交通違反及び行政処分

第1 行政処分(免許取消及び免許停止)

1(1) 加害者に交通違反がある場合,道路交通法により違反点数が課せられ,違反点数が一定以上になると,免許の取消し,免許の効力の停止等の行政処分を受けることとなります(道路交通法103条1項等・道路交通法施行令38条の2等参照)。
(2)   ①免許の取消しの場合,1年以上10年以下の欠格期間があり(道路交通法103条7項及び8項参照),②免許の効力の停止の場合,30日,60日,90日,120日,150日又は180日の停止期間があります(道路交通法103条1項参照)。
(3) 平成27年6月17日施行の改正道路交通法により,酒気帯び運転又は過労運転で人身事故を起こした場合についても,その場で30日間,運転免許が仮停止されるようになりました(道路交通法103条の2第1項2号)から,直ちに運転免許証を警察署に没収されます。ただし,5日以内に弁明の機会は与えられます。

2(1) 都道府県公安委員会が免許を取り消したり,90日以上の期間,免許の効力を停止したりする場合,公開による意見の聴取を行う必要があります(道路交通法104条1項)。
(2)   意見の聴取を行う場合における処分をしようとする理由並びに意見の聴取の期日及び場所の通知は,文書によって行われます(道路交通法施行令39条1項)。
    そして,意見の聴取に際しては,当該処分に係る者又はその代理人は,当該事案について意見を述べ,かつ,有利な証拠を提出することができます(道路交通法104条2項)。

3(1) ①免許の取消しは,口頭による告知及び運転免許取消処分書の交付により,②免許の停止は,口頭による告知及び運転免許停止処分書の交付により通知されます(道路交通法104条の3第1項,道路交通法施行規則30条の4)。
(2) 免許の取消しがなされる違反点数は,過去3年以内の前歴(例えば,免許の停止又は取消し)によって決まります(道路交通法施行令33条の2第3項及び別表第三の備考一)。
   前歴がない場合,違反点数が6点以上となると免許の停止となり,違反点数が15点以上となると免許の取消しとなります。

4  被保険者が免許取消期間中に運転をしたり,免許停止期間中に運転をしたり,酒気帯び運転をしたりしている時に交通事故が発生した場合,被害者保護のため,対人賠償責任保険及び対物賠償責任保険は適用されます。
  しかし,人身傷害補償保険,搭乗者傷害保険,車両保険,弁護士費用特約といった自分のための保険は一切適用されません。

第2 飲酒運転に対する行政処分の改正

1 平成21年6月1日に改正道路交通法施行令が施行された結果,飲酒運転に対する行政処分が以下のとおり厳しくなりました(外部HPの「平成21年6月1日施行改正道路交通法施行令」参照)。
① 酒酔い運転
   改正前は25点,2年間の欠格期間付の免許取消
   改正後は35点,3年間の欠格期間付の免許取消
② 酒気帯びのうち,呼気1リットル当たり0.25mg以上(アルコール血中濃度0.05%以上)
   改正前は13点,90日間の免許停止
   改正後は25点,2年間の欠格期間付の免許取消
③ 酒気帯び運転のうち,呼気1リットル当たり0.15mg以上mg0.25mg未満(アルコール血中濃度0.03%以上)
   改正前は6点,30日間の免許停止
   改正後は13点,90日間の免許停止

2(1) アルコール血中濃度(%)=飲酒量(ml)×アルコール度数(%)÷(833×体重(kg))×100で計算されます(外部HPの「飲酒運転について」参照)。
(2)   例えば,体重70kgの人が350ml・アルコール度数5%の缶ビールを飲んだ場合の血中アルコール濃度は,350×5÷(833×70)=0.03%(呼気1リットル当たり0.15mg)となりますから,90日間の免許停止となる酒気帯び運転の基準に該当します。
   また,同じ人が缶ビールを3本飲んだ場合,血中アルコール濃度は0.09%(呼気1リットある当たり0.45mg)となりますから,間違いなく2年間の欠格期間付の酒気帯び運転の基準に該当します。
(3) アルコール血中濃度が0.02%~0.04%の場合が爽快期であり,0.05%~0.10%がほろ酔い期ですあり,0.11%~0.15%が酩酊初期です。

