加害者の不起訴処分を争う検察審査会

第1 加害者の不起訴処分を争う方法

1 加害者の不起訴処分を争う方法としては,以下の二つがあります。
① 検察審査会に対する審査申立て(検察審査会法
② 高等検察庁に対する不服申立て事件事務規程(法務大臣訓令)191条以下)

2 交通事故の加害者は通常,過失運転致傷罪(自動車運転死傷行為処罰法5条)の被疑者となります。
  交通事故事件の起訴・不起訴処分は,交通事故直後に被害者が警察に提出した診断書に書いてある加療期間を重大な基準として決定されていますから,被害者が加療2週間程度の診断書を警察に提出していた場合,被害者に過失がない追突事故であっても,加害者は通常,不起訴処分となっています。
  しかし,現実の交通事故の治療期間は,警察に提出した診断書に書いてある加療期間を大幅に超えることが非常に多いです。
  そのため,被害者において,現実の治療期間に見合った刑事罰を加害者に与えたいと考える場合,加害者の不起訴処分を争う必要があります。

3 「検察審査員等の日当の額の目安等について」(平成28年12月26日付の最高裁判所事務総局刑事局第一課長の事務連絡)を掲載しています(平成29年4月9日追加)。

4 「刑事手続及び少年審判における被害者の権利」も参照してください。

5 検察審査会に関する本HPの説明は,最高裁判所事務総局刑事局が作成した,検察審査会事務局職員のマニュアルを参照して作成しています。

第2 検察審査会

1 検察審査会の一般的な説明は裁判所HPの「検察審査会」に載っています。

2 20歳以上で選挙権を有する国民の中からくじで選ばれた11人の検察審査員(検察審査会法4条)が,検察官の不起訴処分の当否を判断します(検察審査会法30条)。

3 検察審査員は,検察審査会の構成メンバーであり,任期は6ヶ月です。
  これに対して補充員は,検察審査員が会議期日に出頭しない場合は臨時の検察審査員(検察審査会法25条2項)として,検察審査員が辞職等により欠けた場合は補欠の検察審査員(検察審査会法18条1項)として,検察審査員の仕事をします。

4(1) 検察審査会は,検察審査会の名称及び管轄区域等を定める政令(昭和23年11月29日政令第353号)に基づき,165庁が設置されており,その具体的内訳は以下のとおりです。
① 地方裁判所本庁所在地(50カ所)に67庁
→ 東京に6庁,大阪に4庁,横浜に3庁,さいたま,千葉,京都,神戸,名古屋,広島及び福岡に各2庁,その他に各1庁
② 地方裁判所支部所在地(203カ所)に98庁
(2) 個別の検察審査会の連絡先は,裁判所HPの「全国の検察審査会一覧表」に載っています。

5 各検察審査会には付属機関として事務局が置かれています(検察審査会法19条)。
   各検察審査会がそれぞれ独立していること(検察審査会法3条参照)に伴い,その付属機関である検察審査会事務局も相互に独立しています。

6(1) 検察審査会の審査会議は非公開であり(検察審査会法26条),補充員に限り,検察審査会の許可を得て,審査会議を傍聴できるに過ぎません(検察審査会法25条の2)。
  また,一般の第三者はもちろん,たとえ審査申立人や被疑者からの申出があった場合でも,審査記録の閲覧謄写は一切させてくれません。
(2) 審査会議に立ち会った検察審査員,補充員,審査補充員及び検察審査会事務官は,各検察審査員の発言,証人に対する尋問,その供述,議決等,会議において職務上知り得た一切の手続などの秘密を漏らしてはならないとされています。
  その関係で,検察審査会事務官は,検察審査員,補充員及び審査補助員に対し,審査事件の内容や進捗状況(審査期間,審査回数)はもとより,事件係属の有無及び審査会議日等についても,守秘義務の対象となることを十分に説明するものとされています。

第3 検察審査会の審査手続

1 審査申立ての方法等
(1)ア 検察審査会に対する審査の申立ては,不起訴処分を不当とする理由その他検察審査会法施行令18条1項所定の事項を記載し,審査申立人が署名押印した書面によってする必要があります(検察審査会法31条)。
  ただし,被疑者の年齢,職業及び住居,不起訴処分の年月日並びに不起訴処分をした検察官の氏名が明らかでないときは,これを記載する必要はありません(検察審査会法施行令18条1項ただし書)。
イ 弁護士が検察庁に対して加害者の刑事処分を問い合わせた場合であっても,不起訴処分をした検察官の氏名は不明であることが通常です。
(2) 審査申立人は,申立書に,審査に必要と考えられる被疑事件関係者の氏名及び住居を記載し,かつ,審査に必要と考える資料を添付することができます(検察審査会法施行令18条2項)。

