程度等を考慮しつつ, 公判における検察官の主張·立証の内容を分かりやすく説明するのが相当である。
  このような説明に関連して,被害者等の要望があれば,起訴状記載の公訴事実等の内容を記載した書面や,冒頭陳述に際してあらかじめ書面を作成して裁判所に提出した場合においては,当該冒頭陳述の内容を記載した書面を交付するのが相当である。ただし,これらの書面を交付するに際しては,関係者のプライバシー保護に適切に配意する必要があり、例えば,公判廷で明らかにされない関係者の氏名を伏せた書面を交付すること,第三者へこれらの書面が不当に流出することがないように被害者等に注意喚起することなどの配慮が求められる。
(2) 本依命通達3の(2)は,特に,被害者参加制度の対象となる事件を公判請求した場合の当該事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士(以下「対象被害者等」という。)に対しては,その要望をも踏まえ,対象被害者等による訴訟行為の準備の必要性等にも十分配慮して,公判における検察官の主張·立証の内容等を説明することを求めるものである。
ア 被害者参加制度の対象となる事件においては,前記3の(1)に示した理由に加え,被害者等が被害者参加の申出をするか否かを判断するに当たり,あるいは被害者参加人として自ら行う訴訟行為(証人尋問,被告人質問,弁論としての意見陳述)を準備する上でも,検察官の主張·立証の内容を知る必要がある。そこで,本依命通達3の(2)は,対象被害者等の要望をも踏まえつつ, 対象被害者等に対し上記判断に資するように,あるいは適切かつ効果的に刑事裁判に参加できるようにとの観点から,検察官の主張·立証の内容を分かりやすく説明することを求めるものであり,同内容が十分に理解されるよう努める必要がある。
イ また,被害者参加人が適切かつ効果的に訴訟行為を行うためには,あらかじめ,証拠関係を十分把握する必要があるし,被害者等が被害者参加の申出をするか否かを判断するに当たっても,証拠関係を十分に把握することが必要な場合もあると考えられる。そして,検察官手持ち証拠のうち,検察官が当該被告事件について証拠調べ請求をすることとしている証拠(以下「検察官請求証拠」という。)については,検察官が当該被告事件の罪体及び情状の立証に必要であると判断した証拠であるので,上記いずれの観点からも一般に開示の必要性が高いと考えられる一方,検察官証拠請求は,検察官が後に公判廷で明らかにすることを予定している証拠であるので,一般に開示による弊害も少ないと考えられる。そこで,本依命通達3の(2)後段は,対象被害者等から,検察官請求証拠の開示を求められたときは,原則としてその閲覧を認めるなど,弾力的な運用に努めることを求めるものである。
  同後段は,対象被害者等から証拠の開示を求められた場合に,検察官請求証拠については原則としてその閲覧を認めることとする点にその趣旨があるのであって,それ以外の検察官手持ち証拠の開示を一律に禁止する趣旨ではない。したがって,例えば,刑事訴訟法第316条の15第1項又は第31 6条の20第1項の規定により検察官が被告人又は弁護人に開示した証拠についても,開示の必要性及び開示に伴う弊害の有無·程度を考慮して相当と認められるときは,これを開示することとしても差し支えない。
   また,同後段は,閲覧の方法により開示することを原則としている。これは,証拠の謄写まで認めることとすると,種々の弊害が生じるおそれが大きくなることを考慮してのことである。したがって,同後段は,証拠の謄写を一律に禁止するものではなく,例えば,被害者参加人から委託を受けた弁護士から証拠の謄写を求められた場合において,謄写を求める理由や対象となる証拠の内容等に鑑みて,謄写の必要性が認められ,かつ,謄写に伴う弊害が認められないときは,証拠の謄写を認めて差し支えない。
(3) 本依命通達4は,被害者等から検察官が公判において主張·立証する事項についての要望が示された場合の対応について,適正·迅速な公判の遂行を旨としつつ,法と証拠に照らして相当と認められる範囲で,かかる要望にも十分に配慮した主張·立証に努めることを求めるものである。そして,法と証拠に基づいて十分に検討した結果,被害者等の要望に沿う主張·立証を行うことができない場合には,事案の内容,捜査·公判に支障を及ぼすおそれや関係者の名誉·プライバシーを害するおそれの有無·程度等を考慮しつつ,必要に応じて, その理由について丁寧に説明し,被害者等の理解を得る努力が必要である。
 
