仮釈放,保護観察及び更生緊急保護

第0 目次

第1 仮釈放
第2 保護観察
第3 更生緊急保護

* 以下の法令に基づいています。
① 更生保護法(平成19年6月15日法律第88号)
② 犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則(平成20年4月23日法務省令第28号)
→ 略称は「社会内処遇規則」です。

第1 仮釈放

1 総論
(1) 仮釈放等とは,地方更生保護委員会の決定(更生保護法16条)によって,収容期間が満了する前に被収容者を一定の条件を付して仮に釈放することをいい,以下の4種類があります(社会内処遇規則9条参照)。
① 懲役又は禁錮に受刑者に対する仮釈放(刑法28条)
→ かつては「仮出獄」といわれていました。
② 拘留受刑者又は労役場留置者に対する仮出場(刑法30条)
③ 少年院収容者の仮退院(少年院法12条2項)
④ 婦人補導院収容者の仮退院(売春防止法25条1項)
(2) ①刑の時効期間の満了,及び②仮釈放の残刑期間の満了は,どちらも刑罰執行権を消滅させる点で共通しています。
(3) 仮釈放は懲役受刑者及び禁錮受刑者が対象であるのに対し,仮出場は拘留受刑者及び労役場留置者が対象です。
(4) 仮釈放を許された者は,仮釈放の期間中,保護観察に付されます(更生保護法40条)。

2 仮釈放の手続
(1) 仮釈放の手続は以下のとおりであり,詳細については,平成20年6月1日施行の,犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則(平成20年4月23日法務省令第28号)(=社会内処遇規則)で定められています。
① 法定期間経過の通告
   刑事施設の長又は少年院の長は,懲役又は禁錮の刑の執行のため収容している者について,(a)刑法28条所定の期間(有期の懲役刑又は禁固刑の場合は刑期の3分の1であり,無期刑の場合は10年),又は(b)少年法58条1項所定の期間(無期刑の場合は7年であり,有期刑の場合は3年であり,不定期刑の場合は刑の短期の3分の1)が経過したときは,その旨を地方更生保護委員会に通告しなければなりません(更生保護法33条)。
② 審理の開始
   地方更生保護委員会は,(a)刑事施設の長若しくは少年院の長からの申出又は(b)自らの判断に基づいて審理を開始します(更生保護法34条,35条)。
③ 仮釈放の審理
   地方更生保護委員会の委員が直接,受刑者である審理対象者と面接するほか(更生保護法37条1項),必要に応じて被害者やその遺族,検察官等にも意見を聞くなどします(更生保護法37条及び38条)。
④ 仮釈放の決定
   地方更生保護委員会は,3人の委員をもって構成する合議体の決定(構成保護法23条1項1号)をもって,仮釈放を許す処分をします(更生保護法39条)。
(2) 仮釈放を許す処分は,懲役又は禁錮の刑の執行のため刑事施設又は少年院に収容されている者について,①悔悟の情及び改善更生の意欲があり,②再び犯罪をするおそれがなく,かつ,③保護観察に付することが改善更生のために相当であると認められるほか,④社会の感情がこれを是認すると認められるときになされます(社会内処遇規則28条)。
   「悔悟の情」,「改善更生の意欲」,「再び犯罪をするおそれ」,「保護観察に付することが改善更生のために相当」及び「社会の感情」については,それぞれ,次のような事項を考慮して判断すべき旨が通達により定められています。
   例えば,「悔悟の情」については,受刑者自身の発言や文章のみで判断しないこととされており,「改善更生の意欲」については,被害者等に対する慰謝の措置の有無やその内容,その措置の計画や準備の有無,刑事施設における処遇への取組の状況,反則行為等の有無や内容,その他の刑事施設での生活態度,釈放後の生活の計画の有無や内容などから判断することとされています。
   また,「再び犯罪をするおそれ」は,性格や年齢,犯罪の罪質や動機,態様,社会に与えた影響,釈放後の生活環境などから判断することとされ,「保護観察に付することが改善更生のために相当」については,悔悟の情及び改善更生の意欲があり,再び犯罪をするおそれがないと認められる者について,総合的かつ最終的に相当であるかどうかを判断することとされています。
   そして,「社会の感情」については,被害者等の感情,収容期間,検察官等から表明されている意見などから,判断することとされています。
(3) 地方更生保護委員会は,仮釈放を許すか否かに関する審理を行うに当たり,被害者等から,審理対象者の仮釈放に関する意見及び被害に関する心情(=意見等)を述べたい旨の申出があったときは,当該意見等を聴取するものとされています(=意見等聴取制度。更生保護法38条)。

