文書提出命令

第0 目次

第1 文書提出命令の申立てから発令までの流れ
第2 文書提出義務
第3 文書提出命令に関する平成13年改正法の内容
第4 当事者又は第三者が文書提出命令に従わなかった場合の取扱い
第5 文書提出命令に関する最高裁判例
第6 文書提出命令に関する民事訴訟法の条文

* 「裁判所からの文書提出命令等に関する労基署の取扱い」及び「文書送付嘱託」も参照して下さい。

第1 文書提出命令の申立てから発令までの流れ

1(1) 文書提出命令とは,相手方当事者又は第三者が文書を所持する場合に,その所持者が文書の提出義務を負う場合に限り(民事訴訟法220条),裁判所がその所持者に対して当該文書の提出を命じることをいいます。
(2)   文書の所持者が提出義務を負わないときは,所持者の協力を得られる見込みがある場合に限り,所持者に対する文書送付嘱託が実施されます(民事訴訟法226条)。 

2(1) 文書提出命令の申立ては必ず書面でする必要があります(民事訴訟規則140条1項)ところ,以下の事項を記載する必要があります。
① 提出を求める文書の表示
② 提出を求める文書の趣旨
③ 提出を求める文書の所持者
④ 証明すべき事実
⑤ 文書提出義務の原因
(2) 申立人において文書の表示又は文書の趣旨を明らかにすることが著しく根案である場合,これらの事項に代えて,文書の所持者がその申立てに係る文書を識別することができる事項を明らかにすれば足ります(民事訴訟法222条1項前段)。
   この場合,申立人は「文書の表示又は趣旨を明らかにすることを求める」旨の申出をしなければなりません(民事訴訟法222条1項後段)。

3 文書提出命令の申立書は相手方に直送する必要があります(民事訴訟規則140条3項,99条2項,83条)。 

4 文書提出命令の申立ては民事雑事件簿に登載して立件され,雑事件番号が付きます(簡裁の場合は(サ),地裁の場合は(モ))。
   その関係で,大阪地裁本庁の場合,文書提出命令の申立書は係属部ではなく,本館1階の事件係に提出する必要があります。 

5(1) 文書提出命令の申立てがあった場合,裁判所は,相手方に対し,意見があれば,意見を記載した書面を一定期間内に提出するように促します(民事訴訟規則140条2項,3項)。 
(2) 第三者に対して文書の提出を命ずることを内容とする申立ての場合,当該第三者を審尋する必要があります(民事訴訟法223条2項)。
   ただし,通常は書面審尋が行われるに過ぎません。

6(1) 民事訴訟法220条4号に規定する文書提出義務を原因とする提出命令の申立てにおいて,裁判所は当該文書が同号イからニまでに規定する除外事由に該当するかどうかを判断するため,必要があると認めるときは,文書の所持者に対し,その文書の提示をさせることができます(インカメラ手続・民事訴訟法223条6項前段)。
(2) 提示命令に基づいて提出された文書は何人もその開示を求めることができません(民事訴訟法223条6項後段)。 

7 文書提出命令の申立てが認容された場合,提出命令が書面で発令され,文書提出命令の申立てが却下された場合,却下決定が書面で発令されます(民事訴訟法223条4項参照)。

8 文書の提出は,その原本,正本又は認証ある謄本でなされます(民事訴訟規則143条1項)ところ,裁判所は,原本の提出を特に命じることができます(民事訴訟規則143条2項)。 

