上訴,判決確定後の手続,特殊な刑事手続及び裁判の執行

第1 上訴権者等

□ 検察官及び被告人は,第一審判決に対して上訴をすることができます(刑訴法351条1項)。
□ 検察官又は被告人以外の者で決定を受けたものは,抗告をすることができます(刑訴法352条)。
□ 被告人の法定代理人又は保佐人は,被告人のため上訴をすることができます(刑訴法353条)。
原審における代理人又は弁護人は,被告人のため上訴をすることができます(刑訴法355条)。
ただし,これらの者は,被告人の明示した意思に反して上訴をすることはできません(刑訴法356条)。
□ 上訴は,裁判の一部に対してこれをすることができます(刑訴法357条前段)。
「裁判の一部」とは,例えば,①併合罪の一部について有罪,他について無罪となったとき,あるいは,②一部について自由刑,他について罰金刑となった場合のように,主文が二つになったときのその主文のいずれかをいい,その主文の有罪あるいは自由刑となった部分だけについても上訴することができます。
なお,数罪であっても併合罪として一個の刑が言い渡された場合,上訴の関係では不可分となり,これを分離して上訴することができないのであって,一部の事実のみを不服として上訴しても,その効力は全体について生じます。
□ 刑事施設にいる被告人が上訴の提起期間内に上訴の申立書を刑事施設の長又はその代理者に差し出したときは,上訴の提起期間内に上訴をしたものとみなされます(刑訴法366条1項)。
また,被告人が自ら申立書を作ることができないときは,刑事施設の長又はその代理者は,これを代書し,又は所属の職員に代書させなければなりません(刑訴法366条2項)。

第2 私企業労働者の場合の不利益

□ 懲役又は禁錮に処せられた場合,執行猶予が付いた場合であっても,懲戒解雇又は諭旨解雇の対象となる可能性がある旨が就業規則で定められていることが多いです。

   少なくとも,出勤停止,減給等の懲戒処分の対象となるのが通常です。
□ 使用者が労働者を懲戒するには,あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要しますし,労働者に対する周知の手続がとられていない就業規則は法的規範としての性質を有しません(最高裁平成15年10月10日判決)。

   そして,就業規則等の周知方法は以下のとおりです(労働基準法106条1項,労働基準法施行規則52条の2)から,就業規則について以下のような周知方法がとられていない場合,懲戒処分の効力を争う余地はあります。
① 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し,又は備え付けること。
② 書面を労働者に交付すること。
③ 磁気テープ,磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し,かつ,各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。

第3 海外渡航に関する不利益

1 総論
□ パスポートには,公用旅券及び一般旅券があります(旅券法2条1号及び2号)。
□ 懲役又は禁錮に処せられた場合,執行猶予が付いた場合であっても,海外渡航との関係で以下の不利益があります。
① 外務大臣又は領事官が,一般旅券の発給又は渡航先の追加をしてくれない場合があります(旅券法13条1項3号)。
② 外務大臣又は領事官が,旅券の返納を命じてくる場合があり(旅券法19条1項2号・13条1項3号),返納命令に反して返納しない場合,旅券が失効することがあります(旅券法18条1項7号)。
→ 外国にいるときに旅券を返納した場合,外務大臣又は領事官は,帰国のための渡航書を発給してくれます(旅券法19条の3第1項3号)。
□ 一般旅券の作成は,都道府県知事が行うものとされており(旅券法21条の2,旅券法施行令4条1項1号),国内においては,都道府県知事が,一般旅券の発給の申請をした者の出頭を求めて当該申請者に交付します(旅券法8条1項本文)。
□ 日本国又は日本国以外の国の法令に違反して,1年以上の懲役若しくは禁錮又はこれらに相当する刑に処せられたことのある外国人は,日本国への上陸を拒否されます(出入国管理及び難民認定法(=入管法)5条1項4号本文)。

   ただし,再入国の許可(入管法26条1項)を受けて日本国に上陸する特別永住者の場合,旅券を所持している限り,1年以上の懲役若しくは禁錮又はこれらに相当する刑に処せられていたとしても,日本国への上陸を拒否されません(日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(=入管特例法7条・入管法26条1項))。

 

2 アメリカに入国する場合,常にビザが必要になること
□ アメリカの場合,罰金前科がある場合でもビザ免除プログラム(=VWP)の対象から外れるため,観光目的で90日以下の滞在をするために渡米する場合でも,非移民ビザを取得する必要があります。

   そして,アメリカの大使館及び総領事館で非移民ビザを取得する場合,判決書のコピー及び英訳文を提出する必要があり,国務省ではなく,国土安全保障省(=DHS。平成14年11月25日に設立。)での追加手続が必要となるため,審査に数週間を要します。
□ 電子渡航認証システム(=ESTA)は,アメリカの国土安全保障省により,平成21年1月12日から義務化されました。

   その結果,VWPの対象となる渡航者は,査証(=ビザ)(入管法6条1項参照)を取得せずにアメリカに観光目的等で入国する場合,アメリカ行きの航空機や船舶に搭乗する前にオンラインでの渡航認証を受ける必要が生じることとなりました。
    そして,罰金前科がある場合は通常,オンラインでの渡航認証を受けることができませんから,非移民ビザを取得しない限りアメリカに入国することができません。
□ ESTAの有効期限は原則として,2年間又は申請者のパスポートの有効期限のいずれか短い方です。
□ 平成22年9月8日より,VWPの対象となる渡航者は,アメリカの旅行促進法により定められた14ドルのESTA料金を支払う必要があります。
□ 在日米国大使館の以下のサイトによれば,領事なり移民審査官なりに書類や事実について虚偽の申告をした旅行者は,アメリカへの入国を永久に許可されないこととなります。
http://japanese.japan.usembassy.gov/j/visa/tvisaj-criminalfaq.html#8
□ 執行猶予期間が満了している場合,無犯罪証明書を発給してもらえますから,執行猶予期間が満了している前科を申告する必要はないかも知れませんが,自己責任での対応をお願いします。

 

3 犯罪経歴証明書
□ 前科がないことの説明資料として,在日米国大使館又は領事館から,犯罪経歴証明書(=無犯罪証明書)の提出を要求されることがあります
□ 犯罪経歴証明書は,住民登録をしている都道府県の警察本部鑑識課が発行手続をしています。
   法的には,外務省設置法4条及び国家行政組織法2条2項に基づく,外務省から警察庁に対する協力依頼に応じて行われるものです。
□ 犯罪経歴証明書の詳細は,以下のアドレスに載ってある犯罪経歴証明書発給要綱(平成21年7月1日警察庁刑事局長通達。平成21年10月1日施行)に書いてあります。
http://www.npa.go.jp/pdc/notification/keiji/kanshiki/kansiki20090701.pdf
□ 犯罪経歴証明書発給要綱によれば,以下の①ないし⑦のいずれかの場合に該当すれば,当該①ないし⑦に規定する犯罪については犯罪経歴を有しないものとみなしてもらえます。
① 刑の執行猶予の言渡しを取り消されることなく猶予の期間を経過しているとき。
② 禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を受け、罰金以上の刑に処せられられないで10年を経過しているとき。
③ 罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を受け、罰金以上の刑に処せられないで5年を経過しているとき。
④ 恩赦法の規定により大赦若しくは特赦を受け,は復権を得たとき。
⑤ 道路交通法125条1項に規定する反則行為に該当する行為を行った場合であって、同条第2項各号のいずれにも該当しないとき。
⑥ 少年法60条の規定により刑の言渡しを受けなかったものとみなされたとき。
⑦ 刑の言渡しを受けた後に当該刑が廃止されたとき。

