休職期間中の社会保険及び税金

第0 目次

第1 休職期間中の社会保険料及び税金の負担
第2 休職期間中の社会保険からの給付等
第3 休職期間満了後の取扱い
第4 社会保険への加入手続をしてもらっていなかった場合の対応方法

*1 「症状固定後の医療費の助成制度」及び「症状固定後の社会保険及び失業保険」も参照してください。
*2 日本年金機構の国民年金及び厚生年金保険に関する業務処理マニュアルが行政文書情報販売店HPの「社会保険各マニュアル」で販売されています。

第1 休職期間中の社会保険料及び税金の負担

1 交通事故によるケガが原因で休職している場合,社会保険料及び税金の負担は以下のとおりとなります。
① 厚生年金保険料
   無給の休職期間中でも休職前と同じ額を負担する必要があります。
② 健康保険料
   無給の休職期間中でも休職前と同じ額を負担する必要があります。
③ 介護保険料(40歳以上の人が徴収されます。)
   無給の休職期間中でも休職前と同じ額を負担する必要があります。
④ 雇用保険料
   かかりません。
⑤ 労災保険料
   そもそも会社が全額負担するものですから,かかりません。
⑥ 所得税
   所得がない限りかかりません。
⑦ 住民税
   前年の所得を基準として課税されるものですから,交通事故にあった年に一定以上の所得がある場合,翌年も課税されます。

2 休職期間中,「ノーワーク・ノーペイ」の原則に基づき,会社からの給料の支払がなくなることが普通です。
   その結果,厚生年金保険料,健康保険料及び介護保険料を給料から天引きすることができなくなりますから,その支払方法について会社と相談する必要があるのであって,会社が何もいってこないからといって,これらの保険料の支払義務が消滅しているわけではありません。

3 翌年5月までの支払額が決まっている住民税については,①引き続き特別徴収を継続して会社からの立替払いを続けてもらい,休職期間満了時又は退職時に清算するか,又は②普通徴収に切り替えて自分で役所に支払うかを選択することになります。

4(1) 雇用保険料は,会社からの賃金の支払がない限り支払う必要がないものですから,雇用保険料を請求されていないことが,雇用保険被保険者資格の喪失(=失業)を意味するわけではありません。
(2)   解雇等により失業した場合,失業保険の受給に必要となる雇用保険被保険者離職票を会社から交付してもらえます(「症状固定後の社会保険及び失業保険」参照)。

第2 休職期間中の社会保険からの給付等

1 休職期間中の社会保険からの給付
(1) 業務中又は通勤中の交通事故によるケガが原因で働けない期間については,労災保険から休業補償給付(給料の60%)及び休業特別支給金(給料の20%)が支給されますし,休業特別支給金については,任意保険からの休業損害と重複して支給してもらえます。
   それ以外の交通事故によるケガが原因で働けない期間については,健康保険(国民健康保険は除く。)から最大で1年6月間,傷病手当金(給料の66.7%)が支給されますものの,任意保険からの休業損害と重複して支給してもらうことはできません。
(2) 被害者に100%の過失がある交通事故であっても,社会保険からの給付が減額されることはありません。
   また,休業補償給付及び傷病手当金は,被害者の休業損害のみに充当され,被害者の過失が大きい場合であっても,慰謝料等の別の費目の損害額に充当されることはありません(休業補償給付につき最高裁平成22年10月15日判決参照)。
(3) 労災保険の特別加入者についても,休業特別支給金(給付基礎日額の20%相当額)等が支給されます(神奈川労働局HPの「Ⅵ 保険給付・特別支給金の種類について」参照)。
(4) 休業補償給付等の請求手続については,厚生労働省HPの「休業(補償)給付 傷病(補償)年金の請求手続」が参考になります。
(5) 厚生労働省労働基準局が平成25年10月に作成した,労災保険給付事務取扱手引1/3労災保険給付事務取扱手引2/3及び労災保険給付事務取扱手引3/3を掲載しています。
(6) 1年6月を経過しても交通事故によるケガが治っておらず,任意保険からの休業損害を打ち切られていた場合において,一定程度以上の障害状態となっているのであれば,障害厚生年金を支給してもらえます。
 
2 社会保険からの給付の消滅時効
(1)   休業補償給付及びこれに連動している休業特別支給金の消滅時効は,労働不能のため賃金を受けない日ごとにその翌日から2年です(労災保険法42条前段)し,最寄りの労基署に申請しない限りもらえませんから,忘れずに申請する必要があります。
(2)   健康保険の傷病手当金の消滅時効は,労働不能であった日ごとにその翌日から2年です(健康保険法193条1項)し,全国健康保険協会(協会けんぽ)の最寄りの都道府県支部に申請しない限りもらえませんから,忘れずに申請する必要があります。