9 提出文書は期日に提示されます。
   また,当事者は,必要があれば,裁判所に提出された文書をコピーした上で,書証として提出します。

第2 文書提出義務

1 文書提出義務は,以下の場合に認められます。
① 当事者が訴訟において引用した文書を自ら所持するとき
   1号文書又は引用文書といわれます。
② 挙証者が文書の所持者に対しその引渡し又は閲覧を求めることができるとき。
   2号文書又は引渡・閲覧請求権ある文書といわれます。
③ 文書が挙証者の利益のために作成され、又は挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成されたとき。
   3号文書といわれるほか,前段が利益文書,後段が法律関係文書といわれます。
④  文書が次に掲げるもののいずれにも該当しないとき。
イ 文書の所持者又は文書の所持者と第百九十六条各号に掲げる関係を有する者についての同条に規定する事項が記載されている文書
ロ 公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの
ハ 第百九十七条第一項第二号に規定する事実又は同項第三号に規定する事項で、黙秘の義務が免除されていないものが記載されている文書
二 専ら文書の所持者の利用に供するための文書(国又は地方公共団体が所持する文書にあっては、公務員が組織的に用いるものを除く。)
ホ 刑事事件に係る訴訟に関する書類若しくは少年の保護事件の記録又はこれらの事件において押収されている文書

2 引渡請求権ある文書の例としては以下のものがあります。
1 共有物分割証書(民法262条4項)
2 債権証書(民法487条,民法503条1項)

3 閲覧請求権ある文書は主として会社法で定められています。

4(1) 利益文書とは,挙証者の利益,つまり挙証者の地位又は権利を明らかにするために作成された文書をいいます。
挙証者とは,文書提出命令を申し立てる当事者又は補助参加人をいいます。
(2)  利益文書の例としては,挙証者を受遺者とする遺言書、領収書、同意書及び身分証明書があります。

5(1) 法律関係文書とは、挙証者・所持人間の法律関係を記載した文書をいいます。
(2) 法律関係文書の例としては,商業帳簿,保険会社が所持する診断書(高松高決昭和61年9月17日),契約書,契約解除通知書及び両当事者間の判決正本があります。

6 1号ないし3号は当事者と文書との間の特別の関係の存在を前提とした特定の文書の提出義務を,4号は当事者と文書との間の特別の関係の存在を前提としないで,文書一般の提出義務を定めたものです。

7 民事訴訟法220条4号により文書提出義務が一般義務化されていますから,文書提出命令が濫用されて文書の所持人に不当な不利益を与えるおそれがあります。
そこで,一定の文書が提出義務の対象から除外されていますし,文書提出命令の申立人に文書提出義務の証明責任が課されていますし,民事訴訟法220条4号に基づく文書提出命令の申立ては,書証の申出を文書提出命令の申立てによってなす必要がある場合に限定されている(民事訴訟法221条2項)。
 