第2 控訴

1 控訴の申立て
□ 控訴は,地方裁判所又は簡易裁判所がした第一審の判決に対してこれをすることができます(刑訴法372条)。
なお,刑事事件の控訴裁判所は常に高等裁判所となります(裁判所法16条1号)。
□ 控訴の提起期間は14日です(刑訴法373条)。
□ 控訴をするには,申立書を第一審裁判所に差し出さなければなりません(刑訴法374条)。
□ 平成20年6月18日法律第71号(平成20年12月15日施行)による少年法改正の結果,成人の刑事事件であっても,家庭裁判所が刑事事件を取り扱うことがなくなりました。
□ 控訴の申立てが明らかに控訴権の消滅後にされたものである場合を除き,第一審裁判所は,公判調書の記載の正確性についての異議申立期間の経過後,速やかに訴訟記録及び証拠物を控訴裁判所に送付しなければなりません(刑訴規則235条)。
2 控訴趣意書
□ 控訴申立人は,控訴裁判所が定める期間内に,控訴趣意書を控訴裁判所に差し出さなければなりません(刑訴法376条,刑訴規則236条)。
□ 控訴裁判所は,控訴趣意書を差し出すべき期間経過後に控訴趣意書を受け取った場合においても,その遅延がやむを得ない事情に基づくものと認めるときは,これを期間内に差し出されたものとして審判をすることができます(刑訴規則238条)。
□ 控訴趣意書には,控訴の理由を簡潔に明示しなければなりません(刑訴規則240条)。
□ 控訴裁判所は,控訴趣意書を受け取ったときは,速やかにその謄本を相手方に送達しなければなりません(刑訴規則242条)。
□ 控訴の相手方は,控訴趣意書の謄本の送達を受けた日から7日以内に答弁書を控訴裁判所に差し出すことができます(刑訴規則243条1項)。
なお,検察官が相手方であるときは,重要と認める控訴の理由について答弁書を差し出さなければなりません(刑訴規則243条2項)。
□ 控訴裁判所は,答弁書を受け取ったときは,速やかにその謄本を控訴申立人に送達しなければなりません(刑訴規則243条5項)。
□ 裁判長は,合議体の構成員に控訴申立書,控訴趣意書及び答弁書を検閲して報告書を作らせることができます(刑訴規則245条1項)。
この場合,受命裁判官は,公判期日において,弁論前に,報告書を朗読しなければなりません(刑訴規則245条2項)。
3 控訴理由
(1) 控訴理由の体系
□ 控訴理由の体系は以下のとおりであり,これらの控訴理由を理由とするときに限り,控訴することができます(刑訴法384条)。
① 訴訟手続の法令違反(刑訴法377条ないし379条)
→ 後述するとおり,絶対的控訴理由(刑訴法377条及び379条)及び相対的控訴理由(刑訴法379条)があります。
② 法令適用の誤り(刑訴法380条)
→ 法令適用の誤りは,その誤りが明らかに判決に影響を及ぼす場合に限り控訴理由となりますところ,例としては,認定事実に対する実体法の適用の誤りがあります。
なお,法令適用の誤りは,(a)法令を適用しなかった場合,及び(b)法令を不当に適用した場合(最高裁昭和26年8月17日判決)が含まれます。
しかし,事実認定を誤ったために法令の適用が異なる場合,事実誤認の問題であり,また,場合によっては理由不備の問題となります。
③ 量刑不当(刑訴法381条,382条の2)
→ 量刑不当を理由として控訴の申立てをした場合,控訴趣意書に,訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現れている事実であって量刑不当であることを信じるに足りるものを援用しなければなりません(刑訴法381条)。
④ 事実誤認(刑訴法382条,382条の2)
→ 事実誤認を理由として控訴の申立てをした場合,控訴趣意書に,訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現れている事実であって明らかに判決に影響を及ぼすべき誤認があることを信ずるに足りるものを援用しなければなりません。
⑤ 再審請求理由の存在(刑訴法383条1項)
→ 再審請求理由は,刑訴法435条所定事由のことです。
⑥ 判決後の刑の廃止・変更,大赦(刑訴法383条2項)
→ 刑の変更とは,刑法6条の刑の変更をいいます。
□ やむを得ない事由によって第一審の弁論終結前に取調べを請求することができなかった証拠によって証明することのできる事実であって量刑不当又は事実誤認があることを信ずるに足りるものは,訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現れている事実以外の事実であっても,控訴趣意書にこれを援用することができます(刑訴法382条の2第1項)。
第一審の弁論終結後判決前に生じた事実であって量刑不当又は事実誤認があることを信ずるに足りるものについても同様です(刑訴法382条の2第2項)。
これらの場合,控訴趣意書に,その事実を疎明する思料を添付しなければなりません(刑訴法382条の2第3項前段)し,第一審の弁論終結前に生じた事実については,やむを得ない事由によってその証拠の取調を請求することができなかった旨を疎明する資料をも添付しなければなりません(刑訴法382条の2第3項後段)。
□ 適法な証拠調べを経ていない証拠を他の証拠と総合して犯罪事実を認定した違法があっても,その証拠調べを経ない証拠を除外してもその犯罪事実を認めることができる場合には、右の違法は判決破棄の理由になりません(最高裁昭和29年6月19日決定。なお,先例として,最高裁昭和26年3月6日判決)。
□ 最高裁平成24年2月13日判決は,控訴審における事実誤認の審査の方法について以下のとおり判示しています(ナンバリング及び改行は筆者が行いました。)。
1 刑訴法は控訴審の性格を原則として事後審としており,控訴審は,第1審と同じ立場で事件そのものを審理するのではなく,当事者の訴訟活動を基礎として形成された第1審判決を対象とし,これに事後的な審査を加えるべきものである。
第1審において,直接主義・口頭主義の原則が採られ,争点に関する証人を直接調べ,その際の証言態度等も踏まえて供述の信用性が判断され,それらを総合して事実認定が行われることが予定されていることに鑑みると,控訴審における事実誤認の審査は,第1審判決が行った証拠の信用性評価や証拠の総合判断が論理則,経験則等に照らして不合理といえるかという観点から行うべきものであって,刑訴法382条の事実誤認とは,第1審判決の事実認定が論理則,経験則等に照らして不合理であることをいうものと解するのが相当である。
したがって,控訴審が第1審判決に事実誤認があるというためには,第1審判決の事実認定が論理則,経験則等に照らして不合理であることを具体的に示すことが必要であるというべきである。
2 このことは,裁判員制度の導入を契機として,第1審において直接主義・口頭主義が徹底された状況においては,より強く妥当する。
(2) 訴訟手続の法令違反
□ 訴訟手続の法令違反のうち,絶対的控訴理由は以下のとおりです。
① 法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと(刑訴法377条1項)
→ 例えば,合議体によるべき事件を一人の裁判官が審判した場合があります。
② 法令により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと(刑訴法377条2項)
→ 例えば,除斥原因のある裁判官が判決に関与した場合があります。
③ 審判の公開に関する規定に違反したこと(刑訴法377条3項)
④ 不法に管轄又は管轄違いを認めたこと(刑訴法378条1項)
→ 例えば,事物管轄,土地管轄(刑訴法329条,331条)に違反した場合があります。
⑤ 不法に公訴を受理し,又はこれを棄却したこと(刑訴法378条2項)
⑥ 審判の請求を受けた事件について判決せず,又は審判の請求を受けない事件について判決したこと(刑訴法378条3項)
→ 「審判の請求を受けた事件」とは,(a)公訴の提起のあった事件又は(b)準起訴手続で審判に付された事件をいいます。
「判決せず」の例としては,併合罪として起訴された数個の犯罪事実の一部について,証明がなかったのに,主文において無罪の言渡しをしなかった場合があります(札幌高裁昭和58年5月24日判決参照)。
「審判の請求を受けない事件について判決した」の例としては,公訴事実と同一性のない別の事実について審判した場合があります(最高裁昭和29年8月20日判決,最高裁昭和33年2月21日判決参照)。
⑦ 判決に理由を付せず,又は理由に食い違いがあること(理由不備)(刑訴法378条4項)
→ 判決に理由を付さないというのは,全然理由を付さない場合,及び一部分だけ理由を各場合の両方を含みます。
また,理由に食い違いがあるというのは,主文と理由との間,又は理由の内部において食い違いがあることをいうのであって,積極的な矛盾の他に,判決摘示の証拠によっては判示事実の認定ができないような場合を含みます(最高裁昭和24年6月18日判決,最高裁昭和25年2月28日判決参照)。
しかし,判決に摘示されていない証拠と理由との食い違いは事実誤認の問題となります。
□ 刑訴法377条所定の控訴理由を主張する場合,控訴趣意書に,その事由があることの充分な証明をすることができる旨の検察官又は弁護人の保証書を添付しなければなりません。
□ その他の訴訟手続の法令違反は,相対的控訴理由として,判決に影響を及ぼすことが明らかな場合に限り,控訴理由となります(刑訴法379条)。
この場合,控訴趣意書に,訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現れている事実であって明らかに判決に影響を及ぼすべき法令の違反があることを信ずるに足りるものを援用しなければなりません。
□ 「訴訟手続」とは,第一審判決の直接の基礎となった審判手続をいい,判決手続も含まれますものの,捜査,勾留,勾引,略式手続,更新前の公判手続は含まれません。
「法令違反」とは,その結果訴訟手続が無効とされる場合をいいます。
「判決に影響を及ぼす」とは,その違反がなかったならば現になされた第一審判決と異なる判決がなされたであろうという蓋然性のあることをいいます(最高裁大法廷昭和30年6月22日判決)。
4 被告人の移送
□ 被告人が刑事施設に収容されている場合において公判期日を指定すべきときは,控訴裁判所は,その旨を対応する検察庁の検察官に通知しなければなりません(刑訴規則244条1項)。
この場合,検察官は,速やかに被告人を控訴裁判所の所在地の刑事施設に移さなければなりません(刑訴規則244条2項)。
□ 被告人が控訴裁判所の所在地の刑事施設に移されたときは,検察官は,速やかに被告人の移された刑事施設を控訴裁判所に通知しなければなりません(刑訴規則244条3項)。
5 控訴審の公判審理の特則
□ 控訴審の公判審理については,刑訴法に特別の定めがある場合を除き,第一審の公判に関する規定が準用されます(刑訴法404条,刑訴規則250条)。
例えば,①被告人が心神喪失の状態にあるときは公判手続を停止するという刑訴法314条1項,及び②開廷後裁判官が変わったときは,公判手続を更新しなければならないという刑訴法315条は控訴審に準用されます(①につき最高裁昭和53年2月28日判決,②につき最高裁昭和30年12月26日判決)。
□ 控訴審では,弁護士以外の者を弁護人に選任することができません(刑訴法387条)。
□ 控訴審では,被告人のためにする弁論は,弁護人でなければ,これをすることができません(刑訴法388条)。
□ 控訴審の公判期日では,検察官及び弁護人は,控訴趣意書に基づいて弁論をしなければなりません(刑訴法389条)。
□ 控訴審においては,裁判所の出頭命令がない限り,控訴人が公判期日に出頭することを要しません(刑訴法390条)。
□ 控訴裁判所は,控訴趣意書に包含された事項は,これを調査しなければなりません(刑訴法392条1項)。
また,控訴裁判所は,控訴趣意書に包含されない事項であっても,第一審の弁論終結後の事情を除き,職権で控訴理由に該当する事由を調査することができます(刑訴法392条2項)。
□ 控訴裁判所は,控訴趣意書に包含された事項等について調査をするについて必要があるときは,検察官,被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で事実の取調べをすることができます(刑訴法393条1項本文)。
ただし,刑訴法382条の2の疎明があったものについては,量刑不当又は事実誤認に該当する場合に限り,これを取り調べなければなりません(刑訴法393条1項ただし書)。
□ 控訴裁判所は,必要があると認めるときは,職権で,第一審判決後の刑の量定に影響を及ぼすべき情状について取調べをすることができます(刑訴法393条2項)。
「第一審判決後の刑の量定に影響を及ぼすべき情状」の典型例は,第一審判決後に成立した被害者との示談でありますところ,この事実を取り調べるかどうかは控訴裁判所の裁量となるのであって,控訴人としては,控訴裁判所の職権発動を求めることしかできません。
□ 控訴審において事実の取調べをした場合,検察官及び弁護人は,その結果に基づいて弁論をすることができます(刑訴法393条4項)。
□ 第一審において証拠とすることができた証拠は,控訴審においてもこれを証拠とすることができます(刑訴法394条)。
□ 第一審における証拠とすることの同意を控訴審に至って撤回することは,原則として許されません(最高裁昭和37年12月25日判決)。
6 控訴審の裁判
□ 控訴裁判所は,所定の期間内に控訴趣意書の提出がなかったり,控訴趣意書に記載された控訴申立理由が明らかに控訴理由に該当しなかったりした場合,決定で控訴を棄却しなければなりません(刑訴法386条1項)。
ただし,控訴棄却決定に対しては即時抗告をすることができます(刑訴法386条2項)。
□ 控訴裁判所は,控訴の申立てが法令上の方式に違反し,又は控訴権の消滅後にされたものであるときは,判決で控訴を棄却しなければなりません(刑訴法395条)。
□ 控訴裁判所は,控訴理由に該当する事由がないときは,判決で控訴を棄却しなければなりません(刑訴法396条)。
□ 控訴裁判所は,控訴理由に該当する事由があるときは,判決で原判決を破棄しなければなりません(刑訴法397条1項)。
□ 控訴裁判所は,第一審判決後の刑の量定に影響を及ぼすべき情状を取り調べた結果,原判決を破棄しなければ明らかに正義に反すると認めるときは,判決で原判決を破棄することができます(刑訴法397条2項)。
□ 控訴裁判所は,不法に管轄違いを言い渡し,又は公訴を棄却したことを理由として原判決を破棄するときは,判決で事件を原裁判所に差し戻さなければなりません(刑訴法398条)。
□ 控訴裁判所は,不法に管轄を認めたことを理由として原判決を破棄するときは,判決で事件を管轄第一審裁判所に移送しなければなりません(刑訴法399条本文)。
□ 控訴裁判所は,管轄違い等以外の理由で原判決を破棄するときは,判決で,事件を原裁判所に差し戻し,又は原裁判所と同等の他の裁判所に移送しなければなりません(刑訴法400条本文)。
ただし,控訴裁判所は,訴訟記録並びに控訴裁判所において取り調べた証拠によって,直ちに判決をすることができるものと認めるときは,被告事件について更に判決をすることができます(刑訴法400条ただし書)。
□ 被告人が控訴をし,又は被告人のため控訴をした事件については,原判決の刑より重い刑を言い渡すことができません(刑訴法402条)。
□ 控訴裁判所は,原裁判所が不法に公訴棄却の決定をしなかったときは,決定で公訴を棄却しなければなりません(刑訴法403条1項)。