3 無期刑の仮釈放

(1) 無期刑とは,刑期が終身にわたるもの,すなわち,受刑者が死亡するまでその刑を科するというものです。
   つまり,仮釈放が許されなければ,死亡するまで刑務所等の刑事施設で刑の執行を受けるものであり,仮釈放が許されたとしても,一生保護観察に付されるものです。
   そのため,結局,無期刑を言い渡された者については,恩赦がなされない限り,生涯にわたり国の監督下に置かれることになります。
(2) 法務省保護局HPの「無期刑受刑者の仮釈放の運用状況等について」に,平成18年以降の,無期刑の執行や無期刑受刑者に係る仮釈放審理の状況が書いてあります。
(3) 平成12年10月3日付の「衆議院議員保坂展人君提出死刑と無期懲役の格差に関する質問に対する答弁書」には以下の記述があります。
   戦後、無期懲役が確定した後、個別恩赦により減刑された者(仮出獄中の者を除く。)は八十六人である。なお、無期懲役が確定した後、昭和三十五年以降に個別恩赦により減刑された者はいない。
   また、戦後、無期懲役が確定した後、政令恩赦により減刑された者については、十分な資料がないため、総数は不明である。なお、最後に政令恩赦により減刑が行われたのは、昭和二十七年四月の日本国との平和条約(昭和二十七年条約第五号)の発効に際してである。

第2 保護観察

1 総論
(1) 平成20年6月1日施行の更生保護法(平成19年6月15日法律第88号)は,①昭和24年7月1日施行の犯罪者予防更生法(昭和24年5月31日法律第142号)及び②昭和29年7月1日施行の執行猶予者保護観察法(昭和29年4月1日法律第58号)を整理・統合して新たな法律としたものです。
   その上で,①保護観察における遵守事項を整理して充実させるとともに,②保護観察の実施状況に応じて特別遵守事項の変更ができることとするほか,③受刑者等の社会復帰のための環境調整の措置を一層充実させ,あわせて④仮釈放の審理において犯罪被害者等の意見を聴取する制度等を整備するものです。
(2) 更生保護制度は,犯罪をした者及び非行のある少年がこれを繰り返さないように,社会内において必要な監督や支援等を行い,改善更生させようとするものであり,「社会内処遇」ともいわれます。
(3) 保護観察は,保護観察対象者の居住地(住居がないか,又は明らかでないときは,現在地又は明らかである最後の居住地若しくは所在地)を管轄する保護観察所がつかさどります(更生保護法60条)。

2 法務省保護局等
(1) 法務省保護局では,①矯正施設に収容されている人の仮釈放等に関する事務,及び②仮釈放になった人,保護観察付き執行猶予になった人,保護観察に付された少年等の保護観察に関する事務を行うほか,③恩赦,④犯罪予防活動,⑤犯罪被害者等施策に関する事務等を行っています。
   このような仕事を「更生保護」と呼んでおり,直接的な仕事は,①高等裁判所の管轄区域ごとに全国8か所に設置されている「地方更生保護委員会」,及び②地方裁判所の管轄区域ごとに全国50か所に設置されている「保護観察所」で行っています。
また,これらの仕事と併せ,心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った精神障害者の社会復帰の促進を目的とする「医療観察制度」に基づく地域社会における処遇等に関する事務を行っています。
(2) 近畿地方には,近畿地方更生保護委員会(〒540-0008 大阪市中央区大手前4丁目1番76号 大阪合同庁舎第4号館(6階))及び2府4県で6カ所の保護観察所があります。
(3) 大阪保護観察所は,大阪合同庁舎第4号館(5階)にあります。

