刑事手続及び少年審判における被害者の権利

第0 目次

第1   被害者等通知制度
第2   告訴及び告発
第3の1 不起訴処分に対する被害者側の手段
第3の2 犯罪被害者等の権利利益の尊重に関する最高検察庁の通達
第4   被害者参加制度,及び被害者参加人のための国選弁護制度
第5   刑訴法292条の2に基づく意見の陳述
第6   少年審判における被害者の権利

*1 弁護士白書2016の「犯罪被害者支援に関する活動」が参考になります。
*2 検察庁作成のリーフレット「犯罪被害者の方々へ」のほか,岐阜地検被害者ホットラインが作成している「検察庁における主な対応一覧」が参考になります。

第1 被害者等通知制度

1 被害者,被害者の親族及びそれらの代理人弁護士は,被害者等通知制度実施要領(平成19年12月1日改定)に基づき,検察官等から取調べ等を受けた際に希望し,又は検察官等に照会すれば,以下の事項を通知してもらえます。
   ただし,(1)ないし(3)は希望すれば通知してもらえる事項であり,(4)及び(6)は「特に」希望すれば通知してもらえる事項です。
   また,(5)は,内容に応じて,検察官,地方更生保護委員会又は保護観察所の長から通知してもらえる事項です。
(1) 事件の処理結果については,公判請求,略式命令請求,不起訴,中止,移送(同一地方検察庁管内の検察庁間において,専ら公判請求又は略式命令請求のために行う移送を除く。),家庭裁判所送致の別及び処理年月日
(2) 公判期日については,係属裁判所及び公判日時
(3) 刑事裁判の結果については,主文(付加刑,未決勾留日数の算入,換刑処分及び訴訟費用の負担を除く。),裁判年月日,裁判の確定及び上訴
(4) 公訴事実の要旨,不起訴裁定の主文,不起訴裁定の理由の骨子,勾留及び保釈等の身柄の状況並びに公判経過等(1)から(3)までの事項に準ずる事項
(5) 有罪裁判確定後の加害者に関する事項
ア 懲役又は禁錮の刑の執行終了予定時期,受刑中の刑事施設における処遇状況に関する事項,並びに仮釈放又は刑の執行終了による釈放に関する事項及びこれに準ずる事項
イ 懲役又は禁錮の刑の執行猶予の言渡しの取消しに関する事項
ウ 拘留の刑の仮出場又は刑の執行終了による釈放に関する事項及びこれに準ずる事項
(6) (5)に準ずる事項

2 詳細については,「被害者等通知制度実施要領」を参照してください。

第2 告訴及び告発

1 総論
(1) 告訴とは,犯罪の被害者その他一定の者が,捜査機関に対して犯罪事実を申告し,その訴追を求める意思表示をいいます(刑訴法230条ないし238条)。
   これに対して告発とは,告訴権者及び犯人以外の者が,捜査機関に対して犯罪事実を申告し,その訴追を求める意思表示をいいます(刑訴法239条)。
(2) 告訴は,公訴の提起があるまでこれを取り消すことができます(刑事訴訟法237条1項)。
(3) 告訴及び告訴の取消は,代理人がすることもできます(刑事訴訟法240条)。
(4) 弁護士会が人権侵害による犯罪の成立を信ずるにつき合理的な理由ある場合,弁護士会自身が告発することができます(最高裁昭和36年12月26日決定)。
(5) 告訴又は告発は,書面又は口頭で検察官又は司法警察員にする必要があります(刑訴法241条1項)。
   検察官又は司法警察員は,口頭による告訴又は告発を受けたときは,調書を作らなければなりません(刑訴法241条2項)。
(6) 司法警察員は,告訴又は告発を受けたときは,速やかにこれに関する書類及び証拠物を検察官に送付しなければなりません(刑訴法242条)。
(7) 被害者が告訴までしていた場合,刑訴法260条に基づき,起訴不起訴の通知を受けることができますし,刑訴法261条に基づき,不起訴理由の告知を受けることができます。
(8) 検察官が告訴人,告発人又は請求人に対して書面で不起訴処分の理由を告知する場合には,不起訴処分理由告知書によります(事件事務規程73条2項)。