第3 文書提出命令に関する平成13年改正法の内容

○平成13年改正法は,公務文書の提出義務を一般義務とし,公務秘密文書を新たに除外文書としたことに伴い,文書提出義務の存否を判断するための手続を以下のとおり整備しました。
1 監督官庁からの意見聴取(223条3項)
(1) 監督官庁は,公務員の守秘義務を解除する権限を有しており(国家公務員法100条2項等),文書に記載された事項が「公務員の職務上の秘密」に該当するかどうかを最もよく知る立場にあることから,裁判所が公務秘密文書に該当するかどうかを判断するに先立って,監督官庁の参考意見を聴取することは,その判断の適正に資するものと考えられます。
(2) そこで,裁判所は,公務秘密文書に該当するかどうかを判断するに先立って,監督官庁の意見を聴取しなければならず,また,監督官庁が公務秘密文書に該当する旨の意見を述べるときは,その理由を示さなければならないものとしています。
2 高度の公務秘密文書についての司法審査の方式(223条4項)
(1) 監督官庁が,223条3項に基づき,裁判所に対して意見を述べる場合には,文書の記載事項が公務員の職務上の秘密に該当する理由を具体的に主張しなければならないものの,その際,「国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれ」又は「犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれ」がある旨を主張する場合も考えられます。
  しかし,このような「おそれ」の有無を判断するについては,防衛・外交政策上の又は刑事政策上の将来予測を含む専門的・政策的判断を要するという特殊性が認められることから,裁判所としても秘密の内容に通じている監督官庁の第一次的判断を尊重するのが相当です。
(2) そこで,監督官庁が,前述した「おそれ」があることを理由に公務秘密文書に該当する旨の意見を述べた場合には,裁判所は,監督官庁の意見が合理性を持つ判断として許容できるかどうかを審査することとし,当該意見が相当である場合には,文書提出命令の申立てを却下し,当該意見が相当であると認めるに足りない場合には,通常どおり,公務秘密文書に該当するかどうかを審査した上で文書提出義務の存否を判断するものとしています。
3 第三者からの意見聴取(223条5項)
(1) 公務員の職務上の秘密に関する文書の中には,私企業を始めとする第三者の技術又は職業の秘密に関する事項(197条1項3号)が記載されているものものもあると考えられます。
このような文書は通常,公務員がその職務を遂行する過程で第三者の協力を得て収集したものですから,監督官庁が,当該秘密の重要性・秘匿の必要性につき誤った判断をして当該秘密が公にされ,私企業等の第三者が損害を被った場合,以後同様の証拠を収集するに当たり第三者の協力を得ることができなくなるなど,公務の遂行に支障を生じるおそれが高いと考えられます。
(2) そこで,監督官庁が,223条3項に基づき,第三者の技術又は職業の秘密に関する事項が記載されている文書について裁判所から意見聴取を受け,公務秘密文書に該当しない旨の意見を述べる場合,それに先立って当該第三者の意見を聴取するものとしています。
4 インカメラ手続(223条6項)
(1) 223条6項は,裁判所が除外文書に該当するかどうかを判断するため必要があるときは,文書の所持者にその提示をさせ,提示された文書を裁判所だけが見ることができる,いわゆるインカメラ手続を規定しています。
この規定は,除外文書に該当するかどうかを迅速かつ的確に判断するためには,裁判所が文書の記載内容を直接閲読して判断するのが最も確実であることから設けられたものです。そして,この趣旨は,公務文書が除外文書に該当するかどうかを判断する場合にも同様に妥当することから,この場合にも,223条6項の適用があるものとしています。
(2) もっとも,除外文書としての刑事事件関係書類等は,文書の記載内容を閲読するまでもなく,これに該当するかどうかを容易に判断することができますから,インカメラ手続の対象とはされていません。

第4 当事者又は第三者が文書提出命令に従わなかった場合の取扱い

1 当事者が文書提出命令に従わない場合,又は相手方の使用を妨げる目的で提出義務ある文書を滅失させ,若しくは使用できなくした場合,以下の効果が生じます。
① 申立人が記載内容を具体的に主張できる場合,裁判所は当該文書の記載に関する申立人の主張を真実と認めることができます(民事訴訟法224条1項・2項)。
② 申立人が記載内容を具体的に主張できず,他の代替的な証拠により証明することも著しく困難な場合,裁判所は証明主題自体に関する申立人の主張を真実と認めることができます(民事訴訟法224条3項)。

2 第三者が文書提出命令に従わない場合,裁判所は,決定で20万円以下の過料に処します(民事訴訟法225条1項)。

第5 文書提出命令に関する裁判例

1 民事訴訟法220条3号(法律関係文書)に関する最高裁判例
① 刑訴法47条所定の「訴訟に関する書類」に該当する文書について文書提出命令の申立てがされた場合であっても,当該文書が民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当し,かつ,当該文書の保管者によるその提出の拒否が,民事訴訟における当該文書を取り調べる必要性の有無,程度,当該文書が開示されることによる被告人,被疑者等の名誉,プライバシーの侵害等の弊害発生のおそれの有無等の諸般の事情に照らし,当該保管者の有する裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用するものであるときは,裁判所は,その提出を命ずることができます(最高裁平成16年5月25日決定)。
② 警察官が文書提出命令の申立人の住居等において行った捜索差押えに係る捜索差押許可状及び捜索差押令状請求書は,いずれも,当該警察官が所属し,上記各文書を所持する地方公共団体と文書提出命令申立人との間において,民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当します(最高裁平成17年7月22日決定)。
③ 検察官が被疑者の勾留請求に当たって刑訴規則148条1項3号所定の資料として裁判官に提供した告訴状及び被害者の供述調書は,いずれも,上記各文書を所持する国と上記請求により勾留された者との間において,民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当します(最高裁平成19年12月12日決定)。