3(1) 純アルコール換算で20gがお酒の1単位であり,純アルコール量は,飲酒量(ml)×アルコール度数(%)÷100×0.8で計算されます。 
   例えば,500ml・アルコール度数5%の中びんのビールを飲んだ場合, 500×5÷100×0.8=20gのアルコール,つまり,1単位のアルコールを摂取したこととなります。
(2) 体重約60kgの人が1単位のアルコールを摂取した場合,アルコールは約3~4時間とどまり,2単位のアルコールを摂取した場合,アルコールは約6~7時間とどまります(公益社団法人アルコール健康医学協会HPの「飲酒の基礎知識」参照)。
(3) 飲酒量とアルコールが分解する時間につき,外部HPの「お酒が体から抜けるまでの時間を知ってますか?」でまとめられています。

4 政府広報オンラインの「飲酒運転は絶対に「しない!」「させない!」みんなで守ろう 3つの約束」(平成28年12月22日の記事)が参考になります。 

第3 各種講習

1 違反者講習
軽微違反行為について6時間の違反者講習(道路交通法108条の2第1項13号)を受講した場合,行政処分は課せられず,講習の対象となった点数は,以後の違反に累積されません(道路交通法施行令38条3項7号)。

2 停止処分者講習
免許停止処分を受けた場合,停止処分者講習(道路交通法108条の2第1項3号,道路交通法施行規則38条3項)を受講することで,以下のとおり,免許停止期間を短縮してもらえます(道路交通法103条10項)。
① 処分期間が40日未満の場合,短期講習(6時間)
→ 考査の成績により,停止処分の期間が30日の場合,20日から29日の範囲で短縮となります。
  つまり,30日の停止処分を受けた人が当日に受講し,29日短縮となった場合,講習当日に免許証が返還され,翌日から運転ができます。
② 処分期間が40日以上90日未満の場合,中期講習(10時間)
→ 考査の成績により,停止処分の期間が60日の場合,24日から30日の範囲で短縮されます。
③ 処分期間90日以上の場合,長期講習(12時間)
→ 考査の成績により,停止処分の期間が90日の場合,35日から45日の範囲で短縮され,120日の場合,40日から60日の範囲で短縮され,150日の場合,50日から70日の範囲で短縮され,180日の場合,60日から80日の範囲で短縮されます。

3 取消処分者講習等
(1) 免許取消処分を受けた場合,再び運転免許を取得するためには,運転免許取消処分書等の書類を持参した上で,13時間の取消処分者講習(道路交通法108条の2第1項2号,道路交通法施行規則38条1項)を受講する必要があります。
   なお,講習手数料は33,800円であり,取消処分者講習修了証書の有効期間は1年間です。
(2) 免許取消処分の欠格期間が終了していなくても,6ヶ月間の有効期間(道路交通法87条6項本文)を有する仮免許を取得することはできます。
  なお,仮免許がある場合,練習のため又は試験等(=①公安委員会の行う運転免許試験又は②指定自動車教習所における技能検定)において自動車を運転することができることになります(道路交通法87条2項)。
(3) 運転免許試験は本来,適性試験,技能試験及び学科試験からなります(道路交通法97条,道路交通法施行規則23条ないし26条)。
   ただし,指定自動車教習所(道路交通法99条)における技能検定(道路交通法99条の5)に合格して卒業している場合,技能試験が免除されます(道路交通法97条の2第1項2号)。
  よって,運転免許試験場(道路交通法施行規則22条参照。なお,県によっては,「運転免許センター」などといいます。)では通常,適性試験及び学科試験だけを受けることになるわけです。

第4 交通違反の違反点数に対する不服申立方法

「センターライン,車線境界線及びバイクのすり抜け」を参照して下さい。

第4の1 一般違反行為

1 総論

□ 一般違反行為がなされたことを理由として免許を取り消す場合,都道府県公安委員会は,1年以上5年を超えない範囲内で,免許を受けることができない期間(=欠格期間)を指定します(道路交通法103条7項,道路交通法施行令38条6項及び別表第三の一等)。
    また,欠格期間に運転免許試験に合格したとしても,免許を拒否されます(道路交通法90条1項4号ないし6号,道路交通法施行令33条の2第1項及び別表第三の一等)。
□ 欠格期間は,運転免許取消処分書に記載されています。

 

2 違反行為の具体例
(1) 無免許運転
□ 無免許運転には以下のものがあり(道路交通法64条),1年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられます(道路交通法117条の4第2号)。
① 純粋無免許
→ 現在に至るまで一度も運転免許を受けたことのない人が運転することをいいます。例えば,中学生が原動機付自転車を運転する場合があります。
② 取消無免許
→ 免許の取消しを受けた後に運転することをいいます。
③ 免停中無免許
→ 免許の効力の停止期間中に運転することをいいます。
④ 免許外運転
→ 現在運転免許を受けているものの,運転しようとする自動車及び原動機付自転車に必要な種類の免許を受けていないにもかかわらず運転することをいいます。
   例えば,普通自動車免許しか受けていない人が大型自動車を運転する場合があります(最高裁平成18年2月27日決定参照)。