2 公務員の告発と守秘義務の関係
(1) 国家公務員が告発を行わなかったことが刑訴法239条2項に違反する場合,国家公務員法82条1項2号「職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合」に該当すると解されています(衆議院議員金田誠一からの質問主意書に対する平成14年3月26日付の内閣答弁書)。
(2) 刑事訴訟法239条2項は,「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。」と規定しておりまして,この要件を満たす場合には,原則として,当該公務員は告発の義務を負うものと解されております。
   一方,国家公務員法100条等に規定する公務員の守秘義務は,公務員又は公務員であった者がその職務上知ることのできた秘密又は職務上の秘密に属する事項を故なく漏せつすることを禁止する趣旨の規定でありますから,正当な手続に従って,刑事訴訟法所定の告発義務の履行として告発する場合には,法令により当然に行うべき正当行為として許容され,守秘義務違反は成立しないものと解されております(平成16年6月11日の参議院内閣委員会における樋渡法務省刑事局長の答弁)。

3 訴訟条件である告発
(1) 告発が訴訟条件とされている犯罪としては以下のものがあります。
① 独占禁止法96条の公正取引委員会の告発を待って論ずる事件
② 公職選挙法253条の選挙管理委員会の告発を待って論ずる事件
③ 関税法140条の税関職員又は税関長の告発を待って論ずる事件
④ 議院証言法8条の議院,委員会又は合同審査会の告発を待って論ずる事件(最高裁大法廷昭和24年6月1日判決,最高裁平成4年9月18日判決)
⑤ 国税犯則取締法(明治33年3月17日法律第67号)17条の国税局長又は税務署長の告発を待って論ずる間接国税に関する事件(最高裁昭和28年9月24日判決)
(2) 司法警察職員及び検察官は,告発を待って論ずべき国税犯則事件につき,その告発前でも強制捜査をすることができます(最高裁昭和35年12月23日決定)。
(3) 議院証言法が偽証罪を規定した趣旨等に照らせば,偽証罪として一罪を構成すべき事実の一部について告発を受けた場合にも,右一罪を構成すべき事実のうちどの範囲の事実について公訴を提起するかは,検察官の合理的裁量に委ねられ,議院等の告発意思は,その裁量権行使に当たって考慮されるべきものです。
   そして,議院証言法6条1項の偽証罪については,一個の宣誓に基づき同一の証人尋問の手続においてされた数個の陳述は一罪を構成するものと解されますから(大審院大正4年12月6日判決,大審院昭和16年3月8日判決参照),右の数個の陳述の一部分について議院等の告発がされた場合,一罪を構成する他の陳述部分についても当然に告発の効力が及びます。
(4) 訴訟条件である告発の存在については,上告審において,証拠調手続によることなく,適宜の方法で認定することができます(最高裁平成23年10月26日決定)。

4 京都府警の取扱い
   京都府警HPにある,「告訴,告発事件の取扱要領について(例規)」 (京都府警察本部長の通達)に載っています。
京都府警察の告訴・告発事件取扱票1/2
京都府警察の告訴・告発事件取扱票2/2
京都府警察の告訴・告発事件取扱簿
京都府警の告訴・告発事件処理簿

