弁護士費用特約

第0 目次

第1   弁護士費用特約とは
第2の1 弁護士費用特約を利用できる人
第2の2 弁護士費用特約の適用範囲
第3   自分で選んだ弁護士の弁護士費用でも支払ってもらえること等
第4   日弁連LACが関与した委任契約書を作成する場合があること
第5   弁護士費用特約を利用できない手続
第6   訴訟上の和解の方が判決よりも望ましい場合が多くなること
第7   交通事故以外に適用される弁護士費用保険
第8   保険金を支払わない場合における保険会社の説明等
第9   弁護士費用特約の保険金支払における源泉徴収

*1 交通事故弁護士ナビ「いざというときに弁護士費用がもらえる|弁護士費用特約の使い方ガイド 」が載っています。
*2 市況かぶ全力2階建ブログ「自動車保険会社のイメージ、被害者側の弁護士目線でみるとこうなる 」が載っています。
*3 保険会社のインターネット上の苦情窓口は以下のとおりです(保険契約者が苦情を伝える場合,証券番号を入力する必要があります。)。
① 東京海上日動HP「お問い合わせ」
→ 問い合わせフォームがあります。
② 三井住友海上HP「お問い合わせ」
→ 問い合わせフォームがあります。
③ あいおいニッセイ同和損保HP「「お客さまの声」にお応えするために」
→ 問い合わせフォームがあります。
④ 損保ジャパン日本興亜HP「お客さま相談室(保険金支払ご相談窓口)」
→ 電話対応だけみたいです。
⑤ AIG損保HP「事故・病気・ケガ・災害時のご連絡」
→ 電話のほか,メールによる問い合わせに対応しているみたいです。
*4 1番安い自動車保険教えますHP「自動車保険の弁護士費用特約は必要?本当の使い方と損保18社の違いを比較!」,及び「自動車保険19社の苦情窓口とクレームの入れ方|そんぽADRセンターとは? 」が載っています。
*5 交通事故弁護士相談Cafe「弁護士を変更したい!弁護士費用特約利用時に知っておくべきこと」が載っています。
*6 にわ法律事務所HP「ソニー損害保険株式会社、SBI損害保険株式会社の弁護士費用特約(弁護士費用保険)の取扱い停止について」が載っています。

第1 弁護士費用特約とは

1 弁護士費用特約は任意保険の特約のことであり,交通事故にあった被害者が,①弁護士に対して法律相談をする際の法律相談費用,及び②弁護士に依頼して損害賠償請求をする際の弁護士報酬及び実費を保険会社が負担してくれるという特約です。

2(1)   弁護士費用特約に基づく保険金の額は,1回の被害事故について,被保険者1名当たり300万円を限度としています。
   また,これとは別に,法律相談費用保険金の額は,1回の被害事故について,被保険者1名当たり10万円を限度としています。
(2) 弁護士費用特約を利用できる場合,弁護士費用が300万円以下である限り,被害者が加害者に対して損害賠償請求をするとき,自らの費用負担なしで弁護士に依頼できることとなります。
(3)ア 例えば,以下の費用は弁護士費用特約の支払対象となります。
① 弁護士の着手金及び成功報酬金
② 訴訟を提起する際の印紙代及び切手代
③ 加害者側の任意保険会社なり依頼者なりに郵便物を送るときの切手代
④ 医療機関のカルテを取り寄せる際の手数料
⑤ 控訴を提起する際の印紙代及び切手代
イ 最高裁で高裁判決が破棄されることはまずないため,上告のための弁護士費用については弁護士費用特約で出ないことがあります(「高裁の各種事件数,及び最高裁における民事・行政事件の概況」参照)。
(4) 損保ジャパンの場合,刑事弁護士費用保険金は,相手方が死亡した場合,又は被保険者が逮捕若しくは起訴された場合に限り支払われるものです(損保ジャパンHPの「一般自動車保険『SGP』 補償内容:主な特約一覧(特約の概要)」参照)。