第3 上告

1 上告の申立て
□ 上告は,高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対してこれをすることができます(刑訴法405条)。
□ 高等裁判所が第一審として判決を下すのは,内乱罪(刑法77条),内乱の予備又は陰謀罪(刑法78条)),及び内乱等幇助罪(刑法79条)(裁判所法16条4号)の場合です。
なお,かつては独占禁止法89条ないし91条違反の罪については,東京高等裁判所が第一審として裁判をしていましたものの,平成17年4月27日法律第35号(平成18年1月1日施行)による改正後の独占禁止法では,通常の地方裁判所が第一審として裁判をするようになりました。
□ 上告の提起期間は,14日です(刑訴法414条・373条)。
□ 上告をするには,申立書を控訴裁判所に差し出さなければなりません(刑訴法414条・374条)。
□ 上告の申立てが明らかに上告権の消滅後にされたものである場合を除き,原裁判所は,公判調書の記載の正確性についての異議申立期間の経過後,速やかに訴訟記録を上告裁判所に送付しなければなりません(刑訴規則251条)。
2 上告趣意書
□ 上告申立人は,最高裁判所の指定した日までに,上告趣意書を上告裁判所に差し出さなければなりません(刑訴法414条・376条1項,刑訴規則252条・266条・240条)。
□ 上告趣意書には,上告の理由を簡潔に明示しなければなりません(刑訴規則266条・240条)。
□ 上告裁判所は,上告趣意書を差し出すべき期間経過後に上告趣意書を受け取った場合においても,その遅延がやむを得ない事情に基づくものと認めるときは,これを期間内に差し出されたものとして審判をすることができます(刑訴規則266条・238条)。
□ 判例と送反する判断をしたことを理由として上告の申立てをした場合には,上告趣意書にその判例を具体的に示さなければなりません(刑訴規則253条)。
なお,「判例を具体的に示す」とは,裁判所名,事件番号,裁判年月日,掲載文書名,掲載箇所等を指示して,その判例を具体的に示すことをいいます(最高裁昭和45年2月4日決定)。
3 上告理由,及び上告受理の申立理由
□ 高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては,以下の上告理由がある場合に限り,上告の申立てをすることができます(刑訴法405条)。
① 憲法の違反があること又は憲法の解釈に誤りがあること。
→ 「憲法の違反」があるとは,原判決及びその訴訟手続における憲法違反をいい,例えば,(a)自白を唯一の証拠として犯罪事実を認定した場合(憲法38条3項違反),及び(b)刑罰法規を遡及して適用し,又は既に無罪判決が確定した事実について有罪判決をした場合(憲法39条)があります。
「憲法の解釈に誤り」があるとは,原判決が違憲の法令を適用したこと,及び原判決の理由に示された憲法の解釈に誤りがあることをいい,例えば,法律,命令,規則又は処分が憲法に適合するかしないかについて示された判断に誤りがあることがあります。
② 最高裁判所の判例と相反する判断をしたこと
→ 判例と送反する判断をしたことを理由として上告の申立てをした場合には,上告趣意書にその判例を具体的に示さなければなりません(刑訴規則253条)。
③ 最高裁判所の判例がない場合に,大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所の判例又は刑訴法施行後の控訴裁判所たる高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと。
□ 最高裁判所は,上告理由がない場合であっても,法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件については,その判決確定前に限り,自ら上告審としてその事件を受理することができます(刑訴法406条)。
その趣旨は,刑訴法405条2号及び3号によっては,新しい法令の解釈及び判例のない法令の解釈について最高裁判所の見解をただすことが的ないことに鑑み,これらの点に関する判例の出現を期する点にあります。
その関係で,高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては,その事件が法令(裁判所の規則を含む。)の解釈に関する重要な事項を含むものと認めるときは,上訴権者は,その判決に対する上告の提起期間内に限り,最高裁判所に上告審として事件を受理すべきことを申し立てることができます(刑訴規則257条本文)。
□ 判決に影響を及ぼすべき法令の違反がある場合,上告受理の申立てをしなくても,刑訴法411条1項1号に基づく職権破棄を促すことができます。
4 跳躍上告
□ 跳躍上告には以下の2種類があります。
① 違憲判決に対する跳躍上告(刑訴規則254条1項)
→ 地方裁判所又は簡易裁判所がした第一審判決に対しては,その判決において(a)法律,命令,規則若しくは処分が憲法に違反するものとした判断,又は(b)地方公共団体の条例若しくは規則が法律に違反するものとして判断が不当であることを理由として,最高裁判所に上告をすることができます。
② 合憲判決に対する跳躍上告(刑訴規則254条2項)
→ 検察官は,地方裁判所又は簡易裁判所がした第一審判決に対し,その判決において地方公共団体の条例又は規則が憲法又は法律に適合するものとした判断が不当であることを理由として,最高裁判所に上告をすることができます。
□ 上訴提起期間経過後の跳躍上告申立ては,控訴提起の有無にかかわらず不適法です(最高裁平成6年10月19日決定)。
5 上告審の公判審理の特則
□ 上告審は,特別の定めがない限り,控訴審の規定が準用されます(刑訴法414条)。
例えば,被告人が心神喪失の状態にあるときは公判手続を停止する旨を定めた刑訴法314条1項は上告審に準用されます(最高裁平成5年5月31日決定)。
□ 上告審においては,公判期日に被告人を召喚することを要しません(刑訴法409条)。
そのため,上告審において公判期日を指定すべき場合においても,被告人の移送は不要です(刑訴規則265条)。
□ 上告審の公判期日では,検察官及び弁護士たる弁護人が,上告趣意書に基づいて弁論します(刑訴法414条・387条ないし389条)。
□ 最高裁判所は,原判決において法律,命令,規則又は処分が憲法に違反するものとした判断が不当であることを上告の理由とする事件については,原裁判において同種の判断をしていない他のすべての事件に優先して,これを審判しなければなりません(刑訴規則256条)。
6 上告審の裁判
□ 上告裁判所は,所定の期間内に上告趣意書の提出がなかったり,上告趣意書に記載された上告申立理由が明らかに上告理由に該当しなかったりした場合,決定で上告を棄却しなければなりません(刑訴法414条・386条1項)。
□ 上告裁判所は,上告趣意書その他の書類によって,上告申立理由がないことが明らかであると認めるときは,弁論を経ないで,判決で上告を棄却することができます(刑訴法408条)。
□ 上告裁判所は,以下の場合において,原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときは,判決で上告を棄却します。
① 刑訴法405条各号に規定する事由があり,これが判決に影響を及ぼすことが明らかである場合(刑訴法410条1項)
→ 刑訴法405条各号の規定する事由というのは,(a)憲法違反,(b)憲法解釈の誤り及び(c)判例違反です。
② 判決に影響を及ぼすべき法令の違反がある場合(刑訴法411条1項1号)
③ 刑の量定が著しく不当である場合(刑訴法411条1項2号)
④ 判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認がある場合(刑訴法411条1項3号)
⑤ 再審事由がある場合(刑訴法411条1項4号)
⑥ 判決があった後に刑の廃止若しくは変更があった場合(刑訴法411条1項5号前段)
⑦ 大赦があった場合(刑訴法411条1項5号後段)
□ 原判決に判例違反のみがある場合において,上告裁判所がその判例を変更して原判決を維持するのを相当と認めるときは,上告棄却判決を下します(刑訴法410条2項)。
この場合において最高裁判所の判例変更を伴うときは,大法廷判決として上告を棄却する(裁判所法10条3号)のであって,例としては,横領罪に関する最高裁昭和31年6月26日判決を変更した上で上告を棄却した,最高裁大法廷平成15年4月23日判決があります。
□  判事補の職権の特例等に関する法律1条の2第1項に基づいて最高裁判所から高等裁判所判事の職務を代行させる旨の人事措置が発令されていない判事補が構成に加わった高等裁判所により宣告された原判決は,その宣告手続に法律に従って判決裁判所を構成しなかった違法がありますから,刑訴法411条1号により破棄されます(最高裁平成19年7月10日判決)。
□ 上告裁判所は,不法に管轄を認めたことを理由として原判決を破棄するときは,判決で事件を管轄控訴裁判所又は管轄第一審裁判所に移送しなければなりません(刑訴法412条)。
□ 上告裁判所は,管轄違い以外の理由で原判決を破棄するときは,判決で,事件を原裁判所若しくは第一審裁判所に差し戻し,又はこれらと同等の他の裁判所に移送しなければなりません(刑訴法413条本文)。
ただし,上告裁判所は,訴訟記録並びに原裁判所及び第一審裁判所において取り調べた証拠によって,直ちに判決をすることができるものと認めるときは,被告事件について更に判決をすることができます(刑訴法413条ただし書)。
□ 上告裁判所は,原裁判所が不法に公訴棄却の決定をしなかったときは,決定で上告を棄却しなければなりません(刑訴法414条・403条1項)。
□ 最高裁は法律審であることを原則としており,原判決の事実認定の当否に深く介入することにはおのずから限界があり,慎重でなければならないのであって,最高裁における事実誤認の主張に関する審査は,原判決の認定が論理則,経験則等に照らして不合理といえるかどうかの観点から行われます(最高裁平成23年7月25日判決。なお,先例として,最高裁平成21年4月14日判決参照)。
□ 上告審判決は,①判決の宣告があった日から10日を経過したとき,又は②訂正の判決(刑事訴訟法415条)若しくは訂正の申立てを棄却する決定があったときに確定します(刑事訴訟法418条)。

