交通事故被害者が警察に対応する場合の留意点

第1 警察に対して人身事故で届出をすること等

1(1)   警察に対して交通事故を届ける場合,物件事故か人身事故のいずれかに区分されることになりますところ,交通事故で怪我をしている場合,必ず人身事故で届出をしてください。
(2)   後日,物件事故から人身事故へと切り替えることはできますものの,交通事故から時間が経過している場合,警察は人身事故への切り替えに難色を示すようになります。

2(1)   交通事故証明書の右端の欄を見れば,物件事故と人身事故のどちらの扱いになっているかが分かります。
(2)   任意保険会社に依頼すれば,交通事故証明書のコピーを送ってもらえます。

3 高速道路での交通事故の場合,都道府県警察本部交通部の高速道路交通警察隊(高速道路における交通警察の運営に関する規則(昭和46年4月1日国家公安委員会規則第3号)),大阪府警察組織規程9条等参照)が担当部署となります。

4 物件事故で届出をした場合,「物件事故処理要領について」(平成4年2月14日付の警察庁交通局交通指導課長等の通知)に基づく物件事故報告書が作成されるだけとなり,現場見分(警察官が現場に臨場し,実況見分を行うこと)が省略されることが多くなります。

5(1) 犯罪捜査規範10条は「捜査を行うに当つては、常に言動を慎み、関係者の利便を考慮し、必要な限度をこえて迷惑を及ぼさないように注意しなければならない。 」と定めています。 

(2)   犯罪捜査規範10条の2第1項は「捜査を行うに当たつては、被害者又はその親族(以下この節において「被害者等」という。)の心情を理解し、その人格を尊重しなければならない。 」と定め,
   同条第2項は「捜査を行うに当たつては、被害者等の取調べにふさわしい場所の利用その他の被害者等にできる限り不安又は迷惑を覚えさせないようにするための措置を講じなければならない。 」と定めています。  

平成29年3月30日付の大阪府警察の「不存在による非公開決定通知書」,及び平成29年4月5日付の警察庁の行政文書不開示決定通知書によれば,以下の文書は存在しません。
① 警察官が犯罪被害者の事情聴取を行う際,どのような場合であれば,犯罪被害者から依頼を受けた弁護士が同席できるかが分かる文書
② 警察官が犯罪被害者の立会を得た上で交通事故現場の実況見分を行う際,どのような場合であれば,犯罪被害者から依頼を受けた弁護士が同席できるかが分かる文書

第2 実況見分調書等の刑事記録

1   人身事故で届出をした場合,警察が被害者及び加害者の事情聴取をして供述調書,実況見分調書等の刑事記録を作成します。

2(1)警察に提出した診断書に書いてある加療期間が約3週間を超える交通事故の場合, 「過失運転致傷等事件に係る特例書式について」(平成26年5月14日付の警察庁交通局長・刑事局長通達)に基づき,実況見分調書,交通事故現場見取図,被疑者供述調書,被害者供述調書等が作成されることが多いです。
   これに対して,警察に提出した診断書に書いてある加療期間が約3週間以下の交通事故の場合,「過失運転致傷等事件に係る簡約特例書式について」(平成26年5月14日付の警察庁交通局長・刑事局長通達)に基づき,現場の見分状況書,被疑者供述調書,被害者供述調書等が作成されることが多いです(「交通事故事件の刑事記録」参照)。 
(2) 実務上は,「現場の見分状況書」も含めて,「実況見分調書」と呼んでいます。

3   事故直後に加害者が自分の非を認めていたという事実は,示談や訴訟においてあまり大きな意味を持たないのであって,実況見分調書の記載の方が遙かに大事です。

4   現場の見分状況書には,①最初に相手を発見した地点,②危険を感じた地点,③ブレーキをかけた地点及び④衝突をした地点が図示されています。
   例えば,②ないし④が同じ地点である場合,加害者がブレーキをかけずに被害者に衝突したこととなります。

5 信号表示内容が争点となる事件では,正確な信号サイクルを知る必要があります。
信号サイクルは実況見分調書と一緒に検察庁で開示されることがありますものの,開示されなかった場合,弁護士会照会(日弁連HPの「弁護士会照会制度」参照)を利用して信号サイクルを取り寄せる必要があります。

6(1)   加害者が不起訴となっていた場合,検番(検察庁の事件受付番号)等が判明してから実況見分調書を取り寄せるまでに少なくとも2週間はかかります。
(2) 詳細については,「交通事故事件の刑事記録の入手方法」を参照してください。