第3の1 不起訴処分に対する被害者側の手段

1 総論
(1) 加害者が不起訴処分を受けた場合,被害者としては,以下の二つの手段により,加害者の起訴を求めることができます。
① 検察審査会に対する審査の申立て
② 処分庁,又は上級検察庁の長に対する不服の申立て
(2) 被害者が①又は②の手段をとった場合,事情聴取のため,警察署又は検察庁から呼出を受けて改めて事情を説明することとなります。
   事情を説明する際,①調書に書いて欲しいことがらをメモ書きした紙を持参することが望ましいですし,②検察官が起訴するに際し,交通事故直後の員面調書を提出するとは限らないから,検面調書に自分の言い分を全部,書いてもらうようにすることが望ましいです。
(3) 公務員職権濫用罪(刑法193条)等について検察官が不起訴処分とした場合,地方裁判所に対して付審判請求をし(刑訴法262条),地方裁判所の付審判決定(刑訴法266条2号)を得た上で,事件について検察官の職務を行う指定弁護士(刑訴法268条)を通じて,有罪判決を求めることができます。
   また,付審判請求の棄却決定(刑訴法266条1号)に対しては,通常抗告(刑訴法419条)をすることができます(最高裁大法廷昭和28年12月22日決定)。
   しかし,過失運転致死罪等について付審判請求をすることはできません。
(4) 平成25年版犯罪白書の「3 不起訴処分に対する不服申立制度」が参考になります。 

2 検察審査会に対する審査の申立て
   「加害者の不起訴処分を争う検察審査会」を参照してください。

3 処分庁,又は上級検察庁の長に対する不服の申立て
(1) 検察官のした不起訴処分については,行政不服審査法に基づく不服申立てをすることはできません(行政不服審査法4条)。
   しかし,地方検察庁又は区検察庁の検察官のした不起訴処分に対しては,高等検察庁検事長の指揮監督権(検察庁法8条)の発動を促すという形で,不服の申立てをすることができます(事件事務規程191条1項)。
   この場合,検察庁の事件係事務官によって不服申立事件簿に所定の事項が記入され,かつ,不起訴処分をした検察官及び不服申立人に対して処理の結果を通知されます(事件事務規程191条2項参照)。
(2) 事件事務規程は法務省訓令の一つであり,事件の受理,捜査,処理及び公判遂行等に関する事務の取扱手続の大綱を規定し,もって,事件に関する事務の適正な運用を図ることを目的としています(事件事務規程1条)。
(3) 私の経験でいえば,事故直後の簡単な診断書に「加療2週間を要する傷害である。」等と書いてあったために不起訴処分となった事案において,結果として被害者に14級の後遺障害が残った場合,処分庁に対し,不起訴処分に対する不服の申立てをすれば通常,警察が再捜査をした上で,加害者に対して罰金刑を加えてくれます。
(4) 検察審査会に対する審査の申立てをした直後に,検察審査会に対する審査申立書等のコピーを添えて処分庁に対する不服の申立てをした方が,加害者に対する刑事処分を速やかに下してくれると思われます。
(5) 大阪高検に対する不服申立ての手続については,大阪高検の不服申立事件事務処理要領(平成15年1月6日付の検事長通達)に詳しく書いてあります。
(6) 事件事務規程191条は以下のとおりです。
(不服申立事件簿への登載)
第191条 地方検察庁又は区検察庁の検察官のした不起訴処分に対する不服の申立てがあったときは,事件担当事務官は,不服申立事件簿(様式第225号)に所定の事項を登載する。
2 不服申立事件が処理されたときは,不服申立事件簿に所定の事項を記入し,前項の不起訴処分をした検察官及び不服申立人に対して処理結果を通知する。 
不服申立事件簿(事件事務規程様式第225号)1/2
不服申立事件簿(事件事務規程様式第225号)2/2

第3の2 犯罪被害者等の権利利益の尊重に関する最高検察庁の通達

1 「犯罪被害者等の権利利益の尊重について」(平成26年10月21日付の最高検察庁次長検事通達)には,以下の記載があります。
   検事長,検事正及び区検察庁の上席検察官は,その指揮監督する検察官による事件の処理,公判における主張・立証又は上訴に関する判断について,被害者等から不服の申立てを受け監督権の発動を促されたときは,迅速に所要の調査を行い,検察権の適正な行使を旨としつつ,事案の内容等を勘案し,必要に応じ,当該判断の適否を再検討するなど,適切に対応するよう配意されたい。