2 民事訴訟法220条4号ロ(公務秘密文書)に関する最高裁判例
① 県が漁業協同組合との間で漁業補償交渉をする際の手持ち資料として作成した補償額算定調書中の文書提出命令申立人に係る補償見積額が記載された部分は,具体的事情によっては,民訴法220条4号ロ所定の文書に該当します(最高裁平成16年2月20日決定)。
② 外務省が外国公機関に交付した照会文書の控え及び同機関が同省に交付した回答文書は,具体的事情によっては,民訴法223条4項1号の「他国との信頼関係が損なわれるおそれ」があり同法220条4号ロ所定の文書に該当する旨の監督官庁の意見に相当の理由があると認められます(最高裁平成17年7月22日決定)。
③ 労働災害が発生した際に労働基準監督官等の調査担当者が労働災害の発生原因を究明し同種災害の再発防止策等を策定するために調査結果等を踏まえた所見を取りまとめて作成した災害調査復命書に,(1)当該調査担当者が事業者や労働者らから聴取した内容,事業者から提供を受けた関係資料,当該事業場内での計測,見分等に基づいて推測,評価,分析した事項という当該調査担当者が職務上知ることができた当該事業者にとっての私的な情報のほか,(2)再発防止策,行政指導の措置内容についての当該調査担当者の意見,署長判決及び意見等の行政内部の意思形成過程に関する情報が記載されていること,(1)の情報に係る部分の中には,上記聴取内容がそのまま記載されたり,引用されたりしている部分はなく,当該調査担当者において,他の調査結果を総合し,その判断により上記聴取内容を取捨選択して,その分析評価と一体化させたものが記載されていること,調査担当者には,事業場に立ち入り,関係者に質問し,帳簿,書類その他の物件を検査するなどの権限があることなど判示の事情の下においては,上記災害調査復命書のうち,(2)の情報に係る部分は民訴法220条4号ロ所定の文書に該当しないとはいえないが,(1)の情報に係る部分は同号ロ所定の文書に該当しません(最高裁平成17年10月14日決定)。
④ 全国消費実態調査の調査票情報を記録した準文書は,具体的事情によっては,民訴法231条において準用する同法220条4号ロ所定の「その提出により…公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの」に当たります(最高裁平成25年4月19日決定)。
⑤ 民訴法220条4号ロにいう「公務員」には,国立大学法人の役員及び職員も含まれます(最高裁平成25年12月19日決定)。 