3 おとなの自動車保険HP「弁護士費用特約」によれば,セゾン自動車火災の場合,平成28年3月末時点で,71.0%の人が弁護士費用特約を選んでいます。

4  プリベント少額短期保険株式会社の弁護士費用保険「Mikata」が他社の弁護士費用特約と競合する場合において,既に他社の弁護士費用特約を使用している場合,それを差し引いた金額しか保険金が支払われません(外部ブログの「弁護士保険MIKATAの普通保険約款を眺めてみた」参照)。

5 交通事故の赤い本講演録2018年2頁には,東京地裁27民の部総括裁判官の発言として,「自動車保険における弁護士費用補償特約の普及により,訴訟経済的には見合わないように思われる事件を含め,少額の訴訟の提起及び控訴も増加している」と書いてあります。

6 自動車保険ガイドHP「弁護士費用特約の補償金額や範囲~交通事故以外でも補償してくれる会社も有り。 」には以下の記載があります。 
   チューリッヒ共栄火災なんかは、日常生活の事故まで対象にしています。また、三井住友海上なら「自動車事故弁護士費用特約」と「弁護士費用特約」のどちらか好きな方を選択できます

第2の1 弁護士費用特約を利用できる人

1 弁護士費用特約を利用できる人は以下のとおりです。
① 記名被保険者(保険証券記載の被保険者のことです。)
② 記名被保険者の配偶者
③ 記名被保険者又はその配偶者の同居の親族
④ 記名被保険者又はその配偶者の別居の未婚の子
⑤ ①ないし④以外の者で,契約自動車に搭乗中の者
⑥ 記名被保険者の承諾を得て被保険自動車を使用・管理中の者
⑦ 記名被保険者の使用者 
 
2(1) ③の人が利用できる結果,例えば,父親の自動車に弁護士費用特約が付いている場合,同居の息子が歩行中等に交通事故にあったときでも弁護士費用特約を利用できます。
(2)   ④の人が利用できる結果,例えば,父親の自動車に弁護士費用特約が付いている場合,親元を離れて一人暮らしをしている息子が歩行中等に交通事故にあったときでも弁護士費用特約を利用できます。
(3)   ⑤の人が利用できる結果,例えば,友人の自動車に弁護士費用特約が付いている場合,その友人の自動車に乗車中に交通事故にあったときでも弁護士費用特約を利用できます。 
   この場合,仮に相手の自動車に過失がないとき,友人の自動車の任意保険に対してだけ損害賠償請求をすることとなりますところ,そのための弁護士費用も友人の自動車の任意保険から支払われることとなります。 
(4)ア ⑥の人が利用できる結果,例えば,友人の自動車に弁護士費用特約が付いている場合,その友人の自動車を運転中に交通事故にあったときでも弁護士費用特約を利用できます。 
イ 例えば,バイク便の会社がレンタカー会社から借りたバイクをレンタカー会社に無断でバイク便ライダーに又貸ししていた場合において,当該バイクを運転中に交通事故が発生した場合,記名被保険者であるレンタカー会社が又貸しについて明示の反対をしていない限り,当該バイクの運転者は許諾被保険者となります(損害保険Q&A HP「問7 対人賠償保険は,どのような保険ですか。」参照)。

第2の2 弁護士費用特約の適用範囲

1 以下の火災保険又は医療保険に加入している場合,交通事故に基づく損害賠償請求について弁護士費用特約を利用できることがあります。
(1) 火災保険の例
① あいおいニッセイ同和損保の「タフ 住まいの保険」
② エース損保の「リビングプロテクト総合保険」(賃貸住宅入居者専用の火災保険です。)
③ 東京海上日動火災の「超保険」
(2) 医療保険の例
① エース保険の「まかせて安心医療保険」

2(1) 弁護士費用特約を利用できる交通事故は,損害保険会社によって違いがあります。
   例えば,ソニー損保の弁護士費用特約(自動車事故弁護士費用等補償特約)は,交通事故が業務災害又は通勤災害に該当する場合は使用することができません(ソニー損保の自動車保険の重要事項説明書(2012年11月以降始期用)6頁の「オプションの補償」参照)。
(2) 大阪地裁平成30年9月21日判決(判例秘書に掲載)によれば,人損部分で弁護士費用特約を使えない場合であっても,物損部分で弁護士費用特約を使えます。
   ただし,同判決は,弁護士費用のうち,「被害事故にかかわる法律上の損害賠償責任の額/被害事故にかかわる法律上の損害賠償責任の額および被害事故以外にかかわる法律上の損害賠償責任の額の合計額」(つまり物損の請求額/(物損の請求額及び人損の請求額の合計額))だけが保険金支払義務の対象となるということで,弁護士費用全体の約2.43%の支払を保険会社に命じただけです。

