自動車運送事業

第1 自動車運送事業の種類等

1 自動車運送事業の種類
   自動車運送事業は有償で行うものに限られますところ,具体的には以下のものがあります(国土交通省の運輸管理部長又は運輸支局長の許可を要することにつき道路運送法88条3項参照。ただし,貨物軽自動車運送事業については運輸支局長等への届出で足りることにつき貨物自動車運送事業法36条1項参照)。
① 旅客自動車運送事業(道路運送法3条ないし43条)
ア 一般旅客自動車運送事業(道路運送法3条1号)
(a) 一般乗合旅客自動車運送事業(道路運送法3条1号イ,4条)
→ 例えば,路線バスがあります。
(b) 一般貸切旅客自動車運送事業(道路運送法3条1号ロ,4条)
→ 例えば,貸切バスがあります。
(c) 一般乗用旅客自動車運送事業(道路運送法3条1号ハ,4条)
→ 例えば,タクシー及びハイヤーがありますところ,後者は,前者と異なり,街角での流し営業及びホテル等での付け待ちを行うことができず,運送の引受けを必ず営業所で行う(=営業所を拠点に予約の上で利用される)必要があります(タクシー業務適正化特別措置法2条2項参照)。
イ 特定旅客自動車運送事業(道路運送法3条2号,43条)
→ 特定の者の需要に応じ,一定の範囲の旅客を運送する旅客自動車運送事業をいい,例えば,(a)スクールバス,(b)工場との間の通勤バス,及び(c)介護施設との間の介護輸送バスがあります。
② 貨物自動車運送事業(道路運送法46条参照)
ア 一般貨物自動車運送事業(貨物自動車運送事業法2条2項)
→ 例えば,(a)トラック運送,(b)宅配便及び(c)霊柩車があります。
イ 特定貨物自動車運送事業(貨物自動車運送事業法2条3項)
→ 特定の者の需要に応じ,有償で,自動車を使用して貨物を運送する事業をいい,例えば,荷主限定トラックがあります。
ウ 貨物軽自動車運送事業(貨物自動車運送事業法2条4項)
→ 軽トラック(=軽自動車規格のトラック)による運送業をいいます。

2 事業報告書及び輸送実績報告書
(1) 旅客自動車運送事業者は,運送事業の内容に応じて,毎年,国土交通大臣,管轄地方運輸局長又は管轄運輸支局長に対し,事業報告書及び輸送実績報告書を提出する必要があります(道路運送法94条1項,旅客自動車運送事業等報告規則2条)。
(2) 貨物自動車運送事業者は,運送事業の内容に応じて,毎年,国土交通大臣又は管轄地方運輸局長に対し,事業報告書及び事業実績報告書を提出する必要があります(貨物自動車運送事業法60条1項,貨物自動車運送事業報告規則2条)。

3 その他
(1) 旅客自動車運送事業に係る旅客を運送する目的で,旅客自動車を運転する場合,第2種免許が必要となります(道路交通法86条)。
(2) 特別積合せ貨物運送とは,一般貨物自動車運送事業として行う運送のうち,営業所その他の事業場(以下「事業場」といいます。)において集貨された貨物の仕分けを行い,集貨された貨物を積み合わせて他の事業場に運送し,当該他の事業場において運送された貨物の配達に必要な仕分けを行うものであって,これらの事業場の間における当該積合せ貨物の運送を定期的に行うものをいい(貨物自動車運送事業法2条6項),30キログラム以下の貨物を取り扱う宅配便は特別積合せ貨物運送の一種です。
(3) 「人間」はその死を境に「物」に変わるため,その「物」である遺体を輸送する霊柩運送事業は,貨物自動車運送事業として取り扱われています。
(4) 貨物自動車運送事業を経営する者は,災害等の場合を除き,有償で旅客の運送をすることができません(道路運送法83条)。
    これに対して一般乗合旅客自動車運送事業者は,旅客の運送に付随して,少量の郵便物,新聞紙その他の貨物を運送することができます(道路運送法82条1項)。

第2 旅客運送及び貨物運送に関する標準運送約款

1 旅客運送に関する標準運送約款
   旅客運送に関する法律関係は,以下の標準運送約款(道路運送法11条3項参照)を参考に作成され,地方運輸局長の認可(道路運送法88条2項・11条1項)を受けた各社の運送約款によって規律されています。
① 一般乗合旅客自動車運送事業標準運送約款(昭和62年1月23日運輸省告示第49号)
② 一般貸切旅客自動車運送事業標準運送約款(昭和62年1月23日運輸省告示第49号)
③ 一般乗用旅客自動車運送事業標準運送約款(昭和48年9月6日運輸省告示第372号)
2 貨物運送に関する標準運送約款
   貨物運送に関する法律関係は,以下の標準運送約款(貨物自動車運送事業法10条3項参照)を参考に作成され,地方運輸局長の認可(貨物自動車運送事業法66条1項・10条1項)を受けた各社の運送約款によって規律されています。
① 標準貨物自動車運送約款(平成2年11月22日運輸省告示第575号)
② 標準貨物軽自動車運送約款(平成15年3月3日国土交通省告示第171号)
③ 標準引越運送約款(平成15年3月3日国土交通省告示第170号)
④ 標準貨物軽自動車引越運送約款(平成15年3月3日国土交通省告示第172号)
⑤ 標準宅配便運送約款(平成2年11月22日運輸省告示第576号)
⑥ 標準霊柩運送約款(平成18年8月31日国土交通省告示第1047号)

