後遺障害における基礎収入の認定

第1 逸失利益の算定式等

1 死亡すれば,労働能力を完全に喪失し,就労していたならば得られたであろう収入を失うことになります。
    また,傷病が治癒しても後遺障害がある場合には労働能力が低下し,収入が減少するのが一般的です。
    逸失利益とは,このような労働能力の喪失自体(労働能力喪失説),又は労働能力喪失による収入の減少(差額説)のことをいい,年利5%で現在の価値に割り引くことで算定されています。

2 時間的に区分すると,消極損害,つまり,事故がなければ得ることができたであろうにもかかわらず当該事故の結果得ることができなくなった利益のうち,傷害の治療中に関するものが休業損害であり,症状固定以降に関するものが逸失利益です。

3 逸失利益の算定式は以下のとおりです。
① 後遺障害逸失利益の場合
基礎収入(年収)×労働能力喪失割合×中間利息控除係数(労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)
② 死亡逸失利益の場合
基礎収入(年収)×(1-生活費控除率)×中間利息控除係数(労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)

第2 基礎収入の認定の総論

1 自賠責保険の場合,迅速な被害者救済という視点から,「年間収入額」と「年相当額」という二つの概念を使用して,ある程度定型的に認定しています。
    「年間収入額」とは,資料に基づく現実の収入額をいいます。
  「年相当額」とは,「支払基準」で定められている死亡時又は後遺障害確定時の年齢に対応する全年齢平均給与額又は年齢別平均給与額をいいます。
  そして,原則として,「年間収入額」と「年相当額」のいずれか高い方を基準として基礎収入が認定されますものの,生涯を通じて全年齢平均給与額の年相当額を得られる蓋然性が認められない場合,認定される基礎収入が「年相当額」を下回ることもあります。

2 裁判基準の場合,基礎収入の算定方法は概要,以下のとおりです。
① 給与所得者,事業所得者及び会社役員
  休業損害の場合に準じます。
  ただし,若年者(概ね30歳未満の者)については,実収入額が学歴計・全年齢平均賃金(平成24年の場合,男性であれば,年529万6800円であり,女性であれば,年354万7200円)を下回る場合であっても,年齢,職歴,実収入額と学歴計・全年齢平均賃金との乖離の程度,その原因等を総合的に考慮し,将来的に生涯を通じて学歴計・全年齢平均賃金を得られる蓋然性が認められる場合,学歴計・全年齢平均賃金を基礎とします。
  その蓋然性が認められない場合であっても,直ちに実収入額を基礎とするのではなく,学歴別・全年齢平均賃金,学歴計・年齢対応平均賃金等が採用されることがあります。
  なお,大卒者については,大学卒・全年齢平均賃金(平成24年の場合,男性であれば,年648万1600円であり,女性であれば,年443万4600円)との比較を行います。
② 家事従事者
  休業損害の場合に準じます。
③ 幼児,生徒,学生
   原則として,学歴計・全年齢平均賃金を基礎としますものの,大学生又は大学への進学の蓋然性が認められる者については,大学卒・全年齢平均賃金を基礎とします。
  年少女子については,原則として,男女をあわせた全労働者の学歴計・全年齢平均賃金(平成20年の場合,年4,860,600円。)を用いることとなります。
④ 無職者(②及び③を除く。)
  被害者の年齢や職歴,勤労能力,勤労意欲等にかんがみ,就労の蓋然性がある場合に認められます。
  その場合,基礎収入は,被害者の年齢や失業前の実収入額等を考慮し,蓋然性が認められる収入額によります。

3 賃金センサスを用いる場合,症状固定時の年度の統計を使用します。

第3 給与所得者,事業所得者及び会社役員の場合の補足説明

1 後遺障害逸失利益の基礎収入については基本的には休業損害と同じであり,実収入額によるのが原則でありますものの,休業損害と異なり,将来の長期間にわたる所得の問題であるため,必ずしも事故当時の収入額によるのが相当ではない場合があります。
    そのため,若年者(概ね30歳未満の者)については,学生との均衡もあり,全年齢平均賃金を用いることが考慮されています。

2 被害者の勤務先に定年退職制が設けられている場合,定年退職後の基礎収入をどう認定するかという問題がありますものの,67歳までの期間を通じて同一額を基礎として逸失利益を算定し,定年退職を考慮しない代わりに,退職金を考慮しないことが多いです。
    ただし,給与収入が相当高額で,定年後はそれだけの収入を維持することが難しいと認められる場合,定年後は60歳~64歳の賃金センサス又は実収入額の一定割合を基礎収入とすることもあります。
    なお,退職金を別途考慮する場合,定年まで勤務すれば得られたであろう退職金と実際に支給された退職金との差額につき,中間利息を控除して損害を認定することとなります。

3 将来の一般的な賃金や物価の上昇・下降は考慮しません(最高裁昭和58年2月18日判決参照)。

第4 年少女子の場合の補足説明

1 年少女子の基礎収入については,①女性労働者の学歴計・全年齢平均賃金を基礎とする裁判例(例えば,東京高裁平成13年10月16日判決),及び②男女を合わせた全労働者の学歴計・全年齢平均賃金を基礎とする裁判例(例えば,東京高裁平成13年8月20日判決)があります。
大阪地裁では,近時の女性労働者の就労状況等にかんがみ,今後,男女間の賃金格差は縮小する見込みにあると考えられることなどから,原則として,男女を合わせた全労働者の賃金センサスを用いることとされています。

2 年少女子の範囲については,①原則として中学校卒業時までとする見解,②高校卒業時までとする見解等に分かれています。
1 相談予約の電話番号は06-6364-8525であり,交通事故及び債務整理の初回の面談相談は無料であり,相続情報公開請求等の面談相談は30分3000円(税込み)です。
   交通事故及び債務整理については,無料の電話相談もやっています。
  
2 執務時間は原則として平日の午前10時から午後7時30分までですが,事前のご予約があれば,午後8時30分まで夜間相談可能です。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)の略歴取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ等はこちらであり,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図はこちらです。