第4 非常上告

□ 検事総長は,判決が確定した後その事件の審判が法令に違反したことを発見したときは,最高裁判所に非常上告をすることができます(刑訴法454条)。
□ 非常上告をするには,その理由を記載した申立書を最高裁判所に差し出さなければなりません(刑訴法455条)。
□ 公判期日には,検察官は,申立書に基づいて陳述しなければなりません(刑訴法456条)。
□ 非常上告が理由のないときは,判決でこれを棄却しなければなりません(刑訴法457条)。
□ 非常上告が理由のあるときは,以下の区分に従い,判決をしなければなりません(刑訴法458条)。
① 原判決が法令に違反したときは,その違反した部分を破棄します。
ただし,原判決が被告人のため不利益であるときは,これを破棄して,被告事件について更に判決をします。
② 訴訟手続が法令に違反したときは,その違反した手続を破棄します。
□ 非常上告の判決は,被告人について更に判決をした場合を除き,その効力を被告人に及ぼしません(刑訴法459条)。
□ 非常上告は,法令の適用の誤りを正し,もって,法令の解釈適用の統一を目的とするものであって,個々の事件における事実認定の誤りを是正して被告人を救済することを目的とするものではありません。
そのため,実体法たると手続法たるとを問わず,その法令の解釈に誤りがあるというのでなく,単にその法令適用の前提事実の誤りのため当然法令違反の結果を来す場合のごときは,法令の解釈適用を統一する目的に少しも役立たないから,刑訴454条の「事件の審判が法令に違反したこと」に当たりません(最高裁大法廷昭和27年4月9日判決)。

第5 勾留及び保釈に対する不服申立て

□ 勾留及び保釈に対する不服申立ての宛先は以下のとおりです。
① 起訴から第1審における第1回公判期日前まで
裁判官(刑訴法280条1項)が勾留していますから,不服申立ては,地裁への準抗告(刑訴法429条1項2号)→最高裁への特別抗告(刑訴法433条)となります。
② 第1審の第1回公判期日から高裁に記録が到着するまで
第1審の裁判所が勾留していますから,不服申立ては,高裁への通常抗告(刑訴法419条ないし427条)→最高裁への特別抗告(刑訴法433条)となります。
③ 高裁に記録が到着してから最高裁に記録が到着するまで
控訴審の裁判所が勾留していますから,不服申立ては,別の高裁の合議体への異議申立て(刑訴法428条2項及び3項)→最高裁への特別抗告(刑訴法433条)となります。
④ 最高裁に記録到着後
上告審の裁判所が勾留していますから,不服申立ては,最高裁への異議申立てとなります(最高裁昭和52年4月4日決定)。
□ ①上訴の提起期間内の事件でまだ上訴のないもの,及び②上訴中の事件で訴訟記録が上訴裁判所に到達していないものについては,原裁判所が勾留及び保釈に関する決定をします(刑訴法97条1項及び2項,刑訴規則92条1項及び2項)。
□ 勾留に対しては,勾留理由開示があったときは,その開示の請求をした者も,被告人のため上訴をすることができます(刑訴法354条前段)。
□ 保釈請求却下決定に関して特別抗告が申し立てられた後に,被告人が保釈により釈放された場合には,右抗告は,その理由について裁判をする実益がありません(最高裁昭和29年1月19日決定)。
□ 保釈を許す決定に対する抗告事件において,抗告裁判所は,原決定が違法であるかどうかにとどまらず,それが不当であるかどうかをも審査することができます(最高裁昭和29年7月7日決定)。
□ 保釈請求却下決定に対する準抗告申立棄却決定の謄本が,被告人と申立人である弁護人との双方に日を異にして送達された場合における抗告申立の期間は,被告人本人に送達された日から起算されます(最高裁昭和43年6月19日決定)。
□ 最高裁判所がした裁判であっても,判決に対し刑訴法415条は訂正の申立を認め,また,上告棄却の決定に対し同法414条,3826条2項による異議の申立が認められている(最高裁大法廷昭和30年2月23日決定,最高裁昭和36年7月5日決定)とのバランスから,最高裁判所の保釈保証金没取決定に対しても,刑訴法428条準用により異議の申立てができます(最高裁昭和52年4月4日決定)。
□ 勾留の裁判に対する異議申立てが棄却され,右棄却決定がこれに対する特別抗告も棄却されて確定した場合においては,右異議申立てと同一の論拠に基づいて勾留を違法として取り消すことはできません(最高裁平成12年9月27日決定)。

第6 国選弁護人の報酬及び費用

□ 憲法37条3項後段は,刑事被告人に資格を有する弁護人を国が付することを保障していますから,刑訴法38条1項が,被告人の国選弁護人は弁護士から選任すべきことを定めるのは,憲法の要請を受けたものです。
ただし,国選弁護人の報酬及び費用を何人に負担させるかという問題は,憲法37条3項後段が関知するところではありません(最高裁大法廷昭和25年6月7日判決参照)。
□ 国選弁護人は,裁判所が解任しない限りその地位を失うものではありませんから,国選弁護人が辞任の申出をした場合であっても,裁判所が辞任の申出について正当な理由があると認めて解任しない限り,弁護人の地位を失うものではありません(最高裁昭和54年7月24日判決)。
なお,国選弁護人の解任理由を定めた,平成16年5月28日法律第62号による改正後の刑訴法38条の3は,平成18年10月2日に施行されました。
□ 刑事訴訟費用の主たるものは,刑事事件における被疑者国選弁護人及び被告人国選弁護人の報酬及び費用のことです(総合法律支援法5条及び39条2項参照)。
□ 報酬及び費用が事件ごとに定められる契約を締結している国選弁護人等契約弁護士(=普通国選弁護人契約弁護士)の場合,法テラスが査定した報酬及び費用が訴訟費用となります(総合法律支援法39条2項1号)。
そのため,①刑訴法38条2項及び②刑事訴訟費用等に関する法律(=刑訴費用法)2条3号の適用が排除されています(総合法律支援法39条1項)。
□ 司法支援センター(=法テラス)との一般国選弁護人契約(=基本契約)には,以下の2種類があります。
① 普通国選弁護人契約(国選弁護人の事務に関する契約約款2条4号)
→ 事件ごとに報酬及び費用が定まる契約のことであり,基本契約の締結を希望するすべての弁護士が結びます。
② 一括国選弁護人契約(国選弁護人の事務に関する契約約款2条6号)
→ 複数の即決被告事件について一括して,報酬及び費用が定まる契約のことであり,被告人段階で即決裁判を一度に複数件を受任する意思のある弁護士が,普通国選弁護人契約とは別に結ぶものです。
□ 国選弁護人に支給される報酬及び費用は,国選弁護人の事務に関する契約約款別紙「報酬及び費用の算定基準」において,算定基準が詳細に定められています(国選弁護人の事務に関する契約約款14条)。
□ 総合法律支援法(平成16年6月2日法律第74号)に基づき,司法支援センター(=法テラス)が平成18年10月2日に業務を開始する以前は,裁判所が,刑訴法38条2項に基づき,国選弁護人の旅費,日当,宿泊料及び報酬を定めていました。
そして,国選弁護人の旅費,報酬等は,裁判所が相当と認めるところによるものとされ(刑訴費用法8条),刑訴法に準拠する不服申立ては許されませんでした(最高裁昭和63年11月29日決定)。