2 「「犯罪被害者等の権利利益の尊重について(依命通達)」の発出について」(平成26年10月21日付の最高検察庁総務部長及び公判部長の通達)には,以下の記載があります。
   被害者等が,主任検察官の所属庁又はその上級庁の監督者に対し,主任検察官による不起訴処分等の事件の処理,訴因の設定,証拠調べの請求等の公判における主張・立証又は上訴に関する判断について,監督権の発動を促す申立てを行った場合には,これらの監督者たる検察官においては,必要に応じ,監督権限を適正に行使し,被害者津尾への対応に遺漏なきを期する必要がある。そこで,本依命通達9は,被害者等から上記申立てがあった場合には,速やかに,その申立て内容を検討するとともに,主任検察官に事実関係を確認するなど必要な調査を行い,被害者等の立場や心情にも十分配慮した上,監督者において,事案の内容,社会的影響等を考慮して,被害者等に対し,臨機応変かつ適切に説明を行い,あるいは,当該判断の適否を再検討し,必要に応じて,主任検察官に対し,所要の改善措置をとるよう指揮・指導するなど,監督者に対し,上記のような不服申立てへの迅速・適切な対応について,一層の配慮を求めるものである。

第4 被害者参加制度,及び被害者参加人のための国選弁護制度

1 被害者参加制度
(1) 平成19年6月27日法律第95号により刑訴法の一部が改正された結果,故意の犯罪行為により人を死傷させた罪なり,自動車運転過失致死傷罪なりといった一定の犯罪の被害者等が,裁判所の許可を得て,被害者参加人として刑事裁判に参加し,検察官との間で密接なコミュニケーションを保ちつつ,一定の要件の下で,以下の事項を行える被害者参加制度が創設され(刑訴法316条の33ないし39),同制度は平成20年12月1日から施行されました。
① 公判期日への出席(刑訴法316条の34)
→ 原則として,公判期日に,法廷で,検察官席の隣等に着席し,裁判に出席することができます。
② 検察官の権限行使に関する意見申述(刑訴法316条の35)
→ 証拠調べの請求なり,論告・求刑なりといった検察官の訴訟活動に関して意見を述べたり,検察官に説明を求めたりすることができます。
③ 証人尋問(刑訴法316条の36)
→ 情状に関する事項についての証人の供述の証明力を争うために必要な事項を質問できます。
④ 被告人質問(刑訴法316条の37)
→ ⑤の意見陳述をするために必要がある場合に行います。
⑤ 事実又は法律の適用についての意見の陳述(刑訴法316条の38)
→ 検察官の論告求刑(刑訴法293条1項)の後に,訴因として特定された事実の範囲内で,事実又は法律の適用について,法廷で意見を述べることができます。
   なお,刑訴法292条の2に基づく意見の陳述(=心情意見陳述)とは別のものであり,「被害者論告」ともいわれます。
(2) 被害者等とは,被害者又は被害者が死亡した場合若しくはその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者,直系の親族若しくは兄弟姉妹をいいます(刑訴法290条の2第1項)。
(3) 被害者参加の申出は,あらかじめ検察官に対して行う必要があります(刑訴法316条の33第2項前段)。
(4) 被害者参加の手続の代理を弁護士に委託した場合,被害者参加人は,委託した旨を当該弁護士と連署した書面で裁判所に届け出る必要があります(刑訴規則217条の33第1項)。
   なお,委託事項の特定がない場合,すべての行為を委託したものとみなされます(刑訴規則217条の33第3項)。
(5) 被害者参加の申出をした場合,平成20年9月5日付の最高検察庁の「被害者参加制度の下での犯罪被害者等に対する証拠の開示に関する依命通達」に基づき,第1回公判期日の前であっても,公判提出予定記録の閲覧に応じてくれることがあります(刑訴法47条ただし書参照)。