 

(2) 携帯電話等の使用
□ 道路交通法71条5号の5は,運転者の遵守事項として,「自動車又は原動機付自転車を運転する場合は、停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話装置その他の無線通話装置(その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る。これを「無線通話装置」という)を通話(傷病者の救護等の緊急やむを得ずに行うものを除く)のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置に表示された画像を注視しないこと」を定めています。
    ただし,「その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る。」とされていますから,①手で保持せずに通話するハンズフリーの携帯電話,及び②相手の声がスピーカーから流れてくるタクシー無線等は除外されます。
□ 「画像表示用装置」の例としては,カーナビゲーション,自動車テレビ,及び携帯電話のディスプレイ部分があります。
□ 平成11年11月1日施行の,平成11年5月10日法律第40号による改正後の道路交通法71条5号の5に基づき,携帯電話等を通話のために使用し,又は自動車若しくは原動機付自転車に持ち込まれた画像表示装置を注視してはならなくなりました。
   そして,注視したことによって道路における交通の危険を生じさせた場合,「携帯電話使用等(交通の危険)」として違反点数が2点付くほか,道路交通法119条1項9号の3に基づき,3月以下の懲役又は5万円以下の罰金(ただし,反則金は6000円から1万2000円)に処せられることとなりました。
□ 平成16年11月1日施行の,平成16年6月9日法律第90号による改正後の道路交通法に基づき,携帯電話等を通話のために使用し,又は自動車若しくは原動機付自転車に持ち込まれた画像表示用装置を手で保持してこれに表示された画像を注視した場合,それだけで「携帯電話等使用(保持)」として違反点数が1点付くほか,道路交通法120条1項11号に基づき,5万円以下の罰金(ただし,反則金は5000円から7000円)に処せられることとなりました。
□ 携帯電話等使用の結果,交通事故が発生した場合,違反点数が付くものの,反則金は適用されません(道路交通法125条2項3号)から,刑事罰の対象となります。

 

(3) チャイルドシートの使用義務,及びシートベルトの装着義務
□ 平成12年4月1日施行の,平成11年5月10日法律第40号による改正後の道路交通法71条の3第3項本文に基づき,自動車の運転者は,幼児用補助装置(=チャイルドシート)を使用しない幼児を乗車させて自動車を運転してはならなくなり,違反した場合,違反点数が1点付くこととなりました。
    なお,幼児とは,6歳未満の者をいいます(道路交通法14条3項)。
□ 平成20年6月1日施行の,平成19年6月20日法律第90号による改正後の道路交通法71条の3第2項本文に基づき,自動車の運転者は,後部座席も含めて,座席ベルト(=シートベルト)を装着しない者を乗車させて自動車を運転してはならなくなり,違反した場合,違反点数が1点付くこととなりました。

第4の2 特定違反行為

1 総論

□ 特定違反行為がなされたことを理由として免許を取り消す場合,都道府県公安委員会は,3年以上10年を超えない範囲内で,免許を受けることができない期間(=欠格期間)を指定します(道路交通法103条8項,道路交通法施行令38条7項及び別表第三の二等)。

   また,欠格期間に運転免許試験に合格したとしても,免許を拒否されます(道路交通法90条2項,道路交通法施行令33条の2第2項及び別表第三の二等)。
□ 欠格期間は,運転免許取消処分書に記載されています。

 □ 人身事故を起こしたにもかかわらずひき逃げを行った場合,いかなる軽傷事故であっても特定違反行為として35点の違反点数が付きます。
□ 酒酔い運転の違反点数は,麻薬等運転の違反点数と同じく35点です。