4 本依命通達5は,被害者等に対し,その要望に応じ,適宜の時期に,公判前整理手続及び期日間整理手続(以下「公判前整理手続等」という。)の経過及び結果について必要な説明をすることを求めるものである。
   公判前整理手続等は,事件の争点及び証拠を整理するための公判準備の手続であり,被害者等が,その経過や結果について関心を寄せるのは当然のことである。 特に,被害者参加の許可がなされている事件にあっては,公判前整理手続等における事件の争点及び証拠の整理の結果が被害者参加人及びその委託を受けた弁護士(以下「被害者参加人等」という。)の訴訟行為の内容にも影響し得るものであるから,この場合には,必要に応じ,被害者参加人等と十分なコミュニケーションをとり,被害者参加人等の要望をよく聞いた上で公判前整理手続等に臨むのが相当である。その上で,被害者参加人等が適切かつ効果的に刑事裁判に参加できるようにとの観点から,公判前整理手続等の経過及び結果についての説明を十分に尽くす必要があろう。この点は,いまだ被害者参加の許可がなされてはいないものの,被害者参加の申出をすることを具体的に検討している被害者参加対象事件の被害者等に対する対応についても同様である。
  なお,現行法上,公判前整理手続等への被害者参加人等の出席や傍聴に関する規定はないが,実務の運用として,公判審理予定等についての事実上の打合せの場に被害者参加弁護士の同席を認める例もあるところ,被害者参加人等が公判前整理手続等の傍聴を特に希望する場合において,その理由,被害者参加人等が公判前整理手続等に同席することの弊害の有無·程度,弁護人の同意の有無などを考慮して相当と認められるときは,当該希望の事実を裁判所に伝えるなどの配慮も必要である。

5 本依命通達6は,刑事裁判の公判期日等の指定に関する被害者等の要望に対する対応の在り方について指示するものである。
(1) 本依命通達6の(1)は,被害者等が公判傍聴を希望する場合は,その機会が可能な限り得られるよう,公判期日の指定に当たっては,被害者等と十分なコミュニケーションをとって,必要に応じて,被害者等の希望を裁判所に伝えるよう配意することを求めるものである。
  被害者等が,自己又はその家族等を被害者とする事件の刑事裁判の推移を自らの目で見守りたいと思うのは当然のことであるから,可能な限り,被害者等が公判傍聴の機会が得られるよう配意する必要がある。公判期日の指定は裁判長の権限に属するが(刑事訴訟法第273条第1項),指定に当たっては検察官の意見が求められるのが通例であり,そのような機会等に,被害者等の希望を裁判所に伝えるような配慮をすることが求められることとなる。
(2) 被害者参加が許可された事件においては,正に被害者参加人等が,公判期日等に出席し,一定の範囲で訴訟行為を行うことが認められていることから,公判期日等が,被害者参加人等が出席することができる日に指定される必要性が更に大きい。
  そこで,本依命通達6の(2)は,そのような事件における公判期日等の指定に当たっては,検察官においてあらかじめ被害者参加人等と連絡を取り合い,被害者参加人等が公判等に出席できる日程を把握して,これを裁判所に伝え,公判期日等が被害者参加人等の事情をも十分考慮に入れた上で指定されることとなるよう配意することを求めるものである。なお,このことは,刑事訴訟法第292条の2による意見陳述の申出をした,あるいはする予定の被害者等に対する対応についても同様である。
  また,刑事手続きへの適切かつ効果的な参加を確保するという観点からは, 単に公判期日等が被害者参加人等にとって出席可能な日に指定されるというにとどまらず,公判等に出席した被害者参加人が,被告人や傍聴人の存在に起因する過度の不安や緊張に妨げられることなく必要な訴訟行為を行うことができる状況を確保する必要があるところ,本依命通達6の(2)後段は,かかる観点から検察官が必要な配慮をすることを求めるものである。このような趣旨に鑑みれば,配慮の対象となる措置は,例示されている付添い及び遮蔽(刑事訴訟法第316条の39)に尽きるものではなく,例えば,入出廷時の動線が被告人の至近を通らないようにするといったものも含まれる。

6 本依命通達7は,被害者参加人等から,被害者参加人等が公判において行う訴訟行為に関し,相談,助言その他の助力を求められた場合の対応の在り方について指示するものである。
   被害者参加人等が,その一定の範囲で認められた訴訟行為(証人尋問,被告人質問,弁論としての意見陳述)を行うに当たっては,いずれの場合も,検察官を経由して裁判所に対して申し出ることとされており,その場合,検察官としては, 当該申出内容が法定の要件を満たしているか否かという適法性の判断にとどまらず,例えば,犯罪の証明に支障を生ずるおそれがないかといった相当性の観点からも幅広く検討を行った上で,意見を付して裁判所に通知することとなる(したがって,適法性又は相当性に問題があると判断した場合には,被害者参加人等が当該訴訟行為を行うことについて反対意見を付すことになるが,かかる事態を可能な限り避けるため,被害者参加人等と十分なコミュニケーションをとり,その理解を得られるよう努める必要がある。)。また,証人尋問や被告人質問については,立証責任を負う検察官として同責任を十分に果たすため,あるいは尋問技術に習熟している等との理由から,まずは検察官が自ら行った方が適当であると判断した場合には,被害者参加人等にこれを行わせず,検察官において行うこととしている。以上のような仕組みとしたのは,被害者参加制度が二当事者主義構造を維持しつつ,その枠組みの中で,①事案の真相の解明という刑事裁判の基本的な目的の達成,②被告人の権利·利益の保護,③迅速な裁判の要請,④証人の負担に対する配慮,⑤法廷の秩序維持などの刑事裁判における様々な要請との調和を図るためであって,同制度が円滑かつ適正に運用されるか否かは,ひとえに検察官の職責にかかっているといっても過言ではない。そのためには,まずもって, 被害者参加人等と検察官との間で密接なコミュニケーションを保ち,被害者参加人等が被害者参加制度の趣旨をよく理解した上で,訴訟行為について適正に行えるよう導く必要がある。
   同項が,「被害者参加制度の趣旨にのっとり」としているのは,このような被害者参加制度の趣旨を十分に理解し,刑事裁判における上記の諸要請との調和を常に図ることを指針とすべきことをいい,また「公益の代表者として相当と認められる範囲で」としているのは,検察官は,被害者等の代理人ではなく,被害者等の利益だけを考えるのではなく,飽くまでも「公益の代表者」としての公正さや廉潔性を保って助力を行わなければならないことをいうものである。