第7 訴訟費用執行免除の申立て

□ 被告人に訴訟費用を負担させるときには,主文でその言渡しをすることになっています(刑訴法185条前段)から,訴訟費用について言渡しがない場合,訴訟費用は被告人の負担にはなりません。
□ 訴訟費用については,貧困のためこれを完納することができないときは,判決確定後20日以内に訴訟費用の執行免除の申立てをした上で,裁判所から訴訟費用の執行免除決定をもらえれば,納付する必要がなくなります(刑訴法500条,刑訴規則295条ないし295条の5)。
ただし,判決が確定した時点で国選弁護人の選任の効力が失われていますから,訴訟費用の執行免除の申立ては国選弁護人の義務ではありません。
□ 訴訟費用の執行免除の申立てについてした決定に対しては,即時抗告をすることができ(刑訴法504条),裁判の執行が停止されます(刑訴法425条)。
ただし,即時抗告の提起期間は3日だけです(刑訴法422条)。
□ 訴訟費用は,罰金と同様に,検察官の命令によって執行されますところ,検察官の命令は,執行力のある債務名義と同一の効力を有し(刑訴法490条1項),強制執行手続によることとなります(刑訴法490条2項)。

第8 二重の危険禁止

□ 何人も,既に無罪とされた行為について刑事上の責任を問われることはありません(憲法39条前段)し,同一の犯罪について,重ねて刑事上の責任を問われることがない(憲法39条後段)のであって,これを二重の危険禁止の法理といいます。
□ 憲法39条の「既に無罪とされた行為」とは,刑事訴訟における確定裁判によって無罪の判断を受けた行為をいいます(最高裁大法廷昭和40年2月28日判決。なお,先例として,最高裁大法廷昭和26年12月5日判決)。
よって,検察官がいったん不起訴にした犯罪を後日になって起訴したとしても憲法39条に違反しません(最高裁昭和32年5月24日判決)。
□ 憲法39条後段において同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問われないというのは,同じ犯行について二度以上罪の有無に関する裁判を受ける危険にさらされるべきものではないという根本思想に基づくものであり,その危険とは,同一の事件においては訴訟手続の開始から終末に至るまでの一つの継続状態と見ることが相当であることにかんがみ,一審の手続も,また,上告審のそれも,同一の事件においては継続する一つの危険の各部分であるに過ぎません。
よって,同じ事件においては,いかなる段階においても唯一の危険があるのみであって,そこには二重の危険は存在しないこととなります。
そのため,下級審における無罪又は有罪判決に対し,検察官が上訴をなし有罪又はより重き刑の判決を求めることは,被告人を二重の危険にさらすものでもなく,従ってまた憲法39条に違反して重ねて刑事上の責任を問うことではないこととなります(最高裁大法廷昭和24年11月8日判決,最高裁昭和33年1月23日判決参照)。

第9 費用の補償及び刑事補償

1 費用の補償
□ 無罪の判決が確定したときは,国は,当該事件の被告人であった者に対し,原則として,その裁判に要した費用の補償をしてくれます(刑訴法188条の2)。
□ 費用の補償は,被告人であった者の請求により,無罪の判決をした裁判所が,決定をもって行います(刑訴法188条の3第1項)。
□ 費用の補償の請求は,無罪の判決が確定した後6ヶ月以内にしなければなりません(刑訴法188条の3第2項)。
□ 補償される費用の範囲は以下のものに限られます(刑訴法188条の6)。
① 被告人若しくは被告人であった者又はそれらの者の弁護人であった者が公判準備及び公判期日に出頭するに要した旅費,日当及び宿泊料
② 弁護人であった者に対する報酬
2 刑事補償
□ ①未決の抑留又は拘禁を受けた後に無罪の裁判を受けたり,②再審等の手続において無罪の裁判を受けた者が原判決によってすでに刑の執行を受けたりしていた場合,刑事補償法(昭和25年1月1日法律第1号。同日施行)に基づき,国に対し,抑留又は拘禁による補償を請求することができます(憲法40条参照)。
ただし,①身体を拘束されずに起訴されて無罪となった場合,「未決の抑留又は拘禁」を受けていない以上,刑事補償請求権は認められませんし,②抑留又は拘禁を受けたとしても,被疑事実が不起訴となった場合,「無罪の裁判」を受けていない以上,刑事補償請求権は認められません(②につき最高裁大法廷昭和31年12月22日決定)。
□ 未決勾留は,本刑に算入されることによって,刑事補償の対象としては刑の執行と同視されるべきものとなり,もはや未決勾留としては刑事補償の対象とはなりません(最高裁昭和34年10月29日決定)。
また,本刑に算入された未決勾留日数については,その刑がいわゆる実刑の場合においてはもとより,執行猶予付きの場合においても,もはや未決勾留としては,刑事補償の対象とはなりません(最高裁昭和55年12月9日決定)。
これらの取扱いは,未決勾留が刑の執行と同一視される場合,又はその可能性がある場合,未決勾留が本刑に算入されることが利益となり,本刑に算入された未決勾留について,更に刑事補償をすることは,二重に利益を与えることになると解されるからです(最高裁平成6年12月19日決定)。
□ 抑留又は拘禁による損害が刑事補償による補償額を上回る場合,その抑留又は拘禁が国家機関の故意又は過失に基づくときは,国家賠償法により,その差額を国家賠償により請求できますし,最初から刑事補償によらず国家賠償を請求するということも可能です(平成12年2月3日の衆議院予算委員会における臼井法務大臣の答弁。なお,刑事補償法5条参照)。
□ 刑訴法の規定による免訴又は公訴棄却の裁判を受けた者は,もし免訴又は公訴棄却の裁判をすべき事由がなかったならば無罪の裁判を受けるべきものと認められる充分な事由があるときは,国に対して,抑留若しくは拘禁による補償又は刑の執行若しくは拘置による補償を請求することができます(刑事補償法25条1項)。

第10 執行猶予の取消し

1 執行猶予の必要的取消し
□ 以下の場合,刑の執行猶予が必ず取り消されます(刑法26条)。
① 猶予の期間内に更に罪を犯して禁錮以上の刑に処せられ,その刑について執行猶予の言渡しがないとき。
→ 執行猶予判決が確定した後で別罪を犯し,実刑を受けた場合のことです(最高裁昭和54年3月27日決定)。
② 猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられ,その刑について執行猶予の言渡しがないとき。
→ 執行猶予判決が確定する前に別罪を犯し,執行猶予判決が確定した後に実刑を受けた場合のことです(最高裁大法廷昭和42年3月8日決定)。
③ 猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられたことが発覚したとき。
→ 執行猶予判決が言い渡される前に別罪を犯し,実刑を受け,執行猶予判決が言い渡された後に実刑を受けた事実が発覚した場合のことです(最高裁昭和56年11月25日決定)。
□ 別罪の犯行,実刑の言渡し,実刑を受けた事実の発覚という時間の流れの中で,1号の取消事由が適用されるのは,執行猶予判決の確定が別罪の犯行前に生じた場合であり,2号の取消事由が適用されるのは,執行猶予判決の確定が別罪の犯行後,実刑の言渡し前に生じた場合であり,3号の取消事由が適用されるのは,執行猶予判決の確定が実刑の言渡し後,実刑を受けた事実の発覚前に生じた場合です。
2 執行猶予の裁量的取消し
□ 以下の場合,刑の執行猶予が取り消されることがあります(刑法26条の2)。
① 猶予の期間内に更に罪を犯し,罰金に処せられたとき。
② 刑法25条の2第1項の規定により保護観察に付せられた者が遵守すべき事項を遵守せず,その情状が重いとき。
③ 猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられ,その執行を猶予されたことが発覚したとき。
□ 「その執行を猶予されたことが発覚したとき。」(刑法26条の2第3号)とは,検察官において,新たに執行猶予を言い渡した裁判に対し上訴してこれを是正するみちがとざされたのちに,同条同号所定の執行猶予の前科の存在を覚知したことをいい,検察官がその事実をすでに覚知しながら,上訴申立をすることなく,執行猶予の言渡を確定させたときは,検察官はその取消請求権を失います(最高裁昭和53年11月22日決定)。
□ 保護観察所の長は,保護観察付執行猶予者について,刑法26条の2第2号の規定により刑の執行猶予の言渡しを取り消すべきものと認めるとき(=遵守事項を遵守せず,その情状が重いとき)は,刑訴法349条1項に規定する地方裁判所,家庭裁判所又は簡易裁判所(=刑の言渡しを受けた者の現在地又は最後の住所地を管轄する地方裁判所,家庭裁判所又は簡易裁判所)に対応する検察庁の検察官に対し,書面で,同条2項に規定する申出をしなければなりません(更生保護法79条)。
□ 刑法26条の2第2号の規定による執行猶予の取消しの場合,猶予の言渡しを受けた者の請求があるときは,口頭弁論を経る必要があります(刑訴法349条の2第2項)し,弁護人を選任することができます(刑訴法349条の2第3項)。