3(1) 被保険者が免許取消中に運転をしたり,免許停止期間中に運転をしたり,酒気帯び運転をしたりしている時に交通事故が発生した場合,弁護士費用特約を使用することはできません。
(2) 例えば,東京海上日動火災保険株式会社の弁護士費用特約の場合,「被保険者が,酒気を帯びて自動車または原動機付自転車を運転している場合に生じた対象事故」については,弁護士費用特約が使えません。
   そして,約款の注釈によれば,「酒気を帯びて」とは,道路交通法第65条第1項違反またはこれに相当する状態をいうとされていますから,呼気1リットル当たりのアルコール量が0.15mg以下である場合であっても,弁護士費用特約が使えないこととなります。
(3) 治療のために採血した血液を病院が警察に任意提出した結果,飲酒運転が発覚して捜査が実施されたとしても,違法な捜査であるとはいえません(大阪高裁平成15年9月12日判決参照)。

4 少しでも弁護士費用特約が適用される可能性がある場合,損害保険代理店(例えば,自動車販売店)に問い合わせた方がいいです。

5 共済相談所HP「共済相談所のご案内」に載ってある共済相談所活動報告(平成29年度)6頁に「自動車共済に弁護士費用補償特約を付帯している。現在の契約で同特約を使うと、次回更新する契約に付帯できなくなると聞いた。そのような規定はどこにあるのか教えてほしい。」という相談が載っています。
   そのため,共済事業の場合,弁護士費用補償特約の利用を嫌がることがあるのかも知れません。

第3 自分で選んだ弁護士の弁護士費用でも支払ってもらえること等

1(1) 交通事故の被害者は,自分が被保険者となっている保険会社に対して弁護士の紹介を依頼することができます。
   しかし,自分で直接,気に入った弁護士に依頼した上で,その弁護士に支払う弁護士費用を保険会社に負担してもらうこともできます。
(2) 日弁連のLAC制度(日弁連HPの「権利保護保険(日弁連リーガル・アクセス・センター)」参照」)に基づき,保険会社が紹介した弁護士であっても,日常的に交通事故案件を取り扱っているとは限りません。
   例えば,大阪弁護士会所属の弁護士であれば,弁護士会が指定している研修を受けていれば,交通事故に関する実務経験がない場合であっても,
日弁連のLAC制度に基づき,交通事故事件の紹介を受けることができます。
  
2 弁護士費用特約を利用できる場合,保険会社が直接,自分が依頼した弁護士に対して弁護士費用を支払いますから,自分で立て替える必要はありません。 
 
3 弁護士費用特約を利用して弁護士に依頼した場合であっても,一定の金額の範囲内であれば,依頼する弁護士を途中で変更することはできます。 
   ただし,次の弁護士について着手金が再び発生する結果,弁護士費用の総額が増えてしまいますから,弁護士を変更する前に自分が被保険者となっている保険会社に確認した方がいいです。

4 弁護士費用特約に基づき,弁護士費用保険金の支払を受けた場合であっても,弁護士費用保険金は保険契約者が払い込んだ保険料の対価であり,保険金支払義務と損害賠償義務とはその発生原因ないし根拠において無関係でありますから,保険契約者には,弁護士費用相当額の損害が発生すると解されています(大阪地裁平成21年3月24日判決,東京地裁平成21年4月24日判決参照)。
   つまり,弁護士費用特約を利用した場合であっても,相手方に対して弁護士費用相当額を損害金として請求できるということです。