2 審査申立ての期間
   審査申立てについては,除斥期間等の規定がありませんから,いつでもこれをすることができます。
  ただし,公訴時効が完成していたり,被疑者となる加害者が死亡したりしていた場合,審査を求める利益がありませんから,検察審査会は,申立てを受理した上で,不起訴相当の議決をすることとなります。

3 検察審査会による審査方法
(1) 検察審査会事務局において,検察官の判断が表明されている不起訴裁定書及びその判断の資料となった不起訴記録を取り寄せます(検察審査会法35条前段参照)。
(2) 検察審査会事務局において,検察審査会の審査会議で使用する審査資料を作成します。
(3) 検察審査会の会議において,検察審査会事務官が事件概要等(被疑事実の要旨,争点や不起訴の理由,証拠関係の概要など)の説明をします。
(4) 検察官は,検察審査会の要求があるときは,会議に出席して意見を述べる必要があります(検察審査会法35条後段)。
(5) 検察審査会は,公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができます(検察審査会法36条)。
(6) 検察審査会は,審査申立人を呼び出し,尋問することができます(検察審査会法37条1項)。
   審査申立人代理人(例えば,代理人弁護士)が審査申立人尋問への立会を依頼した場合であっても,会議非公開の原則(検察審査会法26条)から認められないことが通常です。
(7) 検察審査会は,証人を呼び出し,これを尋問することができます(検察審査会法37条1項)。
(8) 検察審査会の議事については,審査会議に立ち会った検察審査会事務官が会議録を作成します(検察審査会法28条)。
(9) 検察審査会が,起訴相当の議決をするためには,11人中8人以上の多数による必要があります(検察審査会法39条の5第2項)。
   起訴相当の議決に必要な8人以上の多数に達せず,不起訴相当とする意見も過半数に達しない場合,検察官の捜査に不十分な点がある,再検討が必要であるなどの理由により,不起訴不当の議決をすることととなります。

第4 検察審査会の議決の種類

1 検察審査会の議決
(1)   検察審査会の議決には通常,以下のものがあります。
① 起訴相当の議決(検察審査会法39条の5第1項1号)
② 不起訴不当の議決(検察審査会法39条の5第1項2号)
③ 不起訴相当の議決(検察審査会法39条の5第1項3号)
④ 審査打切りの議決
(2) 検察審査会のそれぞれの議決の件数については,検察審査会の事件の処理状況を参照してください。

2 起訴相当の議決
(1) 起訴相当の議決とは,検察官の不起訴処分が誤りであるから,起訴すべきであるという議決をいいます。
(2) 検察審査会が,起訴相当の議決をするためには,11人中8人以上の多数による必要があります(検察審査会法39条の5第2項)。
  そのため,起訴相当の議決に必要な8人以上の多数に達せず,不起訴相当とする意見も過半数に達しない場合,理由により,不起訴不当の議決をすることととなります。

3 不起訴不当の議決
   不起訴不当の議決とは,検察官の捜査に不十分な点がある,再検討が必要であるなどの理由により,検察官の不起訴処分が不当であるとする議決をいいます。

4 不起訴相当の議決
   不起訴相当の議決とは,検察官の不起訴処分が相当であるとする議決をいいます。

5 審査打ち切りの議決
   事件受理後の事情により,検察官の不起訴処分の当否について結論を出すことができなくなったか,又は結論を出す利益がなくなった場合の議決をいい,例えば,以下の場合になされます。
① 申立ての取下げがあった場合
② 審査申立人が死亡した場合
③ 申立て後又は職権立件後,当該事件について公訴が提起された場合
→ 交通事故事件について検察審査会への審査申立てをした場合,検察庁が自発的に捜査を再開して加害者を起訴することがあります。
  その理由の一つとして,検察審査会の起訴相当議決又は不起訴不当の議決があった場合,後述する三長官報告が必要となる点で検察庁内における手続が大変になるからであると思います。