第11 略式手続

1 略式命令の請求から発令まで
□ 略式命令の請求は,簡易裁判所に対し,公訴の提起と同時に,書面でなされます(刑訴法462条1項)。
実務上は,起訴状の冒頭に,「下記被告事件につき公訴を提起し,略式命令を請求する。」と記載されています(事件事務規程64条1項参照)から,「略式命令請求書」と呼ばれています。
□ 略式手続によることについて異議がないことを被害者が書面で明らかにしない限り,略式手続とはなりません(刑訴法461条の2第2項,462条2項,刑訴規則288条)。
そのため,略式手続で処理されることについて不服がある場合,通常の刑事裁判を受けることができます。
□ 略式手続によることについて異議がないことを被疑者が明らかにした書面は実務上,「略式請書」(=略請(りゃくうけ))といわれます。
略式請書は,①略式手続についての説明告知をし,異議の有無を確認した旨の検察官作成に係る告知手続書と,②略式手続によることについて異議がない旨の被疑者作成に係る申述書によって構成されています。
□ 略式命令の請求をする場合,実務上,検察官の科刑意見(没収その他付随処分を含む。)を裁判所に申し出ることになっており,略式命令請求書とは別個に科刑意見書を作成して提出しています。
□ 逮捕中又は勾留中に略式手続がとられる場合を,「逮捕中在庁略式」又は「拘留中在庁略式」といいます。
□ 略式命令の請求と同時に,略式命令をするために必要があると考える書類及び証拠物が裁判所に差し出されます(刑訴規則289条)。
これは,いわゆる起訴状一本主義の例外であり,裁判所は,検察官の提出した資料だけを調査して略式命令を発令します。
□ 略式命令請求書において,起訴検察官の所属庁の記載並びに検察官の署名(記名)及び押印(刑訴規則60条の2第2項参照)をいずれも欠いている場合,公訴提起の手続がその規定に違反したため無効ですから,刑訴法463条1項・338条4号により,公訴棄却判決が下されます(最高裁平成19年7月5日判決)。
□ 略式命令の請求を受けた裁判所は,その事件が略式命令をすることができないものであり,又はこれをすることが相当でないものと思料するとき,及び略式命令手続がその規定に違反するときは,通常の規定に従い,審判をしなければなりません(刑訴法463条。「略式不相当」)。
□ 略式命令は,遅くともその請求のあった日から14日以内に発しなければなりません(刑訴規則290条1項)ものの,これは訓示規定に過ぎません(最高裁昭和39年6月26日決定)。
□ 略式命令の告知は,裁判書の謄本の送達によってなされます(刑訴規則34条本文)。
□ 略式命令の送達は,被告人に異議がないときに限り,就業場所,つまり,「その者が雇用,委任その他法律上の行為に基づき就業する他人の住居又は事務所」においてなされます(刑訴規則63条の2,事件事務規程64条4項)。
□ 略式命令は,正式裁判の請求期間の経過(=14日間の経過)又はその請求の取下により,確定判決と同一の効力を生じます(刑訴法470条)。
2 正式裁判の請求
□ いったん略式命令を受けたとしても,略式命令の告知を受けた日から14日以内であれば,略式命令を下した簡易裁判所に対し,書面により正式裁判の請求をすることができます(刑訴法465条)。
そして,簡易裁判所が下した正式裁判の判決に対して不服がある場合,高等裁判所に対して控訴の申立てをすることができます(裁判所法16条1号,刑訴法372条以下)。
□ 正式裁判の請求があったときは,裁判所は,速やかにその旨を検察官又は被告人に通知し(刑訴法465条2項後段),書類及び証拠物を検察官に変換します(刑訴規則293条)。
これは,起訴状一本主義(刑訴法256条6項)に戻るためです。
□ 略式命令をした裁判官は,正式裁判に関与することはできません(刑訴法20条7号)。
□ 正式裁判の請求を適法とするときは,裁判所は,通常の規定に従い審判しなければなりません(刑訴法468条2項)。
この場合,裁判所は略式命令に拘束されません(刑訴法468条3項)から,事実認定,法令の適用及び刑の量定のすべてにわたって事由に判断することができ,被告人だけが正式裁判を請求したときでも,不利益変更禁止の原則(刑訴法402条)も適用されません(最高裁昭和31年7月5日決定)。
□ 正式裁判の請求は,被告人の明示した意思に反しない限り,弁護人もすることができます(刑訴法467条・355条及び356条)。
□ 略式命令で仮納付の命じられた罰金,科料又は追徴に係る裁判について正式裁判の請求があったときは,徴収係事務官は,略式命令請求処理簿にその旨を記入します(徴収事務規程51条前段)。
この場合において,納付されていない仮納付金については執行しません(徴収事務規程51条後段)。
□ 正式裁判の請求は,第一審の判決があるまでこれを取り下げることができます(刑訴法466条)。
よって,刑事記録を閲覧・謄写した上で,略式命令の根拠となった一件記録を確認してから,正式裁判の請求を取り下げることもできます。
□ 弁護士を弁護人に依頼した場合,弁護士の差支え日時を通じて,第1回公判期日の指定について裁判所と交渉することが可能です。

第12 交通切符の略式手続(=三者即日処理方式)

1 総論
□ 三者とは,警察,検察及び裁判所をいいます。
□ 交通切符の略式手続(=三者即日処理方式。在宅在庁略式の方式)とは,(a)非反則行為に関する道路交通法違反,又は(b)自動車の保管場所の確保等に関する法律違反(以下「交通違反」といいます。)により,警察官から交通切符(赤色切符)の交付を受けて出頭日時・場所を告知された人について,以下の手続を1日で行う処理方式であり,違反者が出頭するのは一回だけで済みます。
① 警察の取調べ
② 検察庁の取調べ
③ 検察庁から簡易裁判所への略式命令請求(刑訴法462条)
→ この時点で「被疑者」から「被告人」に変わります。
④ 簡易裁判所の裁判所書記官からの略式命令謄本の交付(刑訴法463条の2参照)
→ 在宅事件の被告人が裁判所の庁舎で略式命令謄本の交付を受けることから,「在宅在庁」というわけです。
なお,在宅事件の対義語は,身柄事件(=逮捕又は勾留されている事件)です。
⑤ 仮納付の裁判(刑訴法348条)の執行として,検察庁での罰金の仮納付(刑訴法490条1項前段,494条1項参照)
□ 大阪府の場合,新大阪駅の近くにある大阪簡易裁判所交通分室で三者即日処理方式が行われています。
□ 通常の裁判手続によると,まず警察での取調べ,次に検察庁での取調べ,更に裁判所での裁判,最後に検察庁への罰金納付といった手続が採られ,手続が終了するまでに警察署・検察庁・裁判所に数回の出頭を余儀なくされます。
そこで,交通違反をした人達の便を考慮し,警察・検察庁の担当者がいわゆる交通裁判所に集まることで,2時間ぐらいですべての手続を終えるようにしています。
□ 青色切符を切られたにもかかわらず,交通反則金を納付しなかった場合,刑事訴訟手続又は少年審判手続で処理されることとなりますところ,通常は,交通切符の略式手続に基づいて罰金刑を科せられます。
2 交通事件即決裁判
□ 交通事件即決裁判手続法(昭和29年5月18日法律第113号。昭和29年11月1日施行)に基づく交通事件即決裁判は,昭和54年以降,実施されていません。
略式手続との最大の相違点は,交通事件即決裁判の場合,即決裁判期日を法廷で実施する必要があるという点でした。
□ 交通事件即決裁判手続は,平成16年5月28日法律第62号による改正後の刑訴法に基づき,平成18年10月2日に導入された即決裁判手続(刑訴法350条の2ないし350条の14)とは異なります。
なお,即決裁判制度は,憲法32条及び憲法38条2項に違反しません(最高裁平成21年7月14日判決)。

第13 即決裁判手続の合憲性

□ 審級制度については,憲法81条に規定するところを除いては,憲法はこれを法律の定めるところにゆだねており,事件の類型によって一般の事件と異なる上訴制限を定めても,それが合理的な理由に基づくものであれば憲法32条に違反するものではありません(最高裁大法廷昭和23年3月10日判決,最高裁大法廷昭和29年10月13日判決。なお,最高裁昭和59年2月24日判決,最高裁平成2年10月17日決定参照)。
□ 最高裁平成21年7月14日判決は,即決裁判手続(刑訴法350条の2ないし350条の14)の合憲性について,以下のとおり判示しています(ナンバリング等は筆者において行いました。)。
1 即決裁判手続について見るに,同手続は,争いがなく明白かつ軽微であると認められた事件について,簡略な手続によって証拠調べを行い,原則として即日判決を言い渡すものとするなど,簡易かつ迅速に公判の審理及び裁判を行うことにより,手続の合理化,効率化を図るものである。
そして,同手続による判決に対し,犯罪事実の誤認を理由とする上訴ができるものとすると,そのような上訴に備えて,必要以上に証拠調べが行われることになりかねず,同手続の趣旨が損なわれるおそれがある。
他方,即決裁判手続により審判するためには,被告人の訴因についての有罪の陳述(刑訴法350条の8)と,同手続によることについての被告人及び弁護人の同意とが必要であり(同法350条の2第2項,4項,350条の6,350条の8第1号,2号),この陳述及び同意は,判決の言渡しまではいつでも撤回することができる(同法350条の11第1項1号,2号)。
したがって,即決裁判手続によることは,被告人の自由意思による選択に基づくものであるということができる。
また,被告人は,手続の過程を通して,即決裁判手続に同意するか否かにつき弁護人の助言を得る機会が保障されている(同法350条の3,350条の4,350条の9)。
加えて,即決裁判手続による判決では,懲役又は禁錮の実刑を科すことができないものとされている(同法350条の14)。
2 刑訴法403条の2第1項は,上記のような即決裁判手続の制度を実効あらしめるため,被告人に対する手続保障と科刑の制限を前提に,同手続による判決において示された罪となるべき事実の誤認を理由とする控訴の申立てを制限しているものと解されるから,同規定については,相応の合理的な理由があるというべきである。
3 そうすると,刑訴法403条の2第1項が,憲法32条に違反するものでない。