第4 日弁連LACが関与した委任契約書を作成する場合があること

1(1)  あいおいニッセイ同和損害保険株式会社,損害保険ジャパン日本興亜株式会社,三井住友海上火災保険株式会社等の損害保険会社は,日本弁護士連合会リーガル・アクセス・センター(=日弁連LAC)と弁護士費用保険に関する協定を結んでいます。
   そのため,これらの損害保険会社の弁護士費用特約を利用する場合,日弁連LACが関与した委任契約書を作成することとなります。
(2) 日弁連LACが関与する場合,LAC基準に基づいて弁護士費用が計算されることとなりますところ,その中身は大体,旧日弁連報酬等基準規程と同じです。

2 大阪弁護士会所属の弁護士は,日弁連が関与した委任契約書を作成する場合,弁護士費用の7%を,負担金会費として大阪弁護士会に対して支払う必要があります。

3(1) 東京海上日動火災保険株式会社は,弁護士費用特約に基づく保険金の金払いがいいですから,弁護士費用特約を利用する弁護士にとっては大変ありがたい損害保険会社です。
(2)   平成27年10月1日以降の自動車保険約款が適用される場合(平成27年10月1日以降に自動車保険を更新した場合を含む。),日弁連LACと異なり,自賠責保険に対する被害者請求だけを依頼することについて弁護士費用特約を使用することはできなくなりました。
   また,着手金及び成功報酬金のそれぞれについて,経済的利益を基準とした明確な上限が設定されるようになりましたから,例えば,完全成功報酬制を採用した場合であっても,回収した金額の16%(300万円以下の部分)又は10%(300万円を超え3000万円以下の部分)(税抜き)が成功報酬金の上限となります。 

第5 弁護士費用特約を利用できない手続

1 人身傷害補償保険に請求するための弁護士費用は支払ってもらえないこと
(1) 自分が被保険者となっている人身傷害補償保険に請求する場合,加害者に対する損害賠償請求に該当しないために弁護士費用保険を使えませんから,請求手続を弁護士に依頼する場合,そのための手数料を自己負担する必要があります。
(2)   人身傷害補償保険を利用した場合,加害者に対する損害賠償金が減少する結果,その分,成功報酬金が減少しますから,加害者に対する損害賠償請求が終わった後に,自分の過失部分についてだけ人身傷害補償保険を利用してもらえる方がありがたいです。
   また,人身傷害補償保険を先に利用した場合,訴訟をして判決をもらったとしてもその分の遅延損害金(年5%)及び弁護士費用(損害額の10%)を回収できなくなりますから,最終的な回収額は少なくなることが多いです。
 
2 相手方及び労働基準監督署からの請求に対応するための弁護士費用は支払ってもらえないこと
(1) 交通事故について依頼者に少しでも過失がある場合,相手方からも損害賠償請求をされる可能性がありますし,相手方について労災保険の適用がある場合,労働基準監督署からも立替金の支払を求められる可能性があります(「第三者行為災害としての交通事故」参照)。
   この場合,対物賠償責任保険又は対人賠償責任保険を使用しない限り,弁護士費用が保険で支払われることはありません。
(2) 相手方からの請求が物損に限られる場合において対物賠償責任保険を使用しない,又は使用できない場合,原則として弁護士費用は請求しません。
   ただし,当然ですが,損害賠償債務は依頼者の自己負担です。
(3)ア 相手方からの請求に人損が含まれる場合において対人賠償責任保険を使用しない,又は使用したくない場合,弁護士費用については,相手方に対する請求分とは別の見積もりとなります。
   この場合,原則として10万8000円の着手金と,相手方の請求額からの減額分の10.8%の弁護士費用をいただきます。
   また,労働基準監督署からの立替金の請求もある場合,第三者行為災害報告書を提出する時点で5万4000円の着手金をいただきますし,労働基準監督署の具体的な請求額からの減額分の10.8%の弁護士費用を頂きます。
イ 相手方に対する請求分が大きい場合,適宜,弁護士費用は減額します。

3 労災保険給付を請求するための弁護士費用は支払ってもらえないこと
   労働基準監督署に対して療養補償給付,休業補償給付,障害補償給付等の労災保険給付を請求することは,加害者に対する損害賠償請求に該当しないために弁護士費用保険を使えませんから,請求手続を弁護士に依頼する場合,そのための手数料を自己負担する必要があります。