7 本依命通達8は,判決を踏まえての対応について指示するものである。
   判決は刑事裁判の言わば到達点であり,被害者等が,判決で自己を被害者等とする事件に関し,適正な事実認定がなされるとともに,これに基づき公正妥当な刑罰が科されているかどうかに強い関心を寄せ,場合によっては,検察官が上訴するよう要望するのは当然のことである。そこで,本項前段は,判決があった場合には,被害者等の要望に応じ,判決内容及び上訴に関する事項を説明するとともに,判決に対する上訴の要否を検討する際には,必要に応じ,被害者等から意見聴取を行なうことなどを求めるものである。
  また,判決の内容が被害者等にとって必ずしも納得し難いものであった場合において,検察官が当該判決に対し上訴しないこととしたときに,その理由が被害者等に十分に理解されないままでいると,被害者等の刑事司法に対する信頼感を失わせることにもなりかねない。そこで,本項後段は,特に,被害者等から判決に対して上訴をすることを要望された場合において,法と証拠に基づいて十分に検討した結果,上訴をしないこととしたときには,事案の内容,捜査·公判に支障を及ぼすおそれや関係者の名誉·プライバシーを害するおそれの有無·程度等を考慮しつつ,その理由を分かりやすく説明し,被害者等の理解を得る努力をするよう求めるものである。

8 本依命通達9は,検察官の事件処理,公判活動及び上訴に関する判断についての被害者等からの不服申立てへの対応の在り方について指示するものである。
   被害者等が,主任検察官の所属庁又はその上級庁の監督者に対し,主任検察官による不起訴処分等の事件の処理,訴因の設定,証拠調べの請求等の公判における主張·立証又は上訴に関する判断について,監督権の発動を促す申立てを行った場合には,これらの監督者たる検察官においては,必要に応じ,監督権限を適正に行使し,被害者等への対応に遺漏なきを期する必要がある。そこで,本依命通達9は,被害者等から上記申立てがあった場合には,速やかに,その申立て内容を検討するとともに,主任検察官に事実関係を確認するなど必要な調査を行い, 被害者等の立場や心情にも十分配慮した上,監督者において,事案の内容,社会的影響等を考慮して,被害者等に対し,臨機応変かつ適切に説明を行い,あるいは,当該判断の適否を再検討し,必要に応じて,主任検察官に対し,所要の改善措置をとるよう指揮·指導するなど,監督者に対し,上記のような不服申立てへの迅速·適切な対処について,一層の配慮を求めるものである。

9 本依命通達 10 は,上訴審における被害者等への対応の在り方について指示するものである。
   上訴審においても,被害者等が, 自己を被害者等とする事件の審理の帰すうに関心を寄せるのは,第1審における場合と何ら変わりはない。また,被害者参加に関する規定は,特別の定めがある場合を除き,控訴審についても準用されることから(刑事訴訟法第404条),控訴審において被害者参加の許可がなされる場合もあるほか,控訴審において,刑事訴訟法第292条の2による意見陳述が認められた例もある。したがって,被害者等と検察官とのコミュニケーションの在り方を始めとして,被害者等に対する配慮の在り方については,第1審であろうが,上訴審であろうが基本的には同様である。
  そこで,本依命通達 10 前段は,上訴審においても,審理手続の内容や被害者参加の許可の有無などを考慮して相当な範囲で,本依命通達2から9までに示したところに準じた対応をするよう求めるものである。具体的な対応の仕方については,上訴が被告人·弁護人によるものか,それとも検察官によるものか,上訴の趣意その他上訴審における事件の争点や,上訴審において行われる審理の内容等によって異なってくるところであり,個々の事案に応じて判断することになるが, いずれにしても,刑事司法が「事件の当事者」である生身の犯罪被害者等の権利利益の回復に重要な意義を有するものであることを十分自覚し,第 1 審における被害者等への対応との均衡にも配慮しつつ,臨機かつ適切な対応を心がける必要がある。
   本依命通達 10 後段は,かかる対応を円滑に行うため,捜査段階並びに第1審及び控訴審の公判段階における被害者等への対応が,順次,適切かつ確実に上訴審の担当者に引き継がれるよう配意することを求めるものである。

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