第14 裁判の執行の時期等

□ 裁判の執行とは,国家の強制力により裁判の内容を実現することをいいます。
裁判は,上訴又はこれに準ずる不服申立てによって争うことができなくなったときに確定し,その裁判内容に応じた執行力を生じることとなります。
□ 裁判の執行については,刑訴法及び刑訴規則の他,執行事務規程に詳細な規定が設けられています(検察庁法32条,検察庁事務章程29条参照)。
□ 裁判は,原則として,確定した後に執行されます(刑訴法471条)。
□ 以下の場合,裁判の確定を待たずに直ちに執行することができます。
① 即時抗告の許されない決定
執行停止決定(刑訴法424条1項ただし書,2項)がない限り,直ちに執行することができます。
② 仮納付の裁判
直ちに執行することができます(刑訴法348条3項)。
ただし,不完納の場合でも,労役場留置をすることはできません(刑法18条5項参照)。
□ 以下の場合,裁判が確定しても直ちに執行することはできません。
① 訴訟費用の負担を命じる裁判
訴訟費用の執行免除の申立ての期間内(裁判が確定してから20日以内であることにつき刑訴法500条),及びその申立てがあったときは,その申立てについての裁判が確定するまで執行されません(刑訴法483条)。
② 罰金又は科料不納付の場合の労役場留置
裁判確定後,罰金については30日以内,科料については10日以内は,本人の承諾がなければ執行されません(刑法18条5項)。
③ 死刑の判決
法務大臣の命令がなければ執行されません(刑訴法475条1項,執行事務規程10条参照)。
④ 保釈の決定
保釈保証金の納付がなければ執行されません(刑訴法94条1項)。
□ 検察官又は裁判所若しくは裁判官は,裁判の執行に関して必要があると認めるときは,公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができます(刑訴法507条)。

第15 執行指揮

□ 裁判の執行指揮は,原則として,その裁判をした裁判所に対応する検察庁の検察官が行います(検察庁法4条,5条,及び刑訴法472条1項)。
ただし,上訴審の裁判,又は上訴の取下げにより下級の裁判所の裁判を執行する場合,上訴裁判所に対応する検察庁の検察官が指揮します(刑訴法472条2項)。
□ 刑の執行指揮は書面で行い,裁判書又は裁判を記載した調書の謄本又は抄本を添える必要があります(刑訴法473条本文,刑訴規則36条1項・57条)。
なお,刑の執行指揮に関する書面は,執行指揮書といわれます(執行事務規程19条)。
□ 刑以外の裁判の執行は,必ずしも書面によることを必要とせず,裁判書の原本,謄本若しくは抄本又は裁判を記載した調書の謄本若しくは抄本に「認印」して,執行を指揮することができます(刑訴法473条ただし書)。
この認印は実務上,「指揮印」と呼ばれており,例えば,勾留状の執行は,指揮印によって行われています(事件事務規程23条1項)。

第16 自由刑の執行

□ 自由刑の判決が執行される場合,被告人は刑事施設に収容されます(懲役につき刑法12条2項,禁錮につき刑法13条2項及び拘留につき刑法16条)。
□ 拘禁中の被告人について自由刑の判決が確定したときは,検察官は,速やかにその者が収容されている刑事施設の長に対し,刑の執行を指揮します(執行事務規程17条1項)。
□ 拘禁されていない被告人について自由刑の判決が確定したときは,検察官は,執行のためにこれを呼び出すことを要し,被告人が呼出しに応じない場合,収容状を発付しなければなりません(刑訴法484条,執行事務規程18条1項)。
ただし,自由刑の言渡しを受けた被告人が逃亡し,又は逃亡するおそれがあるときは,検察官は呼び出すことなく直ちに収容状を発付し,又は司法警察員をしてこれを発付させることができます(刑訴法485条,執行事務規程21条)。
収容状(刑訴法487条)は,勾引状と同一の効力を有し(刑訴法488条),その執行については拘引状の執行に関する規定が準用されます(刑訴法489条)。

第17 自由刑の執行停止及び執行延期

1 自由刑の執行停止
□ 自由刑の執行停止には,①必要的刑の執行停止,及び②任意的刑の執行停止がありますところ,刑の執行停止の間は,刑の時効は停止します(刑法33条)。
□ 必要的刑の執行停止は,自由刑の言渡しを受けた者が心神喪失の状態にあるときに認められます(刑訴法480条及び481条,執行事務規程28条)
□ 任意的刑の執行停止は,以下の事由があるときに認められます(刑訴法482条,執行事務規程29条)ものの,実際に刑の執行停止があるかどうかは,検察官の判断次第です。
① 刑の執行によって,著しく健康を害するとき,又は生命を保つことのできないおそれがあるとき。
② 年齢70年以上であるとき。
③ 受胎後150日以上であるとき。
④ 出産後60日を経過しないとき。
⑤ 刑の執行によって回復することのできない不利益を生ずるおそれがあるとき。
⑥ 祖父母又は父母が年齢70年以上又は重病若しくは不具で,他にこれを保護する親族がないとき。
⑦ 子又は孫が幼年で,他にこれを保護する親族がないとき。
⑧ その他重大な事由があるとき。
□ 刑の執行指揮前に刑の執行が停止されたときは,執行係事務官は,刑執行停止者にその旨を通知します(執行事務規程31条2項)。
□ 保護観察所の長は、刑執行停止者について,検察官の請求(執行事務規程31条7項参照)があったときは,その者に対し,適当と認める指導監督,補導援護並びに応急の救護及びその援護の措置をとることができます(更生保護法88条)。
2 自由刑の執行延期
□ 自由刑の言渡しを受けた者が,病気等の理由で執行の延期の申立てをしたときは,検察官は,その事由について調査し,やむを得ない事情があると認めるときは,自由刑の執行を延期することができます(執行事務規程20条)。
□ 自由刑の執行延期は,自由刑の執行停止と異なりますから,刑の時効は停止しません。

第17 自由刑の執行停止及び執行延期

1 自由刑の執行停止
□ 自由刑の執行停止には,①必要的刑の執行停止,及び②任意的刑の執行停止がありますところ,刑の執行停止の間は,刑の時効は停止します(刑法33条)。
□ 必要的刑の執行停止は,自由刑の言渡しを受けた者が心神喪失の状態にあるときに認められます(刑訴法480条及び481条,執行事務規程28条)
□ 任意的刑の執行停止は,以下の事由があるときに認められます(刑訴法482条,執行事務規程29条)ものの,実際に刑の執行停止があるかどうかは,検察官の判断次第です。
① 刑の執行によって,著しく健康を害するとき,又は生命を保つことのできないおそれがあるとき。
② 年齢70年以上であるとき。
③ 受胎後150日以上であるとき。
④ 出産後60日を経過しないとき。
⑤ 刑の執行によって回復することのできない不利益を生ずるおそれがあるとき。
⑥ 祖父母又は父母が年齢70年以上又は重病若しくは不具で,他にこれを保護する親族がないとき。
⑦ 子又は孫が幼年で,他にこれを保護する親族がないとき。
⑧ その他重大な事由があるとき。
□ 刑の執行指揮前に刑の執行が停止されたときは,執行係事務官は,刑執行停止者にその旨を通知します(執行事務規程31条2項)。
□ 保護観察所の長は、刑執行停止者について,検察官の請求(執行事務規程31条7項参照)があったときは,その者に対し,適当と認める指導監督,補導援護並びに応急の救護及びその援護の措置をとることができます(更生保護法88条)。
2 自由刑の執行延期
□ 自由刑の言渡しを受けた者が,病気等の理由で執行の延期の申立てをしたときは,検察官は,その事由について調査し,やむを得ない事情があると認めるときは,自由刑の執行を延期することができます(執行事務規程20条)。
□ 自由刑の執行延期は,自由刑の執行停止と異なりますから,刑の時効は停止しません。

第17 自由刑の執行停止及び執行延期

1 自由刑の執行停止
□ 自由刑の執行停止には,①必要的刑の執行停止,及び②任意的刑の執行停止がありますところ,刑の執行停止の間は,刑の時効は停止します(刑法33条)。
□ 必要的刑の執行停止は,自由刑の言渡しを受けた者が心神喪失の状態にあるときに認められます(刑訴法480条及び481条,執行事務規程28条)
□ 任意的刑の執行停止は,以下の事由があるときに認められます(刑訴法482条,執行事務規程29条)ものの,実際に刑の執行停止があるかどうかは,検察官の判断次第です。
① 刑の執行によって,著しく健康を害するとき,又は生命を保つことのできないおそれがあるとき。
② 年齢70年以上であるとき。
③ 受胎後150日以上であるとき。
④ 出産後60日を経過しないとき。
⑤ 刑の執行によって回復することのできない不利益を生ずるおそれがあるとき。
⑥ 祖父母又は父母が年齢70年以上又は重病若しくは不具で,他にこれを保護する親族がないとき。
⑦ 子又は孫が幼年で,他にこれを保護する親族がないとき。
⑧ その他重大な事由があるとき。
□ 刑の執行指揮前に刑の執行が停止されたときは,執行係事務官は,刑執行停止者にその旨を通知します(執行事務規程31条2項)。
□ 保護観察所の長は、刑執行停止者について,検察官の請求(執行事務規程31条7項参照)があったときは,その者に対し,適当と認める指導監督,補導援護並びに応急の救護及びその援護の措置をとることができます(更生保護法88条)。
2 自由刑の執行延期
□ 自由刑の言渡しを受けた者が,病気等の理由で執行の延期の申立てをしたときは,検察官は,その事由について調査し,やむを得ない事情があると認めるときは,自由刑の執行を延期することができます(執行事務規程20条)。
□ 自由刑の執行延期は,自由刑の執行停止と異なりますから,刑の時効は停止しません。