第3 休職期間満了後の取扱い

1 就業規則所定の休職期間満了までに復職できる程度に交通事故によるケガが回復しない場合,休職期間満了をもって自然退職となることが多いです。
   ただし,休職前と同じ業務ができないというだけの理由で会社が社員の復職を拒否することはできません(最高裁平成10年4月9日判決参照)。

2   交通事故が業務災害に該当する場合,原則として就労不能状態が継続している期間及びその後の30日間,解雇されることはありません(労働基準法19条1項本文)。
   ただし,療養開始後3年を経過してもケガが治らない場合,会社が平均賃金の1200日分の打切補償(労働基準法81条)を支払うことを条件に,解雇されることがあります(労働基準法19条1項ただし書,最高裁平成27年6月8日判決)。

第4 社会保険への加入手続をしてもらっていなかった場合の対応方法

1 会社員としての勤務実態があるにもかかわらず,社会保険への加入手続をしてもらっていなかった場合,以下の手続をとることができます。
① 労災保険への加入手続をしてもらっていなかった場合
   業務災害又は通勤災害に該当するのであれば,労基署の職権による成立手続及び労災保険料の認定決定(労災保険法31条1項1号参照)を経ることで,労災保険を支給してもらえることがありますから,最寄りの労基署に相談してください(厚生労働省HPの「労働基準行政の相談窓口」参照)。
→ この場合,勤務先の会社は労災保険未手続事業主となりますから,労基署は,事業主である会社に対し,最大2年間遡った労働保険料及び追徴金を徴収し,かつ,労災保険給付に要した費用の40%(労災保険の成立手続を行うよう指導を受けた事実がない場合)又は100%(労災保険の成立手続を行うよう指導を受けていた場合)を徴収します(厚生労働省HPの「成立手続を怠っていた場合は」参照)。
   そのため,場合によっては,勤務先の会社が倒産する結果,会社の同僚に対して甚大な迷惑をかける可能性はあります。
②   健康保険への加入手続をしてもらっていなかった場合
   厚生労働大臣又は健康保険組合の職権による被保険者資格の確認(健康保険法39条,51条1項)を経て,健康保険の傷病手当金を支給してもらえることがあります(日本年金機構HPの「確認請求」参照)から,協会けんぽの都道府県支部に相談してください。
→ 確認請求に基づく調査は,請求書の受付日から原則として2年間を遡る範囲での調査となります。

2 建設業における労働保険,社会保険の加入義務等については,国交省HPの「建設業の社会保険未加入対策について」が分かりやすいです。

3 平成28年10月1日から,週30時間以上働く方に加え,従業員501人以上の会社で週20時間以上働く方などにも厚生年金保険・健康保険(社会保険)の加入対象が広がりました。
   また,平成29年4月1日から,従業員500人以下の会社で働く方も,労使で合意すれば社会保険に加入できるようになりました(厚労省HPの「平成28年10月から厚生年金保険・健康保険の加入対象が広がっています!(社会保険の適用拡大)」参照)。

4 具体的状況によっては,バイク便事業者と運送請負契約を締結しているバイクライダーは,労働基準法9条の労働者に該当する結果,労災保険への加入手続が認められることがあります(平成19年9月27日付の厚生労働省労働基準局長通知「バイシクルメッセンジャー及びバイクライダーの労働者性について」参照)。

5(1) 社会保険の適用対象となる,労働基準法9条の労働者の範囲につき,厚生労働省HPの昭和60年12月19日付の労働基準法研究会報告書(労働基準法の「労働者」の判断基準について)のほか,外部HPの「労働基準法における労働者とは?」が参考になります。
(2) 労働組合法3条の労働者の範囲につき,厚生労働省HPの「労働組合法上の労働者性の判断基準について」のほか,みずほ中央法律事務所HPの「労働者の定義|労働組合法|判断基準」が参考になります。

6 事業主から見た社会保険未加入リスクは以下のとおりです(外部HPの「社会保険未加入リスク」参照)。
① 過去2年間遡及して保険料を請求される場合があります。
② 保険料を遡及して請求された場合,過去の従業員負担分を従業員に負担してもらうのは現実的に無理です。
③ 良い人材を採用しにくくなります。
④ ハローワークへの求人を出せなくなります。
⑤ 過去に退職した従業員が年金を請求するときまでリスクは続いています。
1 相談予約の電話番号は06-6364-8525であり,交通事故及び債務整理の初回の面談相談は無料であり,相続情報公開請求等の面談相談は30分3000円(税込み)です。
   交通事故及び債務整理については,無料の電話相談もやっています。
  
2 執務時間は原則として平日の午前10時から午後7時30分までですが,事前のご予約があれば,午後8時30分まで夜間相談可能です。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)については,略歴及び取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図を参照してください。