第6 訴訟上の和解の方が判決よりも望ましい場合が多くなること

   損害賠償請求訴訟を提起して判決をもらった場合,既払金控除後の損害額の約10%の金額が弁護士費用として認めてもらえます(最高裁昭和44年2月27日判決参照)。
   しかし,判決で弁護士費用を認めてもらった場合,弁護士費用特約から支払われる保険金がその分減少します(東京高裁平成25年12月25日判決参照)から,依頼者の手取額が増えるわけではありません。
   つまり,弁護士費用特約を利用している場合,弁護士費用を認めてもらうために判決を取得する実益がありませんから,紛争を早期かつ終局的に解決できるものの,弁護士費用までは認めてくれない訴訟上の和解の方が判決よりも望ましい場合が多くなります。

第7 交通事故以外に適用される弁護士費用保険

1 交通事故以外に適用される弁護士費用保険として,プリベント少額短期保険株式会社の「Mikata」,及び損害保険ジャパン日本興亜株式会社の「弁護のちから」があります(二弁フロンティア2017年6月号「権利保護保険(弁護士保険)の新たな展開」参照)。

2 Mikataの場合,弁護士直通ダイヤル,弁護士紹介サービス及びなんでも悩みごと相談ダイヤルがあります(プリベント少額短期保険株式会社HPの「付帯サービス」参照)。

第8 保険金を支払わない場合における保険会社の説明等

一般社団法人日本損害保険協会の「損害保険の保険金支払に関するガイドライン」(平成24年4月作成)末尾11頁及び12頁には,「7.お支払いできない場合等の留意事項」というタイトルで以下の記載があります。
 
(1)保険金を支払わない事由に該当するか否かの判断
   会員会社は、保険約款に規定する保険事故、または法令や保険約款に定める保険金を支払わない事由(免責、解除等)に該当するか否かを、調査の結果確認できた事実等に基づいて判断を行う。
   特に慎重な判断を要する事案については、保険金支払担当部門の判断に加え、弁護士・医師・鑑定人等の専門家の見解を確認する等、公平・公正な対応を行う。
   契約締結時に故意または重大な過失により、危険に関する重要な事項のうち、保険会社が告知を求めたもの(告知事項)について知っている事実を記載(または告知)しなかった場合に該当するか否かは、別紙1(告知義務と支払責任)記載の内容に基づき判断を行う。
   事実関係等に不詳・不明な点がある場合は、事実関係等の確認を行い、問題点を明確にしたうえで判断を行う。

(2)保険金をお支払いできない理由の説明
   保険金支払に関する損害調査や事実確認等の結果、会員会社において、保険金の支払ができないと判断される場合は、契約者等および被害者に対してその旨を通知するとともに、根拠となる具体的な保険約款の条項や損害調査結果等を丁寧に説明し、契約者等および被害者のご理解が得られるよう努める。
   なお、保険金をお支払いできない旨の通知に時間を要する場合は、その理由等についてわかりやすく説明する。
   説明にあたっては、その根拠となる保険約款の条項と調査の結果確認できた事実等を丁寧かつわかりやすく説明する。また、再調査が必要な事案については、速やかに再調査を行い、その結果を契約者等および被害者に説明する。

(3)各種相談機関の案内
   契約者等または被害者から、保険金をお支払いできないことについてご了解いただけない場合、会員会社はお申し出の内容に基づき、日本損害保険協会そんぽADRセンター、交通事故紛争処理センター、日弁連交通事故相談センター等の各種相談機関を案内するなど、契約者等および被害者保護に欠けることのないように、適切な対応を行う。

(4)重大事由による解除を行う場合の通知
   保険金支払に関する損害調査や事実確認等の結果、会員会社において、重大事由による解除を行う場合には、その重大事由を知り、または知り得るに至った後、合理的な期間内に契約者に通知する

第9 弁護士費用特約の保険金支払における源泉徴収

1 諸経費(立替金)の名目で請求書に記載されている切手代,交通費等の金額は,国又は地方公共団体に対する支払いなど一部の例外を除き,すべてが弁護士報酬に該当することを前提に,弁護士費用特約の保険金支払における源泉徴収がなされることがあります。