第5 検察審査会の議決が出た後の手続

1 検察審査会は,議決後7日間,当該検察審査会の事務局の掲示板(通常は裁判所の掲示板と同じです。)に議決の要旨を掲示するとともに,審査申立人に対して,書面で議決の要旨を通知します(検察審査会法30条)。

2 起訴相当,不起訴相当の場合,議決の理由はそれなりに記載されます。
  これに対して不起訴相当の場合,検察官に再捜査を求めるわけではありませんから,議決の理由は形式的な記載になることが通常です。

3 被疑者に対しては法令上通知する義務がないだけでなく,通知した場合には被疑者に逃亡又は罪証隠滅のおそれがあります。
  そのため,被疑者から申し出があった場合であっても,検察審査会は被疑者に対して通知をしません。


4 検察官の不起訴処分に関して検察審査会の議決があった場合,同一の事件について更に審査の申立てをすることはできません(検察審査会法32条)し, 検察審査会の議決に対し,法令上不服申立てをすることもできません。
   また,議決に関して審査申立人又は代理人弁護士が検察審査会に対して理由の説明を求めたとしても,検察審査会事務官は,議決の理由を含め,議決の要旨に記載された以上の事項については,会議非公開の原則(検察審査会法26条)から回答できないとしか説明してくれません。

第6 検察審査会の会議非公開の原則,関係者の守秘義務

1 検察審査会の会議非公開の原則
   検察審査会の審査会議は非公開であり(検察審査会法26条),補充員に限り,検察審査会の許可を得て,審査会議を傍聴できるに過ぎません(検察審査会法25条の2)。
  また,一般の第三者はもちろん,たとえ審査申立人や被疑者からの申出があった場合でも,審査記録の閲覧謄写は一切させてくれません。

2 検察審査会関係者の守秘義務
(1) 審査会議に立ち会った検察審査員,補充員,審査補充員及び検察審査会事務官は,各検察審査員の発言,証人に対する尋問,その供述,議決等,会議において職務上知り得た一切の手続などの秘密を漏らしてはならないとされています。
  その関係で,検察審査会事務官は,検察審査員,補充員及び審査補助員に対し,審査事件の内容や進捗状況(審査期間,審査回数)はもとより,事件係属の有無及び審査会議日等についても,守秘義務の対象となることを十分に説明するものとされています。
(2) 検察審査会法44条は,検察審査員,補充員又は審査補充員」及びその職にあった者が,職務上知り得た秘密(①評議の経過,②各検察審査員の意見,③各検察審査員の意見の多少の数,④その他の職務上知り得た秘密)を漏えいした場合について罰則を規定しています。
(3) 検察審査会の審査会議に立ち会った検察審査会事務官については,検察審査会法44条の適用はありませんが,同条記載の事項を漏らした場合,裁判所職員臨時措置法及び裁判所職員に関する臨時措置規則によって準用される国家公務員法100条1項に基づく処罰の対象となります。

第7 平成21年5月21日施行の改正検察審査会法

1   平成21年5月21日施行の改正検察審査会法により,以下のとおり検察審査会の機能強化が図られました。
① 検察審査会の起訴議決に基づいて公訴が提起される制度の導入(検察審査会法41条の2以下)
② 検察審査会が法的な助言を得るための審査補助員を弁護士の中から委嘱することのできる制度の新設(検察審査会法39条の2以下)
③ 検察審査会が検察事務の改善に関して行った建議・勧告に対する検事正の回答義務の法制化(検察審査会法42条2項)

2 検察審査会の起訴議決については,行政事件訴訟を提起して争うことはできず,これを本案とする行政事件訴訟法25条2項の執行停止の申立てをすることもできません(最高裁平成22年11月25日決定)。

第8 三長官報告

1 検察審査会が起訴相当又は不起訴不当の議決をした場合,議決書等写しを添付した検察審査会議決書受理等報告がなされるほか,処分,裁判結果,上訴及び裁判確定の報告が,法務大臣,検事総長及び高検検事長に対してなされます(刑事関係報告規程(法務大臣訓令)「別冊第1 事件報告」の事件報告一覧表第10の9参照)。

2 いわゆる「三長官報告」とは,刑事関係報告規程に基づく法務大臣,検事総長及び高検検事長に対する報告をいいます。

第9 検察審査会の事件の処理状況

検察審査会の事件の処理状況を参照してください。
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3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)の略歴取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ等はこちらであり,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図はこちらです。