(6) 被害者参加の許可決定が得られても,被害者参加人が手続に直接関与できるのは,第1回公判期日以後に限られるのであって,公判前整理手続(刑訴法316条の2ないし316条の27)に直接は関与できません。
(7) 被害者参加人は,①証人については,犯罪事実に関するものを除く,情状に関する事項だけを質問できるに過ぎません(刑訴法316条の36第1項)。
これに対して,②被告人については,犯罪事実に関する事項も含めて質問できます(刑訴法316条の37第1項参照)。
(8) 内閣府の平成22年版犯罪被害者白書(内閣府政策統括官(共生社会政策担当)のホームページに掲載)によれば,平成20年12月1日からの1年間で,被害者参加の申出は552件(うち,自動車運転過失致死傷罪は265件)・926名であり,被害者参加許可決定がされたのは522件・850名でした。
   また,内閣府の平成23年度犯罪被害者白書によれば,平成22年5月末までに参加の申出がなされた件数及び人員は,867件1,445名,そのうち,参加が許可された件数及び人員は,847件1,375名です。
2 被害者参加人のための国選弁護制度
(1) 被害者参加人のための国選弁護制度は,犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律(=犯罪被害者保護法)5条ないし12条に基づく制度です。
(2)ア 被害者参加人の資力(現金,預金等の流動資産の合計額)から,当該犯罪行為を原因として,選定請求の日から6か月以内に支出することとなると認められる費用の額(例えば,療養費)を差し引いた額が200万円(犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律施行令(平成20年9月5日政令第278号)8条)未満である場合,国選被害者参加弁護士の選定を請求することができます(法テラスHPの「被害者参加人のための国選弁護制度」参照)。
   この場合,被害者参加人は,裁判所に対し,法テラスを経由して被害者参加弁護士の選定を請求でき,法テラスでは,被害者参加人のご意見を聴いた上で,被害者参加弁護士の候補を指名し,裁判所に通知する業務等を行います。
イ 平成25年12月1日,被害者参加人の資力要件が緩和されました。
(3) 国選被害者参加弁護士と法テラスの関係については,「国選被害者参加弁護士の事務に関する契約約款」(平成20年11月13日法務大臣認可)及び同約款別紙「報酬及び費用の算定基準」において,詳細が定められています。
(4) 平成22年度法テラス業務実績報告書174頁によれば,国選被害者参加弁護士の選定請求受付件数及び人員の推移は以下のとおりであり,平成23年3月時点の合計は464件569名となっています。
① 平成20年度;29件32人(平成20年12月~翌年3月)
② 平成21年度:204件238人(平成21年4月~翌年3月)
③ 平成22年度:231件299人(平成22年4月~翌年3月)

第5 刑訴法292条の2に基づく意見の陳述

1 被害者等は,被害者参加の申出をしていない場合であっても,公判期日において,被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述をすることができます(刑訴法292条の2第1項)。

2 刑訴法292条の2に基づく意見の陳述(=心情意見陳述)の制度は,平成12年5月19日法律第74号による改正に基づき,平成12年11月1日に施行されました。

3 裁判長は,心情意見陳述に充てることのできる時間を定めることができます(刑訴規則210条の4)。

4 被害者等が意見陳述を希望する場合,あらかじめ,検察官に申し出なければならず,この場合において,検察官は,意見を付して,これを裁判所に通知します(刑訴法292条の2第2項)。
   これは,検察官は公益の代表者として被害者等の心情等を訴訟に適正に反映させる責務があり,被害者等の意見陳述の希望の有無を踏まえた訴訟の進行を考慮する必要があるからです。