3 保護観察官,保護司及び社会復帰調整官
(1) 地方更生保護委員会の事務局及び保護観察所には,保護観察官が置かれています。
   保護観察官は,医学,心理学,教育学,社会学その他の更生保護に関する専門的知識に基づき,保護観察,調査,生活環境の調整その他犯罪をした者及び非行のある少年の更生保護並びに犯罪の予防に関する事務に従事しています(更生保護法31条)。
(2) 保護司は,保護観察官で十分でないところを補い,地方更生保護委員会又は保護観察所の長の指揮監督を受けて,保護司法(昭和25年5月25日法律第204号。同日施行)の定めるところに従い,それぞれ地方更生保護委員会又は保護観察所の所掌事務に従事しています。
(3) 現実の更生保護は,常勤の国家公務員である保護観察官(約1100名)及び民間篤志家である保護司(約5万人)を中心に,更生保護施設といった関係機関の協力(更生保護法61条2項参照)の下に,官民協働体制で実施されています。
(4) 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(平成15年7月16日法律第110号。平成17年7月15日施行)(=医療観察法)20条に基づき,保護観察所には,精神保健福祉士の有資格者など同法の対象となる人の社会復帰を促進するために必要な知識及び経験を有する「社会復帰調整官」が置かれています。

4 保護観察対象者
(1) 保護観察は,犯罪をした人又は非行のある少年が,実社会の中でその健全な一員として更生するように,国の責任において指導監督及び補導援護を行うもので,以下の人が保護観察対象者となります(①ないし④につき更生保護法48条,⑤につき売春防止法26条1項)。
① 保護観察処分少年
→ 家庭裁判所で保護観察に付された少年です。
② 少年院仮退院者
→ 少年院からの仮退院を許された少年です。
③ 仮釈放者
→ 刑事施設からの仮釈放を許された人です。
④ 保護観察付執行猶予者
→ 裁判所で刑の執行を猶予され,保護観察に付された人です。
⑤ 婦人補導院仮退院者
→ 婦人補導院からの仮退院を許された人です。
(2) 初の執行猶予者に対する保護観察は任意的である(刑法25条の2第1項前段)のに対し,再度の執行猶予者に対する保護観察は必要的です(刑法25条の2第1項後段)。

5 保護観察の内容
(1) 保護観察は,保護観察対象者の改善更生を図ることを目的として,①指導監督及び②補導援護を行うことにより実施されます(更生保護法49条1項)。
(2) 保護観察における指導監督は,以下に掲げる方法により行われます(更生保護法57条)。
① 面接その他の適当な方法により保護観察対象者と接触を保ち、その行状を把握すること。
② 保護観察対象者が一般遵守事項(更生保護法50条)及び特別遵守事項(更生保護法51条)を遵守し,並びに生活行動指針(更生保護法56条)に即して生活し,及び行動するよう,必要な指示その他の措置をとること。
③ 特定の犯罪的傾向を改善するための専門的処遇を実施すること。
(3) 保護観察における補導援護は,保護観察対象者が自立した生活を営むことができるようにするため,その自助の責任を踏まえつつ,以下に掲げる方法によって行われます(更生保護法58条)。
① 適切な住居その他の宿泊場所を得ること及び当該宿泊場所に帰住することを助けること。
② 医療及び療養を受けることを助けること。
③ 職業を補導し、及び就職を助けること。
④ 教養訓練の手段を得ることを助けること。
⑤ 生活環境を改善し,及び調整すること。
⑥ 社会生活に適応させるために必要な生活指導を行うこと。
⑦ 前各号に掲げるもののほか,保護観察対象者が健全な社会生活を営むために必要な助言その他の措置をとること。
(4) 保護観察における指導監督及び補導援護は,保護観察対象者の特性,とるべき措置の内容その他の事情を勘案し,保護観察官及び保護司が実施しています(更生保護法61条1項)。
(5) 保護観察所の長は,保護観察付執行猶予の判決を受け,その裁判が確定するまでの者について,保護観察を円滑に開始するため必要があると認めるときは,その者の同意を得て,その者の家族その他の関係人を訪問して協力を求めることその他の方法により,その者の住居、就業先その他の生活環境の調整を行うことができます(更生保護法83条)。