第3 自動車事故報告書等

1(1) 自動車運送事業者は,その事業用自動車が重大な事故(例えば,死者又は重傷者を生じた事故)を引き起こした場合,事故があった日から30日以内に,運輸支局長等を経由して,国土交通大臣に対し,自動車事故報告書を提出する必要があります(一般旅客自動車運送事業者につき道路運送法29条,貨物自動車運送事業者につき貨物自動車運送事業法24条・35条6項前段)。
(2) 自動車事故報告書の様式は,自動車事故報告規則(昭和26年12月20日運輸省告示第104号)3条で定められています。

2(1) 国土交通省自動車局は,道路運送法29条の2及び貨物自動車運送事業法24条の2に基づき,「自動車運送事業用自動車事故統計年報」を公表しています(自動車総合安全情報HP「事業用自動車の事故報告件数の推移等」参照)。
(2) 従前の「自動車交通局」は,平成23年7月1日政令第203号(同日施行)に基づく国土交通省組織令(平成12年6月7日政令第255号)の改正により,「自動車局」に名称が変更されました。

3 自動車運送事業者が国土交通大臣に対して自動車事故報告書を提出していなかった場合,事業用自動車の使用の停止又は事業の停止を命じられる他,車検証を返納させられることがあります(一般旅客自動車運送事業者につき道路運送法40条及び41条,貨物自動車運送事業者につき貨物事業者運送事業法33条及び34条・35条6項前段)。

4 自動車運送事業者は,その事業用自動車が特に重大な事故(例えば,2人以上の死者を生じた事故)を引き起こした場合,運輸支局長等に対し,電話,ファクシミリその他適当な方法により,24時間以内においてできる限り速やかに,その事故の概要を速報する必要があります(自動車事故報告規則4条)。

5 自動車運送事業者は,事業用自動車に係る事故が発生した場合,事故に関する記録を作成し,3年間,営業所で保存する必要があります(一般旅客自動車運送事業者につき旅客自動車運送事業運輸規則26条の2,貨物自動車運送事業者につき貨物自動車運送事業輸送安全規則9条の2)。

第4 自動車運送事業者に対する,飲酒運転関係の規制

〇国土交通省は,「事業用自動車に係る総合的安全対策委員会」によりまとめられた『事業用自動車総合安全プラン2009』(平成21年3月27日発表)を踏まえ,平成22年4月28日国土交通省令第30号に基づき(a)旅客自動車運送事業運輸規則(昭和31年8月1日運輸省令第44号)及び(b)貨物自動車運送事業輸送安全規則(平成2年7月30日運輸省令第22号)を改正することで,自動車運送事業者に対し,以下の規制を実施するようになりました。
   なお,②の規制は当初,平成23年4月1日から実施される予定でありましたものの,東日本大震災が発生したため,平成23年3月31日国土交通省令第18号に基づき,規制開始が1ヶ月先延ばしにされました。
① 平成22年4月28日からの規制
酒気を帯びた乗務員を乗務させてはならないことが明文化されました(旅客自動車運送事業運輸規則21条4項,貨物自動車運送事業輸送安全規則3条5項)。
→ 「酒気を帯びた状態」は,道路交通法施行令(昭和35年10月11日政令第270号)44条の3に規定する血液中のアルコール濃度0.3mg/mℓ又は呼気中のアルコール濃度0.15mg/ℓ以上であるか否かを問いません(関係通達)。
② 平成23年5月1日からの規制
(a) 事業者は,点呼時に酒気帯びの有無を確認する場合には,目視等で確認するほか,アルコール検知器を用いてしなければならなくなりました(旅客自動車運送事業運輸規則24条3項前段,貨物自動車運送事業輸送安全規則7条4項前段)。
→ アルコール検知器は,アルコールを検知して,原動機が始動できないようにする機能を有するもの(=アルコール・インターロック装置)を含みます(関係通達)。
 (b) 事業者は,営業所ごとにアルコール検知器を備え,常時有効に保持しなければならなくなりました(旅客自動車運送事業運輸規則24条3項後段,貨物自動車運送事業輸送安全規則7条4項後段)。