3 民事訴訟法220条4号ハ(職務上知り得た事実で黙秘すべきもの,技術又は職業の秘密に関する文書)に関する最高裁判例
① 民訴法197条1項3号所定の「技術又は職業の秘密」とは、その事項が公開されると、当該技術の有する社会的価値が下落しこれによる活動が困難になるもの又は当該職業に深刻な影響を与え以後その遂行が困難になるものをいいます(最高裁平成12年3月10日決定)。
② 破たんした保険会社につき選任された保険管理人が,金融監督庁長官から,保険業法(平成11年法律第160号による改正前のもの)313条1項,242条3項に基づき,当該保険会社の破たんについての旧役員等の経営責任を明らかにするために弁護士,公認会計士等の第三者を委員とする調査委員会を設置して調査を行うことを命じられたため,上記命令の実行として弁護士及び公認会計士を委員とする調査委員会を設置し,当該調査委員会から上記調査の結果が記載された調査報告書の提出を受けたという事実関係の下では,当該調査報告書は,民訴法220条4号ハ所定の「第197条第1項第2号に規定する事実で黙秘の義務が免除されていないものが記載されている文書」に当たりません(最高裁平成16年11月26日決定)。
③ A,Bを当事者とする民事訴訟の手続の中で,Aが金融機関Cを相手方としてBとCとの間の取引履歴が記載された明細表を対象文書とする文書提出命令を申し立てた場合において,Bが上記明細表を所持しているとすれば民訴法220条4号所定の事由のいずれにも該当せず提出義務が認められること,Cがその取引履歴を秘匿する独自の利益を有するものとはいえないことなど判示の事情の下では,上記明細表は,同法197条1項3号にいう職業の秘密として保護されるべき情報が記載された文書とはいえず,同法220条4号ハ所定の文書に該当しません(最高裁平成19年12月11日決定)。
④ 金融機関を当事者とする民事訴訟の手続の中で,当該金融機関が行った顧客の財務状況等についての分析,評価等に関する情報が記載された文書につき,具体的事情によっては,文書提出命令が申し立てられた場合において,上記文書が民訴法220条4号ハ所定の文書に該当しません(最高裁平成20年11月25日決定)。

4 民事訴訟法220条4号ニ「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に関する最高裁判例
① ある文書が,その作成目的,記載内容,これを現在の所持者が所持するに至るまでの経緯,その他の事情から判断して,専ら内部の者の利用に供する目的で作成され,外部の者に開示することが予定されていない文書であって,開示されると個人のプライバシーが侵害されたり個人ないし団体の自由な意思形成が阻害されたりするなど,開示によって所持者の側に看過し難い不利益が生ずるおそれがあると認められる場合には,特段の事情がない限り,当該文書は民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たります(最高裁平成11年11月12日決定)。
 信用金庫の会員が代表訴訟において信用金庫の貸出稟議書につき文書提出命令の申立てをしたことは,当該貸出稟議書が民訴法二二〇条四号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらない特段の事情とはいえません(最高裁平成12年12月14日決定)。
信用組合の貸出稟議書が民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらないことがあります(最高裁平成13年12月7日決定)。 
② 仙台市議会の議員が所属会派に交付された政務調査費によって費用を支弁して行った調査研究の内容及び経費の内訳を記載して当該会派に提出した調査研究報告書及びその添付書類は,具体的事情によっては,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たります(最高裁平成17年11月10日決定)。
③ 銀行の本部の担当部署から各営業店長等にあてて発出されたいわゆる社内通達文書であって一般的な業務遂行上の指針等が記載されたものは,具体的事情によっては,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たりません(最高裁平成18年2月17日決定)。 
④ 介護サービス事業者が介護給付費等の請求のために審査支払機関に伝送する情報を利用者の個人情報を除いて一覧表にまとめた文書は,具体的事情によっては,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たりません(最高裁平成19年8月23日決定)。
⑤  銀行が,法令により義務付けられた資産査定の前提として,監督官庁の通達において立入検査の手引書とされている「金融検査マニュアル」に沿って債務者区分を行うために作成し,保存している資料は,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たりません(最高裁平成19年11月30日決定)。 
⑥ 名古屋市議会の会派が市から交付された政務調査費を所属議員に支出する際に各議員から諸経費と使途基準中の経費の項目等との対応関係を示す文書として提出を受けた報告書及びこれに添付された領収書は,具体的事情によっては,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たります(最高裁平成22年4月12日決定)。
⑦  弁護士会の綱紀委員会の議事録のうち「重要な発言の要旨」に当たる部分は,具体的事情によっては,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に該当します(最高裁平成23年10月11日決定)。 
⑧ 国立大学法人が所持し,その役員又は職員が組織的に用いる文書についての文書提出命令の申立てには,民訴法220条4号ニ括弧書部分が類推適用されます(最高裁平成25年12月19日決定)。 
⑨ 岡山県議会の議員が県から交付された政務調査費の支出に係る1万円以下の支出に係る領収書その他の証拠書類等及び会計帳簿は,具体的事情によっては,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たりません(最高裁平成26年10月29日決定)。