2 薬物関連五法

□ 薬物関連五法は以下の法律のことです。
① 麻薬及び向精神薬取締法(昭和28年3月17日法律第14号)(=麻向法)
② 大麻取締法(昭和23年7月10日法律第124号)
③ あへん法(昭和29年4月22日法律第71号)
④ 覚せい剤取締法(昭和26年6月30日法律第252号)
⑤ 国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(平成3年10月5日法律第94号)(=麻薬特例法)
□ 麻薬五法に基づく取締りは,①厚生労働省の地方厚生局麻薬取締部(例えば,近畿厚生局麻薬取締部)に所属する麻薬取締官(=麻薬Gメン,マトリ),及び②都道府県の麻薬取締員(知事が地元の地検検事正と協議して命じる地方公務員です。)が担当しています。
□ 麻薬及び向精神薬については以下の法令で取締りがなされています。
① 麻薬及び向精神薬取締法(昭和28年3月17日法律第14号)
② 麻薬及び向精神薬取締法施行令(昭和28年3月31日政令第57号)
③ 麻薬及び向精神薬取締法施行規則(昭和28年4月18日厚生省令第14号)
④ 麻薬,麻薬原料植物,向精神薬及び麻薬向精神薬原料を指定する政令(平成2年8月1日政令第238号)
□ 大麻については以下の法令で取締りがなされています。
① 大麻取締法(昭和23年7月10日法律第124号)
② 大麻取締法施行規則(昭和23年7月22日厚生省・農林省令第1号)
③ 大麻取締法第二十二条の五の規定により地方厚生局長及び地方厚生支局長に委任する権限を定める省令(平成12年11月8日厚生省令第129号)
□ あへんについては以下の法令で取締りがなされています。
① あへん法(昭和29年4月22日法律第71号)
② あへん法施行令(昭和30年7月7日政令第109号)
③ あへん法施行規則(昭和29年6月23日厚生省令第26号)
④ あへんの売渡価格を定める政令(昭和29年10月12日政令第281号)
□ 覚せい剤については以下の法令で取締りがなされています。
① 覚せい剤取締法(昭和26年6月30日法律第252号)
② 覚せい剤取締法施行令(昭和48年11月6日政令第334号)
③ 覚せい剤取締法施行規則(昭和26年7月20日厚生省令第30号)
④ 覚せい剤原料を指定する政令(平成8年2月21日政令第23号)
□ 平成18年6月14日法律第69号による改正後の薬事法に基づき,平成19年4月1日以降,薬物関連五法の取締りの対象とならない薬物であっても指定薬物に該当する場合,①医療等の用途以外の用途に供するために製造したり,販売したりすることはできませんし(薬事法76条の4),②一般向けに広告したりできませんし(薬事法76条の5),③厚生労働大臣又は都道府県知事から廃棄等を命じられたりします(薬事法76条の7)。

□ 指定薬物とは,中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚の作用を有する蓋然性が高く,かつ,人の身体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生するおそれがある物として,厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会(厚生労働省設置法11条)の意見を聴いて指定するものをいいます(薬事法2条14項)。
□ 東京都の場合,東京都薬物の濫用防止に関する条例(平成17年3月31日条例第67号)に基づき,知事指定薬物の製造,栽培,販売,広告等が禁止されています。

第5 交通事故に伴う付加点数

□ 一般違反行為又は特定違反行為に基づく違反点数は基本点数といいます。
□ 一般違反行為又は特定違反行為をした結果,交通事故を起こした場合,基本点数に加えて,2点から20点までの付加点数が加算されます(道路交通法施行令別表第二の備考一2)。
なお,付加点数は,負傷者の怪我の程度及び事故の責任の程度に応じ定められております。

□ 人身事故を起こした場合,無過失であることが証明できない限り,最低でも,①安全運転義務違反(道路交通法70条違反)の基本点数2点,及び②付加点数2点の合計4点の違反点数が付きます。
□ 基本点数については,同時に二以上の種別の違反行為をした場合,これらの違反行為の点数のうち最も高い点数(同じ点数のときは,その点数)によるものとされます(道路交通法施行令別表第二の備考一1後段)。
そのため,例えば,無免許運転をしながら時速50㎞以上の速度超過の状態で交通事故を起こして検挙された場合,無免許運転の違反点数は19点であり,時速50㎞以上の速度超過の違反点数は12点ですから,最も高い19点が違反点数となり,これに付加点数が加算されることになります。
□ 13点又は9点の付加点数が付く「後遺障害」は,後遺障害等級13級以上のことです(運転免許の拒否等の処分の基準に係る身体の障害の程度を定める規則(平成14年4月26日国家公安委員会規則第14号。平成14年6月1日施行)1条)。
□ 「治療期間」は通常,交通事故の当日に被害者が救急車により運ばれた先の病院で書かれた診断書の日数に基づくのであって,実際に被害者が通院して治癒するまでの期間に基づくわけではありません。

1 相談予約の電話番号は06-6364-8525であり,交通事故及び債務整理の初回の面談相談は無料であり,相続情報公開請求等の面談相談は30分3000円(税込み)です。
   交通事故及び債務整理については,無料の電話相談もやっています。
  
2 執務時間は原則として平日の午前10時から午後7時30分までですが,事前のご予約があれば,午後8時30分まで夜間相談可能です。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)の略歴取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ等はこちらであり,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図はこちらです。