2 所得税法及び所得税基本通達の定めは以下のとおりです。
(1) 所得税法204条
1 居住者に対し国内において次に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金の支払をする者は、その支払の際、その報酬若しくは料金、契約金又は賞金について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。
(中略)
二 弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、測量士、建築士、不動産鑑定士、技術士その他これらに類する者で政令で定めるものの業務に関する報酬又は料金
(中略)
2 前項の規定は、次に掲げるものについては、適用しない。
一 前項に規定する報酬若しくは料金、契約金又は賞金のうち、第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等(次号において「給与等」という。)又は第三十条第一項(退職所得)に規定する退職手当等に該当するもの
二 前項第一号から第五号まで並びに第七号及び第八号に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金のうち、第百八十三条第一項(給与所得に係る源泉徴収義務)の規定により給与等につき所得税を徴収して納付すべき個人以外の個人から支払われるもの
三 前項第六号に掲げる報酬又は料金のうち、同号に規定する施設の経営者(以下この条において「バー等の経営者」という。)以外の者から支払われるもの(バー等の経営者を通じて支払われるものを除く。)
(3項は省略)
(2) 所得税基本通達204-1~204-5,及び204-11~204-18
204-2(報酬、料金等の性質を有するもの)

   法第204条第1項第1号、第2号及び第4号から第7号までに掲げる報酬、料金又は契約金の性質を有するものについては、たとえ謝礼、賞金、研究費、取材費、材料費、車賃、記念品代、酒こう料等の名義で支払うものであっても、同項の規定が適用されることに留意する。
204-3(報酬、料金等の性質を有する経済的利益)
   法第204条第1項第1号、第2号及び第4号から第7号までに掲げる報酬、料金又は契約金の性質を有する経済的利益(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をいう。以下この項において同じ。)については、次によるものとする。
(1) 職業野球の選手、外交員、集金人、ホステス等のように一定の者に専属して役務を提供する者がその役務の提供先から受ける経済的利益については、給与等とされる経済的利益の取扱いに準ずる。
(2) (1)以外の経済的利益については、令第321条《金銭以外のもので支払われる賞金の価額》の規定に準じて評価し、その評価した金額が少額なものについては、源泉徴収をしなくて差し支えない。
204-4(報酬又は料金の支払者が負担する旅費)
法第204条第1項第1号、第2号、第4号及び第5号に掲げる報酬又は料金の支払をする者が、これらの号に掲げる報酬又は料金の支払の基因となる役務を提供する者の当該役務を提供するために行う旅行、宿泊等の費用も負担する場合において、その費用として支出する金銭等が、当該役務を提供する者(同項第5号に規定する事業を営む個人を含む。)に対して交付されるものでなく、当該報酬又は料金の支払をする者から交通機関、ホテル、旅館等に直接支払われ、かつ、その金額がその費用として通常必要であると認められる範囲内のものであるときは、当該金銭等については、204-2及び204-3にかかわらず、源泉徴収をしなくて差し支えない。
204-11(登録免許税に充てるため支払われた金銭等)
   法第204条第1項第2号に掲げる報酬又は料金の支払者が、同号に規定する者に対し委嘱事項に関連して支払う金銭等であっても、当該支払者が国又は地方公共団体に対し登記、申請等をするため本来納付すべきものとされている登録免許税、手数料等に充てるものとして支払われたことが明らかなものについては、同項の規定は適用しない。
1(1) 被害者側の交通事故(検察審査会を含む。)の初回の面談相談は無料であり,債務整理,相続,情報公開請求その他の面談相談は30分3000円(税込み)ですし,交通事故については,無料の電話相談もやっています(事件受任の可能性があるものに限ります。)
(2) 相談予約の電話番号は「お問い合わせ」に載せています。

2 予約がある場合の相談時間は平日の午後2時から午後8時までですが,事務局の残業にならないようにするために問い合わせの電話は午後7時30分までにしてほしいですし,私が自分で電話に出るのは午後6時頃までです。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)については,略歴及び取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図を参照してください。