5 民事訴訟法223条1項に関する最高裁判例
① 裁判所は,財務諸表等の監査証明に関する省令(平成12年総理府令第65号による改正前のもの)6条に基づき監査調書として整理された記録又は資料のうち,貸付先の一部の氏名,会社名等の部分を除いて文書提出命令を発することができます(最高裁平成13年2月22日決定)。

6 民事訴訟法223条6項(インカメラ手続)
① 事実審である抗告審が民訴法223条6項に基づき文書提出命令の申立てに係る文書をその所持者に提示させ,これを閲読した上でした文書の記載内容の認定は,それが一件記録に照らして明らかに不合理であるといえるような特段の事情がない限り,法律審である許可抗告審において争うことができません(最高裁平成20年11月25日決定)。
② 情報公開法に基づく行政文書の開示請求に対する不開示決定の取消訴訟において,不開示とされた文書を目的とする検証を被告に受忍義務を負わせて行うことは,原告が検証への立会権を放棄するなどしたとしても許されず,上記文書を検証の目的として被告にその提示を命ずることも許されません(最高裁平成21年1月15日決定)。

7 民事訴訟法223条7項(即時抗告)に関する最高裁判例
① 証拠調べの必要性を欠くことを理由として文書提出命令の申立てを却下する決定に対しては,当該必要性があることを理由として独立に不服の申立てをすることはできません(最高裁平成12年3月10日決定)。
② 文書提出命令の申立てについての決定に対しては、文書の提出を命じられた所持者及び申立てを却下された申立人以外の者は抗告の利益を有しません(最高裁平成12年12月14日決定)。 
③ 文書提出命令の申立てを却下する決定に対し,口頭弁論終結後に即時抗告をすることはできません(最高裁平成13年4月26日決定)。