5 裁判所は,被害者等から申出があれば、原則として意見を陳述させます(刑訴法292条の2第1項)
   ただし,裁判所は,審理の状況その他の事情を考慮して,相当でないと認めるときは,例外的に,意見の陳述に代え,①意見を記載した書面を提出させ,又は②意見の陳述をさせないことができます(刑訴法292条の2第7項)。
   ①意見を記載した書面を提出させることとする場合としては,例えば,(a)意見陳述を希望する被害者が多数存在し,一部の者に口頭による意見陳述をさせることが適当な場合,及び(b)被害者が入院等の理由により法廷に出廷できない場合が考えられます。
   そして,書面が提出された場合,裁判長は,これを公判廷へ顕出する手続として,公判期日において,書面が提出された旨を明らかにしなければならず,また,相当と認めるときは,その書面を朗読し,又はその要旨を告げることができます(刑訴法292条の2第8項)。
   ②意見の陳述をさせないこととする場合としては,例えば,(a)被害者等が証人尋問において被害感情等を併せて詳細に証言した直後に,再度同一内容の意見陳述の申出があった場合,及び(b)暴力団の抗争事件で対立感情を煽るおそれがある場合が考えられます。

6 被害者等の意見陳述は,証拠調べ手続の後に,検察官の論告及び弁護人の弁論に先立って実施されることが一般的です。
   また,事前に用意した意見書を被害者が法廷で朗読することによって行われることが多いです。

7 被害者等に陳述させる意見の内容は,基本的には,被害感情及び被告人に対する処罰感情等の被害に関する心情その他の被告事件に関する意見ということとなります。
   ただし,このような内容の陳述は,被害者等が自己の実体験を基礎としてなすものであり,刑訴法293条2項の被告人の陳述に類似するものと考えて良く,裁判所は,これを単なる意見として斟酌するだけでなく,量刑上の資料の一つとすることができます。

8 性犯罪の被害者等が公判廷で意見陳述をする場合の精神的負担を軽減するため,①付添い(刑訴法157条の2),②被告人又は傍聴人との間の遮へい(刑訴法157条の3)及び③ビデオリンク方式(刑訴法157条の4)といった措置がとられることがあります(刑訴法292条の2第6項)。

第6 少年審判における被害者の権利

1 総論
(1) 平成12年12月6日法律第142号(平成13年4月1日施行)による少年法の改正により,①少年事件記録の閲覧又は謄写,②少年事件における意見陳述及び③被害者等に対する通知がされるようになりました。
(2) 平成20年6月18日法律第71号(平成20年12月15日施行)による少年法の改正により,①少年審判の傍聴が認められ,②被害者等に対する説明がされるようになりました。

2 少年事件記録の閲覧又は謄写
(1) 平成13年4月1日以降に発生した少年事件の場合,少年事件の被害者等又は被害者等の委託を受けた弁護士は,審判開始決定(少年法21条)の発令後,保護事件を終局させる決定が確定してから3年を経過するまでの間(少年法5条の2第2項参照),原則として法律記録の閲覧又は謄写ができます(少年法5条の2第1項)。
(2) 平成20年6月18日法律第71号(平成20年12月15日施行)による少年法の改正前は,法律記録の閲覧又は謄写については,損害賠償請求権の行使のために必要があると認める場合等に限られていました。
   また,閲覧・謄写の対象とされている記録は,保護事件の記録のうち,犯行の動機,態様及びその結果その他当該犯罪に密接に関連する重要な事実を含む非行事実に係る部分に限られていました。
(3) 記録の閲覧又は謄写をした者は,正当な理由がないのに,閲覧又は謄写により知り得た少年の氏名等を漏らす等の行為をしてはなりません(少年法5条の2第3項)。

3 少年事件における意見陳述
   家庭裁判所は,犯罪少年又は触法少年に係る事件の被害者等から,被害に関する心情その他の事件に関する意見の陳述の申出があるときは,自らこれを聴取し,又は家庭裁判所調査官に命じてこれを聴取してくれます。
   ただし,事件の性質,調査又は審判の状況その他の事情を考慮して,相当でないと認めるときは,この限りでありません(少年法9条の2)。