第18 未決勾留日数の通算

□ 未決勾留とは,勾留状による被告人の勾留をいいますところ,未決勾留日数の通算には以下のものがあります。
① 法定通算(刑訴法495条)
法定通算とは,未決勾留日数を本刑に通算するかどうかの裁量権が裁判所にゆだねられておらず,本刑が執行される際,法律上当然に本刑に算入されるものをいいます。
(a) 上訴提起期間中の未決勾留日数
上訴申立後の未決勾留日数を除き,全部これを本刑に通算します(刑訴法495条1項)。
(b) 上訴申立後の未決勾留日数
検察官が上訴を申し立てたとき,又は検察官以外の者が状を申し立てた場合において,その上訴審において原判決が破棄されたときは,全部これを本刑に通算します(刑訴法495条2項)。
(c) 上訴裁判所が原判決を破棄した後の未決勾留は,上訴中の未決勾留日数に準じて,これを通算します(刑訴法495条4項)。
② 裁定通算(刑法21条)
裁定通算とは,裁判所の裁量によって,判決主文において刑の言渡しと同時に,未決勾留日数の全部又は一部を本刑に算入することをいいます。
□ 控訴審が被告人の控訴に基づき第一審判決を破棄する場合,控訴申立後の未決勾留日数は,刑訴法495条2項2号により,判決が確定して本刑の執行される際当然に全部本刑に通算されるべきものであって,控訴裁判所には,右日数を本刑に通算するか否かの裁量権が委ねられていません。
よって,刑法21条により控訴審判決においてその全部又は一部を本刑に算入する旨の言渡しをすべきではありません(最高裁昭和46年4月15日判決。なお,先例として,最高裁昭和26年3月29日決定)。

第19 財産刑等の執行

1 総論
□ ①罰金,②科料,③没収等の財産刑のほか,④追徴,⑤過料,⑥没取(ぼっしゅ),⑦訴訟費用,⑧費用賠償,⑨仮納付,⑩犯罪被害者等保護法11条1項の費用及び⑪民事訴訟法303条1項の納付金の裁判は,検察官の指揮又は命令によって執行されます(刑訴法472条・490条1項。②没収につき刑訴法496条,⑤過料につき民事訴訟法189条及び非訟事件手続法163条,⑨につき刑訴法494条)。
なお,③没収を除く10種類のものは徴収金といわれ(徴収事務規程1条),国の債権の管理等に関する法律(昭和31年5月22日法律第114号。昭和32年1月10日施行)の適用がありません(同法3条1項1号)。
□ 罰金(刑法15条)は1万円以上であるのに対し,科料(刑法17条)は1000円以上1万円未満です。
□ 没収(刑法19条)とは,物の所有権を原所有者から剥奪して国庫に帰属させる処分をいい,証拠品の没収手続については,証拠品事務規程26条ないし43条で定められています。
ちなみに,没収の目的である株券が押収されて検察官に保管されている場合,没収の判決の確定と同時に没収の効力,つまり,株式の国庫帰属の効力を生じ,この場合,特に検察官の執行命令による執行を必要とするものではありません(最高裁昭和37年4月20日判決)。
□ 犯罪による利得を犯人の手に残さないために,没収が不可能な場合,追徴されます(刑法19条の2)。
□ 保釈の取消し等があった場合,保証金は没取されます(刑訴法96条2項及び3項)。
□ 被害者参加人が,裁判所の判断を誤らせる目的で,その資力又は療養費等の額について虚偽の記載のある書面を提出したことによりその判断を誤らせたときは,裁判所は,決定で,当該被害者参加人に対し,被害者参加弁護士の報酬等の全部又は一部を徴収することができます(犯罪被害者等保護法11条1項)。
□ 民事訴訟における控訴裁判所は,控訴を棄却する場合において,控訴人が訴訟の完結を遅延させることのみを目的として控訴を提起したものと認めるときは,控訴人に対し,控訴提起手数料として納付すべき金額の10倍以下の金銭の納付を命ずることができます(民事訴訟法303条1項)。
□ 徴収金のうち,罰金,科料,刑事訴訟費用,追徴金又は過料の請求権は,「罰金等の請求権」に当たります(破産法97条6号)。
よって,これらの納付義務は,免責許可決定を受けたとしても免責してもらうことはできません(破産法253条1項7号・)。
2 徴収金の納付
□ 徴収金は,所定の納付期限までに,①検察庁が指定する方法で検察庁指定の金融機関に納めるか(徴収事務規程14条1項参照),又は②検察庁に直接納めることになります(徴収事務規程14条2項参照)。
□ 徴収金が納付期限までに納付されなかったときは,検察官は,必要に応じ,徴収係事務官をして納付義務者に対し,納付書を添付した督促状その他適宜の方法により,その納付を督促させます(徴収事務規程15条)。
□ 徴収金について納付義務者から納付すべき金額の一部につき納付の申出があったときは,徴収主任(各検察庁の検察事務官から選任されることにつき徴収事務規程3条)は,事情を調査し,その事由があると認めるときは,一部納付願を徴して検察官の許可を受けます(徴収事務規程16条1項)。
□ 納付義務者から納付延期の申出があったときは,徴収主任は,事情を調査し,その事由があると認めるときは,納付延期願を徴して検察官の許可を受けます(徴収事務規程17条1項・16条1項)。
□ 納付した罰金は,所得税における事業所得等の必要経費に算入されません(所得税法45条1項6号)し,法人税における各事業年度の所得の金額の計算上,損金に算入されません(法人税法55条4項1号)。
3 徴収停止の処分,及び徴収不能決定の処分
(1) 徴収停止の処分
□ 徴収金の納付義務者について以下の事由がある場合,検察官は,徴収停止の処分をすることができます(徴収事務規程39条)。
ただし,罰金又は科料に係る徴収金については,(a)納付義務者につき①又は②の事由があり,かつ,(b)納付義務者の所在不明以外の事由により労役場留置の執行をすることができないときに限ります。
① 強制執行をすることができる財産がないとき。
② 強制執行をすることによってその生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき。
③ その所在及び強制執行をすることができる財産がともに不明であるとき。
→ 非訟による過料又は訴訟費用に係る徴収金については,その所在が不明であれば足ります。
(2) 徴収不能決定の処分
□ 以下の場合,法律上執行不能ですから,検察官は徴収不能決定の処分をします(徴収事務規程41条)。
① 時効が完成したとき。 
② 納付義務者が死亡したとき。
→ 罰金又は追徴に係る徴収金について刑訴法491条により相続財産に対し執行することができるときを除きます。
③ 罰金,科料又は追徴に係る徴収金についてその言渡しを受けた者に対し大赦,特赦又は刑の執行の免除があったとき。
④ 没取又は訴訟費用に係る徴収金についてその本案の裁判によって有罪の言渡しを受けた者に対し大赦又は特赦があったとき。 
⑤ その他法律上執行できない事由が生じたとき。
□ 以下の場合,事実上執行不能ですから,検察官は,検事総長又は検事長の許可を受けた上で,徴収不能決定の処分をすることができます(徴収事務規程42条)。
① 納付義務者が解散した法人である場合において,その法人が無資力であるとき。
② 納付義務者が外国人であってその者が出国したとき。
4 労役場留置の執行
□ 罰金又は科料を完納することができない場合,1日以上2年以下の期間,労役場に留置されます(刑法18条1項及び2項)。
ただし,少年に対しては,労役場留置の言渡しをされることはありません(少年法54条)。
□ 労役場とは,法務大臣が指定する刑事施設に附置する場所をいいます(刑事収容施設法287条1項)。
□ 裁判所が罰金の言渡しをするときは,その言渡しとともに,罰金を完納することができない場合における留置の期間を定めて言い渡します(刑法18条4項)。
具体的には,罰金判決の主文において,以下のように言い渡されます。
被告人を罰金20万円に処する。これを完納することができないときは,金5,000円を一日に換算した期間(端数があるときは,これを一日に換算する)被告人を労役場に留置する。
□ 労役場留置者の処遇に関しては,その性質に反しない限り,懲役受刑者に関する処遇が準用されます(刑事収容施設法288条)。
□ 罰金については裁判が確定した後30日以内,科料については裁判が確定した後10日以内は,本人の承諾がなければ,労役場留置の執行をされることはありません(刑法18条5項)。
□ 罰金又は科料に係る徴収金について納付義務者が完納しない場合において,労役場に留置するときは,検察官は,刑事施設の長に対し,労役場留置執行指揮書によりその執行を指揮します(徴収事務規程30条1項)。
□ 検察官が労役場留置の執行をする場合,罰金等の言渡しを受けた者に対し,呼出状を送付したり,収容状を発付したりします(刑訴法505条・484条及び485条,並びに徴収事務規程32条及び33条)。
□ 刑事施設の長,労役場留置の執行を受けている者又はその関係人から刑訴法480条又は482条各号に規定する事由(=刑の必要的又は任意的執行停止の事由)による労役場留置の執行停止の上申があった場合,検察官は,その事由を審査し,事由があると認めるときは,労役場留置執行停止書を作成し,釈放指揮書によりその者が収容されている刑事施設の長に対し,釈放の指揮をします(徴収事務規程37条1項)。
1 相談予約の電話番号は06-6364-8525であり,交通事故及び債務整理の初回の面談相談は無料であり,相続情報公開請求等の面談相談は30分3000円(税込み)です。
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2 執務時間は原則として平日の午前10時から午後7時30分までですが,事前のご予約があれば,午後8時30分まで夜間相談可能です。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)の略歴取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ等はこちらであり,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図はこちらです。