第6 文書提出命令に関する民事訴訟法の条文

(書証の申出) 
第二百十九条   書証の申出は、文書を提出し、又は文書の所持者にその提出を命ずることを申し立ててしなければならない。 
(文書提出義務) 
第二百二十条   次に掲げる場合には、文書の所持者は、その提出を拒むことができない。 
一   当事者が訴訟において引用した文書を自ら所持するとき。 
二   挙証者が文書の所持者に対しその引渡し又は閲覧を求めることができるとき。 
三   文書が挙証者の利益のために作成され、又は挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成されたとき。 
四   前三号に掲げる場合のほか、文書が次に掲げるもののいずれにも該当しないとき。
イ 文書の所持者又は文書の所持者と第百九十六条各号に掲げる関係を有する者についての同条に規定する事項が記載されている文書
ロ 公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの
ハ 第百九十七条第一項第二号に規定する事実又は同項第三号に規定する事項で、黙秘の義務が免除されていないものが記載されている文書
ニ 専ら文書の所持者の利用に供するための文書(国又は地方公共団体が所持する文書にあっては、公務員が組織的に用いるものを除く。)
ホ 刑事事件に係る訴訟に関する書類若しくは少年の保護事件の記録又はこれらの事件において押収されている文書
(文書提出命令の申立て) 
第二百二十一条   文書提出命令の申立ては、次に掲げる事項を明らかにしてしなければならない。 
一   文書の表示 
二   文書の趣旨 
三   文書の所持者 
四   証明すべき事実 
五   文書の提出義務の原因 
2   前条第四号に掲げる場合であることを文書の提出義務の原因とする文書提出命令の申立ては、書証の申出を文書提出命令の申立てによってする必要がある場合でなければ、することができない。 
(文書の特定のための手続) 
第二百二十二条   文書提出命令の申立てをする場合において、前条第一項第一号又は第二号に掲げる事項を明らかにすることが著しく困難であるときは、その申立ての時においては、これらの事項に代えて、文書の所持者がその申立てに係る文書を識別することができる事項を明らかにすれば足りる。この場合においては、裁判所に対し、文書の所持者に当該文書についての同項第一号又は第二号に掲げる事項を明らかにすることを求めるよう申し出なければならない。 
2   前項の規定による申出があったときは、裁判所は、文書提出命令の申立てに理由がないことが明らかな場合を除き、文書の所持者に対し、同項後段の事項を明らかにすることを求めることができる。 
(文書提出命令等) 
第二百二十三条   裁判所は、文書提出命令の申立てを理由があると認めるときは、決定で、文書の所持者に対し、その提出を命ずる。この場合において、文書に取り調べる必要がないと認める部分又は提出の義務があると認めることができない部分があるときは、その部分を除いて、提出を命ずることができる。 
2   裁判所は、第三者に対して文書の提出を命じようとする場合には、その第三者を審尋しなければならない。 
3   裁判所は、公務員の職務上の秘密に関する文書について第二百二十条第四号に掲げる場合であることを文書の提出義務の原因とする文書提出命令の申立てがあった場合には、その申立てに理由がないことが明らかなときを除き、当該文書が同号ロに掲げる文書に該当するかどうかについて、当該監督官庁(衆議院又は参議院の議員の職務上の秘密に関する文書についてはその院、内閣総理大臣その他の国務大臣の職務上の秘密に関する文書については内閣。以下この条において同じ。)の意見を聴かなければならない。この場合において、当該監督官庁は、当該文書が同号ロに掲げる文書に該当する旨の意見を述べるときは、その理由を示さなければならない。 
4   前項の場合において、当該監督官庁が当該文書の提出により次に掲げるおそれがあることを理由として当該文書が第二百二十条第四号ロに掲げる文書に該当する旨の意見を述べたときは、裁判所は、その意見について相当の理由があると認めるに足りない場合に限り、文書の所持者に対し、その提出を命ずることができる。 
一  国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれ 
二  犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれ 
5   第三項前段の場合において、当該監督官庁は、当該文書の所持者以外の第三者の技術又は職業の秘密に関する事項に係る記載がされている文書について意見を述べようとするときは、第二百二十条第四号ロに掲げる文書に該当する旨の意見を述べようとするときを除き、あらかじめ、当該第三者の意見を聴くものとする。 
6   裁判所は、文書提出命令の申立てに係る文書が第二百二十条第四号イからニまでに掲げる文書のいずれかに該当するかどうかの判断をするため必要があると認めるときは、文書の所持者にその提示をさせることができる。この場合においては、何人も、その提示された文書の開示を求めることができない。 
7   文書提出命令の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることができる。 
(当事者が文書提出命令に従わない場合等の効果) 
第二百二十四条   当事者が文書提出命令に従わないときは、裁判所は、当該文書の記載に関する相手方の主張を真実と認めることができる。 
2   当事者が相手方の使用を妨げる目的で提出の義務がある文書を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたときも、前項と同様とする。 
3   前二項に規定する場合において、相手方が、当該文書の記載に関して具体的な主張をすること及び当該文書により証明すべき事実を他の証拠により証明することが著しく困難であるときは、裁判所は、その事実に関する相手方の主張を真実と認めることができる。 
(第三者が文書提出命令に従わない場合の過料) 
第二百二十五条   第三者が文書提出命令に従わないときは、裁判所は、決定で、二十万円以下の過料に処する。 
2   前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。 
1(1) 交通事故(検察審査会を含む。)及び債務整理の初回の面談相談は無料であり,相続情報公開請求等の面談相談は30分3000円(税込み)です。
   交通事故及び債務整理については,無料の電話相談もやっています。
(2) 相談予約の電話番号は「お問い合わせ」に載せています。
  
2 執務時間は原則として平日の午前10時から午後7時30分までですが,事前のご予約があれば,午後8時30分まで夜間相談可能です。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)については,略歴及び取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図を参照してください。