4 少年審判の傍聴
(1) 家庭裁判所は,以下の犯罪行為に関する犯罪少年又は触法少年(12歳未満の少年は除く。)に係る事件の被害者等から,審判期日における審判の傍聴の申出がある場合,少年の年齢及び心身の状態,事件の性質,審判の状況その他の事情を考慮して,少年の健全な育成を妨げるおそれがなく相当と認めるときは,その申出をした者に対し,これを傍聴することを許してくれます(少年法22条の4第1項)。
① 故意の犯罪行為により被害者を死傷させた罪
→ 例えば,殺人罪,殺人未遂罪,傷害致死罪,傷害罪,危険運転致死傷罪です。
② 過失運転致死傷罪
(2) 傍聴が認められた期日であっても,例えば,少年が性的虐待を受けていた事実など,プライバシーに深くかかわる事項に立ち入って話してもらう必要がある場合には,被害者等は退室させられることがあります。
(3) 家庭裁判所は,触法少年に係る事件の被害者等に審判の傍聴を許すか否かを判断するに当たっては,触法少年が,一般に,精神的に特に未成熟であることを十分考慮しなければなりません(少年法22条の4第2項)。
(4) 家庭裁判所は,被害者等が少年審判の傍聴を許すのを許す場合,あらかじめ,弁護士である付添人の意見を聴く必要があり(少年法22条の5第1項),少年に弁護士である付添人がないときは,原則として,弁護士である付添人を付す必要があります(少年法22条の5第2項及び3項)。
(5) 少年審判の傍聴をした者は,正当な理由がないのに,傍聴により知り得た少年の氏名等を漏らす等の行為をしてはなりません(少年法22条の4第5項・5条の2第3項)。

5 被害者等に対する説明
(1) 家庭裁判所は,犯罪少年又は触法少年に係る事件の被害者等から申出がある場合において,少年の健全な育成を妨げるおそれがなく相当と認めるときは,その申出をした者に対し,審判期日における審判の状況を説明します(少年法22条の6第1項)。
(2) 少年審判の結果が確定してから3年を経過したときは,被害者等に対する説明を申し出ることはできません(少年法22条の6第2項)。
(3) 被害者等に対する説明を受けた者は,正当な理由がないのに,説明により知り得た少年の氏名等を漏らす等の行為をしてはなりません(少年法22条の6第3項・5条の2第3項)。

6 被害者等に対する通知
(1) 家庭裁判所は,犯罪少年又は触法少年に係る事件を終局させる決定をした場合において,当該事件の被害者等から申出があるときは,その申出をした者に対し,以下に掲げる事項を通知します。
   ただし,その通知をすることが少年の健全な育成を妨げるおそれがあり相当でないと認められるものについては,この限りでありません(少年法31条の2第1項)。
① 少年及びその法定代理人の氏名及び住居
② 決定の年月日,主文及び理由の要旨
(2) 少年審判の結果が確定してから3年を経過したときは,被害者等に対する通知を申し出ることはできません(少年法31条の2第2項)。
(3) 被害者等に対する通知を受けた者は,正当な理由がないのに,通知により知り得た少年の氏名等を漏らす等の行為をしてはなりません(少年法31条の2第3項・5条の2第3項)。
1(1) 交通事故(検察審査会を含む。)及び債務整理の初回の面談相談は無料であり,相続情報公開請求等の面談相談は30分3000円(税込み)です。
   交通事故及び債務整理については,無料の電話相談もやっています。
(2) 相談予約の電話番号は「お問い合わせ」に載せています。
  
2 執務時間は原則として平日の午前10時から午後7時30分までですが,事前のご予約があれば,午後8時30分まで夜間相談可能です。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)については,略歴及び取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図を参照してください。