第5 事業用自動車と任意保険

1 事業用自動車とは,自動車運送事業者がその自動車運送事業の用に供する自動車をいい(道路運送法2条8項),緑ナンバー(軽自動車の場合は,黒ナンバー)が交付されます。
   具体的には,①タクシー,②バス及び③他人の貨物を有償で運送するトラックのことです。

2 タクシー,バス等の場合,旅客自動車運送事業運輸規則(昭和31年8月1日運輸省令第44号)19条の2に基づき制定された「旅客自動車運送事業者が事業用自動車の運行により生じた旅客その他の者の生命、身体又は財産の損害を賠償するために講じておくべき措置の基準を定める告示」(平成17年4月28日国土交通省告示第503号)により,すべての事業用自動車について,1人当たりの限度額8000万円以上の対人賠償責任保険,1事故につき限度額200万円以上の対物賠償責任保険への加入が義務づけられています。
   そのため,タクシー,バス等に起因する交通事故の場合,事業者に法令違反がない限り,常に任意保険による対応がなされることとなります。

3 トラック事業者は,「貨物」自動車運送事業者であって,「旅客」自動車運送事業者ではありませんから,前述した告示が当然に適用されるわけではありません。
   ただし,貨物自動車運送事業の許可基準の一つに,任意保険を締結するなどして十分な損害賠償能力を有することが必要とされていますから,事業者に法令違反がない限り,ほぼ常に任意保険による対応がなされることとなります。

第6 貸し切りバス事業者に対する行政処分の厳格化

国土交通省HPの「貸切バス事業者のみなさまへ 行政処分等の基準が厳しくなります 平成28年12月1日施行」には以下の記載があります(ナンバリングを改めました。)。

1 監査関係
(1) 運行中の車両について、街頭監査で違反があり、その場で是正できない場合、「輸送の安全確保命令」が発動され、是正するまでの間、違反した車両が使用できなくなります。また、指摘された違反をもとに、30日以内に事業者に対する監査を行い、法令違反の有無を確認します。
(2) 以下の緊急を要する重大な法令違反が確認された場合は、「輸送の安全確保命令」が発動され、是正できるまでの間、違反事項と関係する全ての車両が使用できなくなります。この場合、事業停止の処分を受けることとなり、それでもなお、是正されない場合は、許可取消となります。
① 運行管理者が全く不在(選任なし)の場合
② 整備管理者が全く不在(選任なし)の場合であって、定期点検整備を全く実施していない場合
③ 全ての運転者が健康診断を受診していない場合
④ 運転者に対して指導監督及び特別な指導を全く実施していない場合
(3) 監査で(2)以外の違反が確認された場合は、30日以内に是正状況を確認する監査を実施します。
(4) 監査(1回目)において指摘した違反(軽重にかかわらず)が、確認監査(2回目)で一部でも改善が確認できない場合、「輸送の安全確保命令」が発動され、命令後に改善が確認(30日以内)できた場合は、3日間の事業停止、確認できない場合は、許可取消となります。

2 行政処分関係 
(1) 使用を停止させる車両数の割合が、保有車両数の8割になります。
(例)保有車両数5両、処分100日車の場合⇒ 4両を25日間停止
(2) 輸送の安全に係る違反の処分量定を引き上げます。
(主なもの)
① 運賃料金届出違反(現行)20日車⇒ (改正)60日車
② 健康診断の未受診
【未受診者数】(現行)半数以上10日車⇒ (改正)3名以上40日車
③ 適性診断の未受診
【受診なし2名以上】(現行) 10日車⇒ (改正) 40日車
④ 運転者への特別な指導・監督違反(運転者への教育関係)
【大部分不適切】(現行) 10日車⇒ (改正) 40日車
⑤ 各種記録類の改ざん・不実記載(現行)30日車⇒ (改正)60日車
⑥ 輸送の安全確保命令等各種の命令違反
(現行)60日車⇒ (改正)許可取消

3 運行管理者に対する行政処分関係
(1) 繰り返し法令違反を是正しない事業者が許可取消となった場合、勤務する運行管理者全員に対し、資格者証の返納が命ぜられます。
(2) 重大事故等を引き起こし監査を実施した結果、運行の安全確保に関わる量定が120日車以上となった場合、統括運行管理者だけでなく、違反に関わった運行管理者全員の資格者証の返納が命ぜられます。
(3) 運行管理者が飲酒運転又は薬物運転した場合、自家用車の運転でも資格者証の返納が命ぜられます。
1 相談予約の電話番号は06-6364-8525であり,交通事故及び債務整理の初回の面談相談は無料であり,相続情報公開請求等の面談相談は30分3000円(税込み)です。
   交通事故及び債務整理については,無料の電話相談もやっています。
  
2 執務時間は原則として平日の午前10時から午後7時30分までですが,事前のご予約があれば,午後8時30分まで夜間相談可能です。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)の略歴取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ等はこちらであり,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図はこちらです。