7(1) 加害者の不起訴処分を争う方法については,「加害者の不起訴処分を争う検察審査会」を参照して下さい。 
(2)   加害者が起訴されて罰金刑等の刑事罰を受けた場合,供述調書を含む刑事記録が開示されます(刑事訴訟法53条及び刑事確定訴訟記録法4条)。 

第3 実況見分調書作成時の留意点

1   加害者が不起訴になった場合,検察庁において供述調書が開示されることはない(刑事訴訟法47条本文参照)ものの,実況見分調書は開示されます。
   そして,過失割合が争いになった場合,実況見分調書は信用性の高い証拠として非常に重視されることとなります。
   そのため,警察の実況見分にはできる限り立ち会うようにするとともに,実況見分調書の作成に立ち会った場合,担当の警察官に対して事故当時の状況を正確に説明できるようにしてください。

2 実況見分調書は,客観的に記載するように努め,被疑者,被害者その他の関係者に対し説明を求めた場合においても,その指示説明の範囲をこえて記載することのないように注意しなければならないとされています(犯罪捜査規範105条1項)。 

3 警察官が交通事故現場の実況見分を行った際,被疑者,被害者その他の関係者の指示説明の範囲をこえて,特にその供述を実況見分調書に記載する必要がある場合,関係者の署名押印を求めてきますものの,署名押印は拒絶することができます(
犯罪捜査規範105条2項前段・刑事訴訟法198条5項ただし書)。

4 警察の実況見分に立ち会う際,道路標識の意味(外部HPの
「道路標識の種類と意味」参照)を復習しておいた方がいいです。
   また,道路に引かれている黄色及び白色の線の意味,バイクのすり抜けの過失割合等については,「センターライン,車線境界線,バイクのすり抜け及び交通違反に対する不服申立方法」を参照して下さい。 

第4 都道府県公安委員会に対する苦情申出制度

1(1) 警察職員が,職務執行において違法,不当な行為をしたり,なすべきことをしなかったりしたことによって,何らかの不利益を受けた場合,都道府県公安委員会に対し,文書により苦情の申出をすることができます(警察法79条)。
   そのため,例えば,実況見分における警察官の対応について違法不当な行為があった場合,都道府県公安委員会に対し,文書により苦情の申出をすることができます。
   ただし,交通違反について,後日否認を申し出る場合,取り締まった警察署等に申し出る必要があります。
(2) 大阪府公安委員会に対する苦情申出については,大阪府警察HPの「苦情申出制度のご案内」を参照して下さい。

2 都道府県公安委員会における苦情申出制度の運用状況については,警察庁作成の以下の資料を参照してください。
① 平成23年中の苦情申出制度の運用状況
② 平成24年中の苦情申出制度の運用状況
③ 平成25年中の苦情申出制度の運用状況
④ 平成26年中の苦情申出制度の運用状況
⑤ 平成27年中の苦情申出制度の運用状況
  

第5 警察の被害者連絡制度

1 ひき逃げ事件にあったり,交通事故により警察に提出した診断書ベースで全治3箇月以上の傷害を負ったりした場合,警察の被害者連絡制度の対象となります。
   この場合,事件を担当している捜査員等から,以下の事項に関する連絡があります(警察庁HPの「被害者への情報提供」参照)。
○ 刑事手続や犯罪被害者のための制度
○ 捜査状況(被疑者検挙まで)
○ 被疑者(犯人と思われる者)検挙の旨
○ 被疑者の氏名、年齢等 注1)
○ 被疑者の処分状況 注2)
(1)送致先検察庁
(2)起訴、不起訴などの処分結果
(3)起訴された裁判所
注1) 被疑者が少年の場合でも、原則として成人事件と同様の方法により連絡を行っています。ただし、健全育成の観点から、その保護者の氏名等の連絡にとどめる場合があります。
注2) 被疑者を逮捕せずに事件送致した場合は、送致先検察庁のみの連絡となります。 
 
2 警察の被害者連絡制度は,「被害者連絡実施要領の改正について」(平成26年5月20日付の警察庁刑事局長等の通達)に基づいて運用されています。
1 相談予約の電話番号は06-6364-8525であり,交通事故及び債務整理の初回の面談相談は無料であり,相続情報公開請求等の面談相談は30分3000円(税込み)です。
   交通事故及び債務整理については,無料の電話相談もやっています。
  
2 執務時間は原則として平日の午前10時から午後7時30分までですが,事前のご予約があれば,午後8時30分まで夜間相談可能です。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)の略歴取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ等はこちらであり,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図はこちらです。