6 被害者等の心情等の聴取及び伝達(=心情等伝達制度)
(1) 保護観察所の長は,保護観察対象者について,被害者等から,被害に関する心情,被害者等の置かれている状況又は保護観察対象者の生活若しくは行動に関する意見(=心情等)の伝達の申出があったときは,当該心情等を聴取し,当該保護観察対象者に伝達するものとされています(更生保護法65条1項本文)。
保護観察所の長は,被害者等の居住地を管轄する他の保護観察所の長に対し,申出の受理及び心情等の聴取に関する事務を嘱託することができます(更生保護法65条2項)。
(2) 以下のような場合,被害者等の心情等の聴取及び伝達を要しないこととされています(更生保護法65条1項ただし書参照)。
① 保護観察対象者が心情不安定な状態にあり,被害者等の心情等を伝達すると更に混乱させるおそれがある場合
② 暴力団同士の抗争事件のように被害者とされている者が実質的には被害者といえない場合

第3 更生緊急保護

1 「更生緊急保護」とは,以下に掲げる者が,刑事上の手続又は保護処分による身体の拘束を解かれた後,親族からの援助を受けることができず,若しくは公共の衛生福祉に関する機関その他の機関から医療,宿泊,職業その他の保護を受けることができない場合又はこれらの援助若しくは保護のみによっては改善更生することができないと認められる場合に,緊急に,その者に対し,金品を給与し,又は貸与し,宿泊場所を供与し,宿泊場所への帰住,医療,療養,就職又は教養訓練を助け,職業を補導し,社会生活に適応させるために必要な生活指導を行い,生活環境の改善又は調整を図ること等により,その者が進んで法律を守る善良な社会の一員となることを援護し,その速やかな改善更生を保護することをいいます(更生保護法85条1項)。
① 懲役,禁錮又は拘留の刑の執行を終わった者
② 懲役,禁錮又は拘留の刑の執行の免除を得た者
③ 懲役又は禁錮の刑の執行猶予の言渡しを受け,その裁判が確定するまでの者
④ 前号に掲げる者のほか,懲役又は禁錮の刑の執行猶予の言渡しを受け,保護観察に付されなかった者
⑤ 訴追を必要としないため公訴を提起しない処分を受けた者
⑥ 罰金又は科料の言渡しを受けた者 
⑦ 労役場から出場し、又は仮出場を許された者
⑧ 少年院から退院し,又は仮退院を許された者(保護観察に付されている者を除く。)

2 更生緊急保護は,保護観察所の長が,自ら行い,又は更生保護事業法の規定により更生保護事業を営む者その他の適当な者に委託して行うものとされています(更生保護法85条3項)。

3 更生緊急保護は,原則として,その対象となる者が刑事上の手続又は保護処分による身体の拘束を解かれた後6月を超えない範囲内において,その意思に反しない場合に限り,行うものとされています(更生保護法85条4項)。

4 更生緊急保護は,本人からの申出があった場合において,保護観察所の長がその必要があると認めたときに限り,行うものとされています(更生保護法86条1項)。

5 保護観察所の長は,更生緊急保護を行う必要があるか否かを判断するに当たっては,その申出をした者の刑事上の手続に関与した検察官又はその者が収容されていた刑事施設の長若しくは少年院の長の意見を聴かなければなりません(更生保護法86条3項)。
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3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)については,略歴及び取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図を参照してください。